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似非エッセイ 2003年11月下旬号

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「もう一度、『1億円で、死ね!』」
 ますますテロの脅威にさらされる"戦場"イラクだが、派遣された自衛隊員が戦死すれば最高1億円を保証するという日本に比べ、 アメリカはそれまでの6千ドルを二倍に引き上げたそうだが、わずか130万円ほどだという。
 命の値段が、かくも違うのは日本が"金持ち"だからであろうし、一方、彼の国は"軍人"で、 かつこれまでも多くの犠牲者が出ているから、"単価"が低いのかと思いきや、国は葬儀費用を持ってくれ、 かつケネディ元大統領も眠るアーリントン墓地に埋葬して敬意を表してくれるからだという。
 つまり、名誉の戦死、遺族にしてみれば、命の値段は換算できないということらしい。 もっとも、生きて帰れば、大学の授業料が無償になったり、移民は市民権を得られるし、 軍の医療保険も使えるという"優遇"とは大違いであるが。
 さて、わが"軍神"の場合は"アーリントン墓地"靖国神社に祀られることになり、またぞろ、 "ヤスクニ"問題が蒸し返されるのか。
 ところで、イラクは危険ではないかという質問に対し、福田官房長官は「危険なところもあれば、安全なところもある」と、 のたまもうた。たとえてみれば、「(わが国には)貧乏人も多いが、金持ちもいる」というに等しい発言である。
 ついで25日、小泉首相は非戦闘地域について、「安全面に十分配慮すれば、その部分は戦闘地域にならないという場合もある」と、 安直に米軍頼みの発言を繰り返す。
 すでに、テロの標的にされているわが国の、どんな国益にかなうというのか。

「ダイアナ妃とリンチ嬢」
 恋人が9人もいたとか、事故死する前に殺されると怯えていたとか、その伝記が出版された元イギリス皇太子妃ダイアナがまたも話題になった。 元執事の"バクロ"出版に長男のウイリアムズ王子が裏切りと抗議したというが、晴れてカミラだか、 絡み夫人だかと楽しく暮らす? チャールズ皇太子は、だんまり戦術か。
 一方、イラク戦争で"英雄(ヒロイン)"に仕立てられたのは、リンチ嬢だ。 名前がLynch(リンチ=私刑)に似ているからではないだろうが、多分、米軍はとっさに閃いたんでしょうな。 悲劇の主人公に仕立てて、「それほど、フセイン・イラクはひどいのだ」と、世界に発信したまではよかったが、 松葉杖をつき、二十歳になった彼女は、自伝を出すにあたって、米軍は私を利用したと、そのでっち上げをバクロした。 もっとも、後ろで糸を引く元記者がいて、宣伝のために仕組んだともいわれる。
 そういえば、クリントン前大統領と、テーブルの下だかで何をしたのか、ルインスキとかいう司法修習生もいた。 スキャンダルをバネに、有名になったり金持ちになったり、女性はしたたかなのか、転んでもタダでは起きない!?

「非行少年と少年非行」
 先ごろ、川崎市で開かれた首都圏サミット(東京都・神奈川・千葉・埼玉の各知事と横浜・川崎・千葉・さいたま各市長の計8名)で、 治安問題に関連して、有害図書と青少年の健全育成が話題にされたという。
 またその前、東京都では竹花副知事に提出された「〜緊急提言〜子どもを犯罪に巻き込まないための方策」という中で、 やはり外国人による犯罪など治安問題でも、有害図書とコンビニが問題となっている。
 中田横浜市長らは、"エロ本"の駆除を声高にいうが、ピントはずれも甚だしい。 少年らは、そんなものに接するより、テレビ番組やCMに影響を受け、インターネットでわいせつ画像に接触し、 あるいは援助交際の相手を探したり、写真を撮って脅しの手段にするケータイでの非行に精を出している現状こそ、 深刻ではないのか。
 また、深夜外出の制限も強化するというが、それよりコンビニの24時間営業を禁止すれば即座に効果は上がるはずだが、 やらないでしょうな。本を読まない大人でも、コンビニは便利だから……。
 戦後の"有害図書"問題の歴史を見ると、いつの時代も"大人"は"子ども"を人質にしてきた。 つまり、"青少年"は大人の"オモチャ"だった。どこまで続くぬかるみぞ!

「松下政経塾の功罪」
 このたびの衆議院選挙で、当選者を増やした"政党"として、かなり顕在化してきたのが「松下政経塾」である。
 いま、衆院に155人もいる世襲議員は、地盤・看板にカバン(資金)が備わって強みを発揮する。 一方、松下幸之助が設けた"21世紀のリーダーを養成する"機関、松下政経塾"党員"は、来年の創立25周年に、 25人の国会議員を目指していたそうだが、今回26人になったそうだ。
 そのほとんどが、自民党か民主党に所属しているといい、与野党の二大政党などというが、 政策を見てもあまり違わない両党のこと、やがて"松下政経塾党"という一党独裁になるかもしれませんぞ。
 同"党員"は、実務的議論が好きで、熱い魂や歴史観を持っていない、市民に接触しない純粋培養の、 官僚型政治家の集団だという(東京11月19日付)。
 要するに、若いエリート集団で、かっこよく見えるが、危険なネオコン(ブッシュ大統領に影響力を及ぼす新保守主義者)と、 似てはいないか。
 上記、首都圏サミットに出席した中田市長に、松沢神奈川県知事もそのOBだという。 道理で、現状を無視した"政策"に手を染めるわけだ。
 "経営の神様"は、よいことをしてくれたのか、それとも……。

(以上、2003・11・26までの執筆)


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