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出版年表 ―発禁・わいせつ・知る権利と規制の変遷― ごあいさつに代えて

ごあいさつに代えて はじめに―出版と歴史を学ぶ人へ―

 まだテレビはおろかラジオもなかった時代、それは江戸時代を経て明治年間(1968〜1912)もつづくが、当時のおもな"マスコミ"は新聞と書籍、やがて雑誌であった。
 国民は、それらによりさまざまな情報や娯楽を得て、識字率が上がり知的欲求も増える。一方、人々の知的好奇心に応えるべくマスコミ(マスメディアともいう)は、 時に批判的な報道を行なうため、政府や権力者にとっては好ましくないものに映る……。
 政府の方針に従わないもの、あるいは過激な思想や行動、好ましくない流行や風俗などがいつの世にも生起するのは、 必然性があるからである。それらは生活の潤いであったり、社会の変革や制度の改善、国民によりよい生活をもたらすが、 権力者は自分たちに都合の悪い報道やその発信元を取締ろうと規制に乗り出すのも、また必然であった。
 さて、現在の憲法下では、新聞報道や出版活動を行うことに、なんの許可もいらず、言論・表現の自由は保障されているが、無制限ではない。
 たとえば、他人の著作物を無断で使用したり、盗用・改竄〈かいざん〉したりするなど著作権上の問題や、 明治時代の讒謗律〈ざんぼうりつ〉にある"他人の名誉を傷つけたり誹謗中傷したりしてはいけない"こと、 すなわちプライバシーの侵害や名誉毀損などは、他の法律によって罰せられることがある。
 また、本や雑誌は教養・知識の源泉でもあるが、娯楽の友でもある。
 "性"に関する情報は、古来よりどの国でも廃れることはないが、往々にして行き過ぎもある。"青少年問題"を含め、 良識に基づく対応が求められるところである。
 本書は、出版を中心に、明治時代より今日に至るわが国の歴史を、年表を基に概観する目的で作成したが、 同時に知っておくべき過去のさまざまな"動き"も多く取り入れた。
 報道もその規制も、社会の動きの"産物"だからである。

(2005年2月 橋本 健午)

 《本書は、若い人向けに、出版を中心に明治以来140年間の日々の出来事を拾った年表で、05年4月出版メディアパルより出版されました。 ここでは修正や補遺を施しつつ、その後の動きも追加し、より多くの情報を掲出することができるため、キーワードによる検索を目的に、再編集します。 まず、索引(キーワード)から掲出し、徐々に充実させていく所存であります。若者向けとはいえ、YOUNG AT HEARTの方であれば「歴史は繰り返す」のも、 よいものです。2007年2月 橋本健午》

第1章 表現の自由と出版規制

 "表現の自由"とは、国民一人ひとりに与えられた権利であって、出版や新聞・テレビなど、マスコミのみに与えられたものではない。 たとえば、アメリカでは、地下鉄内での物乞いや、国旗を焼くのも表現の自由とされ、さらにインターネットで先生の悪口を言うのも許される、 という具合である(アメリカ憲法修正第1条)。
 ひるがえって、日本にそんな自由はあるのだろうか。一般に、ポルノやわいせつの規制が強化されると、 次に言論・表現の規制につながるのは、歴史の証明するところである。
 また、国家や権力者を批判することが許されなくなれば、窮屈な世の中になるばかりでなく、国民にとっては、相互監視という事態の到来もあながち絵空事ではない。
 「T.規制と"抵抗"―出版と関連法規―(概説)」では、"表現の自由"は必ずしもオールマイティではなく、情報の送り手として、 さまざまな配慮が必要なことについて述べる。
 「U.明治は遠くなりにけり、か」では、われわれの日常生活で当たり前になっている諸制度が、明治政府になってからできたということを認識しつつ、 しかもそれらは本来"国民"のためではなく、"役人"のためではなかったか、という考察である。

 出版活動に限らず、表現の自由は国民の基本的な権利として、憲法第21条で保障されている。 情報の送り手であるメディアの一つとして出版に携わる人は、とくに表現上の行きすぎがないように、つねに自覚が必要である。

〔日本国憲法〕第21条 集会・結社・表現の自由、通信の秘密
 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
 (2) 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

 少し具体的に述べよう。(ア)人の心を傷付けたり、(イ)不快にさせたり、また(ウ)他人のものを勝手に利用したりせず、 (エ)お互いに自由に競争するためにも、憲法で保障された言論機関として、それらを守ることである。
 それぞれ関連の法律等として、
 (ア)名誉毀損や人権・プライバシーに関するもの(刑法、民法)
 (イ)性表現がワイセツかどうかの問題(刑法)や青少年〈健全育成〉条例、また主として雑誌の広告表現が問題とされる薬事法など
 (ウ)他人の原稿や写真等の著作物の扱いにも注意が必要であり(著作権法)、音楽関係は日本音楽著作権協会(JASRAC)により使用料規定が明文化されている。
 (エ)他人の営業妨害になると判断されれば、不正競争防止法の規制を受ける。不正競争には"競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、 または流布する行為"などがある。

 このほか、本や雑誌の定価販売を容認している再販制度(再販売価格維持制度)は、独占禁止法(独禁法)で規定されており、 景品などをつける場合は不当景品類及び不当表示防止法(景表法)および雑誌公正競争規約などの規制を受ける。 また、郵送する場合や雑誌の広告掲載量の制限は、郵便法の範疇である(第3種郵便物、冊子小包)。
 雑誌を創刊する時には、同じタイトル(誌名)がすでに登録されていないかどうか調べること(商標法)など、 注意すべき点はいくつもある。さらに、雑誌や書籍によるケガなどの被害に関する製造物責任法(PL法)もある。
 また、発行された書籍等を納本することを義務づけた国立国会図書館法がある。これは出版物を文化財として永久保存し、 調査・研究の利便に供するためである。18歳以上であれば、だれでも国立国会図書館で閲覧できる。
 いまその膨大な資料は、インターネットでも検索できるが、居ながらにして得られるメリットの反面、 著作権法にかかわる引用や利用の"ルール"を忘れたり、安易な知識で誤った解釈をするなど、思わぬところに危険性があることを肝に銘じておくことである。

 さて、本書にもどろう。「第2章 年表で見る出版小史(戦前編)」では、その時代風潮から、新聞を含め主として思想や政治がらみの報道や評論、 そして小説等の性表現(ワイセツ)に関する検閲(言論統制)と取締り(発行禁止=発禁)が多く見られる。
 "お上"がひんぱんに法律や規則を制定し、かつ規制を強化する理由の一つは、彼らにとって民衆(国民)が"楯突く"のは可愛くない、 気に入らないという理由からである。
 「第3章 年表で見る出版小史(戦後編)」では、当初GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)による検閲もあったが、 (ア)名誉毀損や人権・プライバシーに関するもの(刑法、民法)と、(イ)性表現がワイセツかどうかの問題(刑法)や青少年〈健全育成〉条例に関わる事例・事件を、 おもな対象として扱う。
 すなわち、プライバシーの侵害であったり、名誉毀損等であったり、また主として性表現について、ワイセツだとか青少年に有害だとして図書類が発売禁止になったり、 押収されたりする歴史の概観である。
 表現の自由があるとはいえ、国民の存在を忘れてはならない。国民の知る権利には、応えなければならないが、 個人の尊厳を傷つけたり、興味本位であったり、行き過ぎた表現などをしないように、情報の送り手として十分に気をつけなければならない。

 ところで"戦後60年"ともなれば、かなり昔のことではないか、若い人たちには関係ないことと思うかもしれないが、 いま右傾化の傾向にある日本は、「第2章 年表で見る出版小史(戦前編)」に見るような"戦前の日本"になりつつあるという危機感を持つ人は多い。
 すなわち、今の憲法第12条に「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」とあるにもかかわらず、 たとえば、治安維持のためと称して、各地で監視カメラを設置する動きが見られるが、これはプライバシーを侵害するだけでなく、 エスカレートすれば、人間不信を招き、互いに監視しあう"隣組"化し、だれが何をしたかと"密告"を奨励する動きに結びつきかねないからだ⇒1939・08の項など参照

1.プライバシーの侵害/名誉毀損等について

 だれも他人から、人間としての尊厳を傷つけられるいわれはない。メディア(送り手)は、個人のプライバシーを暴いたり、 差別的表現をするなど、人の名誉を傷つけること(侵害行為)のないよう配慮が必要である。

〔日本国憲法〕第13条 個人の尊重と公共の福祉
 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、 公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

 有名人に限らず、プライバシーは守られなければならない。つまり、職務や立場の延長上の事柄、あるいは自ら公開した場合はともかく、 私生活では他人から干渉や覗き見などをされず、だれにも邪魔されず静かに過ごす権利がある。
 しかし、ケイタイ電話での盗み撮りや手鏡による覗き見など、"個人"による侵害行為が増えている現代に、 メディア関係者が心すべきことは……。
 よく見られる問題ケースは、ある事件の被疑者について、いかにも"真犯人"であるかのように決めつけた報道や、 その事件とは直接関係のない家族についての報道などである。
 判例では、私生活上の事実らしく受け取られるおそれのある事柄で、一般の人々にまだ知られていないものを公開した場合に、 プライバシーの侵害は成立するとしている。

 一方、名誉毀損はたとえば、痴漢行為をした男性の、直接事件と関係のないその妻について事細かに報道することや、 "人違い写真"の掲載も名誉毀損となる。また、ロス疑惑事件(⇒84・1・19)ではテレビ・新聞・週刊誌などの過剰な報道に対しM容疑者の告訴が数多く出され、 メディア側は勝ったり負けたりしたことを、"他山の石"としなければならない。

〔刑法〕第230条 名誉毀損
 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した場合は、その事実の有無にかかわらず、 三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
    (なお、慰謝料については民法第710条に規定)

 肖像権の侵害は、ある作家の再婚相手の女性を、自宅で料理をしているところを塀越しに盗み撮りした写真週刊誌の事件に代表されるように(⇒89・6・23)、 他人の私生活を暴き、不快感を与えるだけでなく、名誉を傷つける場合などである。
 肖像権について最高裁は、個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、その承諾なしに、みだりにその容貌・姿態を撮影されない自由を有するとの判断を示している。
 差別等の問題…他人に対して、侮蔑的な言葉を使い、あるいは差別的な発言で評することは、人に不快感を与える。 報道する側は"差別"をしていると意識せず、不用意に差別語(差別表現)を用いることで問題となるケースが多い。
 侵害行為の影響…ある雑誌が、侵害行為を行った場合、その記事が作成され公表されるまでに関与した人として、 取材した記者や担当の編集者、雑誌の発行人と出版社などが考えられる。それぞれの役割と関与の度合いにもよるが、 共同で訴えられるのが通例である。
 このほか、20歳未満の人権を守るとして、犯罪等を起こした"少年"たちの実名や写真の報道を禁止している少年法がある。

2.知る権利とワイセツ文書・有害図書とは

 メディア関係者でなくとも気になる、ワイセツ文書・ポルノ・エロ本などの取締り、さらに"青少年"と"有害図書"の歴史を概観しよう。
 メディアはそれぞれ一定の節度を保ち、また自主規制(第4章に掲げる各団体の倫理綱領やそれらに基づく規定など)があればその枠内で、 情報を発信している場合がほとんどであろうが、性表現をはじめ不快感や卑猥な印象、残虐な表現や、人を誹謗中傷するなど、 行きすぎた表現はまれではない。
 とはいえ、歴史を見れば分かるように、表現者は信念を持ち、時の権力に抵抗しても、"自己表現"するものは多く、 また権力者は人々(国民)を意のままに操ろうと、過剰な規制に走るのも事実である。しかし、"知る権利"は無制限ではない。 表現者には、一国民としての"眼"も必要である。
 もう一つ、性表現は、人類の誕生とともに存在するが、それは時代とともに"進化"もする。さらに、大人にはよくても、 青少年には刺激が強いなどの理由で、規制されることは多い。これは戦後に生まれた概念で、法律で厳しく取締まるほどではないが、 青少年条例という各地方自治体の定めにより、さまざまな規制が行われてきた。

 (ア)性表現の是非/ワイセツの概念
 性表現=ワイセツではなく、芸術性の高いものも少なくない。"ワイセツ(猥褻)"は後述の青少年条例とちがい、 卑猥な表現(文章・絵画・写真・映画など)を法律で取締ろうというものである。戦後(1945年以降)の場合を概観しよう。
 書籍では1950年6月、『チャタレイ夫人の恋人』(伊藤整訳、小山書店)がワイセツであるとして、発禁(発売禁止)処分を受け、 芸術かワイセツかと裁判で争われた(⇒50・6・26)。最高裁は出版者と訳者を有罪とした東京高裁の判決を支持し(芸術性を認めながらも、 ワイセツの3要素をそなえているとして)、57年3月に有罪が確定した(判決後は伏字だらけの"削除版"が出版され、 96年に新潮文庫から完訳本が出た)。
 他に、69年の渋澤龍彦訳『悪徳の栄え・ジュリエットの遍歴』裁判(⇒60・4・7「サド裁判」、79年には大島渚著『愛のコリーダ』裁判 (⇒76・7・28)などがある。
 発禁本の蒐集・研究家、城市郎によると「昭和53(1978)年の富島健夫『初夜の海』を最後に猥褻文書として取締まられた文芸作品はなく」、 「昭和50(1975)年以降の猥褻出版物の取締まり対象は、ヌード写真を収める雑誌や写真集などに焦点が絞られ、移行するようになった」という (「世相を映し出す摘発文学・有害図書」『発禁本』構成・米沢嘉博〔別冊太陽 城市郎コレクション〕平凡社1999)。

 雑誌では、野坂昭如編集長の『面白半分』(72・07号)が、永井荷風作といわれる『四畳半襖の下張』を全文掲載して、 ワイセツの疑いで発禁となり裁判になった(80年に有罪が確定⇒72・6・22)。
 90年代に入ると、91年6月の篠山紀信『不測の事態』(モデル樋口可南子)や、『芸術新潮』5月号に掲載の荒木経惟のグラビア「三月の私写真」、 『太陽』(91・07号)の「百人の写真家による裸体と肉体の百五十年」等でのヘアや性器が写っている写真について、 警視庁保安1課は"ワイセツ性が高い"としながらも警告するに止めている。
 ヌード写真集は92年ごろブームとなり、多くの女優やタレントものが出版された。警視庁保安課は、アメリカのロック歌手マドンナの 『SEX by MADONNA』日本版についてワイセツ性があると発行元に始末書を出させ、有名女優(島田陽子、松尾嘉代、大竹しのぶ)のヘアが露出した写真集を出した出版社3社の社長を呼び、自粛を要請した。
 その後、写真家加納典明の写真雑誌『ザ・テンメイ』(竹書房)と94年12月発行の総集編『きクぜ2』(同)がワイセツだと摘発を受け、 加納は出版社社長とともに逮捕され、販売会社も家宅捜索を受けた。
 たしかに、近年ではワイセツでの摘発は、"文字"から"写真・絵画"に移っているが、95年12月には成人向け雑誌『秘 桃源郷』が写真だけでなく文章表現もワイセツとされ、家宅捜索された。

〔刑法〕第175条 わいせつ物頒布等
 わいせつな文書、図画その他の物を頒布し、販売し、又は公然と陳列した者は、 2年以下の懲役又は250万円以下の罰金若しくは科料に処する。販売の目的でこれらの物を所持した者も、同様とする。

 ワイセツの3要素…51(昭和26)年、『サンデー娯楽』事件に関し最高裁判決で、男女の性交場面を描写した記事がわいせつに問われた際の見解として示されている。 すなわち、(1)いたずらに性欲を興奮、または刺激せしめ、(2)かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、(3)善良な性的道義観念に反するもの、という。
 なお、3要素は57年の「チャタレイ事件」の最高裁判決で、"ワイセツの3原則"となり、さらに82年に"ワイセツの判断基準"として、 「扇情的手法により、性器性交場面が露骨詳細に描写」、「好色的興味をそそり、全体として性的羞恥心を害する」の二つが加えられた (警視庁保安課編「戦後における性風俗とわいせつ概念」1999・12)。

(イ)制度は大人のために…何が青少年に"有害"なのか
 ここでいう"出版(出版物)と青少年"は、一般向けの雑誌などが"青少年に悪い影響を及ぼす"ため、 それら出版物を規制し青少年(18歳未満の子ども)を保護しようという住民運動(たとえば、3ない運動など)や警察の取締り、 行政による規制強化などをさす。
 戦後の1948〜49ごろ、粗悪な紙を使って発行されたカストリ雑誌が流行し、多くは刑法175条違反などで摘発された。 50年にはこれらの雑誌が青少年に悪影響を与えると、岡山県議会は全国初の"エロ本取締条例"を作っている⇒50・5・19
 そして、55(昭和30)年には全国的な悪書追放運動が起こり、中央立法化まで検討されたが日の目を見ず、 59年の不良週刊誌不買運動などの住民運動や警察の取締りが強化され、地方自治体での青少年条例の制定が全国的に広がっていった(⇒第4章 資料編参照)。

だんだんエスカレートする青少年への規制
 その後、全国的には84年に"少女雑誌"問題、90年夏からの"子供向けポルノコミック"問題などが起こった (出版界に"子供向け…"という呼称はない)。そして、常に"悪書"はその時々の少年非行との関係で論じられ、 さらに地方条例では生ぬるいと"中央立法化"問題とからめて論議されてきた。
 まだ立法化はされていないものの、長野県を除く46都道府県で青少年〈健全育成〉条例(青少年に"有害"な図書類の販売・貸付けなどの規制)が制定されている (長野市にはある)。その改正も繰り返され、規則や罰則が強化されてきたのが、戦後の"青少年対策"のひとつである。
 図書類とは、東京都の場合、書籍・雑誌・文書・図画・写真・ビデオテープおよびビデオディスク・コンピュータ用のプログラムまたはデータを記録したCD−ROMその他の電磁的方法による記録媒体・映写用の映画フィルムおよびスライドフィルムなどをさす。
 このように、新しいメディアが出ると、たちまち指定の対象となっているのは、それらメディアの普及は"ポルノ"の提供と無縁ではないからだ。
 なお、指定された図書類は、青少年に販売し、頒布し、または貸付けてはならず、また閲覧や観覧もさせてはならないとし、 違反した場合の罰則として、警告に従わない者は"30万円以下の罰金または科料"に処せられる。
 指定対象は他の道府県もほとんど同じであるが、罰則は懲役などの厳罰も出てきた(後述)。
 東京都にもどると、99年7月、単行本『完全自殺マニュアル』を指定するよう警視庁が要請したのに対し、 都は"自殺"は条例に抵触しないとして指定しなかった。しかし、01年4月改正の東京都青少年の健全な育成に関する条例第8条(不健全な図書類等の指定)によると、 「販売され若しくは頒布され、又は閲覧若しくは観覧に供されている図書類又は映画等で、その内容が、青少年に対し、著しく性的感情を刺激し、 又ははなはだしく残虐性を助長し、自殺若しくは犯罪を誘発し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認められるもの」が指定の対象となった。
 この改定の際、コンビニ等での一般向けと成人向け雑誌の混売状況を憂慮して、成人向け雑誌の区分陳列を義務化し、 指定図書と紛らわしい雑誌には、何らかの表示を勧告するなど(表示図書)、より厳しい規制となっている。

「個別指定」「包括指定」に「緊急指定」
 ところで、総務庁青少年対策本部(現・内閣府)による全国の"有害指定件数"の推移を見ると、 2万件台で推移していた「雑誌」は94年から(95年を除き)、1万件台に減少し、さらに98年から1万件を割り、 01年には約2600件と減少している。
 この減少は、一見好ましく見えるが、これは個別指定の数字であり、現在、東京都と長野県を除き採用されている包括指定(性表現が、一定基準以上のものは自動的に指定対象)により、 雑誌個々のチェックが省かれているためと思われる。このほか、審議会の議を経ないで知事が直接指定する緊急指定もある。
 なお、04年4月から包括指定を取り入れた秋田県の02年4月〜03年7月の図書の指定数は、03年1月(42件)、同2月(41件)を除いて、 すべて40件であり、ビデオテープは毎月8件に統一されるという不思議さである。
 他でも同じことがいえるが、毎月決まったものが指定されるわけでもないのに、なぜか。 要するに、"予算"のせいで、青少年のためではないからだ。

 もう一度、東京都にもどると、インターネットに比べれば図書の持つ影響は小さいと認識しながら、 成人向け雑誌などを"包装"して販売するようにと、04年2月の都議会に罰則強化の条例改正案が出て成立させた⇒04・4・1
 すでに"有害図書"と"少年非行"との因果関係はないといわれるなか、このような東京都の規制強化は"治安維持"の名のもと、 何かをヤリ玉にあげなければと相談のうえ、インターネットは取り締まれないので、古典的メディアである出版物を俎上に乗せたに過ぎない。
 さらに、東京都をはじめとする神奈川・千葉・埼玉各県の首長らによって、その"因果関係"を無視した青少年行政が進められているのは憂慮すべきことである。
 また、石川県では02年4月より有害図書販売者に「懲役6カ月以下または30万円以下の罰金」と条例を改正しており(懲役は全国初)、 福島県でも自動販売機の有害図書の販売に懲役刑を設ける条例改正を行い、04年7月より施行した(現行の「20万円以下の罰金」を 「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」に)。
 大阪府では03年7月より「犯罪を誘発するおそれ」のある図書を指定対象に加え、区分陳列の義務化などを盛り込んだ改正条例を施行した。
 また、2000年に参院自民党から提案された、出版物などを規制する青少年有害社会環境対策基本法案は、 04年に形を変え青少年健全育成基本法案および青少年有害環境自主規制法案とし、通常国会に上程された(審議未了で廃案)。
 なお、出版界では1963年12月、書協・雑協・取協・日書連で構成する出版倫理協議会が設けられ(初代議長・布川角左衛門)、 出版の自由を守りつつ青少年の健全育成に寄与する自主規制団体として活動している。
 また、書協・雑協非加盟の出版社で構成する自主規制団体として出版倫理懇話会がある(85・06結成)。

刑法・条例だけではない出版"規制"
 似て非なる法律もできていた。99年5月に成立し、同11月から施行された児童買春・児童ポルノ処罰法で、 児童ポルノ(18歳未満の子どもの裸の写真など)を掲載した雑誌などの出版物を処罰の対象とし、 それらを頒布・販売を業とするものなどは3年以下の懲役又は300万円以下の罰金を科せられるという、 刑法175条よりも厳しいものである。
 03年10月、18歳未満とは知らずに女性向けアダルト雑誌に17歳の高校女子生徒の写真を掲載した笠倉出版社が、 初めて同法(販売目的製造)違反で摘発され、書類送検された。
 これは94年に日本も批准した子どもの権利条約(政府訳=児童の権利に関する条約)の第34条 (性的搾取、虐待からの保護)にも共通するもので、 "子ども"に対する保護、すなわち処罰規定の思想は国際的なものといえる。
 雑誌などが中心の出版界は、他メディアに比べ、規模は小さく、政治献金もほとんどせず、いまOB政治家も皆無に近く、 規制に対する対応が緩慢なため、"標的"にされやすいところがある。一方、新聞などには"番記者"がおり、 テレビなど電波は免許事業であるから、霞ヶ関とは"コネ"がある。
 いずれにしても、時代を反映した誌面づくりと、それを規制したい青少年健全育成に名を借りた"政治的"な指定という構図は変わらない。
 余談だが、拙著『有害図書と青少年問題―大人のオモチャだった"青少年"―』(明石書店2002・11)を執筆して感じたことは、 「日本の大人たちは、本気で青少年のことなど考えていない。干渉はしても、ほとんど無関心」ということである。
 理由は、政治家にとって、「非行対策など"青少年問題"は票になるが、選挙権のない"青少年"はどうでもよい」からである(下欄〔コラム〕参照)。
 では、現在20歳からの選挙権を18歳から与えるかといえば、今度は反対するのが国会議員であろう。 つまり、若い人の支持を得られず、当選がおぼつかないからだ。

〔コラム1〕お役所は、働かないことを原則とする?!
 お役所は青少年問題を真剣に考えてはいないことを証明する、衆参の女性議員2名(中山マサ、宮城たまよ)を含む中青協の4委員による座談会がある。
 宮城議員はいう「子供のことを考えている人が少なすぎる。子供に関係する政府の予算は、全予算の3%に過ぎない。 アメリカは30何%も使っているというのに、日本は子供を可愛がらない国だ。 口を開けば教育問題をあげるが、欧米と比べて日本ほど子供を虐待している国があるだろうか」と慨嘆する (「新春座談会 青少年問題の課題」『青少年問題』1957・01所収)。
 設置すればそれでおしまいという"仏作って魂入れず"式が日本のお役所仕事といえる。

〔コラム2〕政治家は、票になることなら……
 読売新聞によると、「脚光浴びる青少年対策/自民、積極策を推進/新しい票田? 社党も遅れじ」 …池田首相が前年「人づくり政策」を強調すると、自民党は「青少年は社会をおこし、国をになう原動力である」と積極的な青少年対策にのり出し、 続いて民社党や社会党も動き出したという。
 なぜか。結びに、こうある。「青少年政策が世界的な動向であることは別にしても、毎年190万人前後も誕生する新有権者を、 いかにして我が党に引きつけるか ― 青少年対策は各党にとって"常に新しき分野"である」(1963・3・5夕刊〔焦点〕)。
 政治家は票になることなら、何でもやるが……。
 その後、似たような記事が出た。「ヤング党員」導入へ…自民党は22日、若者の入党を促進するため、 党費は半額に割り引く「ヤング党員」制度(仮称)を導入する方針を決めた。武部勤幹事長が首相官邸で小泉首相に提案し、 首相も了承した。対象となるのは18歳以上30歳未満で、年会費は4千円から2千円に(2005・12・23東京)。

II. 明治は遠くなりにけり、か

1.制度は役人のために

明治新政府と身分制度
 徳川時代が終わりを告げるのは1868年、すなわち慶応4年のこと。「明治」と改元され、一世一元の制となるのは、 この年9月8日からである(当時は陰暦)。東京が京都に代わり"首都"とされたのは翌69年2月である。
 また、同年7月に設置された中央政府「太政官」は、85(明治18)年の内閣設置と同時に廃止されている。
 69年7月の職員令公布により、中央官庁として2官6省が置かれた。すなわち神祇・太政の2官に、 民部・大蔵・兵部・刑部・宮内・外務の6省であるが、翌70年閏10月に工部省を設置し、71年7月には文部省の設置と民部省の廃止を行った。 さらに、72年2月に兵部省を廃止し陸海軍2省を設置するなど、短期間になんども改編が行われている。
 また、階級制度は維持発展させられ、"国民"は69年6月に公家・諸侯が華族と改称されたほか、版籍奉還により藩主は知藩事に任命され、 藩士は士族・卒とし、農・工・商は平民とされた。72年1月に族称は皇族・華族・士族・平民の四区分に簡素化されたものの、 84年7月7日制定の華族令により、爵位は公・侯・伯・士・男の5階級に分けられ、従来の華族のほか明治維新の功労者に授爵し、 その数約500人となった(当然、その家族も含む)。
 これらの身分制度は1945(昭和20)年8月の敗戦後も続き、同48年5月3日の新憲法(日本国憲法)施行と同時に廃止された。
 新憲法の第14条に「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、 差別されない」とあるが、今日でも日本人は相変わらず特権意識や差別意識に振り回されている。

当時のお役人(官吏)の状況
 役人の出身階級は士族・卒あたりであったろうか。明治期、官吏と呼ばれた彼ら国家公務員に、 出勤時間が午前9時と決められたのは1870(明治3)年9月であり、報酬が月給制になったのは翌71年9月からである。
 休日が制定されるのはその少し前、68年6月のことで、毎月1と6の日であった。日曜休日制を決めたのは72年4月であり、 翌年1月の太陽暦実施に伴い、官庁の年末・年始休暇も決まった。もっとも、この年10月に祝祭日も決められ、 76年には「4月より官庁の1・6休暇を日曜休日・土曜半ドンに改正」したとある(注:二つの資料に同じ記述。 資料により年月や人数などの表記に異同があることに注意が必要!)。80(明治13)年7月に暑中休暇も定められたが、 7月11日より9月10日までの、午前8時から正午までであった。
 この間、71年9月9日の太政官布により、ドン(正午号砲の制)が制定されると、主要都市で大砲をドンと打ち正午を知らせるようになったため、 土曜出勤や半日の休暇を"半ドン"というようになったとか。

取締りが任務の警察制度とは?
 このような各種の制度は、今われわれ多くの国民も"享受"しているが、「表現の自由」は、どのような運命をたどってきたか。 関係する官吏やそれを支える法律の成立と運用の変遷などをたどってみよう。
 1871(明治4)年10月に、東京で邏卒〈らそつ、警察官のこと〉3,000人を新たに採用した。 邏卒とは、当時各府県で警察事務を執り行った職名をさす〔HP"biwa kawakawa Police Mechanism"によると、 明治維新後の警察制度は、江戸に置かれた紀伊・長州・薩摩など12藩の藩兵が治安維持にあたった警邏に始まり、 翌72年に邏卒制度が生まれ、司法省警保寮の所管となった。その後、73年に内務省に移管され、翌年に東京警視庁が、 80年に各府県に警察本署が設置され、86年に警察本部が置かれ、90(明治23)年に国家警察制度が確立した、とある)。
 なお、いま日本は47都道府県(1道1都2府43県)であるが、1871年7月に明治新政府が藩制を廃して全国に郡県制度を敷き(廃藩置県)、 さらに76年8月に3府35県に統合された。3府とは京都府・東京府・大阪府をさす。東京府が都となるのは1943(昭和18)年7月であるが、 その間に区政が敷かれ、また東京市の時代もあった。

2.近世の日本…メディア(新聞・出版物)と取締りの歴史

 新聞や出版物(当初は主に書籍)に対し、どのような規制と取締りが行われてきたのか、概略を見ておこう。
 最初の出版規制は、江戸時代、1722年(享保7)の「町触れ」といわれ、「書物の奥(付)に作者・版元の実名を出すべし」と命じたもので、 刊記・奥付が一般化したきっかけになったとされる〔正文堂HP「古本用語集」〕。
 明治期に至るころには、どのような出版物や新聞が出されていたのか。朝日新聞社編『史料 明治百年』(1966・11)から抜粋して引用しよう。
 ペリーが来航した1854年には川本幸民『遠西奇器術』、馬場佐十郎訳『泰西七金訳説』、村上英俊『三語便覧』(蘭・英・仏3語対訳)などの書物が出され、 翌年は川本・村上の新刊だけでなく、桂川甫周『和蘭字彙』、榊令輔『露西亜字筌』など、56年には高野長英訳『三兵答克知機』などのほか、 故林子平著『海国兵団』の再刊が許可され、翌年は柳河春三〈しゅんさん〉『洋算用法』や吉田松陰の『討賊始末』などと、 すでに盛んな出版状況であった。
 一方、新聞は61年に幕府が蕃書調所で外国新聞を口訳、手記して要路に回覧しだすと、翌年には『官板バタビヤ新聞』『官板海外新聞』などが刊行された。 書籍出版はますます盛んとなり、一方、ワーグマンによる『ジャパン・パンチ』という漫画雑誌も創刊されている。
 63年にはやはり外国人による新聞『ジャパン・コマーシャル・ニュース』が、出版ではジョセフ・彦蔵の『漂流記』などがあり、 65年から67年にかけて英国人による新聞が創刊され、福沢諭吉『西洋事情初篇』『西洋事情外篇』や大村益次郎の『戦闘術門』などの書籍のほか、 先の柳河春三は『西洋雑誌』という本邦初の雑誌を創刊するなどして、日本の夜明けはやってきたが……。

早くも出版は許可制に
 政治はどうだったか。太政奉還した徳川慶喜だが、前年からこの1868(戊辰)年にかけて、討幕派に対抗すべく薩長軍と対峙するものの、 鳥羽・伏見での敗北をはじめ、上野や函館五稜郭でも敗退する……。
 その一方で、旧幕臣一派が『江湖新聞』『中外新聞』『そよふく風』を創刊し、ヴェンリードの『もしほぐさ』などが新政府を批判したため、 明治政府はさっそく、太政官布告を行い、「新聞や出版は、新刊・重版を問わず、官許のないものは発売を禁ず」と許可制にした。 新聞紙類の"私刊"の禁止という、言論弾圧の始まりといわれる処置で、『江湖新聞』が発行禁止となった。
 さらに翌69年5月に公布された出版条例(行政官達)では、新刊の際に願い出れば保護して"専売"を認める一方、 議論や機密の漏洩(洩らすこと)、誹謗(悪口を言うこと)、淫蕩を導く(性的な誘引記事?)ような出版は処罰するなどと厳しくなった。
 この間、明治政府による専制政治を排して、国会と憲法をつくり、政治的自由と民権を求めようとした全国的な政治運動(自由民権運動)が起こっていた。 それらに対し、1875(明治8)年6月28日、太政官布告110号讒謗律〈ざんぼうりつ、全8条〉と同布告第111号新聞紙条例(全16条)が公布された。
 前者は、出版物などで他人の名誉を傷つけたり誹謗中傷したりしてはいけないという趣旨だが、具体的には明治政府の悪口をいうものは罰せられた。
 後者は、新聞・雑誌の発行を内務省の許可制とし、政府の転覆をするなどの言説を載せたものや、官庁の許可を得ない(上書建白)を掲載することなどを禁止するというものである。

 国家の成立・成熟に伴い、言論圧迫の度は加速する、のであった?!

《ちょっと一休みして、雑誌・週刊誌の起源などに関する話題を……》

〔コラム3〕雑誌の起源
 雑誌の起源はヨーロッパである。日本より200年も早く、1665年にフランスの法律家ドニ・ド・サロがパリで創刊した『ジュルナール・デ・サヴァン』が最初で、 ヨーロッパで発行された書籍の要約を納めたものであったという。いま世界中で1500万部以上も発行される『リーダーズダイジェスト』の元祖ともいえる。

〔コラム4〕日本で最初の雑誌
 日本で最初の雑誌は、1867年(慶応3年)に柳河春三が創刊した『西洋雑誌』である。 外国の雑誌を模倣した木版刷りの小冊子で、自然科学や発明・歴史、ヨーロッパ文化などを紹介している。 次いで、1873(明治6)年に『明六雑誌』が刊行されている。

〔コラム5〕日本初の週刊誌
 1908(明治41)年11月に発刊の『サンデー』。タブロイド判20ページ、定価は1部20銭、発行はいまの中央区銀座5丁目にあった太平洋通信社、 1915(大正4)年9月5日の266号まで確認されているという。

第2章 年表で見る出版小史(戦前編)

 「第1章 表現の自由と出版規制」の終わりで見たように、近代日本のスタートに呼応して、"言論活動"は盛んとなったが、 規制の強化も迅速だった。
 ここでは、1868年(慶応4・明治1)〜1945年(昭和20)8月15日までの、世相・風俗を含め、日清戦争(1894〜95)、 日露戦争(1904〜05)、第一次世界大戦(1914〜18)、そして第二次世界大戦(1939〜45)という、 四度の戦争をくぐってきた"先輩"日本人のたどってきた歴史を概観しよう。
 《ちなみに、1931(昭和6)年9月18日にはじまった"満州事変"から、45年8月15日の終戦までを「一五年戦争」ともいった。 また、1937(昭和12)年7月7日の盧溝橋事件から終戦までを日中戦争(中国では「抗日戦争」)ともいう》
 近代化への急速な歩みと"マスコミ"の発達は、庶民を目覚めさせる原動力となったが、社会制度の整備と並行して、 さまざまな法規制の整備もなされてきた。
 かつての日本が、どのように形成されてきたか、またそれによって出版はじめ言論機関は、どのように翻弄されてきたか、 先人たちの足跡をたどってみよう。

 <注>文中《夜明け》…とあるのは、星 新一著『夜明けあと』新潮社1991・02からの引用です。 同書は、明治期のさまざまな新聞雑誌から日本の近代化に関する報道を取り出したユニークな編年史であります。
 また、〔発禁〕…の解説は、城 市郎著『定本 発禁本 書物とその周辺』平凡社2004・04によりました。 両書とも、たいへん参考になり、感謝しております。

〔コラム6〕週刊誌に欠かせないアンカーマン
 何人かのデータ原稿を読み、原稿を書く人。毎週のように特集記事を書き続け、その雑誌の売上げを伸ばすなど、その仕事は重要である。
 原稿を読みこなす力と、読者を惹きつけるかの筆力が求められる。長年続ける人もいるが、作家や評論家に転身した人も多い。
 たとえば、出版社系の週刊誌が多く創刊された1950年代後半の、井上光晴(作家)、梶山季之(作家)、草柳大蔵(評論家)、 竹中労(評論家・ルポライター)、種村季弘(評論家)らである。
 中でも草柳や梶山らは、『週刊新潮』『週刊明星』『週刊文春』『女性自身』などで、その号のトップを飾る記事を書いて活躍して、"トップ屋"と呼ばれた。
 扇谷正造が命名したこの言葉が使われ始めたのは58年ごろで、扇谷自身は、『週刊朝日』を100万部の大台に乗せた名編集長でもあった。
 なお、60年には、丹波哲郎主演のテレビドラマ『トップ屋』が放映された。

〔コラム7〕"報道協定"について
 誘拐事件が発生すると、被害者の身の安全を守るため、警視庁あるいは警察庁から新聞協会や民放連、 雑協など報道団体に"報道協定締結の申入れ"があり、報道をしないようにと要望する(取材は可能)。 人命尊重のために、各団体の加盟社は協力し、解除(事件の解決)まで自粛するが、その間、捜査の推移は知らされている。
 また、皇太子妃の決定(93・1・6)まで、過剰取材に懲りた宮内庁の要請を受けて、各団体は"皇太子妃報道に関する自粛"を10か月余に亘り行ったが、 記者クラブに属さない外国通信社のスクープで自動的に解除となり、"自粛"の是非に問題を残した。 なお、現天皇の"皇太子妃決定"の際も似たようなケースがあり、週刊誌の報道に対し、新聞協会が抗議している(⇒58・11)。

〔コラム8〕再録の拒否
 ある出版社が、戦後の世相を映す数十の週刊誌等の記事を、事件、政治、経済、社会、女性などと項目別にまとめ、 "現代世相風俗史"として発行する準備を進めたが、許諾を求めた週刊誌等の発行元からクレームがつき中止となった(90・06)。
 著作権法上だけでなく、掲載時に問題となった記事や、同じ表現でも、時代により人権上問題となる場合があるからである。

明治から敗戦(1868〜1945)までの日本と出版状況

 権力者や社会、そして庶民のさまざまな動きと出版物等の発行・発売の禁止(発禁)、ワイセツおよび"有害図書"に関する規制と抵抗の歴史を見ていこう。
 まず、この章では、明治から敗戦(1868〜1945)までの77年間である。

1.東京遷都、"近代国家"は窮屈な世界に

◇1868(慶応4年・明治1)年
5・16/『中外新聞』、上野彰義隊事件の顛末を、別段中外新聞(EXTRAの訳)と称し発行(号外の初め)
5・18/福地源一郎、『江湖新聞』の「強弱論」で官軍に捕らえられ、発禁・版木没収(言論弾圧の始まり)
5・−/太政官布告により、出版、許可制となる(明治政府による最初の出版規制)
6・8/許可を受けない新聞の発行禁止
7・17/江戸を東京と改称(西の京と同じく重視との意味)
9・8/明治と改元され、一世一元の制に (8・27天皇睦仁、17歳で即位の大礼式)
《この年…3・13江戸城開城/3・14五箇条の御誓文発表/4・−菊の御紋章の私用を禁止 /4・3福沢諭吉が英学塾を築地鉄砲洲から芝新銭座に移し、慶応義塾と改称/6・−横浜で薬湯の男女混浴を禁止 /8・19大阪府で男女混浴を禁止/9・23横浜で立小便が禁止される/12・23富くじ興行が禁止される》

◇1869(明治2)年<注:このころの西暦表記、とくに断りがなければ18XXを意味する>
1・1/洋書販売などの丸屋商社(のちの丸善)が開業(日本最初の株式会社)
1・27/行政官布告81号「図書開板願並納本之件」の公布(納本制度の始まり…「出版物は、行政官に願い出て官許を受け、 できたものを一部納本すべきこと」→出版条例(⇒1948・2・9、国立国会図書館法で現在の納本制度が確立)
2・8/新聞紙印行条例の制定(発行許可制・検閲・政法〈政治のやり方〉批評禁止など)
4・−/一代一号(元号)、布告書にはカナ文字を《「明治ニュース事典」総索引(毎日コミュニケーションズ)(1)巻616頁》 うるう4月(1)巻661頁/人肉の三杯酢(戊辰戦争)(1)巻661頁
5・13/出版条例・同附録(許可制、政治誹謗・風俗壊乱禁止、版権保護など)公布(⇒75・9・3改正)
6・−/本木昌造、長崎に活版伝習所を設立(活字製造の先駆者⇒72・07)
9・18/海軍操練所を東京築地に設置、10・20/陸軍操練所を芝新銭座に設置
《この年…2・22猥褻もの売買の禁止/4・−諸官規則を改正(太政官)/6・17版籍奉還、藩主を知藩事に任命(藩体制解体政策の始まり) /6・29東京・九段に招魂社が創建され、戊辰戦争の戦死者を祀る(⇒79・6・4靖国神社と改称) /7・17京都・東京・大阪の3府以外の府を県と改称/10・−イギリス人フェントン、薩摩藩の依頼で軍楽隊の天皇礼式曲として「君が代」を作曲 /11・−無提灯〈ちょうちん〉の夜行禁止される》

◇1870(明治3)年
1・3/大教宣布(宣教師の任命・思想・宗教の統制策)
1・27/商船に掲げる国旗に「日の丸」を制定布告
7・−/大阪に、聴訴掛・断獄掛(のちの大阪府警察)を設置
8・22/東京府下に中学校を設置。華族以下、一般の入学を許す。洋書教科書使用9・19/平民に姓(氏)の呼称を許可
11・4/明治期のベストセラー筆者・福沢諭吉は、Copyrightを「版権」と訳すなど著作権にも詳しかった。 自費で出した『西洋事情』『世界国尽』『学問のすすめ』などの海賊版まで出たため、たまりかねて大阪府知事に取締要望書を出す
12・8/子安峻ら、最初の日刊紙『横浜毎日新聞』を創刊
《この年…最初の写真画報『極東(Far East)』創刊/6・9東京府で、男女混浴が禁止される /8・13子女売買の禁止/9・−官吏の出勤時刻を午前9時と決める/10・2常備兵員制の制定(陸軍はフランス式、海軍はイギリス式を採用)》

◇1871(明治4)年
4・−/お雇い外人の保護(1)巻95頁
5・−/木戸孝允、『新聞雑誌』を創刊
8・4/(7・18文部省が設置され)太政官布告「出版免許願ノ儀是迄大史局ヘ差出来候処自今文部省ヘ可差出事」が公布された (⇒73年内務省の設置)
⇒75・6・28太政官布告「衛生准刻事務ヲ内務省ノ主管トス」により、"衛生""准刻(準刻)"は、内務省に移り、 新聞・書籍などの取締り・思想統制などは、敗戦直後まで70年余、内務省が行う
10・23/東京で邏卒(巡査の旧称)3,000人を新採用(⇒74・1・15東京警視庁)
10・28/大阪府日報の創刊、このころ府県庁支援の新聞が次々と刊行される
12・5/新聞紙の定額郵送始まる
12・26/司法機関として最初の東京裁判所設置
《この年…4・5戸籍法が制定され、国民を華族・士族・卒・神官・僧侶・平民に区分(1945年、身分制度は廃止) /4・−新吉原に黴毒病院設立/7・14廃藩置県の断行/7・−旅行の自由が許可される/8・−官庁で椅子の使用が始まる /9・2官吏月給制の実施/9・9ドン(正午号砲の制)を制定/10・12新貨条例制定、円・銭・厘を発行 /11・3高輪に屠牛場が許可/11・25府県学校が文部省管轄となる/11・29裸体の通行禁止に/11・−横浜に共同便所を設置 /12・−天皇の肉食の自由が認められる》

◇1872(明治5)年
2・21/『東京日日新聞』創刊(のちの『毎日新聞』1943・1・1)
4・1/裸体、混浴、春画、性具、刺青厳禁
6・10/『郵便報知新聞』創刊
6・15/鉄道停車場内で新聞紙の販売許可される
7・1/全国に郵便施行(⇒71・1・24郵便法布告、東京―京都―大阪間で開始)
7・14/最初の求人広告が出る(乳母雇い入れの広告)
7・−/本木昌造、神田に印刷工場を創立(⇒69・6・−長崎活版伝習所設立)
8・1/わが国初の官立図書館「書籍館〈しょじゃくかん〉」が湯島聖堂内に開館⇒74‥浅草文庫(浅草) ⇒75‥元に戻り東京書籍館と改称⇒77‥(図書を東京府に移管し)東京府書籍館となり⇒80‥(文部省所管に)東京図書館と改称 ⇒85;(湯島から上野公園へ)⇒96‥帝国図書館に昇格、唯一の国立図書館に⇒戦後1949‥国立国会図書館支部上野図書館に ⇒2002・5・5子ども向けを充実し「国立国会図書館支部上野図書館・国際子ども図書館」となる
10・17/文部省教科書編成掛を置き、編集に着手する
11・−/東京に新聞縦覧所開設多し
《この年…酒造法が制定され、民間の造酒が不可能となる/6尺5寸を6尺とす(尺貫法)(1)巻96頁/ルーデサック(コンドームのこと)発売される /子ども芝居始まる/1・29全国戸籍調査実施。総人口は3,311万825人/3・29身体に入れ墨禁止の布告 /4・1華士族の厄介者を平民に移行(戸籍)/4・5女子の断髪が禁止される/4・24日曜休暇制が決められる /5・18取締組を邏卒と改称/7・−ウサギを弄ぶことが流行(9・5ウサギ市場の禁止)/8・31農民間の身分制を禁じ、職業の自由が許可される》
〔明治の出版文化は、福沢諭吉から始まったといわれる。福沢は、著者兼出版者であり、しかも印刷・製本・販売までの出版活動をした。 福沢本があまりに売れるので、書林組合(書物問屋、本屋仲間)からクレームがついた。そのため、仲間に入っていなかった福沢は、 東京書物問屋仲間に加入したという〕

◇1873(明治6)年
1・10/前年公布された徴兵令発令、常備軍制度確立(20歳から、徴兵開始)
4・10/官吏が公務・外交を妨げる内容を新聞に掲載することを禁止する
5・15/図書縦覧所「集書院」が開設される
10・19/新聞紙条目を公布(発行許可制、国体誹謗・政法批評禁止など規定)
11・10/内務省が設置され、行政・警察権の中心に。初代内務卿は大久保利通
《この年…1・1陽暦の実施(明治5年までの日付は陰暦で、同年は12月2日で終わる。 太陽暦が採用され、12月3日を明治6年1月1日とした)/1・7官庁の年末・年始の休暇決まる /3・3皇太后・皇后、黛・鉄漿の廃止/3・20天皇初めて断髪/4・−天皇の御名を使用許可 /9・13ストーブの広告が出る/10・14祝祭日制定される(神武紀元祝日を2月11日に変更) /11・3天長節から国旗を立てることに》

◇1874(明治7)年
1・15/内務省に東京警視庁の設置(1・18警察官の制服が定められる)
3・−/森有礼・西周・福沢諭吉ら『明六雑誌』創刊。初のローマ字論争が起こる
4・13/東京日日新聞記者岸田吟香、台湾征討に従軍
8・24/浅草文庫開館(75・11・−浅草文庫、公私の閲覧を許可)
9・23/『朝野新聞』創刊(主幹成島柳北、論説欄を常設)
11・17/島崎正樹(藤村の父)、御輦〈おれん、天皇の車〉に向かい扇を投げ入れ捕われる
11・2/日就社(のちの読売新聞社)『読売新聞』創刊
《この年…1・12板垣退助ら「民撰議院設立建白書」議会に提出/3・12初めて競陣遊戯会(陸上競技運動会)が海軍兵学寮で行われる /4・10御真影(天皇・皇后の写真の尊称)の売買並びに個人の所有が禁止に/8・3幼児の越後獅子舞の使用が禁止に /8・5一等巡査に限り帯剣を許可/9・20外国人相手の私娼、横浜に現れる》

◇1875(明治8)年
1・12/イタリア人キヨソネ来日(わが国の印刷術の発展に貢献した印刷界の恩人)
1・25/金原医籍店(のちの金原出版)創業(医学書輸入)、丸善に次ぐ古い出版社
2・13/苗字は必ずつけるよう、布告が出る(平民苗字必称義務令)
3・−/行政規則公布される(警察)(1)巻184頁/屯田憲兵が新設される(1)巻529頁
4・−/過去の出版も届出なければ保護なし(出版条例)
4・−/『平仮名絵入新聞』創刊
4・−/入獄中の者の写真をとり、人相書を廃止
6・28/新聞紙条例と讒謗律〈ざんぼうりつ〉の発布〔発行許可制、持主・編集人・印刷人等の法的責任、騒乱煽起・成法誹毀〈ひき〉の論説取締りなど。 高揚してきた自由民権運動に対し、明治政府が反撃、弾圧を加えるため〕
7・12/(明治6年創業の)抄紙会社(のちの王子製紙)、西洋紙の製造を始める
8・7/末広鉄腸、新聞紙条例批判の記事(投書)を『曙新聞』に掲載して処罰される
9・3/出版条例改正、罰則制定(発行者が直接届け、版権確保)⇒83・6・29改正
11・1/仮名垣魯文『仮名読新聞』を創刊
11・−/福沢諭吉ら、出版への圧力に抗議して、『明六雑誌』を自主廃刊
《この年…錦絵新聞の流行/1・8小学校年齢、満6歳から14歳までとなる/4・10勲一等から八等までの賞牌(翌年、勲章と改称)を制定 /4・−元老院と大審院の設置(立憲政体)/4・−国産マッチの製造始まる》
《夜明け…著作権についての法令、発布。ただし、所管は文部省より内務省に移る /新聞紙条例に悩む各社、共同して内務省へ質問書》

◇1876(明治9)年
1・27/警視庁、売淫罰則を制定
3・15/植木枝盛、「民権自由論」などで専制政府を攻撃、筆禍事件となり逮捕
3・−/自由民権運動に弾圧ますます激しくなる(言論弾圧)
3・25/大阪に、書籍館〈しょじゃくかん〉が設置される(⇒72・8・1)
7・5/国安妨害記事を掲載した新聞・雑誌について内務省で発売禁止等を布告
8・31/『柳橋新誌』(成島柳北)、『東京新繁昌記』(服部誠)が発売禁止に
10・9/秀英舎が開業(のちの大日本印刷)、木版から活版印刷に
11・25/福沢諭吉『学問のすすめ』完結17編刊、初版・重版併せ25万部出版
《この年…3・12官庁の日曜定休と土曜半休が定められる(なお、振替休日は1973・4・6に立法化) /4・1男子満20歳を丁年(成年)と定める/4・19アメリカ博覧会に参加/5・17上野公園が開園 /6・−神社仏堂を許可なく建設することを禁止/8・21府県数3府35県に統合/8・27高橋お伝、商人後藤吉蔵を色仕掛けで殺害し、 所持金を奪って逃走、のち逮捕/8・29徴兵を嫌い、一家3人が心中/9・6元老院に憲法起草を命じる詔勅が出される /9・13府県裁判所を地方裁判所と改称》
《夜明け…条例のため、新聞記事も○○論など、伏字がふえた。それに便乗し「○○亭」という寄席ができた(郵便報知)》

◇1877(明治10)年
2・10/有史閣(のちの有斐閣)創業、古書店から法律専門書出版社に発展
2・15/西南戦争始まる。西郷隆盛らは兵1万5,000人を率いて、政府尋問と称し東上。2・22/福地源一郎・犬養毅、西南戦争の報道で話題に
3・24/『団々珍聞〈まるまるちんぶん〉』創刊、以後30年間「マルチン」の愛称で親しまれる
3・−/少年の投稿専門誌『頴才新誌』創刊
7・26/『東洋奇事新報』(弘義社)、納本を怠り発禁となる
10・12/『東京毎夕新聞』創刊(夕刊紙の始まり)
《この年…1・1タバコ課税の実施/1・11神祇を統括する教部省と東京警視庁を廃止 /2・10紙鳶あげ・羽根つき・独楽遊び、交通妨害になると禁止/3・28廃刀令の公布 /4・−大阪に、小学校の夜学開設される/6・30初の交通規則制定、泥酔者の馬車運転を禁止 /8・3巡査へ暑気払い薬代として10銭ずつ下付(ボーナスの初め)》

◇1878(明治11)年
2・−/春陽堂の創業(文芸書出版、春陽堂文庫などを刊行)
3・11/鉄道局、下等客車内での広告掲示を許可
3・24/『団々珍聞』、黒田清隆の醜聞を風刺して発行停止に
4・1/新聞囲碁欄の始まり(『郵便報知』)
4・−/兵隊を甲乙に分けて対抗運動会(2)巻682頁
5・15/『朝野新聞』、大久保利通暗殺の島田らの斬奸状を掲げ7日間の発行停止に
7・12/政治結社・集会に警官の立ち会いや禁止する権限を定める
《この年…自由民権運動盛ん/1・15少女12歳で出産、母親に/8・−夜間興行、新富座で初めて行われる /11・2東京府、15区6郡を定める》
《夜明け…鉛筆、国産化。輸入も減るだろう(朝野)/宮内省と工部省に、電話が通じる(朝野)。 電話機の国産化に成功した人あり。舶来品に劣らずと(東京曙)》

◇1879(明治12)年
1・−/東京・大阪で『朝日新聞』創刊、『東京経済雑誌』(経済雑誌社)創刊
4・−/小菅の監獄を東京集治監と改称
6・4/東京招魂社を別格官幣社とし、靖国神社と改称⇒69・6・29
6・−/東京の遊技場統計調べ…煙草卸人382、同小売人2,548、飲食店1,262、玉突き場53、楊弓場227、室内射的場17、 投扇競場3、吹き矢場6、待合茶屋247、遊船宿70、理髪店2,397、浴場1,051、人寄せ場190(東京府統計表)
10・−/『嚶鳴雑誌』創刊(求友社)
12・10/印刷局、当用日記帳の刊行を始める
12・25/日本人によるクリスマスが横浜海岸教会で行われる
《この年…演説会盛んに行われる/4・−清国に先手を打って置県実施(沖縄県設置) /4・−人民と戸主の約定証(2)巻242頁/4・−女子も徴兵の妄説に7歳の娘が丸髷お歯黒(2)巻450頁/5・9官吏の政談禁止される /8・−ウサギを弄ぶこと再び流行》
《夜明け…姫路の私塾でルソーの「民約論」の講義をした男。警察官に中止させられる。 この本は一昨年に、政府の許可で翻訳が出版されたものだと抗弁。読むのはいいが、教えるのはいかんと、妙な命令(朝野)》

◇1880(明治13)年
2・−/『交詢雑誌』創刊(交詢社)
4・5/集会条例が公布される(自由民権運動を弾圧、集会・結社の規制)
7・17/刑法・治罪法の制定。斬首を廃止(⇒82・1・1施行)
7・31/『団々珍聞』、政府批判の挿絵(戯画)載せ、発禁となる
9・−/『信濃毎日新報』創刊
10・22/政治的取締りのほか、風俗壊乱の雑誌も発禁処分と定める
《この年…憲法制定手続きの論議が活発に/ヘナチョコという語が流行/紙巻煙草が発売される /2・12陸軍の下士官、学校生徒の演説講演会などの聴聞を禁止/3・30村田銃、軍用銃に指定/4・24皇室紋章の乱用禁止 /5・−結婚紹介所、大阪に開業/10・25「君が代」の楽譜改訂される/11・−京都で身投げ・自殺者増加》
《夜明け…翻訳物あきられ、漢字の本が売れるようになった。出版する者がふえる(有喜世新聞)》

◇1881(明治14)年
2・2/新聞紙・雑誌などを内務省警保局へ納付方令達、検閲の強化
2・18/『東洋自由新聞』創刊
4・8/三省堂が創業。日本で初めての「日本百科大辞典」など刊行
10・28/田鎖綱紀、日本語の速記術を発明。講習会を開く
11・−/君が代・蝶々・蛍(蛍の光)などを収めた『小学唱歌集』初編を刊行
《この年…1・−警察関係の整備盛んに/1・−記念祭・記念碑・記念盃などの語が流行 /4・−東京に12か所の憲兵屯所を新設/4・−交番、統計2,832人(2)巻227頁/4・−自由・民権などを凧に託して凧揚げ大会 /8・7〜9・6まで東京で31℃以上の日31日間続く/10・−地球壊滅の説が流布される/12・7紅綬・緑綬・藍綬の褒章が定められる
《夜明け…官吏と新聞記者の交際がふえ、好ましくない風潮だ(朝野)》

◇1882(明治15)年
1・1/刑法・治罪法の施行(⇒80・7・17制定)。讒謗律を廃止
3・1/『時事新報』創刊(主宰福沢諭吉)
5・−/人物写真はその人の許可なく販売するを禁止
6・1/博笑戯墨(たわれごと)という漫画欄、『読売新聞』に登場
12・16/郵便条例の制定(翌1・1施行)により、第3種の規定が設けられ、雑誌(定期刊行物)は他より低料金に
《この年…1・4軍人勅諭が頒布される/3・20上野博物館・動物園が開園/3・−他人に預けるのは違法(実印) /5・24富くじの売買、再度禁止に⇒68・12・23》
《夜明け…この年、イタリアの作家コローディ『ピノキオ』を発表》

◇1883(明治16)年
1・1/『栃木新聞』、不敬罪で発禁
〔不敬罪…天皇、太皇太后、皇太后、皇后、皇太子、皇太孫、皇族、神宮(伊勢神宮・明治神宮・香取神宮・鹿島神宮・橿原神宮など) または皇陵(天皇の墳墓)に対し、不敬(敬意を払わず、礼儀を失する行為)をすることにより成立。 皇室の尊厳を侵害する行為に該当すれば、方法や程度、公然か非公然かに関わらず適用された(HP「用語解説―法律―No.6」より)〕⇒1947・11・15廃止
1・22/『絵入朝野新聞』創刊
4・1/新聞紙条例の改正。保証金納付制度、禁止・停止処分を拡大
5・−/中江兆民ら、東洋出版会社を設立
6・29/出版条例一部改正(実質的な検閲制への道を開き、規制強化⇒93・4・14)
7・2/『官報』の創刊
9・13/川上音二郎、集会条例違反で1年間政治演説の禁止に
10・27/桃川国栄、福島事件を寄席で講じ、官吏侮辱罪で拘引される(82・11・28、道路建設で紛糾する福島県で、 数千人が工事中止と弾圧抗議のため警察署に押し掛け、警察官と衝突した事件)
《この年…「かなの会」作られる/2・17浴場での政談演説が始まる/3・1天気図が作成され、「低気圧」の語が誕生 /4・−やはり長男は免役(徴兵)(3)巻502頁/4・−日本人名義の営業を禁止(外国人)(3)巻147頁/10・27東大生が暴れて、147人が退学処分に》
《夜明け…悪く書かれた者の代理だと称し、新聞社を「告訴する、金で解決か」と、ゆする者がふえ、連絡所も出来た(郵便報知)》

◇1884(明治17)年
6・−/菊亭香水(佐藤蔵太郎)の『惨風悲雨 世路日記』刊行(明治末年までに数十万部のベストセラーに)
9・25/『今日新聞』創刊(主筆仮名垣魯文、のち『都新聞』⇒『東京新聞』)
10・30/自由民権運動が激化し、埼玉県の農民ら蜂起、鎮圧される(秩父事件)
12・−/岩崎弥太郎、モデルになった『今浄海六波羅譚』が出回るのを恐れて買占
《この年…6・15わが国最初の女性専門誌『女学新誌』(近藤賢三編集)が修正社から発行⇒翌85・7・20『女学雑誌』に /4・16海水浴場、横浜海岸通りで開業/4・−軍法会議と監獄所設置(海軍軍法会議条例)/4・−軍人・軍属の総数12万3,000余人に(陸軍) /7・7華族令公布/9・−荻野吟子、試験に合格、女医第1号》
《夜明け…東大前の文房具店。洋行帰りの教授のすすめで、大学ノートを製造、販売 /丸善で、万年筆を輸入し、発売。少し前、ニューヨークのウォーターマンという保険業の人が発明した》

◇1885(明治18)年
1・1/『東京日日新聞』、朝・夕刊制を初めて実施、無休刊制も導入
1・−/広目屋(広告業)が、楽隊を雇って宣伝に用いることを始める
5・2/わが国最初の純文芸雑誌『我楽多文庫』、尾崎紅葉・山田美妙らにより創刊
5・23/内務省達で政府は、新聞が他の新聞(欧文を除く)に掲載されている論説を10日以内に転載する時は、必ず原新聞の持主または社主の承認を要する旨を通達
7・20/『女学雑誌』(近藤賢三編集・万春堂発行)、女性のめざめと社会的地位の向上をめざした雑誌として登場、のちの文学界に大きな影響を与える (この雑誌から、93・01『文学界』が誕生)⇒84・6・15『女学新誌』
12・22/太政官制度を廃止し、内閣制を実施(初代総理大臣に伊藤博文就任)
《この年…1・17「ローマ字会」設立/2・7軍隊と行きあった場合は右側通行となる(右肩の鉄砲との衝突を避けるため) /4・−隅田川の一銭蒸気始まる/5・16シェークスピア『ヴェニスの商人』、大阪の戎座で本邦初演/10・−神田に貸本屋開業》
《夜明け…浅草でゴム印を作るのに成功した人。軽くていいと、有名な書家、画家から注文あり/筆の軸にインキを入れる、字を書く道具を作った者あり。売れるかな(京浜毎日)》

◇1886(明治19)年
2・24/法律命令の格式を制定(公文式)
2・26/主要各省の官制を公布(各大臣の職務を規定)
4・3/改進党大会で地方自治・言論集会の自由の2件を政府に建議することを決議
4・9/小学校令・中学校令・師範学校令・諸学校通則の公布
4・10/教科書の採用は認可制を改め、小学校令・中学校令により検定制となる
4・29/高等師範学校・高等中学校・東京商業学校各官制の公布
12・22/小宮山桂介(天香)、翻訳本の出版に際し版元の鳳文館館主との契約書に「一部拾銭」(印税の始まり)
《この年…民権数え歌など流行/4・−メートル法条約に加入を公布(3)巻755頁/4・−判任官の月俸(俸給)(3)巻714頁 /7・13東経135度の子午線時を標準時と定める》
《夜明け…不便な地方では官報のとどくのがおそくて、法令の成立日とずれが生じる(東京日日)》

◇1887(明治20)年
2・15/民友社創業、『国民之友』創刊(主宰徳富蘇峰)
5・12/『女学雑誌』、仮装舞踏会における凌辱事件を痛論し、発禁となる(4・20伊藤博文首相が首相官邸で仮装舞踏会開催、西欧化迎合への非難高まる)
6・15/大橋佐平、博文館創業。「日本大家論集」刊行。出版・印刷・取次・広告業に進出
11・10/屋外での集会・示威行進は3日前に届け出ることに
12・25/保安条例公布、尾崎行雄・中江兆民ら294人、宮城〈皇居のこと〉の三里外に退去命令
12・28/勅令で、新聞紙条例(発行届出制に)・出版条例改正(⇒93・4・14)公布、版権条例(学術雑誌の版権登録を許すことに)・脚本楽譜条例公布
《この年…「国益」という文字が流行(マッチの製造にも、牛肉店にもこの2字がつく)/1・11接吻の奨励、新聞に出る /4・−横浜居住の外国人は約3,900人(居留地)/4・−大阪では囚人に石を背負わせ歩かせる》
《夜明け…ナショナル・リーダーの海賊版を各社が出した。アメリカの出版社より抗議があり、役所は関係者を集め版権を話し「この出版社名を削除しろ」と命じた(郵便報知) /政府の官報はわかりにくく、地方官も困るし、反対論も出やすい。そこで説明欄を作って、補足の文をつける(朝野)》

◇1888(明治21)年
1・4/時事通信社の創立
1・−/一字名の雑誌はやる(「文」「学」「友」「情」「法」など)
4・−/市制及び町村制を公布(市町村制)
6・18/雑誌『日本人』、高島炭鉱の批判報道を開始(坑夫になりすました者の手記が掲載され、世に知られる。 長崎の同炭鉱の、悲惨な労働条件が問題となる)
《この年…川上音二郎、オッペケペー節で人気を博す/「帝国」の語が流行/4・13可否茶館(喫茶店)、上野に開業 /7・−神奈川県、海水浴場の男女混泳を区分け》
《夜明け…米国で発行の邦字新聞「世界の魁」は、治安を乱す内容があり、輸入禁止(郵便報知)》

◇1889(明治22)年
1・−/『国民之友』掲載の裸体が、話題を呼ぶ(発禁、裸美人を口絵にした最初)
2・10/『風俗画報』創刊
2・11/大日本帝国憲法(欽定憲法・明治憲法)の発布 (翌日、森有礼刺殺される)
2・11/皇室典範の制定、議院法・貴族院令・衆議院議員選挙法の公布
2・11/大阪『朝日新聞』、憲法全文を発布当日、号外として速報
2・11/新聞『日本』創刊(社長陸羯南)
2・23/『女学雑誌』、皇室典範を批判する
2・−/『頓智協会雑誌』、憲法発布に合わせ、骸骨の寓意画入りの「頓智研法発布」論説を掲げ、 不敬罪で発禁(同誌創刊の宮武外骨〈20歳〉、収監される)
2・−/全国で、憲法発布に関する錦絵出版が盛んに
6・−/新聞に講談の連載が流行
11・15/内務省告示が出され、裸体画の発売禁止される
《この年…「的」の字が大流行/1・−徴兵令改正、1年志願兵の制始まる/2・−?月堂、憲法オコシを発売 /3・−信書の秘密保護を訓諭(逓信省)/3・−憲兵条例を改正公布(憲兵)/7・28入谷の朝顔市繁盛 /7・28熊本大地震(死傷者94人)》
《夜明け…土地を国民に平等に分配せよとの主張者。過激だと、発言禁止を命じられる(時事) /「ウォール・ストリート・ジャーナル」が創刊された》

◇1890(明治23)年
1・1/『東京朝日新聞』、付録添付を始める
2・1/徳富蘇峰、『国民新聞』創刊
4・1/外国人の不敬記事に打つ手なし(治外法権)
4・−/民・商法はわが国の慣習に反す(法典問題)(4)巻678頁
7・1/第一回衆議院選挙実施、有権者45万2,474人、人口4,007万2,020人
10・30/教育勅語を発布
《この年…やっつけろ節、法界節、愉快節など流行/4・1第3回内国勧業博覧会、上野公園で開催(〜7・31)電車の試運転を公開 /4・1傍聴券の渡し方をどうするか(帝国議会)/5・−喫茶店、次第にふえる/11・−少年の間に喫煙の風起こる》
《夜明け…新聞用達会社が設立される。通信社と広告代理店を兼ねたもの/森鴎外『舞姫』を発表。 エリスという女性を登場させ、話題性をねらう/電柱への広告。産業振興にもなり、許可を受ければ、やってもよい(時事)》

◇1891(明治24)年
1・9/内村鑑三の教育勅語不敬事件起こる
4・−/内閣会議に速記者(4)巻571頁
5・16/新聞・雑誌、文書図書の外交記事に関し、内務大臣に検閲・禁止権が
6・23/『国民之友』にメーデーの紹介記事が載る
7・−/欧字新聞の検閲始まる
《この年…3・−墓石は差し押さえの対象となるか(民法)(4)巻717頁/4・−親しい医師に頼み、徴兵忌避はやる /4・−生存の噂が天皇のお耳にも(西郷隆盛)(4)巻240頁》
《夜明け…明治美術会で「裸体画と風紀問題」について討論。その二枚の絵は、いずれも幼い男の子の草刈りと、牛にまたがった姿(東日)》

◇1892(明治25)年
1・28/第2回総選挙を前に、勅令で予戒令を定める(1914・1・21廃止)
3・19/東京府、各学校に御真影および教育勅語を校内一室の場所に奉置を命ずる
4・1/改正小学校令の実施
11・1/『万朝報』(よろずちょうほう)創刊(朝報社、社主黒岩涙香)
11・11/『国民新聞』、「最暗黒の東京」を連載
《この年…4・−シベリア横断の大旅行を計画(福島安正)(4)巻644頁/7・3大磯海水浴場開き行われる /12・3皇族の肖像の販売黙許される》
《夜明け…政府、予戒令を公布。粗暴の言論、集会の妨害などを禁ず(官報)/衆議院、侮辱する記事を掲載したと、東京日日新聞の告訴を決議する /議員たち、大臣や役所の悪口は言いたいほうだい。自分が言われると告訴とは、なんだ(東京日日)》

1893(明治26)年
1・8/全国新聞記者同盟、「新聞紙条例」改正運動開始
2・1/御真影・教育勅語の奉置方を各区郡役所および学校に布達
3・4/弁護士法が公布される
4・14/出版条例を廃止し出版法公布、規制強化(⇒87・12・28改正)/版権法公布(=出版権…著作物を複製・発売する権利)
〔出版法:基本的には、出版条例を踏襲するが、出版物の発行要件…出版にあたっては発行日から到達すべき日数を除いて3日前に内務省へ2部納本すること /出版届けを出すこと/出版物の末尾に発行者・印刷者の氏名・住所を記載することなど。違反した場合は、執筆者・発行者の処罰のほか、 出版物・紙型などの没収まで及ぶ〕
8・12/文部省告示、「君が代」を儀式用唱歌に指定する
10・26/『二六新報』創刊(社主秋山定輔)
10・−/牧師田村直臣の『The Japanese Bride』(日本の花嫁)、従来の家族制度や結婚観を非難したため発禁となる
《この年…1・31日比谷公園の開園/8・−全国に赤痢が流行/自殺者調べ(1887(明治20)年5,823人、88年5,256人、89年5,852人、 90年7,479人、91年7,499人、92年7,240人)》
《夜明け…東京弁護士会の創立。予想どおり、発言者が多く、大声ばかりの混乱の会議(東京日日) /文学の分野が不振だというが、さかんだった時期などない。これからの問題だ(毎日)》

2.日清・日露戦争に勝ち、国民も"一等国"気分になるが…

◇1894(明治27)年
4・2/ロンドンで第1回日英条約改正委員会を開く
5・−/『西鶴全集』(博文館刊)など発禁となる
7・20/志賀重昂らの全国同盟記者会が解散
8・1/朝鮮出兵で対立していた清国に宣戦布告。戦時体制に入る(日清戦争勃発)
8・25/『日清戦争実記』創刊、写真版を多用して大評判に
8・29/文部省、体育の奨励に関して訓令を発する(小学校の運動会など盛んに)
8・31/川上一座、浅草座で『壮絶快絶日清戦争』を上演
9・−/絵草紙屋の店先に戦争の画が並び、玩具屋にはサーベル・兵隊帽・ラッパなどが並べられた /絵草紙も新聞紙、書籍同様に検閲を受けることに
10・5/月刊の『汽車汽船・旅行案内』第1号が発行される(時刻表定期刊行の始まり)
《この年…4・−金玉均の暗殺(5)巻…頁/8・−従軍看護婦が現われる/10・−「金鵄勲章受合い」「日本兵」など流行語に /11・26慶応義塾大学生、旅順陥落を祝ってカンテラ行列を行なう/11・−上野・不忍池畔で、戦勝祝賀会が開かれる》

◇1895(明治28)年
1・−/『太陽』、『少年世界』(博文館)創刊
1・−/『小国民』、手旗信号の個所が治安妨害の理由で発禁に(11月『少国民』に)
4・1/黒田清輝の「朝粧」、裸体画として騒がれる。京都で開かれた第4回内国勧業博覧会の美術展に出品
4・−/卒業前の生徒も採用(日清戦争)(5)巻593頁
10・6/博報堂の創立、広告業を始め、『太陽』などの雑誌広告で成功
11・15/『東洋経済新報』創刊
〔発禁〕小栗風葉『寝白粉』(博文館「文芸倶楽部」)。兄妹の近親相姦、部落問題に立ち入ったため
《この年…鉄砲玩具の連発銃の発明/玩具空気ラッパの製作/男のイガグリ頭が流行、バリカンが売れる /8・−神田小川町にローラースケート場(車滑り場)、現れる》
《夜明け…屈辱外交を批判の演説会。どの弁士の発言も中止を命じられる。詔勅を読みはじめても中止となる(日本) /かつては岩倉様など敬称をつけたが、最近は首相を呼び捨てにする(経済雑誌) /この年。米国。ニューヨークにピザの店が出現。ケロッグがコーンフレークを製造。ジレットがかみそりの薄刃を製造。 コダック社が小型カメラを発売。ハーストが各地の新聞を買収》

◇1896(明治29)年
4・−/低額出版物に重税となる(登録税法)
7・10/新声社(新潮社の前身)の創業、文芸出版をめざす
11・14/雑誌『二十六世紀』、土方宮内大臣の行状を攻撃して発行禁止となる。論文転載の新聞『日本』、批判を支持した『万朝報』『国民新聞』なども発禁に
《この年…3・末/酒造税法・営業税法・葉煙草専売法などが公布され、陸軍平時編成を改め近衛および第1〜第12師団が設置される /1895年末まで都市の人口…東京134万2,152人、大阪49万人、京都33万9,896人、名古屋20万9,270人》
《夜明け…特許法を施行して十年。出願は一万に達したが、くだらないものばかり(時事) /正岡子規、ベースボールの解説文を連載(日本)》

◇1897(明治30)年
1・1/読売新聞に尾崎紅葉の『金色夜叉』の連載始まる。大変な話題となる
3・22/『The Japan Times』創刊、日本人による最初の英字新聞
3・22/新聞紙条例一部改正法公布(10・1実施、皇室の尊厳に関する取締りの強化)
6・10/大日本実業学会(のちの実業之日本社)創業、『実業之日本』創刊
8・29/島崎藤村の第一詩集『若菜集』(春陽堂)発行、官能や恋愛賛美などを謳いあげ、多くの歌人や詩人に影響を与える
12・1/片山潜、『労働世界』創刊
《この年…4・−ハワイでまたも上陸拒否(移民)(6)巻34,35頁/活動写真登場/10・13文部省、教員の政談を厳禁》
《夜明け…千坂みつ子の公判。千五百人が傍聴券を求めて押し合い、けが人が出た(毎日) <前年の『時事』に、貴族院議員で某県知事の娘、千坂みつ子。美人、頭よく、英語たくみ。金づかいが派手で、離婚となる。 男をあさり、詐欺をやり、そのあげくつかまる。34歳>とある》

◇1898(明治31)年
2・11/『神戸新聞』創刊
5・25/後藤宙外、『新著月刊』挿入の裸体画告訴される(5・30無罪に)
7・16/家制度を中心とする明治「民法」施行、婚姻年齢は男17歳、女15歳以上
12・1/羽仁もと子、報知新聞社に入社、『報知新聞』の編集者に(初の女性記者)
12・28/天皇・皇后の肖像の販売禁止される
《この年…2・28全国銀行数1,636、資本金総額3億3,474万4,230円に達す/3・20浅草パノラマ館開館/3・27上野パノラマ館開館 /4・−兵士の副食費一日4銭5厘とは…(陸軍)》
《夜明け…男どうしの性行為は犯罪とみなす/政府はなにを質問されても「ただいま調査中」ですます。便利な言葉だ(東朝)》

◇1899(明治32)年
3・4/著作権法の公布(⇒69・5・13出版条例⇒87・12・28版権条例⇒93・4・14版権法⇒著作権法⇒1970・5・6新・著作権法)
4・1/福沢諭吉、「女大学評論・新女大学」を『時事新報』に発表(旧来の「女大学」の時世遅れを指摘し、新時代女性の在り方を説く)
4・18/日本国、著作権に関する国際条約「文学的及び芸術的著作物の保護に関するベルヌ条約」に加盟 (無方式主義のベルヌ条約と登録を著作権発生の条件とする方式主義の国との著作権保護の調整のため⇒1956・1・28万国著作権条約に加盟)
4・21/警官の民衆に対する言葉づかいが粗暴にならぬようにとの訓辞方が出る
6・1/神田の錦輝館で「米西戦争活動大写真」の上映(初のニュース映画)
6・20/国産映画の初興行が東京・歌舞伎座で行われる
《この年…3・−婦人の海外渡航を奨励(外務省)/3・−毛皮製をやめ麻製の背嚢に変える(陸軍省)(6)巻785頁/4・1郵便料金が値上げ。 書状は3銭、はがきは1銭5厘(電信・電話料も値上げ)、電報基本料金は15字までとなる》
《夜明け…ある新聞、全能全知の露国皇帝を、無能無知と誤植。号外で訂正した(東京日日)》

◇1900(明治33)年 <注:これ以降の西暦表記、とくに断りがなければ19XXを意味する>
1・15/明治期最大のベストセラー作家、徳富蘆花の『不如帰』が発行される
2・17/『万朝報』、治安警察法案を批判(3・1『労働世界』も反対表明)
3・7/未成年者の喫煙が禁止に
3・−/保護法に伴う予算問題(アイヌ)(6)巻2頁
4・−/文部省に修身教科書調査委員会の設立
4・−/体面を汚す場合の条例改正(叙位条例)(6)巻292頁
4・29/二六新報、三井財閥の攻撃記事の掲載を始める(5・18内務省から連載停止)
12・6/『明星』(東京新詩社)、一條成美の裸体画のため発売禁止
《この年…3・29/衆議院議員選挙法改正公布。大選挙区・単記無記名投票制、都市を独立選挙区、選挙権を「直接国税10円以上」に引き下げ /4・1小学校の身体検査規定が定められる/小学校令施行規則公布(3学期制)/4・−皇太子(のちの大正天皇)の結婚に際し「皇室婚嫁令」制定(満17歳から)(6)巻196頁 /4・−牛乳の成分、営業の取締規制(6)巻138頁/5・24満18歳未満のものの娼妓となることが禁止。12歳以上の男女混浴が禁止》
《夜明け…上野の展覧会で、黒田清輝作や外国の裸体画の一部を布でおおい、抗議される(国民)》

◇1901(明治34)年
1・4/『文芸倶楽部』(博文館)、内田不知庵の小説『破垣』が内務大臣末松謙松の家庭内部の事情を暴いたものと噂され発売禁止
1・−/「二十世紀」の語流行(100年後、同様に「21世紀」論争が)
5・20/片山潜らの社会民主党の党則を掲載した『毎日新聞』『万朝報』など差押え
7・1/電報通信社の創立(のちの電通)
9・18/時事新報、女工虐待裁判を報道(反虐待の機運、高まる)
《この年…4・3『二六新報』主催の労働者懇親会、東京向島で開かれ、5万人が参加したが、翌年3・13に禁止 /4・16金融恐慌、全国に波及/5・30ペスト予防のため、はだしが禁止される/7・25路上の見世物が禁止》
《夜明け…言文一致の討論。法律も口語体にとの主張が出て、さらに難航(報知) /すぐ廃刊になる雑誌を、三号雑誌と呼ぶ人がふえる。三日坊主からの連想(読売) /元衆院議長、前逓信大臣、星亨が短刀で殺される。各新聞は大悪党よばわりをしておいて、いま才を惜しむ記事。 読書家、私財をたくわえず、など/九州日の出新聞。砲台の記事が、軍機保護法違反とされる。適用第一号(東日) /本をつんどく。この言葉が流行(学燈)》

◇1902(明治35)年
1・1/朝日新聞社社員・松田幾之助創案のルビつき漢字の使用始まる
1・12/『時事新報』、「時事漫画」を掲載し始める
4・−/高等女学校用国語教科書に、四ツ目屋(淫薬淫具を売る両国の店)の図が掲載されて問題となる
4・−/予戒令(市民的自由を制限した法)、明治新報社発行人に適用される
10・17/『読売新聞』に「女学生の堕落問題について」が連載され、話題を呼ぶ
11・8/紫玉会の油画展覧会陳列の裸体画禁止される
12・16/丸善、「エンサイクロペディア・ブリタニカ」の予約募集開始(1,250部を売る)
12・17/教育史上空前の教科書疑獄事件が起こる。教科書の検定・売込みをめぐって発行元と知事・学校長・教育関係者の贈収賄が摘発された
《この年…7・18呉造兵廠3,000人スト/8・14小石川砲兵工廠スト/10・15自転車、下駄を履いて乗ることが禁止され、夜間に灯火を点ずることとなる》
《夜明け…英国の大辞典。日本人の絵として、まだチョンマゲ頭が描かれている(学燈)/代議士・大橋新太郎、財政整理のためにと歳費を辞退(日本)》

◇1903(明治36)年
1・−/東京のペスト、猛威を振るう
3・−/ポイント活字、初めて鋳造される
4・13/小学校令を改正、教科書国定化へ (⇒04・4国定教科書制度の確立)
5・29/教科書疑獄で衆議院、菊池文部大臣と平田農商務大臣の問責決議案を可決
10・1/浅草の電気館、最初の活動写真常設劇場として発足
10・12/『万朝報』が対ロシア主戦論に転じ、内村鑑三、幸徳秋水、堺利彦ら退社
10・30/尾崎紅葉、死去(37歳)。『金色夜叉』は未完となる
11・15/幸徳秋水、堺利彦ら、『週刊平民新聞』(平民社)創刊
11・22/対ロシア強硬論の東西新聞記者大演説会
12・1/『報知新聞』、誤字を発見させる懸賞を行なう
《この年…4・1東京・大阪両市に中央郵便局・中央電信局設置/三色印刷が始まる》
《夜明け…尾崎紅葉、幸田露伴、森鴎外など、文学博士の候補になったが、すぐれた作家に与える性質のものではないので、考慮中(大朝)》
〔ことば〕「いわく不可解」(華厳の滝に投身自殺した一高生、藤村操の遺書)

◇1904(明治37)年
1・−/『朝日新聞』の「天声人語」が始まる
2・8/日本軍、仁川沖、旅順港で奇襲(2・10ロシアに宣戦布告、日露戦争)
2・13/博文館、『日露戦争実記』第1号を刊行、版を重ね人気を呼ぶ
3・13/『平民新聞』、「与露国社会党書」を掲載
4・1/小学校の教科書(修身・国語・地理・歴史)、検定制から国定制に替わる(国定第1期、国語「イエ スシ」)。 以後、思いのままに改定され、国家主義を鮮明にする
8・8/有毒素混入のため、学校生徒の紫色鉛筆の使用禁止される
9・−/与謝野晶子、戦場の弟を案じ、「君死に給ふことなかれ」を『明星』に発表
11・13/週刊『平民新聞』、マルクス・エンゲルスの「共産党宣言」の訳文を掲載、直ちに発禁処分に
《この年…3・−投票の心得(衆議院議員選挙・第9回)/3・−捕虜の給与規定を決める(日露戦争、捕虜) /4・1非常特別税法・貯蓄勧業債券法・煙草専売法・同施行規則公布/4・1上野公園に軍国花見茶屋が設けられる /9・28兵役10年に延長》
《夜明け…戦争記事の新聞に押され、小説や講談本は読まれない(東朝)/新聞は、煙草が専売になり、広告収入が激減して困っている /劇場、寄席、催物などの広告が、都新聞にのるようになる。便利だ。》
〔ことば〕二百三高地(日露戦争で占領した高地になぞらえた髪型)

◇1905(明治38)年
1・3/実業之日本社、『婦人世界』を創刊(09・1新年号から委託販売制度に切換え、雑誌の返品制を採用、大量販売に成功)
4・3/上野の労働者懇親会が解散され、青年会館で社会主義大演説会を挙行
4・15/漫画雑誌『東京パック』(有楽社)創刊、漫画雑誌の先駆
5・1/平民社で、メーデー茶話会を開く
9・1/『国民新聞』を除く有力各紙、ポーツマス条約反対の論説
〔9・5日露戦争の戦後処理としてアメリカ・ポーツマス講和会議で調印。"戦勝国"日本は占領下の樺太の北半分をロシアに返還すること、 賠償金の要求も放棄することを余儀なくされ、裏切られた思いの国民は…〕
9・5/講和反対国民会議、日比谷で開かれ、御用新聞・交番・電車などの焼打ち事件が起こる(以後、各地で講和反対市民大会が開かれる)
9・6/東京に戒厳令。暴動をあおる記事を禁止。危険物の所持を調べる(官報)
9・7/『万朝報』『都新聞』『東京二六新聞』『報知新聞』の4新聞発行停止
9・8/『日本新聞』『人民新聞』の2新聞発行停止
9・9/『東京朝日新聞』『京都朝報』『大阪日報』『大阪朝日新聞』の4新聞発行停止
9・9/東京市内各所に検問所が設置される
9・10/雑誌『直言』が発行停止
9・12/『東京新聞』『山梨民報』の2新聞発行停止
10・6/夏目漱石『吾輩は猫である』(上編)発行、ベストセラーに(雑誌『ホトトギス』に05年から06年に連載、大正年間に13万部以上)
《この年…1・−全国各地で、旅順攻略を祝って祝捷会が行われる/3・−身長4尺9寸5分でも合格(徴兵検査) /4・4早稲田大学野球部が渡米/4・1刑の執行猶予法公布(刑法)/7・−朝鮮料理店、上野に開業8・1/日比谷公園音楽堂が開堂 /日露戦争の損傷…服役免除者と死亡約117,000人、俘虜2,000人、艦船91隻》
《夜明け…神戸でロシア語の新聞を発行。捕虜たちに、世界の事情を知らせるため(東朝) /清国を亡ぼすのは、日本だろう。在日清国の留学生の雑誌に、このような説をのせた者があり、警察が押収した(東朝)。 /東京で国民大会。放火、建物破壊、警官と乱闘、投石、交番襲撃、大暴動(東朝)》
〔ことば〕「天気晴朗なれど波高し」(日本海海戦における、連合艦隊の合言葉)

◇1906(明治39)年
1・−/白木屋、PR雑誌『流行』を発行
3・15/堺利彦、幸徳秋水『社会主義研究』を創刊、「共産党宣言」を掲載し発禁
9・−/『京城日報』(京城日報社)創刊、総監府の邦字機関紙
12・13/東京座で天然色活動写真が興行される
《この年…丙午(ひのえうま)のため、女子の出生届数が減少 (05年71万8,866人、06年67万435人、07年79万9,941人) /10・1東海道線三等急行に和食食堂車が設けられる/4・1陸軍戸山学校・陸軍騎兵実施学校・陸軍夜戦学校・陸軍要塞砲兵射撃学校が開校に /9・1煙草「ゴールデンバット」が発売される)
《夜明け…夏目漱石『坊ちゃん』を発表。/戦勝記念の切手と絵葉書、発売。どこの郵便局も大混雑。気絶者も出る(読売) /その絵葉書、明治三十七八年戦役の、役が没と印刷されていた。交換することに/通信社は多いが、本からの引用、作った事件など、怪しげな記事もある(万朝) /東京で、春画製作所の手入れ。版木五千枚以上を押収。暴利を得ていた(東朝)》

◇1907(明治40)年
1・15/幸徳秋水ら、日刊『平民新聞』(平民社)創刊
1・21/株式市場大暴落、戦後恐慌始まる
1・−/『日本及日本人』創刊(主宰三宅雪嶺)
2・27/『平民新聞』に載った論文「父母を蹴れ」が安寧を乱すものとして執筆者山口孤剣が投獄される
3・14/衆議院で婦人の政治活動参加を承認(3・27貴族院では否決)
3・末/小学校令改正、義務教育は6か年に延長(尋常小学校6年制、高等小学校2年制に延長)
4・13/『平民新聞』発行禁止、翌日、75号で終刊
9・−/『国民新聞』、地方版の初めといわれる千葉版を出す
《この年…進物に果物を用いることが大流行(柿・蜜柑・リンゴ・葡萄・ザボン・梨・バナナなど) /3・−日本大博覧会開設の勅令/4・1樺太庁官制が施行され、樺太の軍政廃止、内務省に移管される /4・1帝国鉄道庁開庁、南満洲鉄道株式会社営業開始/4・−三越呉服店に食堂。すし15銭、食事50銭、洋菓子10銭、日本菓子5銭、 コーヒー・紅茶5銭》
《夜明け…欧米視察より帰った乙竹岩造教授、性教育の必要性について報告(万朝)/地方議会では対立案の投票妨害に、議員を料理屋にとじこめる。 缶詰と称す(万朝)/浅草に新聞閲覧店がふえる。手入れをごまかす、風俗営業。女性を揃え、当初は矢場、飲み屋となり、 いまは新手法(日本)/速記者の若林?蔵、日本文字用のタイプライターを試作。三年がかり(万朝)》

◇1908(明治41)年
1・−/『婦人之友』(婦人之友社)創刊
2・15/川村インキ製造所が設立される(のちの大日本インキ)
3・7/片山潜ら主催の普通選挙権国民大会、開催禁止される
3・−/『東京社会新聞』創刊
6・22/山口孤剣の出獄歓迎会で、赤旗掲げて示威行進の大杉栄・堺利彦ら検挙
11・−/『ベースボール』(野球研究会、博文館発売)創刊
12・18/全国新聞記者同志会が結成され、官僚政治打破・憲政完備を決議
〔発禁〕小栗風葉『恋ざめ』(新聞小説、新潮社から単行本)。中年男に対する未婚の娘の恋を描いたため
《この年…川崎安の『人体美論』(隆文館)、陰毛の無削除により発禁/1・3株式市場大暴落/2・4警察官・消防官の制服制定 /3・15警視庁、"ほおかむり"を禁止/3・22出歯亀事件発生/4・−遺体を解剖、医学に貢献(有栖川宮栽仁親王)(8)巻11頁 /7・−日比谷公園、夜は男女の密会所と化す》
《夜明け…自由主義の作品が流行。風葉や花袋などきわどい。首相が招待したからだ(国民) /公文書の文字。太政官令で墨に限られていたが、インキでも可となる(東朝)》
〔ことば〕出歯亀(のぞきの常習者池田亀太郎が出っ歯だったため)

◇1909(明治42)年
3・−/15新聞に条例違反で罰金刑(新聞紙条例)
4・−合格基準の改正(徴兵)(8)巻505頁
5・6/新聞紙条例の廃止。新聞紙法公布(許可制の復活、発売頒布禁止処分の復活)
 〔田村譲松山大学法文学部教授のHP「新聞紙法」によると、全文45条と付則からなるこの法律ができたキッカケは、 「新聞界出身の議員が、予審記事掲載禁止を規定した新聞紙条例の改正案を衆議院に提出したことにあった。 新聞報道の規制強化を狙った政府が、この提案を逆手にとって新聞紙条例の改悪・再構築し、言論統制の強化を図るため修正したものである」という〕
5・11/『大阪朝日新聞』、新聞紙法を批判し、新聞紙法反対の運動起こる
6・10/幸徳秋水ら『自由思想』を創刊
6・25/映画雑誌『活動写真界』創刊
7・−/森鴎外の「ヰタ・セクスアリス」掲載の『スバル』発売禁止となる
10・−/早稲田大学、新聞研究科を設置
11・−/雄弁会主宰・野間清治「大日本雄弁会」(のちの講談社)を設立
11・−/高等女学校、読書取締りを受ける(『文芸倶楽部』『新小説』『婦人画報』『女子文壇』『東京パック』など閲覧禁止)
〔発禁〕小栗風葉『姉の妹』(「中央公論」6月号)。永井荷風『ふらんす物語』
この42年は、これまで年に4, 5点しかなかった禁止処分が急に頻繁に加えられた時期で、それは新文学の全盛が家族制度や旧習の悪弊を暴いていったためという
《この年…2・11有楽座で子供デーを開催/4・1家禄・賞典禄処分に関する法律公布(7・1施行)/4・−合格基準の改正(徴兵) /6・2両国の国技館が開館/9・9学生の飲酒取締令が出る/12・20鉄道職員(判任官以上)、帯剣肩章となる》
《夜明け…小説の原稿二重売りは耳にするが、評論にも出現。題のみ少し違い、内容は大差なし。 しかも同じ月の雑誌にとは(読売)/贈賄事件の記事をのせるなの命令書を掲載し、新聞社が起訴される(大朝) /娯楽は活動写真が大人気で、館は増える一方。株や米相場の資金も流入(万朝)》
〔ことば〕ハイカラ(襟の高いワイシャツを着ていたハイ・カラーから)

◇1910(明治43)年
2・1/『雄弁』(雄弁会主宰・野間清治)を創刊、初版6,000部が即日売り切れ
3・28/『偐紫田舎源氏』(吉川弘文館)、発売禁止
3・−/小学校の修身教科書に関する訓令(文部省)
4・−/第2期国定教科書の使用開始(「ハタ タコ コマ」)
4・16/予約出版法を公布(内務大臣への届出と保証金が必要。1968・8・1廃止)
5・25/宮下太吉・新村忠雄ら社会主義者を爆発物製造嫌疑で検挙、大逆事件始まる
12・24/堺利彦、売文社を開業(浮世顧問の看板を出す)
〔発禁〕明治40年代は、大逆事件の発生と自然主義文学による文壇制圧の完了、 この二つの事件を反映するかのように文芸作品の発禁の件数が急激に増えた時期で、…岩野泡鳴の『発展』も、 この時期の筆禍代表作で、明治末年に厄を蒙った (『発展』は泡鳴5部作の第1部にあたるもの)。
《この年…輪転謄写印刷機が完成される/8・29政府、韓国併合に関する詔書・宣言を発表。韓国を朝鮮と改め、朝鮮総督府を設置》
《夜明け…小学六年間の教育漢字一三六〇字に増加される(東朝)/武者小路実篤が雑誌『白樺』を創刊。 慶大教授となった永井荷風『三田文学』を創刊/出版界に小型判の文庫が流行/白瀬矗中尉の指揮する、南極探検船が東京を出発(報知) /衆議院の委員会の報道が不正確。その上、記者たちの野次がひどく、今後は、入場と傍聴を禁止(東朝)》

◇1911(明治44)年
2・20/夏目漱石、文部省からの文学博士号授与を断る
4・1/警視庁、指紋法を採用
4・3/冨山房、『新日本』創刊(主幹大隈重信)
8・21/警視庁に特別高等科を設置し、新聞・雑誌の検閲を管掌
8・29/東京朝日、「野球とその害毒」の連載を開始
9・−/平塚雷鳥(らいてう)ら『青鞜』創刊
11・1/フランスの犯罪映画『ジゴマ』、浅草金龍館で公開され、大当たり
《この年…オーバーなどに毛皮などをつけることが流行/講談を筆記した『立川文庫』の創刊(明治・大正の大衆文化を代表するひとつ) /3・1帝国劇場が開場》
《夜明け…天皇、南朝が正統と勅裁。教科書の文を少し手直しする(官報)。南朝を吉野朝に /朝鮮総督府、「京城新報」を発禁に、内地の新聞もすべて押収。言論弾圧だ(大朝) /米国の人口九四〇〇万人。露国一億六七〇〇万人。日本五二〇〇万人。仏三九六〇万人。中国四億二五〇〇万人》
〔ことば〕元始女性は太陽であった(平塚雷鳥らの「青踏」創刊宣言)

◇1912(明治45、大正1)年
2・22/未成年者の飲酒取締り法制化
3・3/長崎県女子師範学校で有夫の女子学生に退学を命じる
7・20/天皇ご不例の旨、官報発表。娯楽場すべて休業、東京株式市場恐慌相場出現
7・30/明治天皇逝去(59歳)、「大正」と改元
7・30/主要新聞、天皇死亡のため全ページを黒枠で囲む(〜9・17)
9・10/日本活動写真株式会社の創立(初めての映画会社)
10・−/映画『ジゴマ』上映禁止される
12・13/東京の新聞・雑誌記者、弁護士ら憲政作振会を組織、二個師団増設に反対
《この年…1・−東京市の人口162万人(うち地方出身者は83万人)/1・31中野・昌平橋間に婦人専用車の運転開始 /3・−東京の自転車数;市部18,901台、郡部13,161台、自動車数;市部262台、郡部37台 /3・末〜4・5呉海軍工廠で、2,500人が同盟罷業の実力行使を行う》
《夜明け…美濃部達吉博士「『憲法講話』を刊行。天皇機関説をとなえる /古本屋の主人の嘆き。十年前の学生は、本を買ったが、いまは着るものが優先(東朝) /ロシアで日刊の新聞「プラウダ」が創刊される。共産主義で、豊かな未来を/薬の看板や広告の誇大宣伝を禁止。 ニキビ・発毛・性病など特に多い(東朝)/郵便物、自動車の利用を開始(万朝)」

3.大正デモクラシーといわれるけれど

◇1913(大正2)年
1・17/全国新聞記者大会、憲政擁護・閥族打破を決議
2・10/桂内閣に対する憲政擁護運動は熾烈となり、議会の停止に憤激して東京市内に暴動、新聞社・交番などの焼打ち(11日以降、大阪・神戸・広島・京都に広がる)
6・13/政府、官吏6,800人の整理を発表
8・5/岩波書店の創業(岩波茂雄、古本屋からの出発)
《この年…『立川文庫』、青少年の人気を呼ぶ/森永の箱入りキャラメル発売される/3・末予備艦隊を廃止して鎮守府艦隊設置 /12・1日本の全人口5,291万1,800人と発表される》

◇1914(大正3)年
2・10/内閣弾劾の国民大会、日比谷公園で開催、騒擾化して軍隊が出動
3・6/第1〜3回(8日・15日)全国記者連合会主催の内閣弾劾大演説会が開かれる
3・24/山本権兵衛内閣総辞職、同29日、徳川家達に組閣の大命が下るが、翌日拝辞。30日政友会、超然内閣に反対を決議。 31日清浦奎吾に内閣組織の大命、4・7海相候補難で辞退と混乱。ようやく16日第2次大隈内閣が成立
3・24/雑誌の"定価販売"を目的に、東京雑誌組合が結成される
3・末/芸術座、帝国劇場で『復活』を上演、「カチューシャの唄」評判となる
4・1/宝塚少女歌劇(宝塚女子合唱隊)初公演、出し物は『ドンブラコ』など3本
7・28/第一次世界大戦始まる(〜18・11・11)。オーストリア、セルビアに宣戦布告
12・21/全国記者連合会、師団増設反対を決議
12・−/安田皐月『生きることと貞操』、小倉清三郎『性的生活と婦人問題』発売禁止に(このころから"貞操""性"について大胆な発言が行われ始める)
《この年…天然色活動写真株式会社が創立される/東京駅が竣工》
〔ことば〕カチューシャ(松井須磨子が歌う「カチューシャ」がはやる)

◇1915(大正4)年
2・−/伊藤野枝『貞操に就いての雑感』発売禁止される
10・10/『大阪朝日新聞』、夕刊を発行(以後、毎日・万朝報も発行)
《この年…東京美術学校に「写真科」設置(写真の高等教育の初め)/5・−杉本京太、邦文タイプライターを完成 /11・10長寿者に下賜金(百歳以上、全国で626人)/11・30東京株式市場大暴騰(12・3まで立会停止)、未曾有の大好景気となる》

◇1916(大正5)年
1・−/『婦人公論』(中央公論社)創刊
5・−/風俗壊乱・安寧秩序紊乱で発禁続出する
9・18/東京家政研究会(のちの主婦之友社)創業(翌年03・−『主婦之友』創刊)
9・−/書籍・雑誌の発禁事件の増加、出版物の取締り強化される
10・12/全国記者大会、閥族官僚政治の排斥を決議
《この年…11・8大杉栄、恋愛問題で神近市子に刺される(葉山事件)/11・−中央報徳会青年部、独立して青年団中央部と改称(官製青年団の発足)》
〔ことば〕デモクラシー(吉野作造の民本主義論などによる)

◇1917(大正6)年
1・19/寺内内閣排斥政治記者大会が開かれる
3・12/ロシアのペトログラードで革命起こり、ロマノフ王朝崩壊。3・15臨時政府樹立
3・27/閣議、ロシア仮政府承認を決定
7・−/京都大学で総長選挙制度を実施、大学自治の確立
9・11/早稲田大学の学長争い騒動で、一部学生ら大講堂占拠
11・7/ロシアのペトログラードで再び革命起こり、史上初めての社会主義政権樹立
《この年…三越新築される(入口のライオン像、人気を呼ぶ)/「活動写真」を「映画」といい始める /日本最初の高層鉄筋アパート、長崎県"軍艦島"にできる》

◇1918(大正7)年
2・11/憲法発布30年祝賀国民大会が上野公園で開かれ、民衆と警官が衝突
4・−/児童中心を標榜する小学国語読本「ハナ ハト マメ マス」発行される(第3期国定教科書)
7・−/児童文学雑誌『赤い鳥』(主宰鈴木三重吉)創刊
7・23/米の価格が暴騰。各地で米騒動勃発、軍に鎮圧さる。政府は、報道を禁止
8・25/寺内内閣弾劾全国記者大会が開かれ、その報道をめぐり筆禍事件起こる
9・21/世論の批判高まり、寺内内閣退陣、9・29最初の政党内原敬内閣発足
10・14/大阪朝日新聞、8・25夕刊の「白虹日を貫けり」の字句が朝憲紊乱(びんらん)に当たると問題化し、 社長村山龍平が辞任、編集局長鳥居素川らが退社
〔発禁〕岩野泡鳴の短編『入れ墨師の子』『青春のころ』。いずれも近親相姦をひとつのモチーフにして、大正7年の6月と7月に発表し、 相次いで筆禍の厄にさらされ、筆禍史にも異色の本という
《この年…大阪市に公設市場が設立/東京神田に簡易食堂が現れる/軟式野球が始まる(ゴムボールの発明) /『受験と学生』創刊/3・26市町村義務教育費国庫負担法が公布される/4・1徴兵令改正/丹那トンネル着工(19・6・19貫通) /8・2シベリア出兵宣言/10・−スペイン風邪大流行/12・3大学令・高等学校令の公布》
〔ことば〕平民宰相(爵位〈貴族〉を拒否した原敬内閣の誕生)

◇1919(大正8)年
2・7/文部省、小学校令・中学校令の公布(とくに国民道徳の必要性を強調)
3・1/東京で普通選挙要求の大示威行進が行われる
7・31/東京市内16新聞社の印刷工、賃金増額要求同盟総罷業、休刊4日間
8・4/埼玉県小学校教員、日本教員組合啓明会を結成(日本最初の教員組合)
8・23/東京砲兵工廠職工6,000人が賃金増額を要求し同盟罷業(30日解決)
9・1/朝日新聞社、8時間労働制を実施
11・9/原敬内閣弾劾全国有志会、上野公園で開かれる
《この年…弱冠21歳の島田清次郎『地上』第1部、ベストセラーに(⇒1962年杉森久英『天才と狂人の間』) /群馬県太田に飛行学校が開校/東京府営の質屋が開業/国民禁酒同盟が発会/初の公立託児所が設立される /女子事務員の需要が増加/映画雑誌『キネマ旬報』の創刊/3・27結核予防法・精神病院法・トラホーム予防法が公布される /5・9東京市遷都50年祝賀会、上野公園で開催/6・19東京市小学校教員、8割増俸示威運動を起こす(当局の圧迫で中絶) /7・1平和記念切手が発行される/7・13東京、白米の値段が1升59銭に暴騰/10・22東京−大阪間の郵便飛行に初めて成功》
〔ことば〕サボる(仏語「サボタージュ」から)

◇1920(大正9)年
1・13/森戸辰男(東大助教授)、「クロポトキンの思想の研究」で筆禍事件
1・17/普通選挙期成学生大会、日比谷公園で開催
1・31/各種43団体が合同し、全国普通選挙期成連合会を結成
2・10/東京で111団体7,500人の普選(普通選挙要求)デモ
3・15/第一次大戦後の反動で恐慌起こる
3・28/平塚雷鳥(明子)・市川房枝・奥むめおら、新婦人協会を組織
3・末/東京商科大学官制公布(東京高等商業学校昇格、現一橋大学の前身)
4・7/株式市場再び大惨落で立会中止
4・25/東京市電従業員3,500人、8時間労働制を要求して同盟罷業
4・30/家出人保護のため、上野駅に人事相談所が開設される
5・2/わが国初のメーデー、上野公園で行われる(5,000人が参加)
5・16/家賃値上げ反対借家人同盟民衆大会が東京で開かれる
7・8/衆議院で、永井柳太郎の政府演説中「西にレーニン、東に原敬」の一句が問題化し、懲罰に付される
10・3/明治神宮竣成される(11・1鎮座蔡を行なう)
10・3/賀川豊彦『死線を越えて』発行、100万部を売り、大正期最大のベストセラー(当初1,000円の原稿買切り、のち印税契約に)
《この年…レコードの著作権が認められる/大正活映・帝国キネマ演芸・松竹キネマが創立される/『読売新聞』、紙面に口語体を使用 /失業者が続出/2・6大学令により、慶応・早稲田の大学設立が認可 (4・15明治など6私立大学も) /3・5産児制限の運動家サンガー夫人初来日 /3・11尼港事件起こる(5・24〜27ニコライエフスクでパルチザンのため獄中の日本人120人が殺害される) /6・10時の記念日が制定/6・16中央職業紹介所が開設される/7・24東大、女子聴講生の入学を許可 /10・1第1回国勢調査(総人口7,698万8,379人、内地総人口5,596万3,053人)》

◇1921(大正10)年
2・11/大本教教主・出口王仁三郎ら不敬罪で逮捕される
2・−/金子洋文ら『種蒔く人』創刊(プロレタリア運動の先駆をなす)
4・−/官立大学・高校の入学期、9月より4月に移す
5・29/来日中のロシアの詩人エロシェンコに退去を命ずる
6・23/文部省、通俗教育を社会教育と改める
11・4/原敬首相、東京駅で刺殺される
《この年…最初の記録映画『シノグラム』製作される/街頭の似顔絵描きが現れる /文部省、第1回推薦映画『ヘレン・ケラー』と決める/パイロット万年筆、工員月給制を採用 /2・10宮中某重大事件が起こる(東宮妃の色盲遺伝説をめぐって) /3・17衆議院で「珍品問題」起こる(普選運動を抑えるとの条件で、船成金内田信也から、加藤高明憲政会総裁が5万円をもらい、 領収書に「珍品五個」と書いたのを暴露されたもの。世間の物笑いに(⇒のち、1976年に発覚したロッキード事件で、米ロッキード社から 「ピーナッツ100個」=1億円の賄賂が日本に、その一部が流れたとして田中角栄元首相が逮捕される) /4・1米穀法(即日実施)・米穀需給特別会計法(大正10年度から施行)公布/8・−テニス、デ杯戦に初参加 /11・29呉で初の日本式潜水艦進水》

◇1922(大正11)年
2・20/普選(普通選挙)促進全国記者大会が東京で開かれる
3・3/全国水平社創立大会、京都で開かれる
4・1/未成年者飲酒禁止法実施される
4・2/週刊誌『週刊朝日』(←『旬刊朝日』)、『サンデー毎日』が同時創刊
4・3/日本労働総同盟関西同盟会大会、普選運動否定・全国総聯合運動提唱
4・8/国語調査会、漢字制限案を決定、常用漢字約2,113字を選定する
5・15/新婦人協会、治安警察法修正演説会を開く(最初の婦人政談演説会)
5・−/ダンス大流行し、警視庁取締りを始める
6・9/緊急国民大会を東京に開き、普選断行・綱紀粛正・国民生活の安定・治安外交の振作を決議
7・15/日本共産党、非合法で結成される
8・8/相賀武夫、小学館創業、最初の学年別雑誌『小学五年生』『小学六年生』創刊
9・30/日本労働組合総連合結成大会、当局により解散を命じられる
11・7/学生連合会が結成される
《この年…婦人の断髪が流行/鈴木梅太郎、合成酒を造る/官庁、暑中休暇・土曜半ドン制を廃止/子どもの洋服が増える /3・10サンガー夫人再び来日/3・10平和博覧会、上野で開催/4・8改正鉄道敷設法公布。地方線の建設に重点を置くことに /4・22健康保険法公布される/5・1全国師団所在地の午砲(ドン)廃止される/10・14監獄を刑務所と改称 /11・14アメリカ最高法院、日本人の帰化禁止を宣言/11・17アインシュタイン来日/11・−資生堂が化粧品部に美容科・美顔科・洋装科を設ける(アイシャドーが流行、化粧法が大きく変化)》
〔ことば〕相対性原理(ドイツの物理学者アインシュタイン)/文化住宅

◇1923(大正12)年
1・1/菊池寛、文藝春秋社(のちの文藝春秋)創業、『文藝春秋』創刊
1・11/朝日新聞、東京―大阪間に貨物の定期航路を開始
1・27/婦人参政権獲得同盟が結成される
3・18/奈良県で水平社員700人と国粋会員および村民600人が乱闘
3・21/軍縮で東京および大阪砲兵工廠の職工4,000人が解雇
6・5/第1次共産党事件が起こる(徳田球一ら50人が逮捕される)
9・1/関東大震災(9・2戒厳令が布かれる、同日、朝鮮人虐殺事件が起こる。 朴烈と金子文子が天皇暗殺の大逆罪でデッチ挙げ逮捕)、マグニチュード7・9、死者・行方不明者142,600人 /大震災で出版界も壊滅的な被害を受けたが、雑誌は9月に休刊しただけで10月にはほとんど出揃う
9・16/大杉栄・伊藤野枝夫妻、憲兵隊の甘粕大尉に虐殺される
《この年…『朝日新聞』初の色刷を始める/映画の女形俳優がなくなる/映画俳優学校が創立される /明治の銀座が大震災で消失、モダンな銀座八丁によみがえる/2・−丸ビル竣工/4・10競馬法が公布される、馬券発売の許可 /5・12早大軍事研究団事件が起こる(学校における軍事教練をめぐる反対運動の始まり)》

◇1924(大正13)年
2・1/憲政擁護国民大会、芝公園で開き、警官隊と衝突
2・21/治安維持法反対労働団体大会、東京で開かれる
7・3/出版業界初の労働組合、博文館印刷所が中心の「大進会」結成
7・21/新聞に初めて天気図が掲載され始める
11・12/全国学生軍事教育反対同盟が結成される
《この年…「ノンキナトウサン」、『報知新聞』に連載始まる/『キネマ旬報』民間最初の映画推奨を行う /ベートーベン「第九交響曲」初演/東京婦人職業紹介所が設立される/4・1名古屋で第1回選抜中等学校野球大会(大阪毎日新聞社主催) /4・1電話料金値上げ(通話料1回2分間3銭に)/7・1メートル法が実施される/12・−ジャケツ流行、簡易服流行(洋服が日本人の生活にはっきり溶け込む)》
〔ことば〕「この際だから…」(前年の大震災の被害から立ち上がる際の合言葉)

◇1925(大正14)年
1・24/軍事教育反対の学生デモが禁止される
1・−/『キング』創刊(初刷50万部、重版し74万部に。28年には150万部に)
3・1/ラジオのテスト放送を開始(第一声は「あーあーあー聞こえますか。JOAK。こちら東京放送局です」 (いまのNHK。放送記念日は仮放送を開始した3月22日)
4・1/全国官公私立中学校に軍事教育を実施
4・11/陸軍現役将校学校配属令が公布される
4・22/治安維持法の公布(5・12施行。国体変革・私有財産の否認を目的の結社・運動を禁止し、 違反者には懲役10年または禁固に処するとした。1928年改定、41年全面改定と強化。45・10・4GHQ指令、廃止)
5・5/普通選挙法公布(男子25歳以上に選挙権、有権者4倍の約1,200万人に)
8・11/前年下期、出版不況となり取次会社の再編成で、東京堂・東海堂・北隆館・大東館の4大取次時代に(41年の出版新体制による「日配」統合まで続く)
12・1/全日本社会科学連合会に加入する京大・同志社大などの学生33人検挙(いわゆる全連事件、治安維持法の適用第1号)
《この年…コレラ発生/婦人のヘヤーネット流行/マージャン流行/洋裁ブーム起こる/猟奇探偵小説が流行 /4・下東京―大阪間、大阪―福岡間の航空郵便開始/11・1東京の国鉄電車、環状運転を開始》

◇1926(大正15・昭和元)年
1・7/小説家協会と劇作家協会が合併、文藝家協会の発足
1・15/京大など全連事件の第2次検挙38人
1・20/共同印刷争議、3,000人スト(のちスト参加の徳永直『太陽のない街』執筆)
5・29/文相岡田良平、学生の社会科学研究の絶対禁止を通達
8・−/東京・大阪(JOBK)・名古屋(JOCK)の各放送局、NHKに
9・3/わが国最初の普通選挙として、浜松市会議員選挙が行われる
11・−/改造社、『現代日本文学全集』を1冊1円で予約を募集。予約者23万人に(いわゆる円本時代の始まり)
12・25/大正天皇逝去(48歳)、新聞は翌日から昭和の日付で発行したが、雑誌はすでに店頭に並んでおり、 幻の新年号(大正16年1月1日発行)となった
《この年…アッパッパが流行/映画の検閲制度が始まる/小鳥の飼育が流行/断髪のモダンガール(モガ)が現われる /3・24女の相撲興行が禁止される》
〔ことば〕文化住宅/円本/赤(アカ)/モダーン

◇1927(昭和2)年
1・−/藤森成吉の小説「何が彼女をさうさせたか」を『改造』に発表、流行語に
2・3/『文藝春秋』3月号に雑誌初の座談会記事が載る(言葉「座談会」は、文藝春秋社社長の菊池寛が作ったものといわれる) ⇒『婦人の友』(1903〜)の座談会は、1926年が最初とあるが…
3・3/天長節を改め、11月3日を「明治節」と制定
4・1/徴兵令を廃止、兵役法(徴兵法改正)公布。現役期間が1年短縮される
5・1/第8回メーデーのスローガン「対支非干渉」
7・10/円本に対抗し、廉価な「岩波文庫」創刊(ドイツの「レクラム」に範を)
7・24/芥川龍之介(35歳)、劇薬自殺
《この年…東京出版協会、地方取次規程を実施/紀伊國屋書店が創業/『アサヒカメラ』、投稿のヌード写真で発禁 /労働争議1,202件、参加人員10万3,350人/パラマウント・ニュース第1号封切/中村屋のカリーライス始まる /円本の普及/モボ、モガの流行/国産フィルム第1号発売/1・5日本大相撲協会が発足(東京、大阪の両協会が合併) /3・14片岡蔵相、衆院で失言(「渡辺銀行が破綻しそうだ」)。金融大恐慌を招き銀行の倒産相次ぐ /8・13初の野球ラジオ実況放送(JOBK、甲子園の第13回全国中等学校野球大会)/12・30日本初の地下鉄、上野―浅草間が開通》
〔ことば〕モボ・モガ(モダンボーイとモダンガール)/マルクスボーイ

◇1928(昭和3)年
1・13/大相撲のラジオ実況放送開始
2・1/共産党の機関紙『赤旗』(せっき)創刊
2・20/初の普通選挙(第16回総選挙)が行われる
3・15/共産党第2次大検挙1,600人余(3・15事件)
3・25/全日本無産者芸術連盟(ナップ)結成(5・5機関紙『戦旗』創刊)
5・−/大阪で女学生など若い女性のイレズミが流行し問題となる
6・29/結社組織に極刑を科する治安維持法改正の勅令公布、死刑、無期刑を追加
7・3/内務省に特別高等警察(特高)が設置される
7・4/憲兵隊に思想係が設置される
10・30/文部省、学生の思想を取り締まる学生課を設ける⇒29・7・1
《この年…三省堂、業界初の活字の1回限り使用を始める/日米直通電話が開通/初の東京―大阪間旅客飛行 /「沓掛時次郎」新国劇で初演、股旅ものの始まり/ラジオ体操が始まる/流行歌のレコード吹込みが盛んとなる /3・−高柳健次郎、世界最初のブラウン管を使ったテレビ実験に成功(35年、アイコノスコープ式テレビ実験にも成功) /6・−スカート丈がひざの上まで短くなる/7・10銀行の土曜半休を実施/8・2第9回オリンピック(アムステルダム)で、 日本選手の初優勝(織田幹雄・三段跳び、鶴田義行・200メートル平泳)/9・1花流病予防法の実施》
〔ことば〕人民の名において/怪文書/マネキン人形/ラジオ体操

◇1929(昭和4)年
1・20/日本プロレタリア芸術家連盟・映画同盟・劇場同盟・作家同盟が創立される
2・−/『改造文庫』創刊
4・16/共産党員800人余が検挙(4・16事件)
6・−/教員の俸給不払い・減俸、全国化
7・1/婦人・少年の深夜業が禁止される
7・1/文部省、学生・生徒の思想調査・指導のため、学生課を学生部に昇格し拡充させ、さらに思想局を経て教学局へ発展⇒28・10・30
7・−/文藝家協会、浜口内閣の誕生を機に「検閲制度に関し新内閣に望む」声明書を発表
9・−/『生活綴方』創刊(生活綴方運動が起こる)
11・1/内務省、失業者数30万人と発表
10・24/ニューヨーク株式市場大暴落(「暗黒の木曜日」)、世界大恐慌始まる
11・11/出版社団体、文藝家協会と協議し内務当局に対し、発禁の乱発・不統一に対する是正、一部削除の措置をすべての雑誌に許可すること、 検閲前の押収に抗議、などの要望を提出。だが、内閣が代わっても改められず、かえって取締りは強化される
《この年…商工省、用紙規格を規定/日本印刷学会の設立/大阪にターミナル・デパート阪急の開店 /寿屋、国産初のウイスキー「サントリー」を発売(白ラベル4円50銭)/5・1東京市、正午の"ドン"を廃止、サイレン式となる /8・19ドイツの世界一周飛行船ツェッペリン伯号が霞ヶ浦に着く》
〔ことば〕緊縮/大学は出たけれど/ステッキガール/国産品愛用

◇1930(昭和5)年
2・24/共産党員全国的大検挙、8月まで継続、検挙1,500人のうち起訴461人
3・20/政府、「国産品を買おう」と言明
5・1/第11回メーデー、川崎で武装デモ
7・17/菊池寛、『婦人公論』に連載中の広津和郎の小説「女給」で自分らしき人物が登場と抗議文を送ったところ、 無断で宣伝に使われ、一悶着となったモデル事件起こる
10・22/文部省、教育勅語40周年記念で全国の孝子(親孝行な子)を表彰
11・−/エロ・グロ・ナンセンス出版流行
12・15/東京の15新聞社、疑獄事件関係の報道に関する政府の言論圧迫に対し、共同宣言を発表(20日、安達謙蔵内相は陳謝を表明)
《この年…読書週間が始まる/第1回健康優良児の表彰/コリントゲーム、ベビーゴルフ、マニキュアの流行/ダットサンの誕生 /銀座に柳が植えられる/3・26帝都復興祭式典の挙行/9・−米の大豊作で米価が大暴落、農村恐慌が深まる /10・1第2回国勢調査(内地人口6,444万7,724人、うち失業者32万2,000人)/10・31政府は支那の呼称を「中華民国」と改める /10・−キツネの襟巻きが流行》
〔ことば〕男子の本懐/エロ・グロ(エロ・グロ・ナンセンスとも)/銀ブラ

◇1931(昭和6)年
1・−/田川水泡の漫画「のらくろ」、『少年倶楽部』新年号に登場
3・14/警視庁興行係、活動常設館に対し「映写時間を短縮せぬこと、満員のときは掲示すること」と取締りを開始
4・−/東京・京橋交差点に電光ニュース設置。翌年、名古屋でも。商品広告も行う
7・1/文部省内に学生思想問題調査員会を設置
8・1/国産初のオール・トーキー映画『マダムと女房』封切(五所平之助監督)
9・1/長さ東洋一の清水トンネル開通(9.702メートル)
9・11/赤尾好夫、欧文社(のち、旺文社)創業
9・18/関東軍、奉天郊外の柳条湖の満鉄線路爆破事件を口実に満州事変勃発(一五年戦争の発端となる)
11・27/日本プロレタリア文化連盟(コップ)が結成される
《この年…テアトル・コメディ誕生/神宮プール完成/チンドン屋が現われる/パーマの流行/1・−警視庁、活動写真館の男女別席撤廃を決める /4・−警視庁、アドバルーン広告への規制通達。地上60m以内に/10・−東北地方が冷害に見舞われ(凶作)、娘の身売りが増加 /12・31軽演劇場ムーラン・ルージュ、東京新宿に開場》
〔ことば〕トーキー(⇒8・1の項参照、主題歌「酒は泪か溜息か」も大ヒット)

◇1932(昭和7)年
2・11/東大生、反戦・授業料値上げ反対デモ
3・1/日本、満州国建国を宣言(人口は公称3,000万人)、国際世論は日本非難
3・22/長野県62校、東京20校、茨城県は数校が赤化教員の検挙で休校
4・18/東京日活系の活弁・楽士3,000人がトーキー映画反対スト(全国に波及)
5・15/犬養毅首相、陸海軍将校に射殺される(5・15事件。翌日、内務省は流言取締り財界攪乱防止法を通達)
6・27/反トーキー映画スト、関西にも広がる(松竹系常設館)
6・29/警視庁、特高警察部を新設
7・27/文部省、農漁村の欠食児童は20万人と発表。9・7臨時学校給食を訓令
7・31/ドイツの総選挙でナチス党が第一党に(33・1・30ヒトラー、首相に就任)
8・1/国際反戦デー、東京で1,500人がデモ
《この年…2・20上海で戦争拒否の陸軍兵士600人が武装解除され、200人が銃殺/2・16ラジオ契約100万人突破 /4・2東京の上野駅、新築落成/弘済会売店第1号(上野駅、東京駅)/4・24日本ダービー、目黒馬場で /5・9坂田山心中(「天国に結ぶ恋」と流行歌に)/5・14−チャップリン来日/9・25社会局、「昭和6年以降、4月1日までの賃金不払い工場805、 金額209万8,050円」と発表/10・1東京市、府下5郡82町村を合併(35区)、人口約500万余に /12・23東京・白木屋の火事で若い女性店員14人死亡、ズロース(婦人用パンツ)が普及》
〔ことば〕「話せばわかる」(⇒5・15の項参照、将校連に言った犬養首相の言葉)

◇1933(昭和8)年
1・12/マルクス経済学者の河上肇が検挙される
2・20/小林多喜二(29歳)が検挙、虐殺される
2・−/流行歌『暗い日曜日』、自殺や心中ムードを刺激するとして発売禁止に
3・27/日本の中国侵略批判に対し、内田外相、国際連盟に脱退通告
4・1/児童虐待防止法が公布される(10月施行)
4・10/内務省、京大の滝川幸辰教授の『刑法読本』『刑法講義』を発禁処分に
4・−/小学校国定教科書に「サイタ サイタ サクラ ガ サイタ」の国語読本を採用(国定教科書4期)
5・26/京大・滝川事件が起こる(文部省が滝川教授を休職処分にしたため、同法学部の全教授が即日辞表を提出、 抗議運動は全国に広がる。この事件は大学の自治崩壊の契機に、時代の流れは大きくファシズム化となる)⇒4・10の項
6・7/共産党幹部の佐野学・鍋山貞親、獄中で転向声明
6・14/松竹少女歌劇のターキー(水の江滝子、東京代表)ら、待遇改善を要求して高野山にこもりスト(7・15解決)
6・17/大阪市内で、一兵卒が信号を無視して交通巡査と衝突(ゴーストップ事件)
7・−/内務省、出版検閲制度改革。出版警察拡充方針(左右両翼取締り強化)
7・1/滝川事件に抗議し、東京・京都両帝大で、大学自由擁護連盟結成
8・9/防空演習、関東地方で初めて実施
8・11/先の防空演習について、信濃毎日新聞の主筆・桐生悠々は紙面に「関東防空大演習を嗤ふ」を発表、 軍の忌避にふれて退社⇔40・2・2斎藤隆夫
8・−/無届出版物の厳罰・発売頒布の禁止の権限強化
9・15/思想取締方策具体案を閣議決定
10・23/共産党機関紙『赤旗』を印刷した16工場主が検挙される
11・1/出版界、図書館週間に併せて、第1回図書祭を7日まで開く。時局を反映し、神事に則り、 「図書を神霊として厳粛なる祭典を執行」したという
11・17/作家久米正雄ら14人が賭博で検挙⇒11・28野呂栄太郎検挙、獄死(34歳)
12・23/皇太子明仁親王(現・天皇)誕生。サイレンで告知
《この年…東京市内結婚相談所が開設(軍需産業の発展で、庶民も潤い、映画・歌謡曲を含め、結婚ブームに) /ヨーヨー大流行、月産500万個/1・9三原山噴火口に女学生が投身自殺、以後投身自殺が流行 (4月までに60人、未遂160人で自殺名所に)/4・1劇団「笑いの王国」浅草に登場/4・−東京音頭が全国で流行 /10・22早慶戦で両校応援団が衝突、乱闘騒ぎ(水原選手リンゴ事件)/10・−エノケン一座の結成 /11・18東京府中競馬場が開場/11・22『源氏物語』が上演禁止に》
〔ことば〕転向/男装の麗人/42対1(国際連盟で対日勧告決議案、反対は日本)

◇1934(昭和9)年
1・21/作家宮本(中条)百合子が検挙される
2・8/中島久万吉商相の書いた『足利尊氏論』が貴族院で問題化し、商相を辞職
3・22/国号呼称は「ニッポン」と文部省国語調査会で決定
4・3/二重橋前で、全国小学校教員精神作興大会が開かれる
4・−/日本初のスタイル・ブック『服装文化』が文化服装学院から出版される
5・2/出版法一部改正公布(皇室の尊厳冒?・安寧秩序の妨害など取締り)
6・1/文部省に思想局が設置される⇒29・7・1
《この年…東京宝塚劇場が開場/東北地方、冷害・凶作で秋から冬にかけ、娘の身売り、欠食児童が続出し、 行き倒れ・自殺など惨状を極める/1・8京都駅で海兵団入団兵見送りの群衆が大混乱、死者74人 /4・20逓信記念日を制定(初めて小型シートを作成)/9・21関西地方に台風、死者行方不明3,036人(室戸台風) /11・2ベーブ・ルースら来日/12・26日本初の職業野球団「東京野球倶楽部」が誕生》
〔ことば〕司法ファッショ/パーマネント/昭和維新/日本人ここにあり

◇1935(昭和10)年
3・23/衆議院で国体明徴決議案可決。3・−保田与重郎ら『日本浪漫派』を創刊
4・7/美濃部達吉、天皇機関説のため不敬罪で告発される(4・9その著書『逐條憲法精義』『憲法撮要』『日本憲法の基本主義』など発禁処分に)
5・1/第16回メーデーが挙行される、6,200人が参加(戦前最後のメーデー)
7・7/東京の各新聞、日曜夕刊を廃止
8・3/第一次国体明徴声明、天皇機関説は国体にもとると弾劾。10・15第二次声明
8・23/吉川英治『宮本武蔵』の連載始まる(朝日新聞、〜39・7・11)
9・1/第1回芥川賞に石川達三の『蒼氓』(直木賞に川口松太郎)
11・26/日本ペンクラブ(初代会長島崎藤村)が創立される
12・8/大本教、不敬問題で出口王仁三郎ら幹部30人が検挙される
《この年…3・8忠犬ハチ公死ぬ/4・1青年学校令公布。勤労青少年に対する統一的な社会教育を行うため、 従来の青年訓練所と実業補修学校を統合して青年学校を新設(10・1全国で1万7,000校が発足)。 39・04から義務制/4・15学校放送が全国的に/5・2暴力団の一斉検挙が始まる(8月までに2万人検挙) /10・1第4回国勢調査、内地人口6,925万4,148人/12・1初の年賀郵便用切手を発行》
〔ことば〕人民戦線/アンゴラウサギ/新官僚/国体明徴/ハイキング

◇1936(昭和11)年
2・26/陸軍青年将校ら決起し、二・二六事件が起こる。翌27東京に戒厳令(〜29)
3・24/内務省、メーデー禁止を全国府県知事に通達
3・−/武田隣太郎、月刊文芸誌『人民文庫』(人民社)創刊
4・18/国号を「大日本帝国」に統一する。天皇を元首と呼ぶことも正式決定
7・17/スペイン内戦。8・1第11回ベルリンオリンピック、ナチス国威昂揚に利用
7・−/言論・出版統制のため内閣に情報委員会を設置⇒37・4・19
9・9/広田弘毅内閣が成立(陸海軍大臣は現役大中将に限ると定められる)
9・11/内務省警保局、伏字の濫用排除を全国特高課長会議で指示、締付け強化
9・28/ひとのみち教団幹部御木徳一ら、貞操問題で検挙。11・25日独防共協定
12・5/共産党再建準備委員会のメンバー弾圧、1300人余検挙。
《この年…菊池寛、文芸家協会の初代会長となる(同会は26・1・7に発足)/『太陽』、カバーにヌードだけで"風俗を乱す"と発禁 /東京消防署に救急車を配車/赤バイを白バイと改称/1・8東京の円タクの総台数4,600台/2・9木炭自動車の製造開始 /5・18阿部定事件/7・10初の国立公園切手を発行(富士箱根)/12・11プロ野球初の公式戦、巨人軍はタイガースを破って初優勝(洲崎球場)》
〔ことば〕「今からでも遅くない」(⇒2・26の項参照、戒厳司令部の呼びかけ)

4.ついに泥沼の戦争―そして国を挙げて"聖戦完遂"へ―

◇1937(昭和12)年
2・11/文化勲章が制定される(4・28第1回受賞者に横山大観ら9人)
3・31/軍部の圧力により、政党粛清理由で衆議院が解散する(食い逃げ解散)
4・5/不敬罪で、ひとのみち教団幹部ら検挙される(28日、結社の禁止)
4・5/防空法公布。空襲に際し、灯火管制、避難、消防、救護等の迅速な施行を企図(風紀の取締まりも厳しくなる)
4・6/朝日新聞社亜欧連絡飛行「神風」号、立川を出発(9日ロンドン着)
4・19/内閣に情報部を設置⇒36・07⇒40・12・6
5・29/その著作が旧制高校生らに人気の東大教授・河合栄治郎の『第二学生生活』、一部削除処分となる (翌年、発売禁止となり起訴。他の著作3点も発禁に)
5・31/文部省、皇国史観をさらに徹底させるため「国体の本義」を編纂、全国の学校・社会教化団体に配布
6・3/NHK、加入者300万突破記念祝賀会が開かれる
7・7/盧溝橋で日中両軍が衝突(盧溝橋事件)、日本、派兵決定 (日中戦争)
7・21/文部省に教学局が設置される(思想局の廃止⇒34・6・1)
8・24/国民精神総動員実施要綱が発表される
8・−/映画の巻頭に「挙国一致」「銃後を護れ」などのタイトルが入れられる
8・−/吉川英治・尾崎士郎・吉屋信子・林房雄ら、特派員として戦地に赴く
9・16/馬場内務大臣名で講談社・中央公論社・改造社・文藝春秋社・新潮社など有力10社の社長を招き、 政府の国民精神総動員運動について各雑誌の協力を要請、かつ出版業界の時局に対する統制を推進するよう求める
9・−/矢内原忠雄東京帝大教授の論文「国家の理想」、『中央公論』から全面削除に(12・1反戦的筆禍事件で辞表提出、 4日辞任、『民族と平和』(岩波書店)発禁)
10・17/全日本労働総同盟大会、事変中の罷業中止と戦争支持を決議
10・−/朝鮮人に「皇国臣民の誓詞」を配布
11・20/宮中に大本営を設置/大本営陸・海軍部に報道部を設置
11・−/商工省「雑誌用紙の自主制限」方針を決定
12・13/日本軍、南京を占領、中国人に対する大虐殺事件…"南京大虐殺"
12・15/反ファシズム人民戦線第一次検挙(山川均ら400人)、内務省は、関係者の雑誌執筆を禁止。 12・22日本労働組合全国評議会など結社を禁止される
《この年…浅草・国際劇場の開場/『愛国行進曲』のレコード10万枚売れる/争議参加人員12万3,730人(戦前最高) /三浦半島が要塞地帯となり、海水浴場へのカメラ持込が禁止/2・22軍需景気で東京株式市場の取引高142万株(創業以来の最高記録) /3・31母子保護法公布(13歳以下の子供を持つ貧困の母または祖母の生活扶助や子供の養育扶助などを規定) /4・1アルコール専売法施行/4・15三重苦の聖女、ヘレン・ケラー女史が来日/6・1寄付金つき愛国記念切手が発行される》
〔ことば〕挙国一致(日中戦争勃発、国民に協力を求める政府スローガンの一つ)/「馬鹿は死ななきゃなおらない」 (廣澤虎造の浪花節「次郎長外伝」の一節)

◇1938(昭和13)年
2・1/人民戦線第二次検挙(大内兵衛ら教授グループ32人検挙される)
2・7/内務省、岩波文庫"白帯もの"「社会科学部門」に弾圧、自発的休刊を指示
2・18/石川達三「生きてゐる兵隊」で『中央公論』3月号が発売禁止に、9・5「新聞紙法」違反で起訴され、 編集人とともに禁錮4か月、執行猶予3年の判決
3・−/内務省警保局、要注意執筆者のリストを雑誌社に内示し、原稿掲載の自粛を要請(岡邦雄・戸坂潤・宮本百合子・中野重治・林要・鈴木安蔵ら)
4・1/国家総動員法の公布(5・5施行)。国民経済・生活を官僚統制下におき、統制に関する権限を政府に委任することを規定
〔出版規制〈第20条〉に関し、「婦人雑誌の全面的統制、娯楽雑誌の浄化に引き続き児童雑誌も亦、 9月内務省より全児童雑誌に対し、20余頁に亘って編集要領を厳重に告示され、国民の訓練は先づ少年よりといふので、 従来の単なる取締より積極的統制に一歩進めたのも、内務省としては嘗てない異例の戦時文化統制の特徴」と、 『出版年鑑』昭和14年版にある〕
4・−/新聞の減ページ(12ページ)が始まり、この後も減ページが続く
7・5/内務省図書課、子どもの絵本類の改善を図るため、講談社・文教社・ポケット講談社ら30余名の絵本編集者を集め要望(絵雑誌の統制)
7・15/東京オリンピック、中止が決定
8・12/内務省、出版物統制連絡会議を開く。出版物統制の強化を図るため
9・1/新聞用紙制限令を実施、商工省、雑誌用紙の制限強化
9・−/従軍作家陸軍部隊(久米正雄・丹羽文雄・岸田国士・林芙美子ら)、海軍部隊(菊池寛・佐藤春夫・吉屋信子ら)、 詩曲部隊(西条八十・古関裕而ら)が結成され、中国戦地に出発
10・5/東大教授河合栄治郎『社会政策原理』(日本評論社)など発売禁止に
10・25/内務省、山本有三・坪田譲治・波多野完治ら作家・文化人9名を招き、「児童読物改善ニ関スル告示要項」を提示して意見を求め、 児童雑誌の新指導方針を示す
10・26/内務省、少年少女雑誌発行の13社を、27日には幼年雑誌発行の30社を招き、「児童雑誌編集改善要項」を説明して実行を命令(児童雑誌ルビの廃止)
11・20/岩波新書の登場(イギリスの「ペンギン・ブックス」がモデル)
11・29/『学芸』(『唯物論研究』の転身)12月号、全般的に安寧を紊すものとして発売禁止を申し渡され廃刊
《この年…菊池寛、日本文学振興会を創立し、初代理事長となる/代用品の流行/記録映画の進出/プラネタリュームの完成 /商工大臣の通達で乗用車の生産が中止に/4・4灯火管制規則公布により、覆い笠や黒塗りの電球発売 /4・−落語家や漫才師の前線慰問団「わらわし隊」の第1陣(横山エンタツら)、中国戦線へ出発(41・08まで395団派遣) /7・7日華事変1周年記念で一戸一品献納、一菜主義、不買デーなど実施/8・17ヒトラー・ユーゲント来日 /9・14ゼロ戦(零式艦上戦闘機)の試作、三菱重工業で完成(翌年3月製作)》
〔ことば〕相手とせず/大陸の花嫁/買いだめ/スフ/抱き合わせ

「戦前の検閲制度」…昭和14(1939)年版『雑誌年鑑』所載の解説「現在の検閲制度」の「はしがき」により、雑誌の検閲について概括しよう (お断り:内容を損ねない範囲で、現代表現を用いた)。
 雑誌の検閲は原則として届出主義によっているが、支那事変(注:昭和12年7月7日)が始まってから、 軍事外交等の一部の記事について許可主義がとられており、適用される法規は「新聞紙法」と「出版法」である。
 取締官庁は一般警察行政の一部として、中央では内務省警保局図書課が管轄し、地方では各府県庁および北海道庁の警察部特高課検閲係が、 東京府では警視庁特高部検閲課が実務を担当している。
 内務省は最上級の警察官庁で、地方庁を指揮監督し、雑誌の発売頒布の禁止、差押えは内務大臣の命令による場合に限られる。 地方庁は第2級の官庁として、新聞紙の届出の受付および差押えの執行事務を行う。
 ついで「納本」について…雑誌を発行する場合、取締法規により主務官庁に納本しなければならない。
A 新聞紙法よる雑誌の場合…同法第4条により、第1回発行の日から10日以前に管轄の地方官庁を通じて、 内務大臣に次の事項を届けること(届出は2通)、
1、題号 2、掲載事項の種類 3、時事に関する事項の掲載の有無 4、発行の時期、時期を定めないときはその旨  5、第1回発行の年月日 6、発行所および印刷所 7、持主の氏名、法人の場合はその名称および代表者の氏名  8、発行人、編集人および印刷人の氏名年齢、ただし編集人2名以上の場合は主として編集事務を担当するものの氏名
 これらは届け出るだけでよく、許可とか認可というものではないから、受理されれば10日後には雑誌の発行ができる。  以後、発行ごとに内務省警保局図書課へ2部、主管地方庁(担当課・係)へ1部、地方裁判所検事局思想係へ1部、 区裁判所検事局思想係へ1部、合計5部の納本が必要である。
 納本のあて先に発送すれば、誤って配達されることなく、速やかに先方に達する。各官庁の納本受付事務は、年中無休で、 深夜でも行われている。
B 出版法よる雑誌の場合…同法第2条但し書に「もっぱら学術、技芸、統計、広告の類を記載する雑誌はこの法律によりて出版することを得」とあるように、  学術、技芸、統計、広告を主とする雑誌は、この法律により発行の3日前、内務大臣へ届出2通を添えて、2部納本さえすれば発行できる。
 新聞紙法の場合と異なり、発行10日前の届出や地方庁および検事局への納本が不要と簡便だが、発行の都度、到着すべき日数をのぞき、 発行の3日前に内務省に到着するように納本しなければならない。すなわち、納本の日と発行日の間をまる2日設けることである。 東京に近ければ余り不便ではないだろうが、地方によっては速達でも4、5日かかる場合は、それだけの日数を差し引き、 内務省に到着してから中2日置いて、次の日でなければ発行できない。
 この法律による雑誌は、原則として発行届を発行ごとに現品に添付して、届出納本すべきであるが、出版法第10条によれば、 内務大臣が許可した場合に限り、現品のみ納本することができる。そのためには、省略届を出して許可を得なければならない。

◇1939(昭和14)年
2・16/政府、製鉄不急品の回収を開始(マンホールのフタ、郵便ポスト、ベンチ、街路灯、広告塔、灰皿、火鉢など15品目)
3・15/戦争殉教者を祀っている各地の招魂社、護国神社と改称
3・20/文部省、大学の軍事教練、必須科目とする
4・1/日本発送電会社設立される(電力の国家管理実現)
4・5/映画法が公布される。脚本の事前検閲、製作・配給の許可制、外国映画の上映制限、ニュース映画の強制上映など決定(10・1施行)
4・5/「著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律」が公布される。31年から始まった"プラーゲ旋風"に対処するため 〔この時代、外国の音楽などを無断で使用した日本人が、プラーゲ博士によって訴えられ、恐慌をきたした事態をいう〕
4・10/賃金統制令の実施(外地では8・1から)。4・12米穀配給統制法公布
5・1/"金"の買い上げ運動が始まる。5・5鉄製品の回収が始まる
5・22/天皇、全国の学生を閲兵し、青少年学徒に勅語を配布
5・−/東京の官・私学大学生の自治運動に弾圧(百余名が検挙)
7・15労働力不足を補うため、国家総動員法に基づき、国民徴用令(7・8公布)の実施(白紙〈しろがみ〉で徴用)
8・−/東京市で隣組回覧板10万枚を配布。月2回の「隣組回報」の発行も始まる
9・1/ドイツ、ポーランドへ進撃、第二次世界大戦始まる
9・1/「興亜奉公日」の制定。以後毎月1日に、酒不売・ネオン消灯・勤労奉仕など実施⇒42・1・2大詔奉戴日を制定して、廃止となる
9・15/岩波書店、単行本など委託制をやめ、返品不可の買切り制を採用
9・−/徳川夢声の朗読「宮本武蔵」の放送開始
10・20/物価統制令実施、物価・賃金・地代など9・18現在の水準に(ヤミ価格横行)
11・18/大日本音楽著作権協会の設立⇒47・12日本音楽著作権協会〈JASRAC〉に
12・26/津田左右吉事件、同氏の2著作に右翼の攻撃激しく、内務省も発禁に
《この年…大阪枚方陸軍火薬庫が爆発、死傷者600人/能狂言『大原御幸』が上演禁止に/小西六、さくらカラーフィルム発売 /ニュース映画の強制上映が始まる/1・15横綱双葉山、初顔の安芸ノ海に敗れて70連勝ならず/2・−日本勧業銀行で婦人職員1,200人に結婚を奨励、 28歳停年制を実施/3・末、東北からの集団就職が始まる/4・12米穀配給統制法の公布(10・1実施) /4・26満蒙開拓「鍬の戦士」10万人第一次計画が決まる/大阪府保安課、市内のネオン広告午後11時以降消灯するように命令 /6・−パーマネントが禁止される("鉄カブト巻き"髪形が流行)/8・26世界一周国産機「ニッポン号」羽田発(10・20成功帰着) /12・1米穀搗米制限令実施で白米が禁止に/12・25木炭、配給制となる》
〔ことば〕父よあなたは強かった/生めよ殖やせよ/日の丸弁当/靖国の母

◇1940(昭和15)年
1・26/教育審議会、女子大学の設置と大学の男女共学に意見一致
2・2/民政党の斎藤隆夫、衆院で軍部の戦争政策を批判して問題化(反軍演説事件)⇔33・8・11桐生悠々
2・9/繊維製品配給統制規則が公布される(26日、一部実施)
2・10/関東、関西に電力調整令を発動、不急産業の間引き停電が始まる
2・10/マッチの製造配給統制が始まる
2・11/朝鮮総督府、朝鮮人の氏名を日本式に改めさせる(創氏改名)。39・12・26 公布
3・8/早大教授津田左右吉、出版法違反で起訴される
3・−/不敬にあたる芸名、外国名を改名せよとの内務省通達により、藤原釜足は藤原鶏太に、 ディック=ミネは三根耕一など16名が改名
4・1/月給から税金の源泉徴収決まる(10・19実施)
4・1/陸軍航空工廠令の公布、造兵廠と兵器廠を統合し陸軍兵器本部を設置
4・9/4新聞社(朝日・大毎東日・読売・同盟)のニュース映画、合併して日本ニュース社を設立(ニュース映画の統制)
4・22/価格形成中央委、米・味噌・しょうゆ・砂糖・卵・マッチ・木炭などの生活必需品に切符制採用を決める(4・29初の米切符制を高知市が実施)
5・10/週1日節米デーが決められる
5・13/第1回報国債券発売。国策協力のための1等1万円の夢の富くじが人気(1枚10円で、総額2,500万円。1日で売切れ)
5・16/文藝家協会、文芸銃後運動を開始 (S16より移動)
5・17/内閣情報部、新聞雑誌用紙統制委員会を設置(戦時下の言論・出版統制に重大な役割を)
6・1/砂糖・マッチの切符制を横浜・名古屋・京都・神戸で実施(東京・大阪は15日実施)
6・22/文部省、修学旅行の制限を通達(18年、全面中止)
6・24/近衛文麿、枢密院議長を辞任し、新体制運動推進の決意表明
6・−/内務省、営利雑誌の創刊抑制方針
7・7/ぜいたく品(奢侈品)の製造販売制限規則の実施(7・7禁令)
7・8/日本労働総同盟が解散(戦前の組合運動に終止符)
7・27/ロイター通信記者など外国人スパイ網を全国一斉検挙
7・−/《スパイ事件、雑誌界に衝撃》〔雑誌年鑑 昭和16年版〕
〔憲兵当局によるイギリススパイ網の一斉検挙によってその戦慄すべき活動が明るみに出され、 雑誌界も大きな衝撃を受け「防諜」の重大さが強調されるに至り、軍当局では新聞、雑誌に特に防諜に関して要望した。 雑誌が如何に諜報の資料に供せられているかを物語るものとして、某国大使館では一ヶ月に五百数十種の雑誌を講読していたことが当局の調査によって判明した〕
7・26/基本国策要綱を閣議決定、大東亜新秩序・国防国家の建設
7・−/内務省、左翼雑誌の一掃、30社130誌発禁処分、生活綴り方運動も弾圧
8・1/東京の食堂・料理店、米食使用禁止、販売時間も制限される
8・5/内務省、出版団体の代表を招き、出版業界の組織を改めようとする政府の方針を申し渡し、 内閣情報部も出版界新体制を提示、その実現を迫る
8・15/民政党解党(全政党解党へ)、大日本農民組合解散
8・16/商工省、生鮮食品の配給価格統制要綱発表(8・21野菜の公定価格販売)
8・23/新協劇団に解散命令(23日、新築地劇団も解散)
8・31/統一組織「新日本漫画家協会」が結成される。「新体制」「バスに乗りおくれるな」が合言葉
8・−/《日本雑誌協会など、解散決議を採択》(12・9日本出版文化協会に)
〔8月、日本雑誌協会や東京出版協会など、各種団体は急いで解散。 日本雑誌協会は15日、「決議 国家の新体制に対処し雑誌報国の使命を一層完全に達成せしめん為、 出版界を統合する一元的新団体の必要を認め本協会は総会の決議に依り解散す /但し雑誌協会の事務は団体成立に至るまで最後評議員に於て之を処理す」。22日、東京出版協会も決議文を採択した。 「政府の国策に協力し出版文化報国の使命を完遂せん為関係諸団体の結束を固めて一丸となり其総力発揮の必要を認め本協会は本日茲に会員の総意を以て解散す」〕
8・−/《大衆雑誌の自粛策》〔雑誌年鑑 昭和16年版〕
〔大衆雑誌の一部では自主的に時局適応を図るため各作家に左の如き事項を要望、文壇の注目を惹いた。 即ち某大雑誌社では 一、防諜の必要を強調した小説/一、傷痍軍人の厚生を描いた小説/一、開拓民の逞しい生活を描いた小説 等々五十何か条を列挙、 作家に通達してその取材の範囲を限定、また某ユーモア雑誌は「べからず集」を作り 一、物資の不足欠乏を書くべからず /一、邪恋を採り上げるべからず/一、自由主義的思想を盛るべからず 等々十何か条を挙げて同様関係作家に配布する等、 種々の意味から共に作家間に論議を醸した〕
8・−/東京府で食堂などの米食を禁止/国民精神総動員本部、東京市内に「贅沢(ぜいたく)は敵だ」の立看板1,500本を設置 /東京の婦人団体、指輪全廃などと書いたカードを街頭で女性に配る
9・1/平日午前の興行は東京で禁止に
9・9/政府、金の強制買い上げ〈1グラム3円85銭〉を決定
9・11/内務省、「部落会・町内会・隣保班・市町村常会整備要綱」を訓令。部落会・町内会・隣組のそれぞれに常会の設置を規定
9・−/戦時の新体制運動に協力するため、プロ野球は「日本職業野球連盟」から「日本野球連盟」に改称、 新綱領は「我が連盟は日本精神に即する日本野球の確立を期す」とし、ユニホームは原則カーキ色に、 戦闘帽の着用まで決められる
9・26/国民体力法実施、17〜19歳男子の身体検査が義務化され、体力手帳を交付
10・1/第5回国勢調査(内地人口7,311万4,308人、外地3,211万1,793人)
10・12/大政翼賛会結成(総裁近衛文麿、綱領は「大政翼賛の臣道実践」と挨拶。政党の解散、翼賛選挙の実施、 国民統制力を強める。政治組織化失敗)
10・23/『河内山宗俊』の上演が禁止される。演劇の統制強まる
10・30/教育勅語50周年式典を挙行
10・−/16歳以上20歳未満の男子に青年国民登録制を実施
11・1/ダンスホール、閉鎖される
11・2/国民服の制定、実施される
11・7/政府、用紙をA列、B列の2系統とする用紙規格規則を設ける(⇒49・07・工業標準化法に基づき「日本工業規格」(JIS)とする)
11・10/紀元2600年祝典。5日間にわたり、ちょうちん行列や旗行列、音楽行進が行われ、昼酒も許され、赤飯用もち米も特配。 15日から「祝ひは終つた、さあ働かう」と再び戦時色に
12・6/内閣情報部を情報局と改称、情報・宣伝・文化統制の一元化強まる⇒37・4・19
12・17/商工省、古本の公定価格を実施
12・19/内閣情報局の指導により、一元化統制団体・日本出版文化協会の設立
〔ことば〕皇紀2600年/ぜいたくは敵だ!/一億一心/バスに乗り遅れるな

◇1941(昭和16)年
1・1/ニュース・文化映画を全国で強制上映
1・8/戦陣訓が出される(捕虜となるより自ら死を選ぶことを正当化)
1・11/新聞雑誌類の国家的機密事項の掲載制限を強化(新聞紙等掲載制限令)
1・16/大日本青少年団が結成される
1・−/長谷川時雨・円地文子らの「輝く部隊」、海軍文芸慰問団一行に加わって南支・海南島・仏印に出発
2・26/情報局、各総合雑誌に執筆禁止者の名簿を送付(矢内原忠雄・馬場恒吾・清沢冽・田中耕太郎・横田喜三郎ら)
3・3/改正治安維持法公布、予防拘禁制導入
3・31/仏教各派、13宗27派に統合
4・1/尋常小学校を国民学校と改称し、少国民の錬成を目指す国民科など5教科編成で儀式や学校行事を重視、 宮城(皇居のこと)遥拝や軍事教練を課す。義務教育年限を8年に延長(初等科6年、高等科2年)
4・1/文部省、音階教育をドレミファからハニホヘトイロハに改定
4・1/生活必需物資統制令公布。日用品の全般的統制をし、切符制に法的根拠を与える /6大都市で米穀配給通帳制(「米穀通帳」82・1・14廃止)・外食券制実施。一般成人は1日2合3勺(約330g) /木炭や酒の配給制相次ぎ実施
5・5/出版物の一元配給機関として、日本出版配給株式会社(日配)の設立
5・8/初の肉なし日実施。毎月2回、肉屋・食堂などで肉を不売とする
5・15/刑期満了の思想犯を拘禁する予防拘禁所ができる
6・−/タバコは東京で1人1個売りとなる/弾丸切手が売り出される
6・−/雑誌の統廃合〔日本出版文化協会(文協)調べによると、経済雑誌121→約33、映画雑誌約25→9、写真雑誌11→4、 医学雑誌は通俗医学32→11、保健33→12、薬学30→6である。また同協会の事業開始以降の主な整理統合は、 婦人雑誌54→16、教育雑誌154→29、音楽雑誌(洋楽)17→8、現代美術雑誌39→8、工芸雑誌9→3、文芸同人雑誌97→8、 古美術雑誌4→2、受験雑誌29→14、児童雑誌35→25 など〕
7・1/興亜奉公日に全国の隣組、一斉に常会を開催
7・−/文部省教学局、『臣民の道』を刊行、各学校に配布
7・−/朝日新聞、朝刊6ページ、夕刊2ページ建てに("戦時新聞")
8・12/ルーズベルト・チャーチル太平洋憲章発表(領土不拡大、侵略国の武装解除)
8・8/文部省、学校報国団の編成を指令。8・16情報局、映画界に臨戦体制を通達(松竹・東宝・大映3社となり、各月2本製作)
8・20/高村光太郎の亡き妻を歌った詩集『智恵子抄』発行、ベストセラーに
10・4/外国郵便物の開封検閲、差出人の住所氏名を明記させる臨時郵便取締令を公布実施
10・15/ゾルゲ事件起こる(尾崎秀実ら捕われる⇒44・11・7処刑⇒46・9・10)
11・1/大学・専門学校の卒業半年繰上げとなる
11・15/兵役法施行令改正で丙種も召集
11・17/東条英機首相の施政方針演説、録音放送(初の議会放送)
11・22/国民勤労報国協力令公布。14〜40歳の男子と14〜25歳の未婚女子の勤労奉仕義務を法制化(年間30日以内の勤労奉仕活動を義務付ける)
12・1/御前会議、全員一致で日米開戦を正式に決定
12・8/午前2時、日本陸軍はマレー半島に上陸開始。午前3時20分、日本海軍がハワイ真珠湾を奇襲(大東亜戦争・太平洋戦争始まる)
12・8/気象管制施行、新聞・ラジオの気象報道が中止される
12・10/東京の新聞・通信8社主催の米英撃滅国民大会が開催(各地でも盛んに)
12・12/日本編集者協会(前年の結成)、開戦5日目に、「言論国防体制の完璧を期す」ことを決議、 『文藝春秋』と連名で『文学界』42・01号に発表
12・16/物資統制令公布
12・19/太平洋戦争の開始で言論・出版集会・結社等取締法公布(21日実施)
12・−/米英映画の上映禁止される
〔発禁〕徳田秋声『縮図』都新聞に連載。軍部の圧力により80回で中断、その理由は、いまどき、芸者小説など、 非常時を認識しないにもほどがあるというものだが、情報局では、大家の小説だけに、滅多切りも出来ず、 芸者に日の丸の旗を持たせて、出征兵士を見送りさせれば、大目にみようとの妥協案も出したとか
《この年…東京で月4回「肉なしデー」に/東京市内、野菜不足で行列買いが出現/女子の軍事教練が始まる/白バイの廃止 /共同託児所が激増/婦人はモンペ姿に/政府、ウサギの飼育を奨励(毛皮を防寒服、耳あて、手袋に)》
〔ことば〕八紘一宇(大東亜共栄圏を目ざす戦争スローガン)/トラトラトラ(日本海軍の真珠湾攻撃の暗号名) /少国民/産業戦士

◇1942(昭和17)年
1・1/食塩の通帳配給制が実施される/ガスの使用、割当てとなる
1・2/毎月8日を大詔奉戴日と決定(国旗掲揚など)、興亜奉公日を廃止⇒39・9・1
1・10/6大府県で、味噌・しょうゆの通帳制実施(地方は2・1より)
1・16/大日本翼賛壮年団が結成される
2・1/衣料切符制の実施(都市居住者は年に100点、郡部居住者は80点の点数切符で…背広1着50点、ブラウス8点、エプロン2点などと)
2・2/大日本婦人会が結成される
2・11/日本少国民文化協会が発足
2・18/大東亜戦争戦捷第一次祝賀国民大会開催。酒・菓子・小豆・ゴムまりなど配給
2・26/女子青年団員に傷痍軍人との結婚を奨励
3・21/日本出版文化協会、4月より全出版物の発行承認制の実施へ、用紙割当て
4・1/国鉄旅客運賃・郵便・電信電話料金値上げ(書状5銭に)
4・1/日本銀行券最高発行限度60億円に改定
4・18/米空軍による日本本土初空襲。東京・京浜地区・名古屋・神戸などが被害に
4・24/尾崎行雄、翼賛選挙批判演説が不敬罪となり起訴
4・30/第21回総選挙実施。5・20選挙後にできた唯一の党・翼賛政治会の結成
4・−/国民学校卒業児童にBCG接種が。5・1幼児と妊婦にパンの切符配給制
5・26/14歳以上の女子学生を動員する国民動員実施計画が決まる
5・26/文藝家協会を解散し、日本文学報国会の創立(会長徳富蘇峰、菊池寛は創立総会議長)
7・24/情報局、全国の新聞は1県1紙制にと発表(10月までに約1,200社から54社に統合整理。東京5紙、大阪3紙)
8・21/翌18年の新学期から中学4年、高校・大学予科2年に短縮と閣議決定
9・12/細川嘉六の「世界の動向と日本」掲載した『改造』8・9月号が発売禁止に。筆者は検挙。 その後、『改造』の編集者など逮捕「横浜事件」⇒43・5・−
10・13/全国の百貨店売り場の縮小を決定、統制会などの事務所に提供
10・19/本土空襲の米機乗員捕虜は死刑または重罰に処すると防空総司令部が布告
11・3/厚生省、優良多子家庭を表彰(生めよ増やせよ運動)
11・20/「愛国百人一首」が選定される
12・4/英語を使った雑誌名は改題となる(「サンデー毎日」→「週刊毎日」)
12・8/大東亜戦争1周年記念国民大会が行われる
《この年…ゲートル巻き/白はち巻/婦人の一日入隊/担ぎ屋などが現れる》
〔ことば〕ご同慶の至り/月月火水木金金/欲しがりません勝つまでは

◇1943(昭和18)年
1・1/東条首相を批判した中野正剛の「非常時宰相論」掲載の大阪朝日新聞が発売禁止となる(10・26中野正剛、割腹自殺)
1・13/内務省情報局、レコードを含む米英の音楽約1,000種の演奏を禁止
1・17/電力消費規制が強化される(軍需産業70%、平和産業30%)
2・18/出版事業令公布。2・19内閣および内務省、同令第6条による団体の設立の命令。11日本出版文化協会を解消し、統制団体日本出版会に
2・23/陸軍省、「撃ちてし止まむ」のポスター5万枚を配布
3・6/大日本言論報国会が発会。「日本世界観の確立と国内思想戦の遂行」のため国粋思想を宣伝
3・24/金属非常回収実施で寺の鐘など強制供出が始まる
3・−/谷崎潤一郎の「細雪」、軍と情報局の圧力で『中央公論』の連載禁止に
3・−/英語使用が禁止となって《実際はそうではなかった》、野球用語の日本語化が決定
4・1/中学校の徴兵延期制が廃止され、中等学校の修業年限、1年短縮の4年制となり、国定教科書を使用
4・18/連合艦隊司令官山本五十六、ソロモン諸島上空で米軍機に撃墜され、戦死(6・5国葬。死後、「元帥の仇は増産で」の言葉がはやる)
5・31/御前会議、「大東亜政略指導要綱決定」、東インド地域の日本編入など決定
5・−/神奈川県特高、細川嘉六が自著『植民史』の出版に際し、編集者たちを郷里の富山県泊町に招待した記念写真をもとに、 共産党再建のための会議とでっち上げ、治安維持法で起訴した「横浜事件」(泊事件)の発端となる⇒44・1・29
5・−/商工省、エレベーターを回収(4階以下の建物は全部、5階以上は6割撤去)
6・2/大日本労務報国会の創立。日雇い労務者の統制が進む
6・3/衣料簡素化の新体制要綱が決まる(男子は国民服、女子は元禄そでに)
6・20/創価教育学会弾圧、幹部牧口恒三郎ら検挙。6・25/学生の勤労動員決定
6・−/東京・昭和通りの植樹帯が菜園に、神奈川県のゴルフ場も農園に変わる
7・1/東京都が誕生(都制実施)←東京府と東京市の合併。戦費捻出が狙い…《東京06・01・14夕コラム「放射線」佐佐木信夫(中大教授)》
7・2/大日本出版報国団の結成(戦争協力を推進するため、全国から約2万7,000人結集。挺身隊を設け、出版従業員の錬成と講習のために各種催しを開く)
8・19/民間企業の社長にも徴用令実施
8・31/文化学院・向島高等女学校など閉鎖される
9・22/イタリア無条件降伏。11・22米・英・中カイロ会談。11・27カイロ宣言
9・22/理髪、出札改札係など17職種に男子の就業を禁止し、25歳未満の未婚女子による勤労挺身隊を動員。 9・23理工系以外の学徒徴兵猶予制限が撤廃
10・18/大日本育英会が設立される
10・21/雨の学徒出陣式(明治神宮外苑競技場)。出陣学徒壮行会、各地で行われる
10・30/洲崎遊郭、全面的に廃業、工員宿舎となる
12・1/陸軍に、第1回学徒兵入隊(海軍は12・10入隊)。
12・24徴兵適齢を1年引き下げ(20→19)
《この年…女子着物の長袖を切る、防空頭巾、婦人のズボン、モンペの常用はやる/日常英語追放/陪審裁判の廃止 /原子爆弾の研究を開始/4・1帝国銀行(三井と第一)・三菱銀行(三菱と第百)・安田銀行(安田と日本昼夜)発足 /4・6六大学野球リーグの廃止/9・−空襲状況の混乱に備え、上野公園で猛獣を毒殺(象3頭、ライオン3頭、豹4頭、虎1頭など計25頭と毒蛇を処分。 斉藤瑞穂作『かわいそうな象』参照)/12・17閣議、競馬開催の廃止を決定》
〔ことば〕転進/「撃ちてし止まむ」2・23陸軍、ポスターを配布/予科練(若鷹の歌)

◇1944(昭和19)年
1・8/建築物の強制疎開などの改正防空法が公布される。1・26初の建物疎開命令(3月までに、東京15か所、名古屋8か所の指定区域内の建築物強制取り壊し)
1・9/14〜25歳未満の未婚婦人、軍事工場に動員される
1・29/「横浜事件」。神奈川県特高警察、共産党再建会議とでっち上げ、改造社関係4名、日本評論社、 岩波書店関係者など49名を治安維持法違反容疑で検挙、拷問や自白の強要
1・−/日本野球連盟は「日本野球報国隊」となる
2・4/文部省、軍事教育全面的強化を発表
2・10/国民登録を男子12〜60歳・女子12〜40歳に拡大、無職未婚女子を動員態勢
2・17/雑誌の整理統合で総合誌は『中央公論』『現代』『公論』の3誌となる
2・25or29/閣議、決戦非常時措置要綱を決める(さしあたり、1年間)
3・5/高級料理店・カフェー・バーなど一斉休業、歌舞伎座など全国主要19劇場、映画館封鎖(4・1実施)
3・6/新聞の夕刊、廃止となる
3・29/中学生の勤労動員大綱が決定される
4・1/旅行制限強化、特急・寝台・食堂車廃止、不急旅行制限(旅行証明書発行)
4・1/6大都市の国民学校で1食7勺(約100g)の給食を開始(約200万人、無償)
4・4/女子の工場進出を警視庁が要望(女学校卒、1日10時間、月収53円)
4・−/雑炊食堂できる/新聞広告の収容広告段数は、全紙面の2割以内に限定
5・7/大相撲夏場所、後楽園で晴天10日間興行が始まる
7・8/学童の集団疎開実施を発表(8・4東京の3〜6年生第1陣出発)
7・10「横浜事件」を理由に、『中央公論』『改造』に廃刊命令
8・4/一億総武装を決定(竹やり訓練など本格化)
8・5/最高戦争指導会議を設置
8・−/女子挺身隊勤労令の公布(12〜39歳の女子すべてに対し、学校・隣組・部落会・町内会を通じて参加を強制) …若桑みどり『戦争がつくる女性像 第二次世界大戦下の日本女性動員の視覚的プロパガンダ』筑摩魔書房1995…P89
9・18/満18歳以上を兵役に編入決定
9・1/日本出版配給株式会社を日本出版配給統制株式会社と改称、統制を強める
10・20/一億憤激米英撃摧国民大会が開かれる(東京・日比谷)
10・20/アメリカ軍、レイテ島に上陸。10・24レイテ沖開戦、連合艦隊は主力を失う。10・25海軍神風特攻隊が初攻撃を行なう
11・1/タバコ配給、男子1日6本、隣組配給制に切替え
11・2/新聞は週14ページとなる
11・3/時限爆弾つき風船が完成、気流に乗せ、アメリカ本土を攻撃(風船爆弾)
11・24/アメリカ空軍爆撃機B29、80機が東京を初空襲
12・7/東南海地方に大地震、死者998人、家屋全壊26,130戸(東南海地震)
《この年…第13回オリンピック(ロンドン)中止/俳優座の発足/ペニシリン抽出の第1歩完成 /10・15白金の強制買い上げを実施》
〔ことば〕鬼畜米英/一億国民総武装/進め一億火の玉だ

◇1945(昭和20)年(敗戦まで)
1・1/日本出版会、空襲対策委員会を設ける。1・10印刷業、出版業の疎開促進
1・25/最高戦争指導会議、決戦非常措置要綱を決定
1・13/東海地方大地震、死者1,961人、家屋全壊5,539戸
2・16/米機動部隊、日本本土に初襲来。2・4ヤルタ会談。2・19硫黄島に上陸
2・−/新聞料金1円60銭に値上げ
3・6/国民勤労動員令の公布。国民徴用令などを廃止統合(中学生以上〈約300万人〉、 40歳未満の未婚女子を根こそぎ動員〈12歳以上の女子挺身隊は約47万人〉。拒否すれば、1年以下の懲役または千円以上の罰金)
3・9〜10/B29爆撃機334機、東京を無差別爆撃(東京大空襲、教科書300万余冊が焼失/再起不能の出版社も)。 本所・深川・浅草など下町40平方kmを消失、死者8万4,000人、罹災者150万人、焼失戸数23万戸の大被害
3・14/大阪空襲、13万戸の焼失(都市爆撃が激化)
3・18/国民学校初等科以外の授業を4月から1年間停止とする
3・−/新聞の連載小説が姿を消す
4・1/アメリカ軍、沖縄本島に上陸開始。戦闘用艦艇318隻・補助艦艇1,139隻・参加兵力約50万人・上陸兵力18万3,000人 (6・23日本軍全滅、沖縄戦終結。軍人軍属の死者約12万人、一般県民の死者約17万人)
4・−/ラジオの放送時間短縮、番組も簡略になり、報道中心に(昼はニュースだけ)
5・7/ドイツ、無条件降伏。アメリカ大統領トルーマン、日本に無条件降伏勧告
5・28/東京の5大新聞、共同形式で印刷。「共同新聞」の標題が加えられる
6・8/天皇出席の最高戦争指導会議、「今後採るべき戦争指導の基本要綱」を決定。 本土決戦断行の方針を採択(6・5付新聞に、「沖縄戦局いまや重要段階、全線にわたつて苦戦、彼我戦力の差やうやく顕著」とあったという 〈永井健児『教師は敗戦をどうむかえたのか』教育史料出版会1999・07〉)
6・22/戦時緊急措置法を公布。軍需生産の増強、食糧の確保、防衛の強化、秩序の維持などに関して内閣に独裁権限を与える非常立法
6・23/義勇兵役法の公布。本土決戦に備え、男15〜60歳、女17〜40歳の者を国民義勇戦闘隊に編成 《編成される前に、敗戦となる→北 博昭編『国民義勇隊関係資料』不二出版1990》
6・26/連合国51カ国で、国際連合憲章に調印(10・24正式決定)
7・17/米・英・ソ、ポツダム会議。7・26ポツダム宣言発表、日本に無条件降伏勧告
7・28/鈴木貫太郎首相、ポツダム宣言を黙殺し、戦争継続を表明
8・6/米爆撃機B29、広島に原爆投下、死者推定26万人
8・8/ソ連、日本に宣戦布告
8・9/米爆撃機B29、長崎に原爆投下、死者推定10万人
8・10/日本、国体維持を条件にポツダム宣言受諾を表明、連合軍は無条件降伏要求
8・15/正午に天皇の「玉音放送」(日本、ポツダム宣言受諾・無条件降伏)。終戦
《この年…戦況の悪化に伴い、ますます食料難に/4・1ハガキ5銭、書状10銭に/清酒1級15円(一升)、 ビール1本2円に値上げ/7・11主食の配給が1割減の2合1勺となる/7・15政府、富くじ「勝札」を発売(1等10万円で8・15まで売り出し、 8・25抽選の予定であったが幻に)/8・1タバコ配給、1日5本から3本に/8・12北村サヨ、山口県田布施町で天照皇大神宮教(踊る宗教)を開教》
〔ことば〕神州不滅/一億玉砕/国体維持/ポツダム宣言/玉音放送/ピカドン

〔コラム〕戦争は、多くの民間人も犠牲にする
 この第二次世界大戦は、ヨーロッパ・大西洋地域では39・9・1ドイツのポーランド侵攻から45・5・7ドイツ降伏までと、 東アジア・太平洋地域では41・12・8日本軍のマレー半島上陸や真珠湾攻撃から45・8・15まで続いた。
 民間人死者の推定総数は2,910万3,500〜4,749万7,000人。国別:中国600万〜1,000万、旧ソ連700万〜1,500万、 ポーランド500万〜578万、インドネシア200万〜400万、インド350万、べトナム200万などが多く、日本は30万〜80万、 ドイツ23万〜78万、アメリカは1,000〜6,000人という。
 なお、日本で空襲を受けた地域は、47都道府県400市区町村で、95万人が犠牲となっている (以上、東京新聞「戦後50年…(2)第2次世界大戦、(3)日本大空襲の全貌」94・8・14および94・12・4より)。

第3章 年表で見る出版小史(戦後編)

 今年(2005年)は、"戦後"60年という節目の年でもある。  そのむかし、昭和43年(1968)を「明治100年」といい、その前後は、懐古趣味も手伝って"明治ブーム"でもあった。

 ここに見るように、敗戦後は混乱に明け暮れ、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)による"占領"と"言論規制"に見舞われたわが国は、 経済復興、さらに高度成長のおかげで、経済大国の一員となり、国民は平和と自由を謳歌する時代を共有したかに見えたが……。
 この60年間"戦争"は世界各地で起こっており、決して"平和"とはいえない状況が続いたことは、最近の湾岸戦争(1991)やアフガニスタン侵攻(2001)、 イラク戦争(2003)を見てもお分かりのことと思う。

 それが"言論の自由"と、どう関係するのかと疑問に思うならば、もう一度「第2章 戦前編」を読んでいただきたい。 国民はさまざまな犠牲を強いられた歴史がそこにあるではないか。
 いま、近隣諸国のように"徴兵制度"のない国に住んでいることが、どんなに幸せか理解できるであろうし、 再び"言論の自由"が失われてはならないことを知るであろう。
 《この年》では、旧・総務庁青少年対策本部編「有害環境問題等対応の推移」などを、参考にさせていただいております。

戦後(1945年以降)の規制と追放運動、出版界の対応
1、戦後もつづく言論規制、GHQのやり方は
 戦後のさまざまな状況を知るには、戦前のマスコミ(マスメディア)が置かれた状況や先人の労苦と忍耐を忘れてはならない。 もう一度、おさらいをしておこう。
 1937(昭和12)年7月7日、日本は中国への武力攻撃を行い、宣戦布告なき戦争(日中戦争)を始めた。 翌38年に、「戦時(戦時に準ずべき事変の場合を含む)に際し国家目的達成のため、国の全力をもっとも有効に発揮せしむるよう、 人的物的資源を運用する」国家総動員法を設け、やがて41年12月8日のマレー半島や真珠湾への攻撃を皮切りに、 太平洋戦争(第二次世界大戦。当時の日本は「大東亜戦争」といった)へと突き進む。
 言論機関は、すでに明治時代から新聞や不定期刊の雑誌は新聞紙法により、書籍や一般的な雑誌などは出版法により数々の制約を受けていた。

生活は厳しく、さらに言論統制も厳しく
 言論統制をめざし36年に設置された内閣情報委員会は、37年に内閣情報部に改組され、40年には内閣情報局へと格上げされた。 新聞・放送・雑誌・映画などを総動員して国内の世論操作を行うだけでなく、国際宣伝戦や思想戦を全面的に展開するためである。
 政府の意向に沿わない「新聞雑誌その他の出版物の掲載については制限又は禁止を為すことを得」(国家総動員法第20条)て以来、 新聞や雑誌の創刊は原則として認められなかった。
 また、記事内容の検閲や発売禁止はもちろん、用紙統制という"兵糧攻め"の果てに、両業界は解散と統合を強いられる (山本文雄編『日本マス・コミュニケーション史』〔増補版〕東海大学出版会1992)。
 内閣情報局は42年7月、新聞社を統合して東京・大阪を除き一県一紙にすると発表し、さらに主要な新聞が共同で発行される事態も到来する。

出版活動も同じ危機にさらされる
 43年初めに3,395あった出版社も、1年後には1,199(前年比35・3%)に、中でも書籍関係は2,241から209(同9・3%)に激減し、 また、44年中に廃刊された雑誌は2,326にのぼった(日本ジャーナリスト会議出版支部編『目でみる出版ジャーナリズム小史』高文研1985)。
 その前、出版界では40(昭和15)年に官制団体の日本出版文化協会が作られ、さらに印刷業から取次業や小売業もそれぞれ組織化され、 その枠内でしか活動できなくなっていた。41年には日本編集者協会も結成されている。
 布川角左衛門(当時、岩波書店の編集者のち編集部長)は、証言する。「(昭和)15年から16年にかけては、すでに戦時体制であった。 そのような時局を反映して、例えば、15年7月7日には『奢侈品等製造販売制限規則』(「7・7禁令」)が公布された。 あるいは内務省が左翼出版社の一掃を期して、90余社の130点を発禁処分にし、在庫品まで押収したのは7月10日のことであった。 また、内閣情報部による出版界の新体制がいよいよ強行され出したのは8月のこと。その中心機関として、12月19日には日本出版文化協会が設立され、 用紙をはじめ、印刷、製本その他、出版関係の制約は日毎にきびしさを加えた」(日本出版学会編『布川角左衛門事典』日本エディタースクール出版部1998所収)。
 この間、43(昭和18)年2月に政府は、議会で国民の戦意高揚と検閲方針、言論指導方針を説明し、同年、日本出版文化協会は日本出版会へと再編成された。
 布川は、続ける。「(昭和18, 19年ごろは)まさに非常時であった。例えば、出版事業令に基づいて、改組された日本出版会が審査会を設け、 事前に企画書と原稿またはゲラ刷とを提出させ、不急書の発行不承認などを決定したのは18年8月のことであった。 あるいは19年11月24日にはB29の約80機が東京を襲い、印刷にせよ、製本にせよ、出版についての諸機能は、もはやどうにもならない状態になってしまった」(同前)。
 同様に、『中央公論』編集長だった黒田秀俊は次のように回想する。「昭和19年5月1日に、日本出版会は企画編集者規程というものを公示し、 企画編集者資格選考委員会なる機関を設けて編集者の資格を審査し、登録制を実施した。わたしたちは、詳細な履歴書を出版会に提出して審査を受けた。 言論統制のワクは、極端にまで拡大され、執筆者のみならず、ついに編集者の身分上の問題まで、出版会の掌中におさめられたのである」 (『知識人・言論弾圧の記録』白石書店1976)。

戦争協力を強いられた各メディア
 すでに37(昭和12)年12月、南京作戦特派員として作家を従軍させるなど、多くの出版社は戦争協力を行っていた。 また、内閣情報部は著名な作家の作品(たとえば38年、従軍中に『糞尿譚』で芥川賞を受賞した火野葦平の『麦と兵隊』は、 同年『改造』8月号に掲載され、単行本はベストセラー)が戦意高揚に役立つと、38年の漢口大作戦に作家の従軍を求め、 陸軍班や海軍班として22名を送り出す。彼らは「ペン部隊」と呼ばれた。のち、海軍の南支派遣軍に従軍した作家もいた。
 彼らは、やがて42年5月に社団法人日本文学報国会(会長徳富蘇峰)を結成し、翌43年3月には大日本言論報国会を組織する。 しかし、政府や軍の意向に従わないジャーナリスト、学者や作家・評論家は検挙されたり執筆停止の憂き目に遭い、 また『中央公論』や『改造』のように当局の忌避にふれ、廃刊に追い込まれる雑誌もあった。
 戦争末期の44年には陸軍報道部の要請により、出版社は否応なく戦争協力を強いられ、どの雑誌も表紙に「撃ちてし止まむ」とか、 「必勝の戦場生活」「勝利の特攻生活」(ともに婦人雑誌)などと印刷して、記事内容ともども戦争協力を前面に打ち出した。
 それは朝日新聞社が推進した軍用機献納募金や、軍歌の選定など戦争協力事業を行い、 報道班として著名な作家を前線に派遣した新聞界や映画・演劇界においても、同じ状況であった。

GHQの民主化政策と、巧妙な検閲に苦労するマスコミ
 太平洋戦争も、日本の無条件降伏で幕を閉じ、"戦後"を迎える……。 45(昭和20)年8月30日、厚木飛行場に降り立った最高司令官D・マッカーサーを頭とするGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)は、 軍国主義の一掃など日本の旧弊を打破し、基本的人権の尊重をはじめとする民主化に手をつけ、男女同権、労働組合結成の奨励、 教育の自由主義化、専制政治からの解放、経済の民主化という5大改革を指令する。
 民主化政策は翌年以降も続くが、マスコミに対しては終戦直後の9月10日、「言論及び新聞の自由に関する覚書」を、 次いで19日に「日本新聞規則に関する覚書」(プレス・コード)を、同22日にラジオ・コードを発した。 それまで内務省や内閣情報局がやっていた検閲をやめさせ、言論の自由を完全に回復させることを目的としたが、 現実には新聞・放送・出版などに対する新たな検閲であり、GHQの動静批判や占領政策遂行の妨げとなる報道の禁止でもあった。
 その実態は、吉野源三郎(当時・岩波書店『世界』編集部)によると、「戦前の検閲よりももっと老獪だったのは、 検閲が行なわれているということを知らしてはならない、という規定があって、そのために検閲によって削除を命ぜられた場合に、 ××とか○○というような形でそれを処理することができないのです。そういう痕跡の残らないように削除をやらねばいかんということでしたし、 そういうことを書いたりしゃべったりしてもいけないのです。非常に手のこんだ検閲でした」 (「GHQの検閲」〈 『一億人の昭和史』(5)占領から講和へ 毎日新聞社1975・11〉所収)。
 また、先の布川によると、「(GHQは)占領後30ヶ月間、自らの見解と手で事前又は事後検閲を行なった。 つまり、新聞社や出版社は、これらの指令に従って、事前検閲のものは校正刷り2部を、事後検閲のものは完成した出版物2部を届けなければならなかった。 (中略)敗戦後、正確には昭和20年10月5日から23年7月15日まで、占領軍が自らの手で一切のものの事前検閲を強行していた」 (自著『本の周辺』日本エディタースクール出版部1978)。
 なお、敗戦時に残存していた出版社は約300、小売書店は約3,000、1年間に発行された書籍は685点、雑誌は1,831点と、 『出版データブック 1945〜96』(出版ニュース社編/発行1997)は記録する。
 翌46年は天皇の人間宣言で明け、4日後GHQは、軍国主義者の公職追放と超国家主義団体の解散を指令する。 戦争責任者の公職追放はその後も続けられたが、途中で米ソ冷戦による方向転換などでGHQの方針が変わり、 また範囲も拡大され、48年1月には出版はじめマスコミ関係者にまで及ぶことになる(赤狩り)。

 48年5月3日に日本国憲法が施行され、6月「教育を復興し明るい日本を作れ」などと唱えた日本教職員組合(日教組)が結成される。
 また同年12月、マッカーサーによる民主化・地方分権化を目ざした警察法が公布され、国家地方警察と市町村自治体警察が設置された (翌年3月施行。54年7月、警察法の全面改正で廃止。現行の都道府県単位に)。しかし、地方によって警察の対応がマチマチだったため、 図書取締りの際、書店主が厳しく追及され、商売にならず音を上げるものも出た混乱の時代が待っていた。

戦時中、戦争に駆り出される少年少女たち
 戦時中の国民、とりわけ"国の宝"だった子どもたちは、どうだったか。
 40(昭和15)年8月末、文部省は学生生徒の映画や演劇の鑑賞は土曜と休日に限ると通達するなど、 青少年にも戦争の影はだんだん濃くなり、同10月には16歳以上20歳未満の男子を対象に青年国民登録制を実施する。
 41年3月、皇国民の錬成を目的とした国民学校令が公布され、尋常小学校が国民学校に切り替わり、教育も戦時体制に入る。
 さらに12月、国民徴用令が強化され、次いで学生の勤労奉仕が法制化され、兵器廠・軍事工場・農村に動員されることとなった。
 翌44年1月、14〜25歳未満の未婚婦人を軍事工場に送り、2月には国民登録を男子12〜60歳、女子は12〜40歳に拡大し、 無職未婚女子の動員体制をとる。子どもたちは男女の別なく、12歳から"銃後の守り"に駆り出されるのだった。
 45年3月、東京は、アメリカ空軍爆撃機B29による大空襲を受け、大きな被害を受ける(死傷者十数万人、焼失家屋23万戸)。 同月、閣議で決戦教育措置要綱を決定し、国民学校初等科を除き授業は1か年間停止となるが、8月15日を境に皇民教育は一夜で崩れ、 訓導(教師)は茫然自失するなか、子供たちは……。

敗戦による国民に与えたショックや混乱の大きさ
 さて、敗戦による国民に与えたショックや混乱により、社会はさまざまな様相を呈する。 戦後も性表現=ワイセツとその規制はいたちごっこであり、戦前「国の宝」といわれた子どもたちは、 その後「次代を担う青少年」というお題目のもと、地方自治体による青少年条例や、近年の「子どもの権利条約」 (政府訳:児童の権利条約)によっても、少しも安穏に暮らせない状況が続く。
 とはいえ、子どもは環境に順応しやすく、それだけに影響も受けやすい。また、おとな同様、悪いことばかりマネするのは、 いつの時代も変わらないことは、終戦直後の状況が証明していた。軍国主義の排除を目ざし、"墨塗り"教科書で再開された教育だが、 ストリート・チルドレン(浮浪児、のち街頭児)は盗みを働き、少女もオトナ顔負けの商売に励む……。
 その状況は、「昭和20年代前半、国民は窮乏した生活に追われ、親たちの子供への監督は不十分であり、すさんだ世相の中、 青少年犯罪の増加及びその質の悪化、家出、浮浪、売春等の行動をとる青少年の増加などの問題が噴出していた」と、 『青少年白書』(総務庁青少年対策本部編・平成8年度版)は分析する。

2、活字に飢えていた国民がむさぼり読んだもの
 戦後も刑法175条がらみの摘発が盛んに行われる。"悪書・有害図書"と指弾されたのは、大まかに見ると、 敗戦直後の混乱した時代に、活字に飢えた人々がむさぼり読んだ1946〜48年ごろのカストリ雑誌(エロ・グロ雑誌)、 次いで48年〜50年ごろに摘発された翻訳を含む書籍が主だったワイセツ文書、同時期(49,50年ごろ)のカストリ雑誌第2次ブームといわれたエロ雑誌などである。
 そして、顕著なのは青少年行政で、各種の条例による規制や、警察だけでなく民間団体までが"取締り"に精を出す姿は徐々に強まっていく。
 では、"年表"にそって、戦後のさまざまな流れを概観しよう。

◇1945(昭和20)年《敗戦のあと》
8・15/第二次世界大戦終結。出版社も壊滅状態の中で終戦
8・15/宮城(皇居)前で土下座するもの多く、21日まで全国の娯楽興行は中止に
8・20/信書の検閲と灯火管制が廃止
8・28/連合軍先遣隊、厚木飛行場に到着(8・30連合軍最高司令官D・マッカーサー到着、GHQを横浜に設置。9・14東京・日比谷に移す)
9・1/ラジオ放送は娯楽本位になる
9・2/重光外相、降伏文書に調印。9・8アメリカ軍、ジープで東京に進駐
9・10/青山虎之助、新生社創業、戦後初の総合雑誌『新生』創刊
9・15/誠文堂新光社『日米会話手帳』発行、総部数360万部のベストセラーに
9・19/GHQ、プレス・コードを発令(新聞・雑誌・書籍の事前検閲など)
9・27/天皇、マッカーサー元帥を訪問
9・29/GHQ、言論の制限に関する法令の全廃を指示、出版法・新聞紙法の効力を停止
10・4/GHQの「政治的市民的及宗教的自由ニ対スル制限ノ撤廃ニ関スル覚書」により、特高警察が廃止される。 同時に治安維持法・国防保安法も廃止。政治犯即時釈放、天皇制批判の自由を指令
10・9/GHQ、新聞・雑誌・書籍に事前検閲を開始(48・07事後検閲〜52・4・28失効)
10・10/日本出版協会の創立、一元的団体を目ざすが、翌年1月に内紛が起こる
10・11/戦後第一作映画「そよかぜ」(松竹)封切、主題歌「りんごの歌」大流行
11・16/GHQ、国定教科書の製造および供給の全面停止を指令
11・17/GHQ、半民主主義映画227種を指摘、剣劇ものは不許可に
11・−/森正蔵『旋風二十年』(上巻)発行、下巻と合わせベストセラーに
12・4/文芸家の権利擁護を目的に日本文藝家協会が再発足(初代会長菊池寛)
12・5/雑誌『平凡』誕生、当初は大衆総合誌、82・12月号で終刊(発行社名:凡人社→平凡出版、のちマガジンハウス)
12・12/GHQ、芝居の仇討ちもの、心中ものの上演を禁止
12・17/日本出版物小売業組合全国連合会の結成(小売全連)
12・31/GHQ、日本史・修身・地理の授業停止を命令
《この年…8・22天気予報の復活、3年8か月ぶり/8・23電力制限撤廃で、休電日なくなる /8・26進駐軍向け慰安婦養成所「特殊慰安施設協会」銀座に設置/11・1総人口7,199万人(国勢調査) /11・6柔道・剣道・弓道の授業が禁止に/11・16大相撲、晴天10日間興行で復活/11・23プロ野球、東西対抗戦(神宮球場)で復活 /12・9NHKラジオで「真相はかうだ」始まる/12・29農地改革始まる》
〔ことば〕「堪えがたきを堪え、忍びがたきを忍び…」玉音放送/一億総ざんげ

◇1946(昭和21)年
1・1/天皇「人間宣言」(天皇は自ら、「現人神」であることを否定)
1・4/公職追放令。軍国主義者などの公職追放と超国家主義団体の解散命令
1・19/NHK「のど自慢素人音楽会」が始まる
1・24/日本出版協会、臨時総会で戦争責任に関し自主的粛清を決議、講談社・主婦之友社・旺文社など会員7社を除名する決議(21社が脱退)
1・28/GHQ、映画の検閲を開始
1・−/GHQ、出版界の粛清を指示。日本民主主義ジャーナリスト連盟の創立
2・17/新円発行のため預貯金封鎖の金融緊急措置令を公布(3・2で旧円は失効)
4・1/国家総動員法および戦時緊急措置法の廃止
4・7/米教育使節団来日、教育の地方委譲、9年義務教育、教科書民主化を勧告
4・10/第22回総選挙。婦人議員39人誕生。共産党、議会初進出
4・15/日本出版協会を脱退した21社が日本自由出版協会を設立⇒49年、発展解消して全国出版協会に
5・3/極東国際軍事裁判〈東京裁判〉開廷、東条英機・木戸幸一ら戦争犯罪人として起訴
6・1/永井荷風『腕くらべ』発行、ベストセラーに
6・−/日本版『リーダーズダイジェスト』創刊、12万部は即日完売(定価3円50銭)
9・10/尾崎秀美『愛情はふる星のごとく』発行、ベストセラーに⇒41・10・15
9・20/内務省、新聞紙法・出版法に基づく届出・納本の廃止を正式決定
10・8/文部省、教育勅語の奉読廃止を通達(10・9男女共学制を指令)
10・12/日本史の授業、墨塗り教科書で再開
11・3/日本国憲法の公布(言論・出版の自由を保障)、大赦・特赦・減刑令・復権令16万9,874人 (翌47・5・3減刑令を修正、4,750人を追加)
11・16/文部省、現代かなづかいと当用漢字表1,850字を制定
12・1/新聞紙面はルビつき廃止、左横書き、新かなづかいを採用/12・21新聞、紙不足で28日までタブロイド版に(4・−新聞広告、紙面の20%まで回復)
12・−/"性の解放"と活字に飢えた庶民相手の雨後の筍のごとく現れては消えたカストリ雑誌やエロ本・エロ新聞が摘発される
《この年…三一書房・みすず書房など出版社の創業が相次ぐ/雑誌の創刊(『世界』『展望』など)、 復刊(『改造』『中央公論』『日本評論』『婦人公論』『オール讀物』など)多数 /V・デ・ベルデ『完全なる結婚』ベストセラーに/3・10婦人警官の誕生(警視庁63人を採用) /4・−GHQ、国産ペニシリンの製造・販売を許可/長谷川マチ子、「サザエさん」を『夕刊フクニチ』に連載開始 /大学新聞に「アルバイト」の言葉がのる。日当30円/5・1メーデー11年ぶりに開催、宮城前に50万人結集 /5・12世田谷区「米よこせ区民大会」。宮城へデモ行進/6・22食糧メーデー/8・1日本労働組合総同盟の結成(85万人、社会党系) /8・16経済団体連合会の創設/9・1ドレミファ唱法の復活2年半ぶり》
〔ことば〕戦後/天皇が各地で連発した「あっ、そう」/カストリ

◇1947(昭和22)年
1・4/第二次公職追放令。財界、言論界、地方公職者のなどに拡大
1・9/カストリ雑誌『猟奇』第2号、刑法175条により摘発(戦後初)
2・5/J・P・サルトル著、白井浩司訳『嘔吐』発行、ベストセラーに
2・25/内務省・警視庁・検事局、エロ・グロ出版物に対し取締りの標準・範囲を決定
2・−/カストリ雑誌大流行(風俗・犯罪・性科学など、49年ごろまで続く)
3・31/教育基本法公布・施行並びに学校教育法公布。新しい教育制度の改革
4・1/教育の6・3・3制発足。国民学校は「小学校」に、先生は「教諭」に
4・−/当用漢字・現代かなづかいの国定教科書の使用。小学校でローマ字教育開始
4・17/新聞及出版用紙割当委員会出版部会、割当て新原則を決める(書籍は初版ゲラ刷により文化的価値判断に基づく厳選主義で割当て、 雑誌はページ数をA5判は64ページ、B5判は32〜48ページを限度に、部数を決定のうえ割当て)
4・20/第一回参議院選挙。4・23第23回衆議院選挙実施。5・20吉田内閣辞任
5・2/マッカーサー、「皇居、国会などに国旗を掲げよ」と政府に書簡
5・3/日本国憲法施行。憲法付属関連法の施行、最高裁判所が発足
6・1/初の社会党内閣が成立(片山哲首相)
6・26/夏目漱石の著作題名などをめぐり、商標登録問題が起こる
6・−/閣議で言論界・報道関係の追放審査基準を正式に決定、発表
7・−/教科書の検定制度始まる
7・28/大日本・凸版・共同など印刷5社がストに突入、8・26終息。活字が刷ってあれば売れる時代だった出版ブームの最中、 251種の雑誌の生産が停滞する
11・11/日本出版協会と日本自由出版協会、「出版綱領」を制定
【実践項目の2…民衆の無知を利用し、或はその低俗なる趣味に迎合して、我国の文化水準の向上を妨ぐる如き出版物の刊行を抑止し、 また虚偽を伝えて読者を欺く如きものの出版を行わない】
11・15/不敬罪と姦通罪が廃止
11・17/戦後初の読書週間が開幕、各地で大成功(翌年から11・3の前後2週間に)
12・15/太宰治『斜陽』発行、ベストセラーに⇒48・6・13
《この年…用紙事情が悪化、『文藝春秋』など雑誌の休刊が相次ぐ/統制外・規格外の仙花紙によるカストリ雑誌の氾濫(『りべらる』『ロマンス』など) /東都古川柳研究会『新註誹風末摘花』が摘発/東京・帝都座5階劇場で日本初のストリップショー/米兵の持ち込んだスクエアダンス大流行 /2・1GHQ、ゼネストに中止命令/3・15東京都22区に(8・1練馬区新設、23区に)/3・−衆議院選挙法改正公布/貴族院停会 /4・1町内会、隣組が廃止に/4・8新宿ムーランルージュ再開/4・−パンパンガール、6大都市で推定4万人 /ペニシリン、一般病院にも配布/世界保健機構(WHO)発足(日本は51年に加入)/古川ロッパ一座、エノケン劇団初合同公演「弥次喜多道中記」 /6・4日本ダービー復活/6・20主食の遅配は全国平均20日、北海道は90日に及ぶ/7・1タクシーのメーター制が復活 /7・5全国の飲食店、本年中休業に(飲食営業緊急措置令)、12・26翌年2月まで延期に。48・2・27さらに4月末までに延期 /8・9古橋広之進、400m自由形で世界新/9・1パンの切符配給を実施/NHK聴取料5円から17円50銭に /日雇い労働者の賃金1日240円と決まり「ニコヨン」といわれる》
〔ことば〕額縁ヌードショー/ベビーブーム(⇒「団塊の世代」)
カストリ雑誌(エロ・グロ雑誌、桃色出版物とも):46〜48年ごろに流行した統制外の仙花紙による雑誌。 『りべらる』『猟奇』『赤と黒』『千一夜』『デカメロン』など。東京だけでも15,16種、全国では30種を超えていた由。 中には10ページの小本を一部10円で売り、地方へ流れ遊興場などで高く売られた。
新聞にも波及し、『実話新聞』『世相新聞』『犯罪実話』など、週刊・旬刊・月刊のタブロイド版エロ・グロ新聞が続々と出る。

◇1948(昭和23)年
1・7/政府、公職追放令−出版社78社・出版関係者217名・執筆関係者335名を公表
2・20/新聞及出版用紙割当委員会出版部会、俗悪出版物に用紙割当拒否を声明
3・23/アメリカ映画「ターザンの黄金」、京浜地区封切5館に3週で80万人記録
4・1/GHQ、「祝祭日の国旗掲揚を許可」と通告
4・1/新制高等学校(全日制・定時制)の発足
4・28/永井荷風『四畳半襖の下張』をワイセツ文書容疑で押収(5・8荷風取調べ)
5・19/GHQ民間情報教育局、翻訳出版を許可
6・5/国立国会図書館の開館(2・9国立国会図書館法公布施行、書籍の納本義務を規定⇒1869・1・27行政官布告81号「図書開板願並納本之件」)
6・13/太宰治、玉川上水に愛人とともに身を投げ水死⇒47・12・15
6・−/出版綱領実践委員会、エロ・グロ出版物について声明
7・15/GHQ、東京・大阪の日刊新聞16社、3通信社の事前検閲廃止、事後検閲に
8・−/新聞は戦後初めて週1回4ページに(9・−増ページで料金44円75銭に)
10・1/警視庁、石坂洋次郎「石中先生行状記」(『小説新潮』10月号)をワイセツ容疑で摘発⇒49・5・12単行本をワイセツ文書販売容疑で書類送検(起訴猶予)
11・12/極東国際軍事裁判所、戦犯25被告に有罪判決、東条英機ら7名は死刑に
《この年…長崎で被爆の永井隆博士の『この子を残して』、ベストセラーに/1・1新戸籍法の実施、家から人へ /1・26帝銀事件起こる/4・1NHK聴取料、2倍の35円に/4・1ソ連、ベルリンの陸上輸送規制を強化。6・24全面封鎖(ベルリン封鎖。〜48・5・12⇒89・11・9) /4・−電通、新聞・ラジオに関する世論調査を行う/5・1軽犯罪法公布/5・1サマータイムが始まる(9・11まで) /6・28福井地震、M7・1、死者・行方不明者3,769名/7・20国民の祝日法公布、一年9日と制定/8・1映画入場料40円、銭湯10円、都電6円に値上げ /8・17プロ野球初のナイター、横浜ゲーリッグ球場で巨人―中日戦を挙行/10・1警視庁に「110番」が誕生/11・20日本初の競輪、小倉市で開く》
〔ことば〕ノルマ(ロシア語)/斜陽族/鉄のカーテン(⇒冷戦)

◇1949(昭和24)年
1・1/新興・復活の出版社が多く、4,581社と史上最高に
1・1/マッカーサー元帥、国旗の自由使用を許可
2・9/文部省、教科書用図書検定基準を定める(4・−/検定教科書の使用開始)
3・1/新聞紙面、18段に決まる(その後15段、いま14段、13段も)
4・1/各地に新制大学がスタート、あまりの増加に「駅弁大学」と揶揄される
5・24/出版法、新聞紙法が廃止に(効力の停止は45・9・29)
6・1/M・ミッチェル『風とともに去りぬ』発行、ベストセラーに
6・−/「青少年行政の総合性の確保」という観点から、青少年問題対策協議会の設置が閣議決定(第5国会)⇒50・−中央青少年問題協議会(中青協)と改称
7・〜8・/謀略事件相次ぐ。7・5下山事件、7・15三鷹事件、8・17松川事件
9・−/日本出版配給株式会社(日配)閉鎖後の新会社として、東京に4社(日本出版販売株式会社・東京出版販売株式会社・日本教科図書販売株式会社・中央社)、 地方に5社(大阪屋・北海道図書・中部出版販売・九州出版販売・京都図書)が誕生
10・18/GHQによる放送番組の検閲が廃止
10・20/日本戦没学生の手記『きけわだつみのこえ』発行、ベストセラーに
10・24/新聞などの検閲廃止(実質は継続)
12・1/不況深刻化、戦後創業出版社の倒産、休業が続出
《この年…覚せい剤「ヒロポン」が少年層まで浸透/1・1官公庁は週48時間制に/3・10笑いの王国復活 /3・−東京消防庁、火災専用電話119番を設置/3・−戦後のアパート団地第1号(新宿・戸山ハイツ、1,053戸)完成 /3・−電力制限解除から、北海道を除きネオン広告の全面解禁/4・1野菜類の統制撤廃9年ぶり /4・25単一為替レート1ドル=360円の実施/4・29日・独のオリンピック復帰承認/5・8初めて母の日が実施される(5月の第2日曜) /6・14映画倫理規程管理委員会が発足/8・16古橋、ロスの全米水上選手権大会で世界記録/10・−巨人、戦後初優勝 /11・3湯川秀樹、ノーベル物理学賞受賞が決定(日本人初)》
〔ことば〕(吉田茂首相を指し)ワンマン/自転車操業

◇1950(昭和25)年
1・17/警視庁、N・メイラー『裸者と死者』(上)をワイセツ文書容疑で任意提出を指示(1・27GHQ解除)。 同月、カストリ雑誌、エロ本の取締りを強化
2・5/この日発売の『世界』、「講和問題についての声明」を掲載、(翌年9月のサンフランシスコ講和条約に関し)世論を大いに喚起
3・24/旧制高校最後の卒業式⇒4・−短期大学149校発足
5・19/岡山県、全国初の「図書による青少年保護育成条例」公布(罰金10万円)
6・6/共産党中央委員会公職追放。6・16全国のデモ禁止
6・25/朝鮮戦争勃発
6・26/警視庁、最高検事局の指令によりD・H・ローレンス『チャタレイ夫人の恋人』をワイセツ文書で押収 (7・8発禁に。9・13訳者伊藤整、発行者小山久二郎が起訴され、芸術かワイセツかと裁判に(「チャタレイ裁判」⇒52・1・18)
7・28/新聞・通信・放送のレッドパージ(赤狩り)開始(8・26出版関連者パージ)
8・10/警察予備隊令公布、再軍備の第一歩に(52年保安隊に、54年自衛隊に)
8・25/取次会社29社により出版取次懇話会を結成⇒56・4・17
9・25/良書普及運動起こる
10・13/約1万人の追放解除、民間企業9,911名人、政府機関1,171名人に
《この年…1・7聖徳太子像の千円札の発行/年齢を満で数えることを実施/1・−ビール、自由競争時代へ /3・22牛乳の自由販売始まる/4・1タバコの家庭配給廃止、ピース50円、光40円に値上げ/4・1日本製鉄が八幡、富士など4社に分割 /4・3社会党統一大会で左右両派妥協/4・15公職選挙法公布/4・22第1回ミス日本に山本富士子/4・−洋酒統制撤廃、寿屋、トリスウイスキー(ポケットびん)発売。 翌年、各地に国民酒場トリスバーが誕生/7・2金閣寺、放火で全焼》
〔ことば〕「貧乏人は麦を食え」(12・7池田勇人蔵相発言)
ワイセツ文書:『四畳半襖の下張』『石中先生行状記』『裸者と死者』(上巻)『チャタレイ夫人の恋人』など摘発を受けたもの。
エロ雑誌:49,50年ごろ(カストリ雑誌第2次ブーム)内容が、文学的ロマンチックから夫婦ものへ。 それまでのエロ物が、文学的ロマンチックな限界に閉じこもっていたのに対し、そんな装飾的なベールをかなぐり捨てたリアリズム一点張りだったために、 一般大衆には、何より物珍しかったに違いないといわれる。代表的な『夫婦生活』は、最盛期の50年1月には25万部の発行ともいわれ、 54年4月まで一度も摘発されなかった。

◇1951(昭和26)年
1・−/第1回「NHK紅白歌合戦」を放送
3・5/無着成恭『山びこ学校』、ベストセラーに(山形県山元中学2年生の作文集)
3・29/新入学児童への国語・算数の教科書の無償供与が決まる
4・11/マッカーサー解任(「老兵は死なず」は流行語に)、後任にリッジウエイ
4・−/日本最初のLPレコード、コロムビアから発売される。ベートーベンの「第九交響曲」など5枚、1枚2,300円
4・−/『あまとりあ』創刊号(50・05)が摘発される
5・1/出版等の用紙の統制、全面撤廃
7・20/ラジオの予備免許を受けた16社、日本民間放送連盟(民放連)結成
7・−/『ガミアニ』『バルカン戦争』『秘話バルカン戦争』、ワイセツ文書で摘発
7・30/わいせつ出版物の取締り強化、行きすぎ事件が続出、出版協会・取次懇話会・小売全連(現在の日書連)が共同で吉田総理大臣ほかに陳情
9・1/岩波書店『世界』10月号「講和問題特集号」大反響、15万部完売
9・1/中部日本放送、新日本放送開局(民間ラジオ放送、初の正式放送)
10・1/朝日・毎日・読売など、夕刊発行を再開
10・−/和歌山県、"有害な興行、映画、出版物"を対象とした、初の一般的な青少年保護育成条例を制定 (翌52年に香川県、55年に神奈川県、北海道と続く)
11・5/M・ゲイン『ニッポン日記』発行、ベストセラーに
12・−/警視庁、法務府・国警・自治警と協議し、『夫婦生活』その他、ワイセツ雑誌の取締り方針を決定
《この年…少年非行第一次のピーク(性典映画)/4・1米屋復活で配給公団解消/銀座街路灯完成(106本が復活) /タバコ値下げ、ピース40円、光30円、いこい25円/NHK、聴取料を15円上げ、50円に(3年8か月ぶりにラジオ体操再開) /4・2五百円札登場/4・19第55回ボストン・マラソンに日本初参加の田中茂樹優勝、2時間27分45秒 /4・−結核予防法の全面改正施行(医療費の公費負担等規定)/9・8対日講和条約調印/9・10黒澤明監督の『羅生門』、ベニス映画祭でグランプリ受賞 /11・1郵便料金値上げ、書状は10円、はがきは5円》
〔ことば〕逆コース/ノーコメント/社用族/PR

◇1952(昭和27)年
1・18/チャタレイ裁判、一審判決(訳者伊藤整無罪、発行者小山書店小山久二郎罰金25万円)⇒12・10高裁判決⇒57・3・13最高裁判決、上告棄却
4・10/NHK、連続放送劇「君の名は」を放送
4・10/文部省、中学校以上の体育教材に竹刀競技の採用許可を通達
4・28/対日講和(平和)条約・日米安全保障条約の発効(ポツダム政令は廃止に、GHQの支配も終る)
4・−/新聞協会・文芸家協会・学術会議など、破壊活動防止法反対の声明
5・−/警視庁、斉藤昌三編『好色三大奇書』を摘発
6・25/警視庁、帆神熙訳『太陰の娘サロメ』『マドリッドの男地獄』を摘発
7・21/破壊活動防止法公布、多くの出版社など反対声明(検閲制度復活の懸念が)
7・24/出版事業税対策連合会の8団体により、出版団体連合会(出団連)の結成
7・31/出版物等、原則として事業税が免除となる
8・6/『アサヒグラフ』、原爆被害写真を初公開(52万部発行)
8・30/岩田満『戦艦大和ノ最期』発行(無修正で原文のまま活字になった最初の戦記もの)
10・−/警視庁保安課、『夫婦生活』その他類似の雑誌社20社および書店代表を集め、わいせつ出版物の取締り強化について警告 (雑誌類、52年に21件、53年に新聞を含め18件を摘発)
11・−/角川書店『昭和文学全集』60巻刊行開始。新潮社『現代世界文学全集』45巻刊行開始
12・10/チャタレイ裁判、東京高裁(訳者罰金10万円、発行者25万円⇒57・3・13)
12・25/A・フランク『光ほのかに―アンネの日記』発行、ベストセラーに
《この年…厚生省、児童福祉審議会を開く(混血児対策)/4・1砂糖の統制、13年ぶりに撤廃/琉球中央政府発足(主席比嘉秀平) /GHQの廃止に伴い、帝国ホテル・神宮外苑各競技場・旧国技館など接収解除/4・4サマータイム不評で廃止 /4・9日航機「もく星号」三原山に墜落/5・1血のメーデー事件/5・19白井義男、ボクシング世界フライ級タイトルマッチで、 日本人初の世界選手権を獲得/7・19第15回オリンピック大会開催(ヘルシンキ)、日本は16年ぶりに復帰(金メダル1個) /7・31天皇・皇后、明治神宮に参拝/10・15保安隊発足/10・16天皇・皇后、靖国神社に初参拝/12・20青山に東京ボウリングセンターが開業(日本初)》
〔ことば〕エッチ(舟橋聖一『白い魔魚』)/恐妻(大宅壮一)/君の名は
エロ本:この年に摘発された単行本および雑誌…水揚帳/太陰の娘サロメ/マドリッドの男地獄/人間探究/真情春雨衣 /印度ヴィナス/艶色玉すだれ/真実伊勢物語/船長夜話/艶話楊貴妃/ジュリエット/あまとりあ/怪奇雑誌11月号 /閨中膝栗毛/とのゐ袋/傑作読物12月号付録青年の彷徨/人情講談新年号ならびに別冊付録寝正月のお楽み /怪奇雑誌12月号同付録性愛紅閨秘術十八法/読切ロマンス新年号/青年ロマンス/話臨時増刊風流読本/夫婦実話

◇1953(昭和28)年
2・1/NHK、東京地区でテレビ本放送開始(日本で最初のテレビ放送)
2・26/教科書団体の中心団体として日本教科書協会発足(初代会長永井茂弥)
4・10/ボーヴォワール『第二の性』第1巻発行、ベストセラーに
4・15/出版労組懇談会(出版労懇)誕生⇒58・3・15に結成される出版労協の前身
8・8/学校図書館法の公布、小中高等学校に図書館の設置を義務付け
8・28/初の民放テレビ、日本テレビ放送(NTV)が発足
9・1/独占禁止法改正公布、出版物に再販制を適用、不況カルテルなど容認
9・18/出版界の親睦団体として、日本出版クラブ発足(初代会長下中弥三郎)
12・22/厚生省中央児童福祉審議会、「性的出版物映画等の児童に対する悪影響の防止に関する決議」を行い、 翌年2・5関係各方面に文書で要望
11・24/山岡荘八『徳川家康』刊行開始、経営学ブームにのりベストセラーに
12・−/ローゼンバーグ『愛は死をこえて』発行、ベストセラーに
12・31/NHK紅白歌合戦、大晦日に初の公開放送、以後、国民的人気番組に
《この年…"性典映画"「十代の性典」ほか3度目のブーム((1)…50年3月「乙女の性典」など、(2)…52年「娘はかく抗議する」など) /文庫ものから全集ものにブームが移り、140種に及ぶ/『相対会研究報告』(1〜6号)の摘発/3・30皇太子(現・天皇)、 英女王エリザベス2世戴冠式出席のため横浜港を出発/4・1保安大学校、横須賀に開校(応募者30倍⇒54・09防衛大学校と改称) /6・1大阪・梅田の第一生命屋上にビアガーデン(屋上ビアガーデン第1号)/6・4台風の呼び方を外国女性名から発生順位番号とする /6・18米軍輸送機、都下小平で墜落し133人全員死亡(世界最大の航空機事故)/6・−東京駅プラットフォームに赤色の公衆電話機第1号設置(8月、東京のタバコ屋店先にも) /7・18伊東絹子、ミス・ユニバース3位に入り、八頭身ブームを起こす/8・4横浜市、全国初の騒音防止条例制定 /10・15わいせつレコードに初の手入れ/12・26シネマスコープ、有楽座で初上映/12・−日本初のスーパーマーケット「紀ノ国屋」が東京青山に出店》
〔ことば〕八頭身/「さいざんす」/「むちゃくちゃでござります」
エロ本の出版その攻防:この年は17件の摘発。日本観光新聞(東京)/艶女玉寿多礼〈つやおんなたますだれ〉/浴衣(東京) /におえる園、パリの女学生、恋の冒険など英文の13冊(東京)/甘い夜(名古屋)/秘版清長(東京) /春信(東京)など。英文のエロ本の台頭は新しい手法で、立川など基地周辺の本屋で売る。 ただし、英文の『チャタレイ夫人の恋人』は"文学"として放任されていた。
当局によると、「出せば押収し、検挙する。するとまた出す。すぐ検挙する―というイタチごっこをつゞけてきたが、 実に根気よく対抗してくる」。「いくらやっても懲りない。裁判になると、公判の引のばしを図る。引のばしの手は、 チャタレイ裁判でも使った"ワイセツか否かの鑑定"」。
もう一つの出版社は、なんど裁判になっても責任者をとっかえひっかえ変えて続けている。「こういう風に傾く業者の心理は、 やはり、儲かるから止められぬ」ということだろうと取締り側は見ていた。
日本観光新聞・内外タイムス・毎夕新聞などの新聞も同類であった。

◇1954(昭和29)年
1・−/新聞社系週刊誌、需要増大で発売日を協定
2・25/伊藤整『女性に関する十二章』、新書版流行の契機に(伊藤整ブーム)
5・27,28/中青協(この月、全国的に「青少年保護育成に関する月間運動」を実施)は、 都道府県青少年問題協議会と共催で「第2回全国青少年代表者会議」を総理大臣官邸で開く⇒・7・12
6・10/大阪府教職員組合大会で「君が代」を歌わないないことを決議
7・12/中青協、「青少年に有害な出版物、映画等対策専門委員会」を設ける
7・−/深刻なデフレの影響で出版社の倒産・整理新発足が相次ぎ、特価本の乱売に
6・9/防衛庁設置法・自衛隊法公布(7・1陸空海自衛隊発足、秘密保護法公布)
8・−/総理府に「青少年に有害な出版物映画等対策委員会」発足、立法化に着手
10・13/光文社「カッパ・ブックス」、カッパのマークで売出す("創作出版")
《この年…警視庁、『夫婦生活』『りべらる』『デカメロン』『千一夜』『奇譚クラブ』の5誌を押収 /東京都青少協、不良文化財(出版物、映画、おもちゃ)の追放で、都議会に答申 /出版不況、ただし『週刊朝日』が100万部台に(前年の月刊『平凡』と『家の光』とともに100万雑誌といわれる) /1・2皇居一般参賀に38万人、大混乱で死者18人/3・1M・モンローとJ・ディマジオが来日/3・1第五福竜丸、ビキニの水爆実験により被災、 放射能を浴びたマグロの市価が半値に/4・12NHK美容体操が始まる/5・11京都旭丘中学校で市教委と教組が対立し、 分裂授業が始まる/5・31麻薬取締法が成立/6・3近江絹糸女工員、「結婚の自由と信書の検閲廃止」を要求してスト /8・26日本刀の製造が復活/9・26台風15号で洞爺丸が転覆、死亡1,440人、北海道・岩内町大火、3,500戸焼失》
〔ことば〕スポンサー/三種の神器(電気洗濯機・冷蔵庫・掃除機)/死の灰
ワイセツ文書と少年:この年、警視庁が取締まった月刊誌6万3,744部、週刊雑誌・新聞等8,741部、特価本その他3,052部、合計7万5,537部。
それらの雑誌がどの程度、少年たちに読まれていたのか? 同庁少年課の調査(高校3年生558人が対象、うち男310、女248)によると、 196人(約35%、男145、女51)が、これら性雑誌を読んだ経験があり「友人から借りた」39・2%、「本屋から買った」24%、 「貸本屋で借りた」11・2%、「本屋で立読み」3・2%、さらに"見逃し得ないもの"として「家にあった」7・6%、 「大人から借りた」6・8%、「親戚や友人の家で」「喫茶店、理髪店で」が各4%となっている。
雑誌を読んだ感想では「教えられるところがあった」33・8%、「面白かった」15・2%で、これは大人の秘密を知ったという意味であろうと、 執筆者の注釈。また「何も感じなかった」は32・4%もあるのは、毒にもクスリにもならなかったということか。 「とても嫌な感じがした」と「面白くなかった」はそれぞれ13・4%、5・2%である。 「親は読んでいる事実を知っているか」の問いに「知らない」「知らないと思う」あわせて65・1%もあるのは、 できるだけ隠れて読もうとしているからであり、家庭も子供に無関心、放任していることが原因と分析する (以上、警視庁防犯部少年課「不良出版物の実態」『学校図書館』55・08所載)。
 このころから、子ども向けの雑誌類がヤリ玉に挙げられる。物語の内容が荒唐無稽であったり、 粗悪なものをたくさんつけた付録合戦など、不良図書といわれるものが大人たちのヒンシュクを買う。

3.全国的な悪書追放運動の真相は…

◇1955(昭和30)年
1・21/改造社、編集局員全員解雇を発表、組合と対立(同社解散の発端に)
1・−/第4回青少年問題全国協議会で、"不良出版物"追放運動が問題に
2・9/真実の報道、言論・出版の自由などを掲げ、日本ジャーナリスト会議結成
3・5/正木ひろしの『裁判官』ベストセラーに、「真昼の暗黒」として映画に
3・24/新聞・放送・出版・映画等の団体によりマスコミ倫理懇談会が発足
マスコミ倫理懇談会全国協議会」(マス倫):マスコミ全体を横につなぐ組織。加盟は10団体(日本新聞協会/日本専門新聞協会 /日本放送協会/日本民間放送連盟/日本書籍出版協会/日本雑誌協会/映倫管理委員会/日本レコード協会/全日本広告連盟 /日本広告業協会)。マスコミ倫理の向上と言論・表現の自由の確保を目的として、東京で結成された。 "悪書追放"という出版物等規制の声に、危機感を募らせたため。いま全国10地区に協議会がある。
3・−/平凡社『世界大百科事典』32巻の刊行開始
4・15/日本児童雑誌編集者会の結成(8社30誌)
5・9/中青協、「青少年に有害な出版物・映画等対策に関する意見について」答申、関係業界に自粛の要請("特別立法化"問題⇒各自治体の条例制定を促進)
5・16/出団連、出版倫理化運動実行委員会を設置。悪書追放・出版界自粛を声明
5・25/岩波書店、『広辞苑』第1版を発行
8・13/日本民主党(総裁鳩山一郎)、パンフレット「うれうべき教科書の問題」第1集を発行("偏向教科書"を批判したもの)
10・−/松川裁判に対する批判論文、『文藝春秋』『中央公論』に掲載される
11・16/遠山茂樹・今井清一・藤原彰『昭和史』発行、ベストセラーに
12・9/主婦の友社、『主婦の友』の判型を、翌年3月号からA5判からB5判の大型化に変更と発表、同類他誌に衝撃を与える (社名・誌名も同時変更)
《この年…『セクサスT』『誘惑者』の摘発/新書判の発行点数2,733点に、全出版物の約13%/3・−テレビ受信契約5万台を突破 /4・7カラヤン、N響を指揮/4・12藤村富美男(阪神)、史上初の200号ホーマー(2人目は7・16青田昇(大洋) /4・14糸川博士がペンシル型ロケット初テスト/4・28外国人指紋登録実施/4・−第21回世界卓球選手権(ロンドン)で男女ともに団体優勝を達成。 男子単で荻村伊智朗が優勝/4・−明治製菓、初の缶ジュースを発売。粉末ジュースも出て、ジュースブーム /8・6広島で第1回原水禁世界大会を開く/9・20小中高校の通信簿が5〜1の五段階方式に/10・1総人口8,927万人、都の人口800万人を突破(第8回国勢調査) /10・−新宿駅ホームにアルバイト学生の「押し屋」第1号/11・7米軍、富士山麓でロケット砲「オネストジョン」の試射を開始)》
〔ことば〕ノイローゼ/最低ネ、最高ネ/ボディビル
不良図書(不良出版物):「見ない、読まない、買わない運動(3ない運動)/不良図書の追放/子どもを守ろうと母の会など」 …児童雑誌のうち『冒険王』『おもしろブック』『幼年ブック』などは40〜50万部、『なかよし』『漫画王』『少年クラブ』などが20〜30万部も売れ、 少ないところでも10万部を下らず、その特長は"見る雑誌"となっている。写真グラビア、漫画、絵物語などが52%を占め、 とくに『痛快ブック』4月号は216ページのうち200ページをそれらで占めている(読売55・3・30)。
「ひどい近ごろの児童雑誌/関係方面の意見を聞く/ねらいは刺激だけ/"破壊"や"残虐性"が共通」 …「児童雑誌の発行部数は1か月推定750万部といわれ、しかも1冊の雑誌をめぐり数人の子どもの"まわし読み"が盛んなので、 影響力はいっそう広範囲になる」(朝日55・3・31夕刊)。
ある小学校教諭は「昨年の夏ごろから低俗化したが、今年はさらに輪をかけ、たとえば2、3、4月号の少年雑誌はたいてい 『力道山物語』を取り上げ」ているが、「プロ・レスの解説記事ではなく、力道山を攻撃の手をゆるめずに相手をブチ倒す『怪物』としてたたえ」たり、 戦争ものも急に増え「仮想敵国を設けたり、日本に誘導弾の基地ができたり、少年航空兵の出撃の姿を描いたり」、 さらに「どうして悪玉なのか、理由の全然ない」ものもあり、「『破壊』とものすごい『残虐性』が少年読物に共通」と分析する (朝日55・3・31夕刊)。
少女雑誌に登場する少女:「片親がいないとか、原爆孤児、身分の高い人の落し子」などで、 「いじめられて泣き暮らしているところへ"偶然に"金持ちが現われて救われ」たり、 「東京に憧れ家出した少女が"偶然に"美声を認められてスターになる」などのストーリーが多いという。
児童雑誌とオモチャ的付録:「漫画と絵物語がふえているが、漫画本来のコッケイ味より残虐もの、探偵ものに変わって」きて、 「フロクも別冊競争をやっていて、ひどいのは4、5冊」もついており、下町の子どもたちは、それらを1冊10円から20円で取引していると報告(同前)。
警視庁からみた不良出版物(雑誌):「性的刺激を与えるもの」「暴力肯定」「人間軽視」「射幸心をそそるもの」 「民主主義の破壊」等を現すものを取締りの基準とみなし、少年向け…『痛快ブック』『少年冒険王』 /成人向け…『夫婦生活』『あまとりあ』『りべらる』/講談もの…『読切講談』『読切傑作』など、あくどいものやエロ雑誌、 暴力もののほか、娯楽もの…『平凡』/総合…『真相』『世界』等の雑誌がリストアップ(『読書タイムズ』55・4・5)。
"大人向け"悪質本:「悪質本発行所など手入れ/けさ42か所に/37種の差押えを手配」 …警視庁防犯課は「発行所と取次店の責任者は刑法175条のワイセツ文書販売目的所持禁止規定違反現行犯として全部逮捕する」という強行方針で手入れを行った。 防犯部長は「近ごろこのようなエロ・グロの特価本(俗称ゾッキ本、非月刊)は普通の本屋からではなく、街頭売りとして青少年の手に入り、 環境上よくないという世論が強かったので、東京地検と密接に打合せの上、従来にない一斉取締りを行った」(朝日55・4・27夕刊)。

◇1956(昭和31)年
1・28/日本国、万国著作権条約批准(保護要件:著作権者名、第一発行年、c記号)
1・30/日本雑誌協会(雑協)発足(初代会長石山賢吉)、出版業界の再編成に
2・6/新潮社、『週刊新潮』創刊、出版社系週刊誌の第1号
2・28/愛知で高校生が教師に集団暴行(3・1松原市でも。9・23熊本の高校生200人が教師を軟禁)
3・13/教科書法案国会上程(3・10出労懇談など「教科書の国家統制」に反対決議)
3・−/1月に芥川賞受賞の石原慎太郎『太陽の季節』(新潮社)が発売され、5月映画化とともに新語"太陽族"など社会的な話題に (⇒12・1新・映倫の発足)
3・31/伊藤正徳『連合艦隊の最後』発行、ベストセラーに
4・17/出版取次懇話会、日本出版取次協会(取協)と改称⇒50・8・25
5・1/「本の定価が安すぎる」と小売・取次業者が連名で出版社に要望
6・13/森赫子『女優』発行、タレント本の第1号
6・30/石川達三『四十八歳の抵抗』発行、ベストセラーに
7・10/清瀬一郎文相、「男女共学の廃止を考慮」と記者団に語る
8・10/五味川純平『人間の条件』第1部発行、第5部まで250万部のベストセラーに
8・23/栗田書店、2年前に出版業界初の読書普及宣伝カーを製作、第11次東北・北海道巡回で総行程4万452キロ、 33か月で全国を巡回
8・25/フランクル『夜と霧』発行、ベストセラーに
11・5/中青協、「非青少年向き映画の観覧制限立法」を建議
12・20/原田康子『挽歌』発行(翌年も70万部を売って年度ベストワンに)
《この年…「なべ底不況」始まる/『別冊週刊サンケイ』創刊号のグラビア「女湯の生態」摘発 /1・−日本初の分譲マンション「信販コーポラス」、四谷に完成。400〜700万円/2・11東京で紀元節奉祝の行進に3,000人が集まる /3・−東京〜大阪夜間急行に3等寝台復活/4・1インスタントコーヒー輸入許可/6・2東京の深夜喫茶33店の手入れ /7・18東京都、深夜喫茶取締条例を可決/8・25上野駅での家出人1日で32人を保護/11・19東海道本線全線電化完成 /12・12日ソ国交回復》
〔ことば〕太陽族/もはや戦後ではない(「経済白書」)/一億総白痴化
一億総白痴化:大宅壮一いわく「最近のマス・コミは質よりも量が大事で、業者が民衆の最低辺をねらう結果、 最高度に発達したテレビが最低級の文化を流すという逆立ち現象―マスコミの白痴化がいちじるしい。 プロデューサー、スポンサーはこれが果して心から視聴者に受け入れられているかどうかを反省すべきだ。 恥も外聞も忘れて"何でもやりまショウ"という空気は、今の日本全体が生み出しているものだが、 新聞も時々"白痴化番組一覧表"をつくって、それらが物笑いになるような風潮にしたい」(東京56・11・8)

◇1957(昭和32)年
2・1/深沢七郎『楢山節考』発行、ベストセラーに
2・2/大宅壮一、週刊誌上でテレビ低俗番組にふれ、「一億総白痴化」と批判
3・8/日本、国際連合に加盟(56・12・18国連総会で日本の加盟承認)
3・13/チャタレイ裁判、最高裁「わいせつの3原則」判示し上告棄却、訳者伊藤整・発行者小山書店の罰金刑が決まる ⇒52・12・10高裁判決
3・29/日本書籍出版協会(書協)発足(初代会長下中弥三郎)
4・−/田宮虎彦・千代『愛のかたみ』発行、ベストセラーに
5・4/光文社、右翼団体の干渉で『三光』(日本人の中国における戦争犯罪の告白)販売中止に
5・25/警視庁、書協に出版社・著者を脅迫する右翼取締りの協力を要請
6・20/三島由紀夫『美徳のよろめき』発行、ベストセラーに
8・5/松永文相、「来年から道徳教育を独立科目に」と発表
8・−/自民党法務部会、青少年育成基本法案を通常国会へ提出の動き(条例の不統一)
10・27/書協・雑協、読書週間に合わせ「出版倫理綱領」制定
10・30/井上靖『氷壁』発行、ベストセラーに
12・28/NHK・日本テレビ、カラーの実験放送開始
《この年…『寝室宝典』『性技大鑑』など旧刊"性典"モノを中心に単行本13点、『別冊週刊サンケイ』緑陰ロマンス特集号が 「石川啄木ローマ字日記」紹介で摘発/3・4鳥取県で自衛隊機墜落、17名死亡(自衛隊の墜落事故はこの年だけで14件、死者34名) /3・29東京・三田に東急アパート完成。高級マンションの代名詞に/3・−千葉・柏に住宅公団の光ケ丘団地。 「ニュータウン」という/4・−政府、電波媒体利用の広報活動強化。番組「政府の窓」を持つ/4・−熱海にモーテル第1号登場 /4・−新宿コマ劇場開場/6・−テレビ受信契約者50万を突破/6・−全国で流感が大流行。学童だけで患者50万5,000人、1,200校が休校 /7・−国民宿舎第1号、米子に開業/9・22国産ロケット第1号、秋田で発射成功/10・4ソ連初の人工衛星打ち上げ /10・1初めての5千円札の登場/12・11百円硬貨の登場》
〔ことば〕よろめき/グラマー/ストレス/何と申しましょうか

◇1958(昭和33)年
1・17/警視庁に売春取締対策本部が発足
1・−/村松梢風『女経』発行、ベストセラーに
2・1/松本清張『点と線』発行、ベストセラーに
2・−/第7回青少年問題協議会全国大会(官邸)で、青少年条例に替わる中央立法化論議、出版界が否定
3・15/日本出版労働組合協議会の結成⇒1973・09・−日本出版労働組合連合会
3・18/文部省、道徳教育実施要綱を通達
4・1/売春防止法の罰則規定施行(全国で約3万9,000軒、従業婦12万人が廃業)
4・−/坂本藤良『経営学入門』発行、ベストセラーに
5・28/日本雑誌広告協会(雑広協)、「雑誌広告倫理綱領」を制定(p132参照)
5・30/石川達三『人間の壁』発行、ベストセラーに
5・−/中青協、「青少年犯罪はマスコミの影響によるもの」と、マスコミに自粛勧奨
8・−/マスコミ倫理懇談会、東京都の青少年保護育成条例・政府の青少年保護育成法など文化統制などの兆しに対し協議
10・1/文部省、小学校学習指導要領全面改訂告示、教科書検定に新基準
10・8/警察官職務執行法(警職法)上程。野党、撤回を求め、翌日から審議拒否
10・−/教育文化産業労組共闘会議、警察官職務執行法改正に反対声明。学術会議、雑誌編集者も反対声明
11・5/安本末子『にあんちゃん』発行、ベストセラーに
11・12/『週刊明星』、急きょ「話題小説 皇太子の恋」(筆者:梶 謙介=梶山季之)を掲載(週刊誌いっせいに報道。新聞社側は抗議)
11・27/正田美智子さん、皇太子妃に正式決定
12・20/堀内敬三ほか『日本唱歌集』発行、ベストセラーに
《この年…3・9世界初の海底「関門トンネル」開通/3末、神宮外苑に国立競技場落成/4・1教員勤務評定の実施 /4・11最高裁が内縁を婚姻に準ずる関係と認める/5・16テレビ受信契約者数100万を突破/6・6東京の電話50万台に /11・1東海道線にビジネス特急「こだま」登場/12・1新しく1万円札の登場/12・23東京タワーの開場、高さ333m》
〔ことば〕「ご清潔でご誠実で」(皇太子妃となる正田美智子さん)
"青少年条例は違憲":このころ東京都でも検討されていた青少年条例だが、戒能通孝都立大教授(法博)は、 『新聞研究』58・06に"青少年条例は違憲"とする旨の論文「刑罰による青少年保護に反対する」を発表した。
要旨「有害物は法律によって一掃できるものではなく」、現行の青少年条例は「どの条例も立法技術的に欠陥だらけであり、 罪となり得ないものを罪とするだけでなく、有害物の認定を無条件、無制限的に一行政機関に任せているという事実だけ顧みても、 それ自体、憲法第三一条のいわゆる"法律の定める手続き"に違反する違憲立法である」と断定し、青少年の不良化を防ぐ道は、 「都市的生活の訓練がなるべく早く家庭内で形成されることによってのみ解決される課題である」と論ずる。
同教授はさらに半年後の『マスコミ倫理』(58・11・25号)に、「権力による青少年保護論/再考を要求する」と題した論文を寄せて、 「警察権と刑罰を行使するならば、有害物はますますヤミに流れて行き、ますます不良化の恐れがある青少年の手に入るであろうこと、 麻薬やワイセツ図画類が現在おかれていると同じ状況を作るに違いない」と断ずる。
また、岡山県の図書条例を引き合いに、「世の中の性急な人々は、ともすれば違憲か否か、実行できるか否かにおかまいなしに、 無理矢理に条例・法律を制定し、その人が有害と認めたがるものを、権力・警察力によって一掃したがっているようである。 だがそれにもかかわらず、ことがどれほど便利であるにせよ、刑罰は"一殺多生"のためにつけられるべきものではない」と、 "法の下における平等"の精神をないがしろにしてはいけないと説く。

◇1959(昭和34)年
1・20/岡田章雄・豊田武・和歌森太郎『日本の歴史』第1巻発行、ベストセラーに。日本史ブーム
2・15/主婦と生活社の労組、無期限ストに突入(12・29まで318日間続く)
3・1/書協および日本図書館協会、文部省が実施計画中の青少年向け図書選定制度に反対声明
3・1/出版社系の週刊誌ブームで、薬局などにスタンド販売が登場(『朝日ジャーナル』、4・12号『週刊現代』、 4・20号『週刊文春』『週刊平凡』など創刊)
3・17/『週刊少年マガジン』と『週刊少年サンデー』が創刊を競い、同日発売に
4・10/皇太子の結婚パレード、沿道に53万人が参集。テレビ各社、総力で中継(視聴者は推定1,500万人。 受信契約は直前に200万台を突破)
4・16/国民年金法を公布
4・−/日本テレビ、カラーの広告放映
5・30/本年の大学卒業生の就職率は戦後最高に
6・5/警視庁、低俗週刊誌追放の取締りを強化
6・−/文部省、教科書検定の厳格方針を言明
7・3/出版4団体による出版倫理推進特別委員会を設置
9・9/朝日ソノプレス社、音の出る雑誌を発売。同10・6にコダマプレス社からも
9・18/文部省、『青少年向図書目録』第1集を発行。書協、登載拒否の声明発表
9・20/長野市で「本を読む母親の全国大会」開催
9・30/藤本正雄『催眠術入門』発行、ベストセラーに
11・10/出版7団体により、読書推進運動協議会が設立される
《この年…1・1メートル法(1921・4・11採用〈記念日〉⇒24・7・1実施説も)、国民健保法の実施 /1・26全国初の有料駐車場、東京丸の内に設置/3・31共同通信社、通信用伝書鳩を廃止/3・−資生堂、男性用化粧品発売 /4・7最低賃金法成立/7・30東京地裁、米軍駐留を違憲と判断したが…(砂川闘争、伊達判決)/8・28三井・三池争議始まる /9・26伊勢湾台風で書店約250店が被災、出版物に大被害/11・−失業未亡人救済策として学童の交通整理「緑のおばさん」誕生(日給315円)》
〔ことば〕「私の選んだ人」(清宮貴子さん、島津久永氏と婚約)/タフガイ
低俗週刊誌:評論家の坂西志保によると、「駅の売店にならんだ週刊誌を、大枚30円払って買う。 表紙はみんな痴呆的美人の顔であるから、どれを選んだって同じことだ。次の日また一部買う。 こうして、大衆は週、少なくとも6〜7冊の週刊誌を読んでいるのであろう」と、次のように俎上に乗せる。 「いくら男性は裸がお好きであるとしても、すっ裸の女にピッケルをもたせたり、レスリングや野球(土曜漫画)をやらせ、 セミ・ヌードの女を森の中(週刊実話)に配置し、シュミーズの女機関車の横に(モダン日本)ねそべらかすなど、 まことに悪趣味である。スリラー・クイズ『週刊のスリラー』は、すっ裸の美人秘書が殺されて、 土手下に横たわっている写真である。醜悪で、不潔で、不健全で、グラビアはまさに人間冒涜?である。 (中略)女性はみんな娼婦的で"夜まで待てない"(週刊男性)情事はヒルへ移行する」。
 これらはだいたい最下級のもので、その他も全80ページがセックスとエロ記事でうずまっていると断ずる。 ゴシップ記事にも言及し、「週刊誌の暴露記事もひどい。山本富士子、フランク永井、美空ひばり、若乃花などから始まって、 芸能人・スポーツ界の人物はほとんどゴシップの種になっている。(中略)朝日と毎日を除けば、通信網を持った大新聞の週刊誌までがニュースをゴシップの次元に引き下げ、 社会批判を放棄してしまったのは、いかにも寂しい」と、新聞社系までコキ下ろし、海外の週刊誌と太刀打ちできるのは『朝日ジャーナル』だけという (「週刊誌時代というけれど…/あまりにひどすぎる低級化」朝日59・5・31)。

◇1960(昭和35)年
3・9/文部省、『青少年向図書目録』第2集発行
3・16/書協、『青少年向図書目録』に無断登載図書の抹消を文部大臣に要求
3・17/松田道雄『私は赤ちゃん』発行、ベストセラーに
4・2/『毎日新聞』の暴力団記事に憤慨した松葉会会員23人、東京本社を襲撃し、輪転機に砂をまき3台を止める
4・7/警視庁、マルキ・ド・サド『(続)悪徳の栄え・ジュリエットの遍歴』を、ワイセツ文書容疑で摘発。翌年1・20起訴、 訳者:渋澤龍彦、発行者:現代思想社、「サド裁判」⇒62・10・16
5・19/衆議院、日米新安保条約強行採決。6・19/日米新安保条約、自然承認
6・15/安保改定阻止実力行使に全国580万人が参加、警官との衝突で女子学生死亡
6・23/日米新安保条約発足。岸首相、安保騒動で退陣へ(7・19池田内閣誕生)
6・25/謝国権『性生活の知恵』発行、初のミリオンセラー(読書カード3割が女性)
9・10/NHK・日本テレビ・朝日放送・読売テレビなどがカラーテレビ本放送開始
10・12/日比谷公会堂で演説中の浅沼稲次郎日本社会党委員長、右翼少年に刺殺される(プロ野球日本シリーズ放映中、 テレビで"生中継")⇒この事件などを受け、全国的に「刃物を持たない運動」が展開される
10・−/林髞『頭のよくなる本』発行、ベストセラーに
11・29/宮内庁、『中央公論』掲載の深沢七郎作「風流夢譚」は皇室の名誉を傷つけるものと抗議、30日、同誌が陳謝 ⇒61・2・1「嶋中事件」
12・20/全国共通図書券が発行される(「図書カード」の普及で2004年に廃止決定)
《この年…ジャズ喫茶増加/睡眠薬まん延/酒・タバコの自販機増加/『週刊新潮』11・7号が大藪春彦「血の来訪者」(20)で、 『江戸城大奥秘蔵孝』『艶本研究・国貞』も摘発される/1・1ピンクの公衆電話登場/1・−丸井が月賦をクレジットと改称 /2・1東京・丸の内に初の地下駐車場/2・7東京都内の電話局番3桁に/3・−三井銀行、全国どこでも出し入れできる普通預金の「ネットサービス預金」開設 /4・−ソニー、世界初のトランジスタテレビを発売/タカラ、ダッコちゃん大ヒット/4・−小学校新入生177万人で戦後最低に /5・7中・高卒の就職率は戦後最高に/5・−グアム島から元日本兵2名帰国/7・19池田内閣に初の婦人大臣・中山マサ厚相誕生 /8・11テレビ受信契約数500万を突破》
〔ことば〕私は嘘は申しません(自民党のテレビCMで、池田首相)
"有害指定"の問題点:刑法と刑事訴訟法が専門の佐伯千仭京都大学法学部教授(日本学術会議会員)は、図書の有害指定に関し、 「行政官たる知事が、同じく行政上の諮問機関に過ぎない審議会の一応の意見を聞いただけで、実際においては属僚の判断にしたがって、 基本的人権たる言論、出版の自由を大幅に制限しうる」ことに疑問を投げかけ、「問題は制限する機関が裁判所その他の司法機関でなく、 行政機関であること」といい、「処分によって不利益を受ける人の十分な言い分、申し立てが聞かれないで一方的に処分されることになりやすい」ことを指摘している (「刑法からみた青少年保護条例」『マスコミ倫理』60・2・25)

◇1961(昭和36)年
2・1/「風流夢譚」関連し、右翼少年、中央公論社嶋中社長宅を襲撃(夫人傷害、家政婦殺害)。 社長は謝罪し、以後『中央公論』の編集方針が変わる(嶋中事件)
2・1/平凡社『国民百科事典』刊行開始、ベストセラーに
2・25/小田実『何でも見てやろう』発行、ベストセラーに
2・−/南博『記憶術』発行、ベストセラーに
3・15/有田八郎、モデル問題で『宴のあと』の三島由紀夫と新潮社を告訴⇒64・9・28原告のプライバシー侵害で慰謝料80万円に、 被告が控訴⇒66・11・28和解
4・16/大分県教組、「君が代」を歌わせない方針を決める
4・20/書協、出版の自由と責任に関する委員会を設置(5・11声明を決議)
8・5/岩田一男『英語に強くなる本』発行、ベストセラーに
11・20/少年の睡眠薬遊び流行と厚生省が警告(未成年者への睡眠薬の販売を禁止)
12・21/中央公論社、『思想の科学』1月号(天皇制特集号)を発売中止
12・26/思想の科学研究会、12月号限りで中央公論社との関係を断つとの声明
《この年…中青協決定、「青少年対策当面の重要事項」(マスコミ・アウトサイダー対策強化問題) /1・20ケネディ、アメリカ大統領に就任/4・1小児マヒの全国的流行にワクチン100万人分を輸入 /4・1国民皆保険と拠出制国民年金が発足/4・1名古屋のソバ屋で出前料5円/4・−上野公園内に東京文化会館完成 /NHK朝の連続テレビ小説始まる。獅子文六原作『娘と私』/5・19「酔っぱらい法案」衆院で成立 /6・26毎日マラソン出場のアベベ選手、大阪のカミナリ族の排気ガスに悩まされる /8・1釜ヶ崎住民の暴動再発に警官6,000人、死者を出し騒ぎは4日まで続く /8・13東ドイツ、西ドイツへの通路を閉鎖「ベルリンの壁」を構築/12・2全逓の超勤拒否で郵便の滞貨150万通に /12・12旧軍人らのクーデター(内閣の要人暗殺計画)、三無事件(無戦争・無税・無失業を唱える)が発覚》
〔ことば〕不快指数/巨人・大鵬・玉子焼き/何でも見てやろう

◇1962(昭和37)年
2・1/東京都の常住人口、推計で1,000万人突破(世界初の1,000万都市)
2・−/山口清人・久代『愛と死のかたみ』発行、ベストセラーに
3・−/テレビの受信契約者数、1,000万人を突破
3・−/国産初のピンク映画「肉体の市場」公開
3・31/義務教育諸学校の教科書、無償となる
4・16/取協、「出版物取次倫理綱領」を制定(p131参照)
7・20/小売全連、「母と子の20分間読書運動」実施促進のため特別委を設置
7・−/J・アダムソン『野生のエルザ』発行、ベストセラーに
8・−/小学館『日本百科大事典』刊行開始、ベストセラーに
9・1/富士ゼロックス、国産初の電子複写機完成、コピー時代の幕開けに
10・16/「サド裁判」、東京地裁が無罪判決⇒63・11・21
《この年…少年マンガのブームに/石原プロ、三船プロ発足/1・16「昭和36年度の交通事故による死者1日平均35人余」と交通事故白書発表 /4・−ゴミ袋がポリペールに変わり、ゴミの定時収集方式が始まる/プロレス中継で脳出血死相次ぐ/常磐線・三河島駅で列車事故死者160人 /5・12大阪の堀江謙一、ヨットで93日かけ単独で太平洋を横断/8・1水ききん対策で、都は240校の給食を停止に》
〔ことば〕無責任時代(植木等の歌大流行)/女子学生亡国論(暉峻康隆早大教授)

◇1963(昭和38)年
1・−/池田首相、出版11社の社長を招き懇談
3・11/宮内庁、月刊『平凡』に連載の小山いと子作「美智子さま」は好ましくないと抗議。 3・12『平凡』5月号限りで中止と回答
4・1/占部都美『危ない会社』発行、ベストセラーに
4・−/佐藤得二『女のいくさ』発行、ベストセラーに
8・1/総理府、「マスコミと青少年に関する懇談会」を設置
8・2/『女性自身』掲載の「サリドマイド生体実験」記事に非難の声、中央児童福祉審議会、児童の生命を軽んじ人権を無視したものとして、 初の勧告権を発動
9・12/最高裁、松川事件再上告審で、上告を棄却、被告ら全員無罪確定
10・2/甲府市の書店組合、青少年に有害な雑誌31誌の送品拒否を取次に申入れ
10・11/都内中学校PTA連合会会長ら連名で、都議会に対し「青少年の保護育成の条例制定に関する請願」を提出
10・16/雑協、「雑誌編集倫理綱領」を制定(p130参照)
10・18/小売全連(のちの日本書店商業組合連合会=日書連)、「出版販売倫理綱領」を制定(p132参照)
10・28/小売全連傘下の組合による青少年有害雑誌取扱い拒否、全国的な運動に
11・21/「サド裁判」、東京高裁が有罪判決(少数意見「わいせつ概念は社会の文化発展の程度や芸術性・思想性との関連で評価、 判断すべきである」)⇒69・10・15
11・−/出版・新聞・放送・全印総連・映演総連などでマスコミ文化共闘会議が発足
12・6/総理府・マスコミと青少年に関する懇談会、「不良マスコミの排除は業界内部の自主規制に期待すべき」と答申
12・13/総理府、閣議に青少年とマスコミに関する国政モニター報告書を提出
12・21/出版4団体(書協・雑協・取協・小売全連)、出版倫理推進特別委を改組し、出版倫理協議会(出倫協、議長・布川角左衛門)を設置
《この年…少女コミック誌の登場/『100万人のよる』5月号、『ユーモア画報』11、12月号が摘発 /4・12バナナの競売り22年ぶりに復活/8・5米英ソ部分核実験停止条約調印/11・23日米間テレビ宇宙中継実験でケネディ大統領暗殺を速報》
〔ことば〕バカンス/番長/ハッスル/カワイコちゃん
青少年有害雑誌:10・28小売全連は東京組合と合同の倫理委員会を開催し、青少年有害誌21誌の仕入れ拒否を発表した。 NHKテレビ、日本テレビ、新聞協会、時事通信、朝日、日経、共同通信、アカハタ、週刊読書人などが次々に取材に来たという。 《マスコミの"騒ぎすぎ"は、いまも昔も変わらない》
仕入れを拒否されたのは、月刊の芸能特報/実話情報(ともに三幸出版)、読物実話(日本文華社)、実話雑誌(三世新社)、 女の百科(新樹書房)、実話と秘録(広晴社)、夫婦生活(家庭新社)、裏窓(あまとりあ社)、一〇〇万人のよる(季節風書店)、 別冊実話三面記事/別冊事件実話(ともに日本文芸社)、ユーモア画報(一水社)、男の専科(三井出版)、 風俗奇譚(文献資料刊行会)、奇譚クラブ(天星社)の15誌、そして週刊実話と秘録(広晴社)、週刊事件実話 /実話三面記事(ともに日本文芸社)、週刊内外実話(富士書房)、週刊特報(新樹書房)、週刊特集実話(日本文華社)の6週刊誌。
小売全連が"悪書追放"に立ち上がった背景として、(1)世論の非難、(2)悪書販売による儲けの低下、(3)取次店に対する小売商の連帯力の誇示と地位回復、 (4)世論を代行する公共機関(青少協など)の要望への同調、(5)出版物に法的規制が加えられることへのおそれなどと、 『朝日ジャーナル』にある(63・10・27)。

◇1964(昭和39)年
1・13/出倫協、東京都へ「低俗出版物といわれるもの質、量とも後退の方向にあること、 この問題での法的規制は言論・出版の自由に絡む」との陳情書を提出
1・24/閣議、深夜喫茶の締出しを決定
3・28/出倫協、東京都へ「出版物は条例によって規制すべきでなく、業者の良識ある自主規制に任すべきである」と2度目の陳情書を提出
4・27/出倫協、出版物自主規制特別委員会を設置
4・−/出版学校 日本エディタースクールの開校
6・3/出倫協、アウトサイダー出版社と懇談、自主規制を強く要望
6・16/新潟地震(死者25名、倒壊家屋1,087戸)、小売全連から現地の書店へ義捐金42万8,000円
7・2/出倫協、東京都条例制定に対処、「全出版業界に訴う」を配布
8・1/東京都青少年の健全な育成に関する条例が成立(同10・1施行)
8・20/小売全連、読書週間行事の増売運動「良書100選」「優良雑誌100選」を発表
《この年…少年非行第2次ピーク(テレビ番組)/『続・高橋鐵コレクション』(63年出版)が押収される(不起訴) /1・27厚生省、タバコ肺がん説に対策会議を開く/4・1観光目的の海外渡航自由化/国立西洋美術館で『ミロのヴィーナス展』開催 /4・28第1回生存者叙勲に吉田茂元首相ら201人/5・12厚生省、トルコ風呂(いまソープランド)の監視強化を通達 /8・2ベトナム戦争始まる/10・1東海道新幹線が開業/10・10東京オリンピック開催。五輪関係雑誌、書籍売れ行き好調》
〔ことば〕ウルトラC/シェー/おれについてこい/根性/トップレス

◇1965(昭和40)年
1・11/中央教育審議会(中教審)、「期待される人間像」の中間草案を発表
2・10/社会党の岡田春夫、衆院予算委で防衛庁統幕会議の極秘文書「三矢研究」を暴露(朝鮮有事を機に日本の戦時体制への転換を研究。有事立法への先駆け)
2・−/TBSテレビで「紀元節」賛否論争
2・−/条例制定の関東1都8県の集まりで、青少年保護法の制定(中央立法化)を首相に要望の動き
5・7/出倫協、「自主規制についての申し合わせ」(帯紙措置)を決める
5・−/日本テレビ「ベトナム海兵大隊戦記・第1部」放送、橋本官房長官・米大使館からの抗議で第2部以下中止となる
5・−/NETテレビで放映予定の「判決」シリーズ、「佐紀子の庭」が中止に
5・−/福井放送、東京新聞、毎日放送、大映などの労働争議に暴力団・警官隊の導入が相次ぐ
6・−/大学生に漫画ブーム起こる(大学生100万人突破)
6・12/家永三郎東京教育大教授、教科書検定を違憲と訴訟(第1次教科書裁判⇒74・07東京地裁「検定は合憲合法、運用で一部違法」 ⇒86・03東京高裁「合憲合法」⇒93・3・16最高裁判決、原告全面敗訴。他に第2次、第3次訴訟が)
6・20/大松博文『おれについてこい!』発行、ベストセラーに
7・20/山崎豊子『白い巨塔』発行、ベストセラーに
8・−/8・15記念の徹夜討論をテレビ中継していた東京12チャンネルは午前4時過ぎ、司会者の発言が一方的と突如中止、抗議が殺到
10・1/三浦綾子『氷点』発行、ベストセラーに
10・−/『宝石』創刊、男性雑誌の到来といわれる
10・−/ライシャワー米駐日大使が、「日本の新聞はベトナム情勢について均衡の取れた報道をしていない」と発言、 朝日・毎日のハノイ報道を非難。TBSから報道シリーズが消える
11・30/総理府・マスコミと青少年に関する懇談会、最終意見書を提出。佐藤首相、低俗マスコミ追放を閣僚に指示
《この年…閣議、青少年憲章制定と青少年健全育成対策を決める/青少協全国会議、青少年育成国民運動の積極的推進を決議 /清水正二郎訳『世界秘密文学選書』全15巻や続刊など26点がまとめて摘発を受け、武智鉄二の連載随筆により『週刊サンケイ』4・26号と5・3号も。 吉田健一訳『ファニー・ヒル』は不起訴になる/1・20日本航空、JALPAKの募集開始/2・7米軍、北爆開始/3末サイゴンの米大使館爆破 /3・31新宿淀橋浄水場が閉鎖。のち新宿副都心に/4・2日韓交渉、細目で合意。3日、漁業・法的地位・請求権の合意事項に仮調印(6・22基本条約調印) /4・24ベトナムに平和を! 市民文化団体連合(べ平連)主催最初のデモ/4・−松下電器産業、完全週休2日制を実施 /中学卒の高校進学率、全国平均70%を越える(最高東京86.6%、最低青森54.3%) /4・14東京の風呂屋、値上げ要求で一斉休業、26日にも実施/4・28私鉄158社、24時間ストで1,000万人の足が混乱 /10・27上野駅地下道に浮浪者再び集まる/11・17プロ野球初の新人選択(ドラフト)会議/12・1総人口9,828万人で世界第7位 /戦後初の赤字国債発行を決定》
〔ことば〕期待される人間像/しごき/公害/夢の島/007

◇1966(昭和41)年
2・11/警視庁がギャング映画にピストルを貸与し、ピストル違法問題を起こす
4・−/日本近代文学館の開館
5・27/青少年育成国民会議の発足(初代会長・茅誠司元東大総長)
5・−/『週刊新潮』5・14号、梶山季之の「女の警察」(6)で摘発される
10・25/井伏鱒二『黒い雨』発行、ベストセラーに
12・−/多湖輝『頭の体操』発行、ベストセラーに
12・9/建国記念の日は2月11日と政令公布(⇔旧・紀元節)
《この年…総理府に「青年局」設置/首相の諮問機関「青少年問題審議会」設置(中青協の改組) /カー・クーラー・カラーテレビの3C時代へ/ミリタリールック流行/2・4全日空羽田沖事故で、出版人も多数犠牲に /3・末、法務省住民登録集計による総人口、1億人を突破(1億55万4,894人)/4・1国鉄の「顔パス禁止」スタート /4・−土地建物にもメートル法実施。鯨尺は生産禁止/本年の交通事故死者数1万3,319人で史上最高/年間倒産5,919で史上最高》
〔ことば〕黒い霧/ケロヨーン/ダヨーン/びっくりしたなーもう

◇1967(昭和42)年
2・11/初の「建国記念日」。東大・東京教育大などの学生、記念日に反対し同盟登校
2・−/閣議でTBSテレビ「現代の主役・日の丸」の偏向を論議
3末/都の学校群制度による高校入試スタート(2003年度廃止)
6・18/出倫協、二つ目の自主規制として「要注意取扱誌」を指定し発表
6・20/小売全連、上記「要注意取扱誌」の指定16誌の一括送品拒否を決定
6・−/『F6セブン』7・17号、近藤啓太郎の「高級娼婦」(2)で摘発される
8・−/新宿にフーテン族が登場
10・−/佐賀潜『民法入門』発行、ベストセラーに
10・31/吉田茂元首相の国葬(戦後初)にあたり、ラジオ・テレビ各局、終日特別番組を放送、出版労協が抗議のビラまき
《この年…シンナー乱用増加の兆し/明治百年もの出版など盛ん/劇画がブームに/『ヤングコミック』など青年コミック誌の創刊 /テレビ受信契約数2,000万台を突破/3末東京駅新幹線「みどりの窓口」爆破事件/4・15美濃部亮吉、都知事に当選 /4・10東京で精巧なニセ百円札発見/4・−警視庁「交通110番」(暴走車用)を新設(月光部隊も設置) /6・−自動車の保有台数1,000万台突破/12・−ムチウチ症が激増/12・11非核三原則宣言》
〔ことば〕核家族/アングラ族/蒸発/ボイン

4.明治百年、"昭和元禄"太平の御世に

◇1968(昭和43)年
3・−/出版労協、『少年サンデー』懸賞問題を中心とする出版物の軍国主義化に関して抗議声明
3・−/北杜夫『どくとるマンボウ青春記』発行、ベストセラーに
3・−/ポルノ映画第1号「女体の神秘」(西ドイツ)公開、続いて「女の歓び」「完全なる結婚」(スウェーデン)、 日本でも製作盛んに
4・18/日本雑誌広告協会、「雑誌広告掲載基準」を制定(「風紀に関する広告」)
4・−/梶山季之の連載小説「かんぷらちんき」で『週刊現代』4・25号が、同じく「スリラーの街」掲載の『週刊新潮』も摘発される (「権力に挑戦する作家」だったと、作家岩川隆はいう〈『ダ・ヴィンチ』95・08号、特集「発禁本」〉)
6・15/法律第99号により、総理府に青少年対策本部(本部長…内閣総理大臣)および文部省の外局として文化庁を設置
6・28/海音寺潮五郎『天と地と』全3冊発行、ベストセラーに
6・−/歴史学関係54学会、明治百年事業に反対声明
7・10/羽仁五郎『都市の論理』発行、ベストセラーに
10・1/書協、布川角左衛門総編集長による『日本出版百年史年表』を刊行
10・17/川端康成ノーベル文学賞受賞、川端文学関連書爆発的売行きに(授賞講演「美しい日本の私」)
《この年…総理府総務長官、出版・映画・広告・環境衛生・貸本などの業者団体に自主規制の強化に関する要望を出す /"昭和元禄"といわれるほど、天下太平の世に/1・29東大紛争始まる/2・26成田空港建設阻止集会1,600人、警官隊と乱闘 /3・31米大統領は北爆停止発表/4・15日大紛争始まる/4・−霞が関ビル完成(36階147m、初の超高層ビル) /ラジオ受信料廃止、NHKはテレビ受信料にカラー料金を新設465円(カラーテレビ100万台) /6・26小笠原諸島、日本に復帰/10・21全共闘系の各派全学連、新宿駅前広場を占拠(反戦集会) /12・10東京・府中で三億円強奪事件発生/12・−熊本市内で、初のスクランブル交通整理を実施》
〔ことば〕昭和元禄/ハレンチ/ノンポリ/ゲバルト/とめてくれるなおっかさん

◇1969(昭和44)年
1・18/東大紛争・安田講堂封鎖事件で、新聞各紙・テレビ各局「安田砦」の攻防を報道
3・14/出版学の確立を目ざして日本出版学会の設立(初代会長布川角左衛門)
10・15/「サド裁判」、最高裁上告棄却、訳者・発行者の有罪確定⇒63・11・21
10・31/文部省、高校生の政治活動禁止を通達
《この年…総理府、俗悪広告追放推進要綱を策定/同、非行少年の生活実態調査結果を発表/少年週刊誌の部数が急増 /『壇の浦夜合戦記』『エマニエル夫人』が摘発される/3・31交通遺児育英会設立/東大・教育大、紛争で入学試験中止に /4・−厚生省が69年の人口動態を発表。史上最高の離婚件数を記録/5・26東名高速道路全線開通(東京 ― 西宮346.7km) /6・29べ平連による新宿西口地下広場での反戦フォークソング集会に7,000人が参集。機動隊、ガス弾で規制、64人逮捕される /7・20米アポロ11号、人間を乗せ初の月面着陸に成功/10・15全米にベトナム反戦デモ》
〔ことば〕オー・モーレツ!/造反有理(毛沢東「叛逆には道理がある」→"造反有理、革命無罪"…村上龍の小説に出てくる由05・06・10) /あっと驚くためゴロー/ニャロメ

◇1970(昭和45)年
1・5/国会で公明党・創価学会の言論・出版妨害が問題化(藤原弘達『創価学会を斬る』を巡り、真相究明に)
1・27/小売全連、創価学会の出版妨害問題で声明書(5・−池田創価学会会長、「猛省する」との見解を発表)
1・−/四日市の中学校長会、「子ども週刊誌のハレンチ漫画を追放せよ」と版元へ申し入れ(永井豪『ハレンチ学園』)
2・26/書協、言論・出版妨害問題で声明書発表
5・6/全面改正の新著作権法が公布される(翌71・1・1施行)
5・20/イザヤ・ベンダサン『日本人とユダヤ人』発行、ベストセラーに
5・28/警視庁、風俗問題に関する懇談会を設置
7・17/東京地裁、家永教科書訴訟で「検定不合格取消し処分」の杉本判決
7・−/婦人月刊誌の8月号から、自衛隊のPR記事掲載(反対で一部中止に)
10・−/『小学二年生』の「ひばく星人」、問題化
11・25/三島由紀夫、市谷の自衛隊本部で割腹自殺(45歳)、三島関連本ブーム
《この年…3・14大阪・千里で日本万国博覧会開場(ケンタッキー・フライドチキン、同万博に初登場) /3・15都心の主な交差点信号スクランブルに/3末八幡・富士両製鉄所、合併して新日本製鉄発足(資本金2,293億6,000万円、従業員8万人) /3・31日航機よど号、赤軍派学生9人に乗っとられ、韓国の金浦空港に着陸、4・3乗客ら103人を解放して北朝鮮へ。 山村運輸次官が乗客と引換えに平壌まで飛ぶ(日本初のハイジャック事件)/8・−歩行者天国のスタート。世界で2番目》
〔ことば〕ハイジャック/ウーマンリブ/鼻血ブー/へドロ/スキンシップ
ハレンチ漫画:この年1月、四日市の中学校長会は、小学生にスカートめくりをはやらせた永井豪の「ハレンチ学園」の追放を決定、 県青少年保護審議会に有害指定するよう働きかけた。ジョージ秋山の「アシュラ」は残忍な内容だとして、 神奈川県児童福祉審議会が掲載誌『少年マガジン』を有害図書に"指定"し、県内の書店に売らないよう指示をした。
青少年向けの週刊マンガが"指定"されたのは全国でも珍しいが、北海道児童福祉審議会も児童福祉法に基づいて出版と販売をやめるよう版元、 取次店、小売店に勧告したという。手塚治虫の異色性教育コメディ「やけっぱちのマリア」の性器描写等が強すぎると『少年チャンピオン』が、 「アシュラ」掲載誌とともに、福岡県児童福祉審議会で有害"指定"とされた。
少女小説のセックスもの流行:『ジュニア文芸』『小説ジュニア』『女学生コース』が3大誌で、 「主人公の女子高校生がキスをする段階はとうにすぎ、小説、身上相談とも大人の雑誌そのまま。性の位置づけにゆれ動いている」という。
怪獣マンガや図鑑:10月、子供雑誌『小学二年生』の付録である"被爆者の怪獣マンガ"「ひばく星人」と、同じものを扱った 「怪獣図鑑」が問題視されるなど、少年少女向け出版物は話題を提供し続けた1年だった

◇1971(昭和46)年
2・−/青少年育成国民会議の懇談会(東京・麹町会館)、シンポジウム開く
テーマ「少年雑誌の問題点とその対策」:このとき、少年マガジン・少年サンデー・少年ジャンプ・少年チャンピオン ・少年キング・少女フレンド・少女コミック・マーガレットの各編集長が呼ばれる。全国から集まった育成関係者は、 子どもの言葉づかいが悪くなる、明るいタッチのものを、純粋なマンガをなぜ出せないなどと詰め寄る。 また、青年誌『プレイボーイ』『平凡パンチ』を子どもたちが読んでいるのは問題だとの指摘も出た。
3・−/雑誌が中心の大宅壮一文庫が開館
3・−/『朝日ジャーナル』3・19号の回収。赤瀬川源平「櫻画報」、「アカイアカイアサヒアサヒ」問題、 編集権と経営権の対立で注目を集める
5・10/高野悦子『二十歳の原点』発行、ベストセラーに
5・−/『ノンノ』創刊、前年3月創刊の『アンアン』読者と合わせ、「アンノン族」の語が生まれる
6・−/米『ニューヨークタイムズ』、米国防省のベトナム機密文書の連載を始める
《この年…青少年対策振興国会議員懇談会が発足/『リリアン』『若きドン・ジュアンの冒険』や『えろちか』11月号が摘発される /3・31最高裁、青年法律家協会加入の判事補宮本康昭の再任を拒否、裁判官志願の司法修習生7人も不採用(いわゆる司法の反動化) /4・1東京・新宿駅前の地価3・3u238万円で銀座を抜く/4・16天皇・皇后両陛下、広島原爆碑を初めて参拝/6・17沖縄返還協定に調印》
〔ことば〕脱サラ/ニアミス/ガンバラなくっちゃ/シラケ

◇1972(昭和47)年
1・18/この年「国際図書年」、この日東京文化会館で同宣言大会を挙行しスタート
1・28/警視庁、日活ロマンポルノ『恋の狩人』(ラブ=ハンター)など3本をワイセツとして日活本社を捜索、フィルムなどを押収。 1・31映倫が抗議声明
2・19/連合赤軍の浅間山荘事件起こる(2・28テレビ各局は、山荘の破壊作業をコマーシャル抜きで終日中継放送)
4・4/警視庁、公電漏洩容疑で外務省女性事務官と毎日新聞記者を逮捕(国民の知る権利が争われ、ともに有罪判決。 "情を通じて…"の一文に「知る権利」が封印される。2000・11・24元記者、雑誌に『条文偽造の国家犯罪』と一文を寄稿
4・16/川端康成、仕事場でガス自殺
4・−/紙巻きタバコの外箱に「健康のために吸いすぎに注意しましょう」の表示
6・10/有吉佐和子『恍惚の人』発行、ベストセラーに
6・20/田中角栄通産相『日本列島改造論』発行、ベストセラーに
6・22/永井荷風作といわれる「四畳半襖の下張」掲載の野坂昭如編集『面白半分』7月号とそのコピーを売ったシコシコ摸索舎、 わいせつ容疑で摘発⇒73・2・21
9・−/小売書店、正味問題で12日間にわたりスト(ブック戦争)
10・23/横浜地裁、(ある会社がアメリカから輸入し横浜税関に申告した)ヌード写真集について、 関税定率法第21条に基づく審査により、「公安又は風俗を害す」ものは禁止の措置が講じられるとする処分を支持、 また同審査は違憲に当たらないとした
《この年…『ぴあ』創刊/有害雑誌指定が高原化の傾向(81年まで続く)/列島改造の土地ブーム、地価1年間で30%暴騰 /2・3第11回冬季オリンピック、札幌で開催/3・27社会党横路孝弘、衆院で沖縄返還協定の秘密文書を暴露(軍用地補償費を日本が肩代わりする密約) /3・30南ベトナム全土で解放勢力がテト攻勢以来の大攻勢/3・31築地の中央卸市場で、冷凍魚の年間売上が初めて鮮魚を上回る /4・6米軍、北爆再開(ベトナム戦争)/5・15沖縄本土に復帰/8・26第20回オリンピック開催/9・29日中国交正常化、10・28中国からパンダが上野動物園に》
〔ことば〕恥ずかしながら(横井庄一元軍曹、グアム島から帰還)/三角大福/総括

◇1973(昭和48)年
2・22/東京地検、『面白半分』に掲載の「四畳半襖の下張」で編集人野坂昭如、発行人佐藤嘉尚を起訴⇒76・4・27
3・13/国労・動労の順法闘争に反発した乗客ら高崎線・上尾駅で暴動。4・24新宿駅など38駅でも乗客ら暴動。 度重なる順法闘争で、雑誌の輸送が大幅に遅延
3・20/書協、「出版物と青少年非行との関係について」の調査報告書を発表
3・20/小松左京『日本沈没』発行、ベストセラー(1年後には400万部)に
4・−/祝日法改正(日曜日と祝日が重なった場合、翌日を振替休日に)
9・−/出版労協、日本出版労働組合連合会(出版労連)と改称
10・30/第4次中東戦争によるオイルショックで用紙不足が悪化、出版界は自衛手段として用紙節約運動を展開するため、 「用紙節約についての申し合わせ」を関係各方面に配布(国民の間ではトイレットペーパーなどの買占め騒ぎ起きる)
12・−/用紙不足で雑誌の休刊・合併号続出
《この年…総理府、風俗・性に関する世論調査を発表、ポルノ解禁反対派が約70%/松窪耕平の『ORAL SEX』など4点が摘発 /3・25都営ギャンブル全廃/4・2建設省は全国5,490地点の地価を公示、前年比30.9%急騰/4・4最高裁、尊属殺人罪は憲法違反と判決 /4・−プロ野球パ・リーグ、2シーズン制を導入/選抜高校野球大会で作新学院の江川卓投手が60奪三振を記録 /8・8金大中、KCIAに拉致される》
〔ことば〕省エネ/オイルショック/ちょっとだけよ/ディスカバー・ジャパン

◇1974(昭和49)年
6・−/『問題小説』7月号、梶山季之の「銀座ナミダ通り・大人の浮気」で摘発
6・20/R・バック『かもめのジョナサン』発行、ベストセラーに
10・10/『文藝春秋』11月号、立花隆の「田中角栄の研究―その金脈と人脈」を掲載、爆発的売行き、田中首相の退陣をもたらす
11・26/明治14年創業の老舗・三省堂、辞書のシール販売などにより倒産
《この年…遊び型非行のまん延/暴走族のグループ化/対教師暴行事件多発/アルバイト売春・集団乱交など流行 /高校進学率90%を超す/3・12小野田寛郎元陸軍少尉、ルパング島から帰国/4・11交通ストで国鉄初の全面運休に /4・−国立博物館でモナ・リザ展、150万人が入場/5・4堀江謙一、ヨットによる単身無寄港世界一周に成功 /5・−イトーヨーカ堂、初のコンビニエンスストアを東京に開店/8・8米ニクソン大統領、ウォーターゲート事件で辞任 /9・1原子力船むつ、放射能漏れ事故発生/10・14長嶋茂雄、現役引退/12・10佐藤栄作ノーベル平和賞受賞》
〔ことば〕狂乱物価/金脈/青天のへきれき/ストリーキング

◇1975(昭和50)年
1・−/『女性自身』1・30号、男性ヌードにヘアと摘発される(起訴猶予処分)
3・−/『薔薇族』2、4月号、「男性同士の性場面が露骨」と摘発を受ける
4・20/有吉佐和子『複合汚染』発行、ベストセラーに
6・8/神奈川県鎌倉の七里ガ浜で暴走族600人が乱闘(6・11警察庁、暴走族総合対策委員会を発足させ、取締りを強化)
6・−/川上宗薫の小説で『週刊小説』6・27号、『週刊実話』6・26号と7・3号が摘発
7・−/『小説CLUB』8月号、富島健夫の小説で摘発
8・15/三木首相、現職首相として初めて終戦記念日に靖国神社参拝(私人として)
9・30/天皇・皇后、初の訪米に出発(〜10・2)
11・26/公労協「スト権スト」突入⇒12・4スト中止。雑誌の売上げ大幅減⇒76・1・26
《この年…国際婦人年/性産業の氾濫/登校拒否1万人超/日書連、組合員1万名を突破/「日本読書新聞」「図書新聞」休刊 /郊外型書店の誕生(愛知県)/2・−完全失業者100万人を突破(不況の深刻化)/3・10新幹線岡山〜博多間開業 /3・−和文ワープロ登場、価格1,000万円/4・30ベトナム戦争終結/5・16エベレスト日本女子登山隊田部井淳子、女性で世界初の登頂に成功 /5・25日本ダービー、馬券売上げ史上最高を記録(119億6,000万円)/7・19沖縄国際海洋博覧会開幕(〜76・1・18) /11・2戸塚宏、海洋博記念単独太平洋横断ヨットレースで優勝/11・18小林則子、女性単独ヨット世界最長記録で沖縄に到着 /11・15第1回サミット開催》
〔ことば〕乱塾/赤ヘル/アンタあの娘〈こ〉のなんなのさ/中ピ連

◇1976(昭和51)年
1・26/雑協、国鉄ストによる被害甚大と国労・動労・国鉄本社へ抗議書(5・11同協会、被害総額4億8,000万円と算出)
3・26/スタンド業者、全国雑誌販売卸業者懇話会を結成
3・30/出倫協、青少年有害図書問題で関係出版社に要望書送付
4・24/地方・小出版流通センターの開設(2年前開館の、東村山図書館で行った地方出版物の展示会が反響を呼び、 開設のきっかけに)
4・27/東京地裁、「四畳半襖の下張」(『面白半分』)裁判に判決、野坂昭如に罰金10万円、 佐藤嘉尚に15万円⇒80・11・28最高裁上告棄却
5・19/東京高裁、地裁判決を棄却し、マッド=アマノのパロディ(モンタージュ)作品を白川義員の原作から独立した著作物と認めたが、 上告審で、80・3・28第一次最高裁判決は「引用の3要件」を判示。86・5・30第二次最高裁判決は「同一性保持権侵害」(改変利用)を判示し、 高裁判決を破棄した。87・6・16第三次訴訟で和解
7・14/村上龍『限りなく透明に近いブルー』発行、ベストセラーに
7・28/大島渚『愛のコリーダ』をわいせつ図書容疑で押収⇒77・8・15
9・20/警視庁保安部(春、保安部に少年課を新設)、少年と出版物に関する懇談会を開き、自販機を常時警察庁の"監視下"に置き、取締りを宣言
11・23/6年7か月に及ぶ光文社の争議終結(70・04〜ワンマン社長退陣ほか)
11・−/警視庁、自販機メーカー8社、ポルノ版元と販売業者22社を呼び、自販機本の自粛を要求。 同月、全国雑誌販売機協議会が発足
《この年…マンガ文庫本の一斉創刊/出版物の売上げ初の1兆円台に/1・31鹿児島で国内初の五つ子が誕生 /2・4ロッキード事件発覚(7・27田中前首相を逮捕⇒1921・3・17「珍品問題」)/4・5中国・天安門事件起きる /5・8植村直己、グリーンランド―カナダ―アラスカの犬ぞり一人旅に成功/7・2南北ベトナム統一/7・17第21回オリンピック開催(モントリオール) /9・9毛沢東中国主席、死去。10・12王洪文、江青ら四人組逮捕/10・10天皇在位50年式典、日本武道館で開催》
〔ことば〕灰色高官/ピーナツ/記憶にございません(以上、ロッキード事件関係)

◇1977(昭和52)年
1・10/警視庁、23年ぶりに覚せい剤取締本部設置。9・−井上陽水ら芸能人多数検挙
5・25/臼井吉見「事故のてんまつ」(『展望』5月号)に川端康成の遺族が抗議、販売差止めの民事訴訟を起こす(⇒8・16和解)。 同単行本、ベストセラーに
7・23/文部省、「君が代」を国歌と規定した新学習指導要領を告示
8・15/東京地裁、『愛のコリーダ』の著者大島渚、発行者竹村一を起訴⇒79・11・19
9・1/福岡県、条例で有害雑誌の自販機販売規制、全国初の施行
9・−/A・ヘイリー『ルーツ』(上)発行、ベストセラーに
11・21/全国雑誌自動販売協議会、「販売倫理規制」を設定
《この年…総理府、非行原因に関する総合的調査を実施/文部省、「ゆとりある教育移行措置」を告示 /城市郎『発禁本の世界』、富島健夫『初夜の海』(上・下)が摘発される/婦人雑誌が不振/ニューファミリー向け雑誌の創刊 /少年・少女雑誌は好調(約2,000万部)/角川商法、マスコミの話題に/カラオケが大流行/山梨県、ミレーの『種まく人』ほか3点を3億1,500万円で購入 /大学進学率、11年ぶりに低下/日本人の平均寿命、男72.69歳、女77.95歳で世界一に》
〔ことば〕翔んでる/普通の女の子に戻りたい/円高/ルーツ/落ちこぼれ
自販機本あるいはビニール本(ビニ本):通常の販売ルートを経ず、各地で制作し無人の自動販売機で販売される、 性的な写真(無修正あるいは露骨なポーズ)が主体の、不定期刊かつビニールでカバーされたもの。 近年、遠隔操作による利用者の年齢確認など、新型の自販機も見られる。
なお、04年改正の東京都条例などによる"包装"されたものを、一部ではビニ本という傾向にある。

◇1978(昭和53)年
2・20/ガルブレイス『不確実性の時代』発行、ベストセラーに
3・10/日本PTA全国協議会、不良マスコミの法的規制を求め、総理府・郵政省・民放連など8団体に対し悪書追放の申入れ
4・18/国鉄(いまJR)24時間スト、雑誌発売・販売に大影響
4・−/有吉佐和子『和宮様御留』発行、ベストセラーに
6・−/書籍返品率、史上最高の46%に
9・−/東京に八重洲ブックセンターが開店、前年から全国的に大型書店が開業
10・11/公取委橋口委員長、書籍・レコードの再販制度廃止を検討中と発言、出版界に大波紋
12・18/文化庁、ルーベンスとセザンヌの名画購入(2億5,000万円。ドル減らし)
《この年…自民党文教部会で、中央立法化が議論され、全国都道府県議会議長会定例会議でも青少年健全育成法(仮称)の制定要求を決議 /ディスコブーム/郊外レストラン盛況(すかいらーく・デニーズなど)/3・26成田空港管理棟に過激派乱入、管制塔内の機器を破壊。 3・28の開港予定が延期に/3・−東京・原宿に「ブティック竹の子」開店(竹の子族出現)/4・4キャンディーズ、後楽園でサヨナラコンサート。 5万人が参集/4・5池袋サンシャイン60完成/5・20新東京国際空港開港/5・23初の国連軍縮会議開催 /6・1福岡市で深刻な水不足、年末まで1日5時間の給水体制/8・12日中平和友好条約調印/12・15米中国交正常化を発表》
〔ことば〕サラ金/アーウー(大平首相)/窓ぎわ族/嫌煙権/なんちゃって

◇1979(昭和54)年
1・−/再販制の擁護を目的に80社、出版流通対策協議会(流対協)を設立
2・−/講談社、『昭和万葉集』(20巻)の刊行開始
5・8/福岡県の高校教師、卒業式で「君が代」をジャズ調で演奏して免職に
6・−/和泉宗章『天中殺入門』発行、ベストセラーに
6・−/『ジャパン・アズ・ナンバーワン』など日本礼賛盛んに
10・19/東京地裁、『愛のコリーダ』裁判に無罪判決(10・25検事、控訴)
〔ワイセツの認定基準について:普通人の慣れ、受容の幅、捜査当局の放任の実態を重要な資料としてその変化をとらえるべきと、 わいせつ罪の適用範囲を狭めた〕
《この年…国際児童年、児童書の売行きが好調/「青少年を非行から守る全国強調月間(7月)」設定 /総理府、青少年の自殺問題に関する懇談会「子供の自殺防止対策」 提言/出倫協、総理府および青少年育成国民会議からの要望に対し 「具体的な倫理基準の策定は不可能」「自主審査機関の設定には反対」と回答/1・13初の国公立大学共通一次試験の実施 /1・17国際石油資本(メジャー)、対日原油供給の削減を通告(第2次オイルショック)/2・11ホメイニ師指導のもとイラン革命成立 /3・28米、スリーマイル島原発放射能漏れ事故発生/3・31EC委の対日戦略基本文書で、日本人を「ウサギ小屋に住む働き気違い」と評していることが判明 /3・−政府、省エネ運動としてノーネクタイ提唱(5・−閣僚、背広の袖を切った省エネルックを披露)/6・12元号法公布・施行 /10・7第35回総選挙、自民党、衆院で安定多数を取れず/12・27ソ連軍、アフガニスタンに侵攻》
〔ことば〕ウサギ小屋/ワンパターン/エガワる/ギャル/ナウい/ダサい
ウサギ小屋とエコノミック・アニマル:04・12・22東京新聞・筆洗によると、「ウサギ小屋」とは単に都市型の集合住宅をさす言葉で、 日本人を揶揄する意味はなかったという。また「エコノミック・アニマル」も、あるアジアの外相が、経済を得意とする日本人を"経済動物"と評したのを、 日本人特派員が侮蔑の言葉と誤解して伝えたことが発端だったと、外交官の多賀敏行氏の近著『エコノミック・アニマルは褒め言葉だった』(新潮新書)を紹介している 《日本人は、やはり"自虐"的なのだろうか》

◇1980(昭和55)年
3・24/日本図書コード管理委員会、ISBN(国際標準図書番号)コードを採用
3・−/日本PTA全国協議会、225万3,000人の署名簿をつけ、有害図書販売規制立法請願を国会に提出 (出倫協、この署名は拡大解釈のおそれがあると表明)
6・4/河出書房「河出文庫」発刊、文庫戦国時代に突入
9・20/山口百恵『蒼い時』発行、ベストセラーに
10・1/新・再販制度のスタート(出版社は定価販売か割引販売を決めることができる)
11・13/警視庁、1月以来ワイセツ物として摘発されたビニール本を量販の芳賀書店など関係業者8社の一斉手入れ (⇒81・3・21芳賀書店常務に有罪判決)
11・28/最高裁、「四畳半襖の下張」(『面白半分』)の上告棄却、有罪確定
〔わいせつの新基準:わいせつ性を判断するにあたっては、芸術性、思想性などの観点から全体として見て、 それぞれ読者の好色的興味に訴えるものか否かの検討が必要、とした〕⇒76・4・27
《この年…全国的に冷夏/コミックの売上げが全出版物の27%に/レディスコミックの登場/史上最高の創刊誌数、ビジュアル化が加速 /校内暴力・家庭内暴力が急増/漫才ブーム/1・20アメリカ、モスクワ五輪ボイコットを提唱/3・6浜田幸一議員(自民)のラスベガス賭博事件が発覚(4・11辞職) /3・−都市銀行6行、現金自動支払機のオンライン提携を開始/4・1電力・ガス料金の大幅値上げ(電力平均50.8%、ガス平均45.3%) /タバコ値上げ/6・22衆参両院同時選挙、自民党圧勝/7・29第22回オリンピック、モスクワで開幕(日・米・西独・中国など不参加) /11・29二浪中の予備校生、川崎市内の高級住宅地で両親を金属バットで撲殺》
〔ことば〕それなりに/カラスの勝手でしょ/赤信号、みんなで渡ればこわくない

◇1981(昭和56)年
1・14/出版労連、「教科書攻撃に対する緊急声明」発表
1・20/田中康夫『なんとなくクリスタル』発行、ベストセラーに
3・13/黒柳徹子『窓ぎわのトットちゃん』発行、ベストセラー(史上最高600万部)
3・−/日本最大の三省堂書店神田本店が改築オープン(千代田区神田駿河台)
4・16/最高裁、「月刊ペン事件」(創価学会会長報道事件)で、刑法230条の2第1項にいう「公共の利害に関する事実」に当たり、 名誉毀損に当たらずと判決
6・8/文部省、高校「現代社会」の教科書で、憲法前文の削除など大幅修正指示
7・28/書協、教科書問題で声明書発表("偏向教科書問題")
8・3/教科書出版社の政治献金、新聞報道で明るみに(17社が1,600万円、自民党に)
10・−/『FOCUS』創刊、週刊写真誌のさきがけ(83年には200万部、2001年休刊)
10・30/レコード大手13社、貸しレコード店など4社を著作権侵害で訴える
11・21/自由民権100年全国集会が開催される(横浜)
11・−/光文社より森村誠一『悪魔の飽食』(上)発行、ベストセラーに(続刊の第二部の「写真誤用問題」で絶版に。 のちに「角川文庫版」で復活)
12・1/書店業界、景品提供の過当競争に歯止めをかけるため「出版小売業における景品類の提供の制限に関する公正競争規約」を施行
《この年…有害雑誌指定数ピークに/警察庁、出倫協などと有害図書の規制問題をめぐり意見交換/景気は"どん底" /創刊誌244誌に/『Dr.スランプ』初刷り180万部を記録/1・−大関貴ノ花、在位50場所の最長記録を残し、引退 /2・3ローマ法王来日/3・2中国残留日本人孤児47人、初の正式来日調査(26人の身元が判明)/3・29公務員週休2日制スタート /4・−ノーパン喫茶が急増/9・−新宿駅西口に東京初のカプセルホテルが登場/宅急便、郵便小包の取扱数を抜く》
〔ことば〕ハチの一刺し/なめんなよ/ぶりっ子/熟年/粗大ゴミ/指示待ち世代

◇1982(昭和57)年
1・−/反核文学者の会開催(以後、演劇人・音楽家・詩人・ジャーナリストに広がる)
2・19/日書連、書店の万引問題で実態調査(11月、報告書公表。1店平均20.5件)
3・−/全国1,528の中学・高校の卒業式に校内暴力に備えて警官出動
4・20/写楽編集部『日本国憲法』発行、ベストセラーに
4・−/岩波書店、『岩波ブックレット』の刊行開始
5・21/出倫協、大阪府条例改正問題に関し、現行条例尊重を要望
5・−/江本孟紀『プロ野球を10倍楽しく見る法』発行、ベストセラーに
7・26/中国・韓国・東南アジア諸国、文部省検定の歴史教科書における日本の中国侵略を「進出」と記述したことなどに反発、 対日批判が高まり、外交問題に発展
9・20/穂積隆信『積木くずし』発行、ベストセラーに
9・−/鈴木健二『気くばりのすすめ』発行、ベストセラーに
《この年…覚せい剤乱用のピーク/登校拒否(50日以上)2万人超/非行の低年齢化(16〜17歳52・5%) /雑誌自販機問題、批判高まる/雑誌のワープロ編集が始まる/タレント本が続出/ミリオンセラー5点誕生 /書籍の新刊、初めて3万点台に/商法改正による休・廃刊が続出/2・8東京・永田町のホテル=ニュージャパンで火災(死者33人) /2・8JAL福岡発羽田行DC-8型機、羽田空港着陸寸前に海に墜落(24人死亡、150人負傷。機長の逆噴射操縦が原因) /3・29メキシコ・エルチチョン火山大噴火、日本は冷夏に/4・1子供人口、総人口の23.2%に減少/4・13政府、8・15を「戦没者を追悼し平和を祈念する日」と決定 /5・31国連軍縮特別総会に向け反核署名を行っていた国民運動推進連絡会議、最終集計を2,753万9,116人と発表(6・10国連事務総長に提出) /6・23東北新幹線が開業/11・15上越新幹線も開業/12・−テレホンカードの使用開始》
〔ことば〕ルンルン/ネクラ、ネアカ/心身症/ロリコン/風見鶏(中曽根首相)
ロリコン:V・ナボコフの小説『ロリータ』が映画化。主人公の中年男が12歳の美少女ロリータを愛するのをなぞらえ、 「ロリータ・コンプレックス(ロリコン)」という言葉が生まれ、流行した。⇒85《この年…ロリコン雑誌》

◇1983(昭和58)年
1・11/中曽根首相訪韓。1・12日韓新時代を迎える「共同声明」発表
1・17/中曽根首相訪米。1・18レーガン大統領に「日米は運命共同体」と表明
1・19/同首相の「日本列島不沈空母化、海峡封鎖」発言、問題となる
2・−/渡辺淳一『ひとひらの雪』発行、ベストセラーに
4・28/日本編集プロダクション協会の設立
5・23/大型女性誌『Free』『ViVi』『LEE』一斉に創刊、5・27に『SAY』も
11・−/雑協の倫理委員ら、少女雑誌について文部政務次官らと懇談
《この年…少年非行第3次ピーク(少女雑誌)/政府「少年非行防止対策推進連絡会議」を設置/創刊誌257誌 /パソコンとワープロ、急速に普及/2・12神奈川県警、横浜市内の公園などで無抵抗の浮浪者を襲った中学生ら10人を逮捕 /2・15東京町田市立中学校教諭、生徒の威嚇行為に対し果物ナイフで全治10日間の傷を負わせる(同校で半年間に校内暴力9件発生) /4・15浦安市に東京ディズニーランドが開園/5・26日本海中部地震、北海道南部・東北・島根の書店に被害 /9・1大韓航空機爆破事件起こる/10・3三宅島、21年ぶりに大噴火/10・12ロッキード事件で田中角栄に有罪判決 /10・14東北大で日本初の試験管ベビー(体外受精児)が誕生/12・8警視庁、愛人バンク第1号「夕ぐれ族」を売春周旋容疑で摘発》
〔ことば〕不沈空母/ニャンニャンする/おしん/いいとも。友だちの輪

◇1984(昭和59)年
1・19/『週刊文春』1・26号、「疑惑の銃弾」報道を開始(⇒ロス疑惑事件)
2・14/衆院予算委で自民党の三塚博政調副会長が「少女雑誌」のどぎつさを指摘
2・28/自民党「少年の健全な育成を阻害する図書類の販売の規制に関する法律(仮称)案要綱試案」をまとめる
3・16/出倫協、図書規制の立法化に反対、各出版社に「『出版の自由』の危機に際して出版社各位に訴えます」の文書を送付
3・9/最高裁、国の文書復刻出版で龍溪書房に敗訴の判決
3・20/日書連、有害図書規制で傘下全書店に自粛を要請
3・28/大阪府、青少年保護育成条例を改正(⇒2003・7・1「包括指定・区分陳列」規制)
3・−/出倫協、各政党に要望書を送付。国会決議反対の要望書を各政党に提出
3下/データハウス、『悪の手引書』第16刷で発売中止に。14都県で指定
4・27/自民党、有害図書規制法案の今国会上程を断念(決議もなし)
8・20/NHK・民放、韓国閣僚の名前を現地音読み片仮名表記に変更と決定
8・21/臨時教育審議会を設置(会長岡本道雄)
9・6/韓国大統領全斗煥来日、宮中晩餐会で天皇、「両国の間に不幸な過去が存したことは誠に遺憾」と声明 (9・8「日韓両国の関係に新しい章を開くもの」と共同声明)
10・8/出倫協、有害図書の規制措置回避により、「ご挨拶 ― 第101特別国会が終わって」を各方面へ送付
10・8/書協・雑協「出版業への事業税増税、広告課税、紙への物品税課税に対する反対要望書」を関係方面へ提出
11・9/出版界初の実験的催し、非再販本「読者謝恩出版バーゲンブックフェア」が開幕(77社、802点2万2,144冊を出品、 3日間の来場者1万1,543人、総売上高956万円)
11・−/写真週刊誌『FRIDAY』創刊(『FOCUS』『FRIDAY』の"F・F戦争"始まる)
12・−/『週刊少年ジャンプ』400万部を突破(最盛期には600万部に)
《この年…1・−一人暮らしの老人、100万人を突破/3・18江崎グリコ社長、西宮市の自宅から短銃を持った二人組に誘拐される(グリコ・森永事件・「かい人21面相事件」) /4・1全国初の第3セクター・三陸鉄道開業/4・13自民党総務会、靖国神社の公式参拝を合憲とする党見解を表明 /6・26熊本名産のからしれんこん中毒で、死者11人/9・18元日本留学生のトルコ人、「トルコ風呂」の名称を改めるよう厚相に直訴(ソープランドと改称) /11・1日銀15年ぶりに新紙幣3種発行》
〔ことば〕○金・○ビ/オシンドローム/くれない族/千円パック/教官!
少女雑誌:「ギャルズライフ」「キッス!」「エルティーン」「ポップティーン」などティーン女性向けの雑誌。 投稿や電話相談のコーナーなど、ホンネで語られる性情報が多く、毎月35万部も出ている雑誌もあった。

◇1985(昭和60)年
1・−/アイアコッカ『アイアコッカ』発行、ベストセラーに
2・13/出倫協、活動報告書を総理府長官、同青少年対策本部、関係議員などに提出
2・−/新・風営法(風適法、風俗営業等規制及び業務の適正化等に関する法律)施行
3・22/厚生省、日本人エイズ患者第1号を認定
6・6/国家秘密法(スパイ防止法)案が国会に上程される
6・−/出版問題懇話会(いま、出版倫理懇話会)が組織される
7・−/宮城県、青少年条例を改正し"包括規程"を設ける(1冊の3分の1以上に全裸または半裸の写真などがあれば、 自動的に指定対象に(⇒11・1施行)。その後、他道府県にも広がる)
8・31/セブン・イレブン、ヘアの写っている『ブルータス』ヌード特集号を不売に
9・9/警視庁、『ブルータス』に警告
10・−/最高裁、福岡県青少年保護育成条例に関し、一部条件つきで合憲の判決
11・27/「国家秘密法(案)に反対する出版人の会」発足
《この年…国際青年年/文部省の児童・生徒の問題行動に関する検討会議、「いじめの問題について」緊急提言を発表 /マネー誌・レディスコミック誌・ゲーム攻略本など、話題に/3・16つくば科学万博'85開催 /写真誌、ロリコン雑誌、成人向けなど9誌が警視庁などにより摘発される/出倫協、青少年問題で警察庁と意見交換 /4・1東京都、情報公開制度始める/公社の民営化でNTT、JT発足》
〔ことば〕私はコレで会社を辞めました/角抜き/パフォーマンス/トラキチ
投稿写真誌:写真週刊誌とは別に、投稿した写真を掲載する若者向けの雑誌も流行りだした。賞金がもらえるため、 やがて女性のヌードを盗み撮りするなどエスカレート、「のぞきや住居侵入などの違法行為による写真の掲載は犯罪の誘発、 助長につながるため自粛して欲しい」と福岡県警が4誌の編集責任者に異例の警告文を出すということもあった。
ロリコン雑誌:ロリコン(ロリータ・コンプレックス)という言葉は、やがて、大人になっても等身大の女性と付き合えない、 あるいは幼女・少女にしか興味がない男をさすようになった。そのような"趣味"をもつ読者向けの雑誌をさすが、 マンガやビデオなども多い⇒ロリコン。
レディスコミック: 20代前半から30代後半の主婦やOLを主な読者とする。コンビニなどで購入し自宅で読むそうで、 多いときには月に60誌以上、1,000万部も出ていた。流行した理由は、「女は男に従って生きていれば幸せという、 男社会の根底にある女性観である」と、衿野未矢『レディース・コミックの女性学』(青弓社)はいう。

◇1986(昭和61)年
1〜2月/警視庁、ホテトル等の広告を扱った広告会社5社に口頭警告、さらに広告を掲載した新聞協会加盟の5紙と雑協加盟の雑誌4誌にも警告(売春防止法の適用も示唆)
3・6/「国家秘密法(案)に反対する出版人の会」、大集会を東京・駿河台の日仏会館で開催(431名出席)
3・19/第1次教科書訴訟、東京高裁判決、検定教科書は合憲(家永教授側全面敗訴)
4・23/第1回サン・ジョルディの日開催(⇒95・4・23「世界 本の日」に)
5・27/復古調の高校日本史教科書(「日本を守る国民会議」編)、検定に合格
6・11/最高裁、「北方ジャーナル事件」に関し、名誉毀損で、札幌地裁の「出版物の頒布などを事前に差止めた」仮処分は、 違憲ではないとする判決を下す
6・−/『カメラ毎日』別冊『NEW NUDE3』をわいせつ図画販売容疑で書類送検
8・−/文部省、性教育に関する教師向け初の本格的な手引書を出す
9・8/土井たか子、社会党委員長に就任(初の女性党首)
12・9/ビートたけしとその軍団、講談社『フライデー』編集部に殴りこむ
《この年…青少年問題審議会、「21世紀に向けての青少年の健全育成の在り方について」意見具申 /改正・著作権法施行、プログラムを保護の対象に/4・1男女雇用機会均等法施行/4・1日本キリスト教婦人矯風会が「じゃぱゆきさん」の救済施設「HELP」を開設 /4・8アイドル歌手岡田有希子飛降り自殺。後追い自殺続出/写真週刊誌の『Emma』『TOUCH』『FLASH』創刊 /11・28国鉄民営化法案可決》
〔ことば〕究極/激辛/家庭内離婚/アークヒルズ/新人類/おニャン子

◇1987(昭和62)年
2・16/共通雑誌コード管理センターの発足、雑誌のコード表示が本格化
2・−/「少女ヌード集」を掲載の『プチトマト』No.42、ついに摘発される
5・3/朝日新聞阪神支局が襲われ、記者1人死亡、1人重傷
5・8/俵万智『サラダ記念日』発行、ベストセラーに(年末には200万部に)
6・−/自販機でのポルノ雑誌販売について、前月の浜松簡裁に続き、岐阜簡裁でも青少年保護の県条例は合憲との判断を下す
8・7/臨教審、教育改革最終答申。「日の丸・君が代」の義務化、「個性重視」を強調
9・30/公取委、クーポンつき広告の雑誌掲載承認を発表
《この年…カラオケ第1号店、 岡山県に/岩波書店、CD -ROM『広辞苑』を発売/セブン・イレブン、文庫本の販売開始 /4・1国鉄分割・民営化、JRグループ11法人と清算事業団に/4・12統一地方選で自民大敗、売上税廃案へ》
〔ことば〕マルサ/JR/第2電電/サラダ記念日/朝シャン/懲りない○○

◇1988(昭和63)年
2・−/黒人差別との批判を受け、『ちびくろサンボ』が店頭から消える
4・18/東京地裁、ピンクチラシ裁判に有罪判決、印刷業者に懲役3か月(猶予2年)
8・−/『アグネス論争を読む』発行、ベストセラーに("子連れ"での仕事が話題に)
《この年…小中学生の登校拒否4万人超/凶悪で深刻な事件・初発型非行、少年犯罪の70%超 /「ちくま文庫の森」『Hanako』創刊/女性誌ブーム/3・13世界最長の青函トンネル開通/3・17東京ドーム完成 /3・23米政府、エイズ差別禁止を通達/3・24上海修学旅行列車事故、高知の高校生ら23人死亡 /9・19天皇、吐血し容体急変。以後、メディア等の自粛ムード続く/JAL国内線3線を全面禁煙に》
〔ことば〕アグネス論争/ハナモク/ペレストロイカ/遠赤/今宵はここまでに

5.だんだん右傾化する日本、そして21世紀に

◇1989(昭和64、平成元)年
1・7/昭和天皇逝去、元号平成に。天皇関連書、雑誌特集、昭和史企画など続出
2・17/厚生省、エイズ予防法を施行
2・25/東京都、『悪の手引書』を不健全指定(87・10埼玉県に始まり23番目)
3・30/鈴木都知事、"淫行処罰規定"の条例化を見送る(⇒97・10・16条例化)
3・−/吉本ばなな『TUGUMI』発行、ベストセラー。その後"吉本ばなな現象"に
4・1/消費税の導入・実施(税率3%)。出版界、本のカバー取替えや定価のシール貼りなどで混乱する
6・23/東京地裁、『フライデー』発行の講談社に、自宅内の米原ユリさん(結婚前の井上ひさし夫人)を勝手に撮影した 「のぞき見撮影は違法」と肖像権の侵害として慰謝料など110万円の支払いを命じる
10・3/東京地裁、第2次教科書訴訟で、「検定は合憲」と判決
《この年…東京・埼玉で連続幼女誘拐殺人事件が起こる。宮崎勤逮捕/東京都、ビデオ対策協議会の設置(残虐ビデオ問題) /コミック本・雑誌の売上げ4,005億円に/3・30女子高生40日間監禁暴行、コンクリート詰め死体発見、主犯少年を逮捕 /6・24美空ひばり没/11・9東西ベルリンの壁崩壊/11・21総評解散、連合発足》
〔ことば〕セクハラ/デューダする/濡れ落ち葉/平成/NOといえる日本/イカ天

◇1990(平成2)年
1・18/天皇に「戦争責任ある」と発言した本島等・長崎市長が短銃で撃たれ、重傷
3・−/日の丸掲揚・君が代斉唱の義務化後、初の卒業式
3・−/二谷友里恵『愛される理由』発行、ベストセラーに
5・−/出版問題懇話会(→出版倫理懇話会)、「編集倫理綱領」を制定(p133参照)
6・22/著作権審議会第8小委員会、出版物の複製から出版者を守る権利(いわゆる版面権=著作隣接権の一種)を認める最終報告書を了承(現在、未確立)
8・23/東京都、「性の商品化に関する研究」を発表
8・−/径書房、『ちびくろサンボの絶版を考える』刊行(黒人差別の書として問題となった同書について賛否両論や問題点を掲載)
9下/総務庁青対本部より出倫協に「各県からコミック本指定の報告があり、自主規制の努力を要望する」との連絡(10・〜コミック本問題が起こる)
11・8/総務庁青対本部、出倫協議長あてに「青少年の健全な育成を阻害するおそれのある図書の自粛、自主規制等について」要望
《この年…国際識字年/フランクフルト・ブックフェア「日本年」開催/8・2イラク、クウェートに侵攻/10・2東西ドイツ統一 /10・−バブル崩壊/11・12明仁天皇即位》
〔ことば〕親父ギャル/ファジー/アッシーくん/ちびまる子ちゃん/一番搾り
コミック本:コミックには週刊や月刊のコミック主体の「コミック雑誌」、あるマンガだけの読み切りである「コミック単行本」と、 ここでいう主にコミック雑誌に連載のマンガのシリーズ化されたものがある。
講談社・小学館・集英社・秋田書店・白泉社など、雑協・書協会員社を中心に多くのシリーズものがあり、 表紙の可愛い少女の絵などにより"子供向けポルノコミック"といわれ、大騒ぎとなる一因となった (もとより、出版界に"子供向け…"などというような呼称はない)。

◇1991(平成3)年
1・14/出倫協、コミックの性描写批判に対する対応を協議、雑誌協会・取次協会・日書連に「成年コミックマークのついた本の取扱いについて」の文書を送付
2・15/自民党有志議員による「子供向けポルノコミック等対策議員懇話会」(麻生太郎会長)が結成される
2・22/警視庁、直接書店に持ち込まれたコミックを販売した東京都下の3書店の店員5人をワイセツ図書販売目的所持容疑で逮捕、 一般書店への摘発は初めて
2・−/篠山紀信撮影・樋口可南子写真集『Water Fruit』発売、ヘア写真集として話題に、この「不測の事態」シリーズがヘア解禁の引き金となった
3・27/出版文化産業振興財団(JPIC)の設立
4・−/出倫協、コミック特別委員会を設置。同、「コミック単行本に関する自主規制の申合わせ」(都指定分が対象)
6・−/自民党代議士有志による「出版を考える会」が結成される
7・7/都議会、「不健全(有害)図書類の規制に関する決議」を全会一致で採択
7・12/英国の作家S・ラシュディー『悪魔の誌』の日本語訳者が殺される
9・2/宗教法人幸福の科学、『フライデー』の記事に抗議、講談社へ抗議・デモ
9・30/日本複写権センターの設立(本や雑誌からの不正コピー防止のため)
11・−/篠山紀信撮影・宮沢りえ写真集『Santa Fe』発行、ベストセラーに
《この年…高校生の非行増加/ダイヤルQ2問題浮上/各地方自治体で、条例改正機運が高まる(陳情・要望・要請・請願)。 書協、各県の青少年条例の「改正」に反対する声明書を発表/従軍慰安婦訴訟相次ぐ/1・17湾岸戦争始まる /4・26自衛隊初の海外派兵決定、ペルシャ湾へ/5・19雲仙、火砕流で死者が発生/12・26ソ連崩壊 /任天堂ファミコンゲームソフト5,000万本販売/東京03局電話番号4桁に》
〔ことば〕あーりませんか/火砕流/地球にやさしい/若貴/損失補填

◇1992(平成4)年
1・18/警視庁、篠山紀信写真集『TOKYO NUDE』、週刊『SPA!』1・22号に対し、「わいせつの疑いがある」と警告
3・13/漫画家たちが各都道府県の青少年保護育成条例改正・強化に対し、コミック表現の自由を守る会を結成(会長・石ノ森章太郎)、 規制に対する声明を発表
3・26/東京都、コミック本『Blue』など3点を含む指定図書6点を告示
4・1/東京都、青少年健全育成条例改正施行(規制強化)。また、審議会に小委員会を設ける。ビデオの指定始まる
4・−/警視庁、「風俗問題に関する有識者の会」設置(出版界から委員2人)
5・3/JPIC、地域読書推進事業の第1号、大分県耶馬溪町に町営「わかば書店」開店
12・−/マスコミ7業種が免除の事業税の廃止について、「良書と不良図書の徴税区分ができないから、 出版業のみ全体が課税対象となりうる」との見解が出る
《この年…地球サミット開催/6・15PKO法の成立/8・−バブル経済崩壊/9・12日本人初の宇宙飛行士、毛利衛さん宇宙へ /10・23天皇・皇后初の訪中》
〈ベスト3〉さくらももこ『さるのこしかけ』、それいけ×ココロジー編『それいけ×ココロジー』、 井深大『わが友本田宗一郎』
〔ことば〕きんさん・ぎんさん/ほめ殺し/カード破産/もつ鍋/冬彦さん

◇1993(平成5)年
2・26/公取委、出版社・取次・書店を対象に「書籍及び雑誌の流通実態調査」を送付
3・16/最高裁、家永教科書裁判第1次訴訟判決、原告(家永側)全面敗訴
5・−/出倫協、全国の条例で多数指定されたコミック単行本に関する「勧告措置」および「注意」の自主規制
6・9/皇太子結婚の儀。雑誌特集、臨時増刊など続出
8・29/角川春樹角川書店社長、麻薬取締法違反で逮捕
9・6/筒井康隆、自著への差別糾弾に抗議、断筆を宣言
《この年…総務庁青対本部、「青少年とポルノコミックを中心とする社会環境に関する調査報告書」を発表 /円高急速化/雑誌広告収入が大幅に減少/郵便料金、大幅アップが決まる/紀伊国屋書店とセブン・イレブン、売上げ1,000億円へ /東京に「うさぎファンクラブ」が設立される(ピーターラビットのブームで茶色いうさぎが大人気) /5・15初のプロサッカー、Jリーグ開幕》
〈ベスト3〉R・J・ウォーラー『マディソン郡の橋』、東京サザエさん研究会編『磯野家の謎』、小沢一郎『日本改造計画』
〔ことば〕Jリーグ/サポーター/規制緩和/清貧/天の声/悪妻は夫を伸ばす

◇1994(平成6)年
4・22/日本、「児童の権利に関する条約」(=子どもの権利条約)を批准(国連加盟国の158番目)
4・27/衆参両院議員104名で、「子どもと本の議員連盟」(代表鳩山邦夫)結成、フォーラム「子どもと本の今日と明日のために」を開催
6・15/『週刊文春』(6・23号)掲載の「JR東日本に巣食う妖怪」で、JR東日本は、管内のキオスクで販売を拒否(7・25和解/⇒2000・8・1文藝春秋、損害賠償の和解金300万円支払い)
6・29/村山富市社会党委員長、自民・社会・新党さきがけの推薦で首相に
8・2/文部省、初の「読書に関する調査」の概要を発表。中学生の4割が読書ゼロ
10・5/大江健三郎、ノーベル文学賞受賞が決まる。関係書籍が爆発的に売れる
《この年…総務庁青対本部「青少年とアダルトビデオ等の映像メディアに関する調査報告書」を発表 /純国産大型ロケット発射に成功/6・27「松本サリン事件」発生。翌年7・16オウム真理教教組の麻原を再逮捕 /11・8北朝鮮金日成主席死去》
〈ベスト3〉永六輔『大往生』、R・J・ウォーラー『マディソン郡の橋』、浜田幸一『日本をダメにした九人の政治家』
〔ことば〕イチロー効果/価格破壊/ヤンママ/関空/就職氷河期/大往生
ヘアヌード: 94年前後、警視庁から警告を受けるものもあったが、ヘアヌードの掲載は総合週刊誌の部数競争を呼び、 また、有名女優などのヌード写真集も売れたが、摘発される月刊誌もあった

◇1995(平成7)年
1・17/午前5時46分、阪神・淡路大震災が発生(M7.2)。ビル倒壊・家屋倒壊・火災など、死者6,038人の大惨事に。 書店も被災、出版界が支援活動
1・−/『マルコ・ポーロ』2月号、「ナチ『ガス室』はなかった」掲載でユダヤ人団体から抗議を受け廃刊、編集長も辞任
2・−/警視庁、出倫協・コンビニ団体等に「ヌード雑誌を子どもに売らないで」と要望
3・20/地下鉄サリン事件発生。死者11人、重軽症者5,500人。世界中に衝撃走る
3・末/東京都、書店等に対し"青少年に好ましくない影響を与えるおそれのあるポルノ雑誌等の出版物やアダルトビデオなどの取扱いについて"要望
6・−/日本PTA全国協議会、出倫協等に「有害図書販売規制に関する要望」を発送
9・−/米子市で第1回「本の学校」"大山緑陰シンポジウム"開催、280名が参加
10・-/日本文芸家協会、「本と読者を近づけるシンポ」開催
12・−/成人向け雑誌『秘 桃源郷』、写真と文章表現もワイセツとされ、家宅捜索
《この年…イジメによる事件の増加/テレホンクラブ・ツーショットダイヤル営業等問題/4月23日を「世界 本の日」と決定 /用紙の価格が急騰/近鉄からドジャースに移籍した野茂英雄投手、大活躍/2・26国民祝日法の改正、7月20日を「海の日」に /3・22山梨県上九一色村などのオウム真理教関連施設25か所を一斉捜索(5・26教祖麻原彰晃ら逮捕、12・14破壊活動防法適用) /5・31青島幸男都知事、選挙公約どおり世界都市博覧会を中止に/6・6与党3党、「侵略的行為」「植民地支配」「深い反省の念」などを明記した戦後50年決議案に最終合意》
〈ベスト3〉J・ゴルデル『ソフィーの世界』、W・グルーム『フォレスト・ガンプ』、松本人志『松本』
〔ことば〕無党派/官官接待/ライフライン/ポアする/安全神話/NOMO(野茂)

◇1996(平成8)年
1・−/警視庁、インターネット上のポルノを初めて摘発
2・−/京都で日本出版文化史展が開かれる
3・−/文部省、大臣緊急アピール「いじめ根絶を子どもたち、家庭、学校、地域に訴える」85万部を全国の小・中・高等学校のすべての学級に配布
7・−/出倫協、成年向け雑誌に「成年向け雑誌」マークを表紙表示し、小売書店等で「成人コーナー」等へ区分陳列販売を徹底し、 青少年に販売しない等の措置を行う
10・4/紀伊国屋新宿南店、日本最大のスペースでオープン
11・−/神奈川県、条例を改正してわいせつビデオなどの販売やテレクラの利用を 勧誘するピンクチラシの戸別配布禁止を盛り込む
《この年…再販擁護の市民集会が開かれる/出版各社、周年記念企画が相次ぐ/インターネット出版が活況 /マンションで飼いやすいため、都会の女性を中心に、ウサギを飼うことが流行 /2・9菅直人厚相、83年当時のエイズ研究班などの資料を厚生省内で発見と発表。産・官癒着の薬剤エイズの実態が明るみに /2・14将棋の羽生善治、史上初の7冠達成/4・1世界最大の銀行「東京三菱銀行」が営業開始 /6・1岡山県内の小学生と幼稚園児が集団中毒で死亡、病原性大腸菌「O157」検出。各地で幼児や高齢者が死亡。 貝割れ大根が感染原因の可能性ありといわれたが原因不明、業者が厚生省を損害賠償で訴える/8・4 "寅さん"渥美清が死去 /12・17ペルーの首都リマの日本大使公邸、左翼ゲリラが襲撃。大使ら数百人が人質に(97・4・22軍と警察の特殊部隊が白昼突入し、 約40分で人質救出)》
〈ベスト3〉春山茂樹『脳内革命』(1・2)、野口悠紀雄『「超」勉強法』、G・ハンコック『神々の指紋』(上・下)
〔ことば〕自分で自分をほめたい/メークドラマ/援助交際/ルーズソックス
成年向け雑誌:ここでは、96年〜出倫協、出版倫理懇話会系を含め、アダルトものに「成人向け雑誌」のマークを表示するよう勧告したものをさす

◇1997(平成9)年
2・−/出版界、再販規制研究会を発足させる
5・−/国際雑誌連合(FIPP)、東京で第31回世界大会を開催
6・19/雑協、「雑誌編集倫理綱領」を改定(p130参照)
6・−/民放とNHK、放送と人権等権利に関する委員会(BRC)を設置
7・−/『フォーカス』7・9号、神戸の小学生殺害容疑者少年Aの顔写真を掲載、書店など販売中止店が続出(少年法違反で起訴、一審で有罪、高裁で無罪に)
8・7/警察庁、15年ぶりに「少年非行総合対策要綱」を改正し、指導・取締りを強化
10・16/東京都、条例に"淫行処罰規定"を盛り込む⇒89・3・30
12・16/人気アニメ「ポケモン」を見ていた子どもら多数がけいれんを起こして病院に運ばれる
《この年…百科事典・美術全集などの電子出版化が広がる/家永教科書裁判、32年ぶりに終結/香港、中国へ復帰 /2・23英の研究所でクローン羊が誕生/4・1消費税の税率3%を5%に引上げ、出版界、雑誌は内税に、書籍は外税で対応 /5・27神戸で連続児童殺傷事件が起こる("酒鬼薔薇聖斗")/8・31ダイアナ元英皇太子妃、パリ市内のトンネル内で交通事故死(36歳) /9・5ノーベル平和賞受賞のカトリック修道女マザー・テレサ死去(87歳)/11・22山一證券が破綻》
〈ベスト3〉渡辺淳一『失楽園』(上・下)、妹尾河童『少年H』(上・下)、浅田次郎『鉄道員(ぽっぽや)』
〔ことば〕失楽園/たまごっち/パパラッチ/ガーデニング/もののけ姫

◇1998(平成10)年
3・10/文部省、バタフライナイフによる少年事件を受け、大臣名で緊急アピール「【子どもたちへ】〜ナイフを学校へ持ち込むな〜 /〜命の重さを知ってほしい〜」を発した(大人向けも同時に)
3・27/政府・青少年対策推進協議会、青少年の非行・犯罪増加で関係業界に自主規制の強化を要請
4・−/映倫、「PG-12」(12歳未満の観覧は保護者同伴)を設ける
4・−/NHKと民放連「アニメーション等の映像手法に関するガイドライン」を定める
7・−/出倫協、「18歳未満の方には成年向け雑誌の出版物は販売できません 出版倫理協議会協力店」のステッカーを書店に配布し、 店頭に貼るよう要請
8・6/出版7団体を中心に、「読書推進・図書普及連絡会」が発足
《この年…出版社のリストラ相次ぐ/大手出版社、取次など再販制の弾力的運用を始める/出版6団体で読書推進の連絡会を設置 /イジメによる事件の増加/テレホンクラブ・ツーショットダイヤル営業等問題/2002年度実施の小・中学校の新学習指導要領が学習内容を3割削減 /6・10第16回ワールドカップサッカー・フランス大会に初出場の日本、3戦全敗/7・10第18回参院選挙で自民党惨敗 /7・25和歌山の毒物カレー事件が起こる/冬季オリンピック大会、長野で開催/11・25江沢民中国主席・元首、初の訪日 /12・1NPO法(特定非営利活動促進法)施行》
〈ベスト3〉五木寛之『大河の一滴』、大川隆法『幸福の革命』、F・アルベーロニ『他人をほめる人、けなす人』
〔ことば〕環境ホルモン/ハマの大魔神/老人力/だっちゅーの/凡人・軍人・変人

◇1999(平成11)年
2・1/読売新聞社により再建された、中央公論新社がスタート
2・−/久米宏キャスター、所沢市の農作物に関するダイオキシン報道が問題に
3・−/長野県、テレクラ規制の条例を設ける
3・−/広島県立世羅高校の校長、卒業式直前に自殺(「国旗国歌法」制定の一要因)
5・7/情報公開法成立、中央官庁の行政文書原則公開を義務付ける。01・4・1施行
5・24/ガイドライン関連法成立(日米安保体制新段階へ、米国の戦争に常時協力)
7・22/青少審、「『戦後』を超えて―青少年の自立と大人社会の責任―」を答申
8・9/国旗国歌法の成立(ついに「日の丸・君が代」法制化)
8・12/改正住民基本台帳法(国民総背番号制度への道…)
8・12/通信傍受法の成立(実質的な"盗聴法"。2000・8・−警視庁、盗聴を開始)
11・1/「児童買春・児童ポルノ処罰法」の施行
11・−/週刊誌の新聞・車内吊り広告の性表現が問題に
12・−/団体規制法の施行(オウム真理教対策)
《この年…「子ども読書推進会議」が開かれる。「子ども読書活動推進に関する法律」が成立/著作権法施行100年 /角川書店、東芝との合弁会社設立/ジュンク堂、日本最大の書店1,480坪を大阪で開店/万引問題で、新中古書店への非難が起こる /オンデマンド出版、オンライン書店が活発化/東海村で初の臨界事故が起こる》
〈ベスト3〉乙武洋匡『五体不満足』、大野晋『日本語練習帳』、大川隆法『繁栄の法』
〔ことば〕ブッチホン/リベンジ/だんご3兄弟/癒やし/2000年問題
マニュアル本:手引書をさすが、この年の夏、6年前からのベストセラー『完全自殺マニュアル』を読んだ若者2人が自殺したとして、 警視庁から"有害"指定を要求され、東京都は条例改正を行った。89年、別の社から『悪の手引書』が出され、やはり大問題になった経緯がある⇒89・2・25

◇2000(平成12)年
1・28/青少年育成国民会議「青少年と社会環境に関する中央大会」で、育成者向けに"青少年育成基本法"(仮称)の説明、 条例を超えた"中央立法化"の要望
4・−/民放とNHK、放送と青少年に関する委員会を設置
5・5/上野に国立国際子ども図書館が開館⇒1872・8・1
5・11/参院自民党による「青少年有害環境対策基本法案」の骨子が明らかに、5・−「基本法案」に対し、 映倫を皮切りにメディア関係団体が反対声明
8・28/花田憲子(花籠部屋親方夫人、元女優)、未公開写真の公開で講談社を告訴(肖像権の侵害)
10・2/自民党等、"青少年有害環境対策法案"を検討、出倫協はじめ各種団体、同法案に対する反対声名等を出す
12・20/東京都青少年問題協議会、都青少年健全育成条例の改正を求める答申
12・−/CD-ROM付雑誌を連続で指定された宝島社が「憲法違反だ」として、東京都を相手にその取消しを求める行政訴訟を起こす (この種、初の訴訟、03・09東京地裁は原告敗訴の判決を出し、同社は控訴、04・02から東京高裁で控訴審)
12・−/改正少年法が成立、刑罰対象年齢を16歳から14歳に引き下げる
《この年…子ども読書年/小渕首相の私的諮問機関「21世紀日本の構想」懇談会が最終報告。 「教育機関の多様化と義務教育の時間削減」などを提言/警察の不祥事が続発/原油価格が高騰/8・29三宅島、大噴火 /9・3東京都、自衛隊参加の防災訓練を行い、銀座に装甲車が走る。参加隊員7,100人/10・26女優三田佳子、二男が覚せい剤取締法違反容疑で逮捕され、 舞台を降板/11・5旧石器発掘で捏造事件発覚/11・20児童虐待防止法の施行/11・24ストーカー規制法の施行》
〈ベスト3〉大平光代『だからあなたも生き抜いて』、J・K・ローリング『ハリー・ポッターと賢者の石』、 アラン・ビーズ『話を聞かない男、地図が読めない女』
〔ことば〕おっはー/最高でも金・最低でも金/Qちゃん/めっちゃ悔し〜い
CD-ROM付雑誌:雑誌は付録を含め本来、紙媒体であるが、CDに収録された映像の一部だけを集めたものが"お試し用"として付録につけられるようになった。 それらには、ひわいな映像が多く、青少年に有害であるとの観点から、東京都などでCD-ROM付雑誌の指定を行うようになった

◇2001(平成13)年
1・6/中央省庁再編により、青少年問題は内閣府に移る
1・8/各地の成人式で新成人が酒を飲んだり、クラッカーを鳴らすなど騒ぎ問題に
3・−/Jリーグの試合にサッカーくじの導入(スポーツ振興投票法、98・5・12成立)
4・1/都条例を改正、自殺本等の規制・図書の区分陳列・雑誌に識別マークの要請
4・26/小泉純一郎、第87代内閣総理大臣となる(〜06・09・26退任、在任期間1,980日、戦後歴代3位〈佐藤栄作、吉田茂〉)
4・−/「新しい歴史教科書をつくる会」の"教科書"検定に合格、大問題となる
8・−/出倫協、出版ゾーニング委員会の設置。雑誌の"判定"作業を開始
表示図書:東京都は条例を改正し、「自殺若しくは犯罪を誘発し」そうな図書類を指定対象に加え、 また「青少年にふさわしくない内容の図書」を"区分陳列"するよう求め、それを何らかの形で"表示"せよというもの
9・11/アメリカ中枢同時テロ起こる。ニューヨーク世界貿易センタービル崩壊
12・12/子どもの読書活動の推進に関する法律の公布・施行
12・−/文化芸術振興基本法の施行
《この年…マスコミ規制3点セット(人権擁護法案・個人情報保護法案・青少年有害環境対策基本法案)問題で、反対運動さかん /幼児への読み聞かせ「ブックスタート」始まる/3・31大阪ユニバーサル・スタジオ・ジャパンが開場 /4・1家電リサイクル法の施行/6・1改正警察法により「苦情申し出制度」がスタート/4・1情報公開法の施行 /6・8大阪・池田小で校内殺傷事件が起こる(児童8人死亡、15人が重軽傷)/8・14小泉首相、1日前倒しで靖国神社参拝 /10・8米軍、アフガニスタン攻撃(自衛隊も発動)/11・2テロ対策特別措置法の公布(即日施行。03・10・16改正)》
〈ベスト3〉S・ジョンソン『チーズはどこへ消えた?』、J・K・ローリング『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』、 同『ハリー・ポッターと賢者の石』
〔ことば〕学級崩壊/米百表/聖域なき改革/狂牛病/ショー・ザ・フラッグ

◇2002(平成14)年
1・23/日本新聞協会、記者クラブについて、開かれた自主組織と新見解を示す
3・−/雑協、雑誌人権ボックスを設ける(翌年4月までの苦情43件、うち人権6件)
4・1/石川県、有害図書販売者に「懲役6か月以下または30万円以下の罰金」の条例施行(懲役は全国初)
4・−/文部科学省、小中学生1,200万人に『心のノート』を配布("道徳教育")
7・3/開隆堂出版、発音記号の誤記などにより中学用の英語教科書38万部を回収
8・5/住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)が本格的稼働
9・24/最高裁、『石に泳ぐ魚』のプライバシー侵害事件に関し上告を棄却し、柳美里と新潮社に対し計130万円の慰謝料及び遅延損害金の連帯支払いを命じ、 両者に対し、同書の出版などの差止めを命じた99・06の地裁判決と01・02の高裁判決が確定。最高裁が人格権に基づいて出版差止めを命じた初の判決
10・3/警視庁、ワイセツな漫画『蜜室』を販売したとして松文館社長ら3人を逮捕。漫画の公の出版物では初めての訴訟(漫画ワイセツ裁判)⇒04・1・13
《この年…日本語ワープロ生産を中止に/島津製作所のサラリーマン化学者田中耕一、ノーベル化学賞を受賞。 東大の小柴昌俊名誉教授は物理学賞を受賞/図書館の装備問題が起こる/ヘア解禁"10周年"松坂慶子、50歳でヘアヌードに /サービス残業、10年間で2.5倍に(厚生労働省集計)/6・−サッカーワールドカップ、日韓共同開催 /12・−一橋大学で7月末の学期末試験で、学生26人のメールを使った集団カンニングが発覚。大学側「正直に申告すれば不問に」と甘い処分 /9・17小泉首相、初の訪朝、日朝平壌宣言。北朝鮮、初めて拉致問題で謝罪》
〈ベスト3〉日野原重明『生き方上手』、斎藤孝『声に出して読みたい日本語』、C・D・ラミス『世界がもし100人の村だったら』
〔ことば〕タマちゃん/貸し剥がし/真珠夫人/内部告発/ベッカム様/…的

◇2003(平成15)年
3・20/中央教育審議会、教育基本法改正に向けて最終答申を出す
3・−/岡山区検察庁、自販機に有害図書を収納したとして、岡山県青少年保護育成条例違反の罪で三和図書販売とその社長を略式起訴
3・−/経済産業省、02年度商業統計調査で「書籍・雑誌小売業」(古書店・楽器店なども含む)は2万2,690店舗で、 前回調査(97年)に比べ2,983店の減
4・7/「鉄腕アトム」、この日"誕生日"を迎える。アメリカでも人気再燃
5・23/個人情報保護法が成立(適用除外に"出版社"の扱いが不明)
6・6/"出会い系サイト被害防止法"が成立(9・13施行)
6・6/有事関連3法が成立(武力攻撃事態法・改正自衛隊法・改正安全保障会議設置法)
6・11/「朝の10分間読書」実施校1万3,083に(小8,603、中3,667、高813)
6・−/東京都知事、治安担当副知事に警察官僚の竹花豊前広島県警本部長を起用
7・1/大阪府、青少年保護育成条例、改正施行(包括規程を盛り込む、区分陳列の義務、自動貸出機の規制)
7・24/超党派による活字文化議員連盟が設立される(衆参両院216人参加)
7・26/イラク復興支援特別措置法が成立(4年間の時限立法)⇒04・2・−自衛隊初の海外への戦時下陸上派遣となる
10・−/秋田県、青少年条例を改正し、有害図書に包括指定制を採用(04・4・1〜)。
同制度を持たないのは、東京都と条例のない長野県だけ
10・−/笠倉出版社、女性向けアダルト雑誌2誌に17歳の高校2年生の女子生徒の写真を掲載したとして、 雑誌出版社としては初めて「児童買春・児童ポルノ処罰法」(販売目的製造)違反で摘発され、書類送検
11・−/首都圏サミット(東京都と神奈川・千葉・埼玉3県に横浜・川崎・千葉・さいたま4市)で、 中田横浜市長ら治安問題に関連して、有害図書の販売に言及
《この年…自殺者、5年連続で3万人超/ネット媒介、車内練炭による集団自殺もはやる /内閣府の報告「現代の若者は大人になるのが遅れている」/総務省調査「サラリーマン家庭では携帯が固定電話を上回る」(通信料支出) /3・20米英軍、イラク空爆(イラク戦争)始まる/8・−ニューヨーク大停電、損失1,250億円/8.27北朝鮮の核問題で6か国協議始まる》
〈ベスト3〉養老孟司『バカの壁』、片山恭一『世界の中心で愛を叫ぶ』、フジテレビトリビア普及委員会編『トリビアの泉』
〔ことば〕パラサイトシングル/毒まんじゅう/マニフェスト/なんでだろう〜

◇2004(平成16)年
1・9/防衛庁長官、イラク自衛隊派遣に関し、現地取材の自粛を要請(⇒1・13防衛庁、記者会見を縮小すると言明)
1・13/東京地裁、漫画ワイセツ裁判で、チャタレイ判決の「わいせつ3原則」を理由に松文館貴志元則社長に有罪判決、 被告側は「漫画文化が衰退する」と控訴
2・9/福田官房長官、テロ情報を原則非開示との発言(報道統制色、強まる…)
2・−/日本"人道支援を名目に"イラクに自衛隊派遣(小泉首相「国益のため」)
3・10/『噂の真相』、本日発行の4月号で休刊(個人情報保護法の成立により…)
3・26/福島県、条例を改正し自販機の有害図書の販売に懲役刑を導入(7・1施行、現行の「20万円以下の罰金」を「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」)
3・−/『週刊文春』3・25号、出版事前差止め事件起こる(元外相長女の"プライバシー侵害")。3・31東京高裁、地裁の出版差止めの仮処分命令を取り消す
4・1/改正消費税法実施、出版物の定価に消費税を含めた総額表示を義務付け
4・1/東京都、青少年条例改正(7・1一部の雑誌類に"包装"陳列を義務付け)
5・21/裁判員法が成立、重要刑事裁判に国民に参加の義務(09年の実施を目ざす)
6・14/国民保護法など有事関連7法が成立。大規模テロも想定
6・−/『週刊ポスト』、ヘアヌード掲載の中止を発表
7・−/プロデューサーらによる制作費着服問題を契機に、NHK不正問題起こる
8・10/小学館、『小学六年生』9月号に、同誌編集部がアダルトサイトにつながるホームページを掲載したことで謝罪、 店頭の同号を回収
9・14/丸善丸の内本店、JR東京駅近くにオープン。書店の大型化さらに進む
9・28/神奈川県警、自販機にワイセツ本の収納容疑で三和図書販売の社長に逮捕状
10・2/最高裁第二小法廷、『フォーカス』の「保険金疑惑事件」記事で名誉を傷つけられたと、 熊本の医療法人と理事長らの損害賠償訴訟で新潮社の上告を棄却、被告らに計1,980万円と高額の損害補償を命じた東京高裁の判決が確定
10・13/集英社『週刊ヤングジャンプ』、本宮ひろ志の連載漫画「国が燃える」で、南京虐殺描写が不適切だったとして休載。 該当号の大半ページを削除・修正
11・5/04年版『犯罪白書』公表、「おれおれ詐欺」急増、刑法犯は9年ぶりに減少
《この年…ドラマを中心に"韓流"ブーム/東京都、卒業式などで君が代斉唱・日の丸掲揚で徹底化を図る。教師ら反発 /真夏日の年間最多記録更新−東京70日、横浜64日、千葉68日、大阪93日、熊本105日など全国12地点 /台風上陸、観測史上最多の10個/8・−第32回オリンピック(アテネ)。日本選手に金メダルラッシュ /9・19,20プロ野球選手会、70年の歴史で初のストライキ/9・20敬老の日、65歳以上の人口2,484万人(総人口の19.5%) /10・3メジャー・リーグでイチロー、年間最多安打262本を記録(84年ぶり)/10・23新潟県中越地震 /12・26スマトラ島沖の地震津波で、被災者10か国以上、死者20万以上に》
〈ベスト3〉J・K・ローリング『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』、養老孟司『バカの壁』、片山恭一『世界の中心で、愛を叫ぶ』
〔ことば〕チョー気持いい/自己責任/セカチュー/新規参入/冬ソナ/負け犬

《戦前・戦後の「出版年表」をまとめ終えて》

 ここまで、徳川末期・明治の初めから、2004(平成16)年に至る約140年間の"日本の歩み"を、出版関係を中心に概観してきた。
 年表に表れた項目だけでも膨大であり、すべてを"理解"する必要はないが、国内外ともに、実にさまざまな事象や事件・事故があり、 そこに生きてきた先人のだれもが大なり小なり影響を受けていただろうことも想像できるであろう。 さらに、それらは決して他人事でないということも……。
 出版にかぎらず、国のあり方(政治・社会・国際関係など)や、先人の生きてきた世界を垣間見つつ、今後、日本人として、 どう生きるのか、"私はどうあるべきか"のヒントとなれば幸いである。
 「学び」に終わりはなく、また「歴史」は明日に続くことを忘れないで欲しい。
 2005年2月 橋本健午

2.出版「倫理綱領」集

 出版界の綱領は、書籍と雑誌製作者の"心得"として「出版倫理綱領」(57年制定)と「雑誌編集倫理綱領」(63年、97年改訂)のほか、 取次業の「出版物取次倫理綱領」(62年)、小売業の「出版物販売倫理綱領」(63年、04改訂)があり、 成人向け出版社の団体も「出版倫理懇話会編集倫理綱領」(90年、01改訂)を設けている。
 他に「雑誌広告倫理綱領」(58年)などもあり、読者や消費者への配慮を心がけている。 97年に改訂された「雑誌編集倫理綱領」は、「児童憲章」が消えて「児童の権利に関する条約」が登場した。
 他メディアの綱領では新聞(46年、55年補正)、映画(59年改訂、94,98年改訂)、民放(51年、99年改正)、 レコード(52年)、NHK(59年、95年改訂)、広告(60年)、ビデオ(79年)、コンピュータソフト(92年、97年改正)などである。
 新聞は週刊誌の"性"広告問題をきっかけに、2000年にも改訂があった。いずれも業界としての"倫理"確立、ルール作りであるが、 多くは青少年問題に関連したり、世論の指弾を受けて制定されたものである。
 出版界の綱領制定が63年ごろに集中したのは、それまで毎年のように起こっていた"悪書追放""有害図書問題"が、 この年秋の甲府市書店組合に始まる身内からの有害雑誌追放問題(仕入拒否)が全国的に広がったこと(63・10・2)、 また東京都でも青少年保護育成条例制定の機運が高まったことなどによる(翌年8月公布、10月施行)。
 その年末には、出版4団体(書協・雑協・取協・小売全連=日書連)による出版倫理協議会が設置された。 趣旨は「低俗出版物から青少年を守るため」であったが、戦後獲得した「出版・言論の自由を確保すること」も大きな課題であった。
 2000年ごろ、週刊誌等の記事や写真・マンガなどの性表現や暴力表現が青少年に"有害"であるとか、女性蔑視にあたるとして、 しばしば非難の対象となり、またプライバシー問題などで裁判沙汰となり、(雑誌編集倫理綱領の)「5.品位」はどこへ行ったのかと皮肉られたこともある。
 綱領の多くは"精神"規定であり、また各社には自主規制があり、その範囲内での表現活動を行っているはずである。 しかし、中には商業主義に走ったり、ライバル誌との競争や新聞・テレビなど他メディアとの競合もあり、 毎号書店等で買ってもらうために"広告"表現が過剰になる一因もそこにある。
 また、確信犯的な表現があるのは、言論・表現の自由の確保を"確認"するためであろうが、 「知る権利」をタテに取ったものもないとはいえない。

3.都道府県の青少年条例一覧

 1950年5月に岡山県議会が「青少年に対し良い本の普及を図るとともに、エロ本など有害な本を読ませないようにする」目的で、 全国初の"エロ本取締条例"図書による青少年保護育成条例を公布した。有害と認めた本を知事が告示すると、 「本屋は青少年にこれらの本の立ち読みもさせてはいけない、売ったり買ったりした者は十万円以下の罰金か科料に、 親でもウッカリ指定された本を子供に持たせていると科料に処せられる」(朝日50・5・20)というのである。
 この年、1月に聖徳太子の千円札が発行され、たとえば、巡査の初任給は3,991円という時代だった(原田勝正編『昭和世相史』小学館1989)ことを考えると、 いかに厳罰であったかが分かるが、現実には適用されず有名無実であった。
 翌51年10月和歌山県が"有害な興行、映画、出版物"を対象とした、初の一般的な青少年保護育成条例を制定すると、 52年に香川県、55年に神奈川県、北海道と続く。この55年に全国的な"悪書追放運動"が起こり、その余波で青少年条例も大阪府はじめ、 次々に制定されるのだった(長野県を除く)。
 次表〈省略〉にあるのは"出版物"だけだが、その対象は広い(東京都の場合⇒検索語「一度、東」)。 なお、青少年条例に盛り込まれている規定は"有害図書"に限らず、深夜の外出制限や、ブルセラを売ってはいけないなどと、さまざまである。
 一般に"有害環境"というが、これもさまざまで、大人たちが「これは有害だ」といえば、どこでも何でも"有害"となる。 たとえば、少年の溜まり場となる公園も"有害"とされた。その伝でいえば、暴力や殺傷事件の絶えない学校も、 親に虐待される家庭も"有害環境"であり、24時間営業のコンビニなどもそうだが、便利だから"有害"としないように、 条例は恣意的な"規制"である。
 いつの世も"青少年問題"は大人の"オモチャ"であった。少年非行と因果関係があるという前提で"有害図書"指定が行なわれてきたが、 いまやそれも否定されている。にもかかわらず"出版物"がヤリ玉にあがるのは、なぜか。
 テレビがなければ困るが、本を読まなくても生きていけ、多くの地方では、書店関係者以外、身内に出版関係者はいなく、 また、政治家は、票のために地元の人に頭を下げる……。手軽で古典的なメディアの出版物は"青少年問題"とは関係なく、 スケープゴートにされる所以である。



〔各種資料・年表を参考にさせていただきましたが、複数のホームページを含め似たような表現が多く、 どれが"元"なのか判然としない場合が多いため、文中に注記するほか、ここに列記してお断りとさせていただきます。―筆者〕

『史料 明治百年』朝日新聞社編・発行1966・11
『日本出版百年史年表』布川角左衛門編著・日本書籍出版協会1968・11
『明治大正昭和世相史』加藤秀俊(代表)著・社会思想社1977・08
「明治報道年表」(新人物往来社『歴史読本』特集 明治ものしり事典1978・07号)
『猥色文化考 猥雑物公然陳列』長谷川卓也著・新門出版社1980・04
『ニッポン第1号記録100年史』相沢正夫著・講談社1981・07
『明治ニュース事典』(全9巻)毎日コミュニケーションズ編・発行1983〜1986
『目で見る出版ジャーナリズム小史』日本ジャーナリスト会議 出版支部編・高文研1985・12
『内閣百年の歩み』内閣制度百年史編纂委員会・椛蜊I1985・12
『昭和史年表』神田文人編・小学館1986・05
「メモワール出版・読書界 明治・大正・昭和 あの日あのこと365日」文化通信
1990・1月〜12月(文化通信社、月1回掲載)
『夜明けあと』星 新一著・新潮社1991・02
『日本マス・コミュニケーション史〈増補〉』山本文雄編著・東海大学出版会1992・01
『戦争を知らない 戦後50年』毎日ムック1995・03毎日新聞社
「戦後50年、出版界の足跡」『文化通信』1995・5・1文化通信社
特集「発禁本」…メディアファクトリー発行『ダ・ヴィンチ』95・08号
『出版の検証 敗戦から現在まで1945〜1995』日本出版学会編・文化通信社1996・12
『出版データブック1945〜1996』出版ニュース社編・発行1997・09
『別冊太陽 発禁本−明治・大正・昭和・平成 城市郎コレクション』平凡社1999・07
「新文化が共に歩んだ出版の略年表」(『新文化』2000・5・25新文化通信社)
「年表 出版界」『出版ニュース社の五十年』出版ニュース社編・発行2000・12
『定本 発禁本 書物とその周辺』城市郎著・平凡社2004・04
『年表 昭和史 増補版1926−2003』中村政則編・岩波ブックレット2004・06

これより、年ごとの新規追加分

◇2005(平成17)年
3・14/本日より、鳥取・島根・山口3県で、雑誌発売日が二日目地区(首都圏基準翌日発売)となり、 本州での三日目地区がなくなる
3・25/「愛・地球博」開催(〜9・25)、テーマは「地球環境」。2200万人が詰めかける
5・−/東京都生活文化局、青少年条例改正(3・31)により、出倫協に自粛の要請
7・12/「共謀罪」法案、衆議院法務委員会で審議入りしたが、03年3月に提案されてから三度目の廃案に。 10月の特別国会で継続審議に。06年の通常国会で再び…
7・29/文字・活字文化振興法、公布・施行(10月27日を「文字・活字文化の日」に)
9・−/神奈川県青少年課、条例改正に伴い、10月から施行の有害図書類の区分陳列方法の強化等に関し、出版界と折衝
10・12/千代田区神田神保町に、再販弾力運用の実験店「ブックハウス神保町」が開店
10・−/出倫協など、日本フランチャイズチェーン協会(JFA)の要請を受け、成人誌の販売自主規制として、 「小口2か所ブルーシール止め」を11月から実施
11・30/日本出版クラブ、パキスタン北部地震の義捐金約1200万円(法人90社、個人816人)を日本赤十字社へ送金 (10・8発生、マグニチュード7.6、死者7万3千人を超え、住宅喪失者250万人に)
《この年…「放送と通信の融合」加速(2月、IT企業のライブドア、フジテレビの筆頭株主のニッポン放送株を大量に取得。 10月インターネット通販の楽天がTBS株を取得、経営統合を迫る)/NHK、従軍慰安婦番組(01年1月放映)が政治的圧力で改編されたと報じた朝日新聞と対立。 自民党幹部2人を含み問題化/3・22地震の空白地帯といわれた福岡・佐賀両県で震度6弱の地震。玄海島などで大被害(福岡西方地震) /4月、首相の靖国参拝や教科書問題などをめぐり、北京・上海で大規模な反日デモが相次ぐ /4月、JR西日本の福知山線で脱線事故。死者107人、負傷者500人以上の大惨事。JR発足以来最大の事故 /アスベスト(石綿)問題、全国に広がる/郵政民営化法案を参院が否決。これを受けて小泉首相は衆院を解散し、総選挙(9・11)。 自民党が296議席を占め、歴史的圧勝/8月、宇宙飛行士野口聡一さん、再開シャトルで活躍/8月、アメリカ南部にハリケーン「カトリーナ」上陸、被害は甚大に /アジア各国で猛威を振るった鳥インフルエンザ、ヨーロッパにも飛び火。世界保健機構(WHO)、新型インフルエンザに変異すれば、 日本国内で最悪64万人が死亡と予測/マンション等の耐震設計偽造問題起こる》
〈ベスト3〉山田真哉『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』、中野 独人『電車男』、片山恭一『世界の中心で、愛を叫ぶ』
〔ことば〕ホリエモン/自己責任/セカチュー/新規参入/刺客・くの一/チルドレン

◇2006(平成18)年
1・23/ライブドアの堀江社長ら、証券取引法違反で逮捕(4月保釈、初公判9月)
4・6/3月末自己破産した自費出版社の碧天舎、債権者説明会で契約者から怒号が飛ぶ
6・1/JPIC(出版文化産業振興財団)、新理事長に肥田美代子氏(前衆院議員)
6・2/探偵業法、参院で成立(6・8公布。施行期日…公布の日から1年以内)
7・1/福岡県書店組合、万引防止へ県警と連携し、販売証明シールを採用
9・26/安倍晋三内閣が発足(当初65%だった支持率も年末には48・6%に落ち込む)
10・9/北朝鮮、地下核実験を実施したと発表
10・18/安倍内閣の金看板である教育改革を進める教育再生会議、初会合を開く
10・−/『ダ・ヴィンチ・コード』、責任販売で582万部に
10・〜/高校での世界史など未履修問題・学校でのいじめ自殺問題、ともに全国的に
11・2 /NHK会長、ラジオ国際放送での拉致問題を重点的に扱うようにとの総務相の意向を受け入れる…
11・14/東京都治安対策本部、出版倫理協議会に対し、「(これまでの方針を変え)来年1月以降、シール止め誌の中で、 指定図書と同等レベル内容の雑誌を発行した出版社を都に呼んで警告していく」旨を表明(都庁にて。7・13につぐ2度目の会合)
11・15/文字・活字文化推進機構設立準備会、シンポジウム「言葉の力と日本の未来」を開催(日本プレスセンター)
12・8/公取委、再販制度自体の「見直しは当面行わない」と出版業界に説明
12・15/改正教育基本法が成立。この間、タウンミーティングのヤラセが発覚
12・15/防衛庁の省昇格関連4法、与野党の賛成多数で成立(07・1・9に誕生)
《この年…1月、『東京タワー』、発売半年で100万部を突破/荒川静香、トリノ冬季五輪フィギュアスケート・シングルで金メダルを獲得 /日書連の加盟組合員数、6600台まで減少/05年度の出版販売額(出版科学研究所調べ)、前年比2・1%減の2兆1964億円に /公取委のモニターアンケート、本の入手先は「図書館で」が63%(冊数ベース)、「書店で購入」は24% /2005年度の電子書籍市場は94億円に/6・−ジーコ・ジャパン、W杯ドイツ大会で決勝トーナメント進出できず /夏の甲子園で早実は斎藤投手が連投し、駒大苫小牧との37年ぶり2回目の決勝再試合に勝ち、初優勝 /05年度の教職員の休職、「精神疾患」4000人を越す。過去最多、10年で3倍に(文科省調査) /20代後半の女性、初婚率5年ぶりに上昇。「出生数回復の要因」と厚労省/12・30フセイン元イラク大統領、絞首刑 /この年も、NHKの不祥事が続く》
〈ベスト3〉藤原正彦『国家の品格』、J・K・ローリング『ハリー・ポッターと謎のプリンス』、リリー・フランキー『東京タワー』
〔ことば〕シンジラレナーイ/イナバウアー/ハンカチ王子/美しい国


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