『心-こころ- 橋本健午のページ』出版倫理・青少年問題

「戦後の出版倫理」関連略年表　（2006.02追加修正）

	出　版　界	行政･警察･法律、民間団体等、青少年の現状
S20（1945）	・敗戦後、日本出版協会の発足・小売全連の発足	・ＧＨＱ、「プレスコード」を発表
S21	・日本自由出版協会の結成	・警視庁、刑事部に青少年課設置
S22	・日本出版協会･日本自由出版協会、「出版綱領」を制定・カストリ雑誌の氾濫	・内務省･警視庁･検察局、エロ･グロ出版物続出に対し、取締りの標準･範囲を決定、実施
S23	・小売全連、エロ･グロ出版物撲滅に関する声明発表・出版綱領実践委員会、エロ･グロ出版物について声明	・浮浪児根絶緊急対策要綱閣議決定・改正民法施行・児童福祉法施行・改正少年法制定・風俗営業取締法施行
S24	・日本自由出版協会と日本出版連盟が合体し、全国出版協会に・不況で休廃刊誌続出、休業、倒産の出版社が増加	・ＧＨＱによる検閲の廃止（実質は存続）・家庭裁判所が発足・内閣官房に青少年問題対策協議会を設置・青少年保護育成運動、全国一斉に（春秋2回）
S25（1950）	・日配の閉鎖により取次会社の誕生、出版取次懇話会の結成・良書普及運動起こる	・中央青少年問題協議会の設置（対策協の改組）・岡山県、"エロ本取締条例"を公布・『チャタレー夫人の恋人』ワイセツ容疑で発禁
S26	・出版、印刷用紙の統制、全面撤廃・この年、文庫本が盛況、90余種を数える	・和歌山県、初の一般的な青少年条例を定めるこの年、少年非行第1次のピーク（性典映画）
S27	・出版物等の事業税、免除となる・出版団体連合会（出団連）の結成	・対日講和条約･日米安全保障条約の発効・厚生省、児童福祉審議会を開く（混血児対策）
S28	・この年、全集ものがブームに、約140種	・厚生省児童福祉審議会、不良出版物排撃を決議
S29	・この年、深刻なデフレの影響で、倒産出版社が続出。貸本屋が激増	・東京都青少協、不良文化財（出版物、映画、おもちゃ）の追放で、都議会に答申
S30（1955）	・出団連、出版倫理化運動実行委員会を設置、悪書追放出版界自粛を声明・日本児童雑誌編集者会の結成・この年、新書版の発行点数2733（出版物全体の約13％）	・第4回青少年問題全国協議会で"不良出版物"追放運動が問題に・中青協、「青少年に有害な出版物、映画等の対策について」を策定、関係業界に自粛の要請（"悪書追放運動"）・マスコミ倫理懇談会の結成（3年後、全国協議会に発展）
S31	・日本雑誌協会（雑協）の設立・再販本部委員会が発足	・中青協意見具申、「青少年に有害な映画対策について」（"太陽族映画"）・東京都青少年出版物対策協議会の設置
S32	・日本書籍出版協会（書協）の設立・書協･雑協、「出版倫理綱領」を制定	・売春防止法公布（Ｓ33･4･1より罰則適用）
S33	・日本雑誌広告協会（雑広協）、雑誌広告倫理綱領を制定	・中青協、「青少年に有害な出版物、映画等の排除」についてマス倫と懇談、自粛を要望
S34	・出版4団体、出版倫理推進特別委員会を設置・書協を中心に、文部省図書選定制度に反対･非協力の動き	・文部省、青少年向き図書選定制度に関する省令、告示を通達（→目録制度に改めるが…）・警視庁、低俗週刊誌の取締りを開始（不良週刊誌不売運動）
S35（1960）		この年、ジャズ喫茶増加､睡眠薬まん延､酒･たばこの自販機増加＜刃物を持たない運動＞
S36	・嶋中事件起こる・書協、「出版の自由と責任に関する委員会」を設置	・中青協決定、「青少年対策当面の重要事項」（マスコミ･アウトサイダー対策強化問題）
S37	・取協、出版物取次倫理綱領を制定・小売全連、「母と子の20分読書運動」
S38	・甲府書店組合から始まった青少年有害雑誌追放運動、全国に広がる・雑協、雑誌編集倫理綱領を制定・小売全連、出版販売倫理綱領を制定・4団体、出版倫理協議会（出倫協）を設置	・総理府、「マスコミと青少年に関する懇談会」を設置（出版、放送、映画の3部会）・同懇談会、「俗悪出版物は業界内部の自主規制に期待すべき」との答申
S39	・出倫協等、都条例反対の陳情を繰り返す・出倫協、出版物自主規制特別委員会を設置	・東京都青少年健全育成条例の成立この年、少年非行第2次ピーク（テレビ番組）
S40（1965）	・出倫協、都指定雑誌に帯紙措置（連続3回、年通算5回）の自主規制を決める	・閣議、青少年憲章制定と青少年健全育成対策を決める・青少協全国会議、青少年育成国民運動の積極的推進を決議
S41	・出倫協、自主規制団体として都知事より表彰される	・総理府に「青年局」設置・首相の諮問機関「青少年問題審議会」設置（中青協の改組）・青少年育成国民会議の発足
S42	・出倫協、自主規制策として「要注意取扱誌」の指定を行なうことに・東京マス倫、プライバシー問題で意見交換	・福岡県、出版関係業界との懇談会（全国で初）この年、福祉犯ピーク／シンナー乱用増加の兆し
S43	・雑広協、「雑誌広告掲載基準」を制定・雑協、青少年対策倫理委員会を設置	・総理府に「青少年対策本部」設置・総理府総務長官、出版･映画･広告･環境衛生･貸本等の業者団体に自主規制の強化に関する要望
S44	・小売全連、第1回良書100選読書感想文コンクールを実施	・総理府、俗悪広告追放推進要綱を策定・同、非行少年の生活実態調査結果を発表
S45（1970）	・雑協青少年倫理委と劇画･コミック誌編集責任者と懇談会	・四日市の中学校長会、子ども週刊誌の「ハレンチ漫画」追放を版元に要望
S46		・青少年対策振興国会議員懇談会が発足
S47	・雑協、東京都が青少年に有害な図書に事業税を課すことについて編集委で説明会	・『面白半分』摘発（「四畳半襖の下張」掲載）この年より、有害雑誌指定高原化（S56まで）
S48	・雑協編集倫理小委および週刊誌･コミック編集責任者、警視庁防犯部長らと懇談	・総理府、風俗･性に関する世論調査結果を発表、ポルノ解禁反対派が約70％
S49	・布川議長、国民会議で雑誌倫理研究会の「成人向マーク」表示をやめさせた理由を、容易に卑猥なものを使わないとも限らないと説明	この年、遊び型非行のまん延、暴走族のグループ化、対教師暴行事件の多発、アルバイト売春･集団乱交など／高校進学率90％を超す
S50（1975）	・日書連、組合員1万名を突破・出版労協、出版労連に発展改組	・男同士の性場面が露骨と『薔薇族』摘発この年、性産業の氾濫／登校拒否1万人超
S51	・スタンド業者、全国雑誌販売卸業者懇話会結成／・全国雑誌自動販売機協議会が発足	・警察庁、保安部に少年課を新設
S52	（自販機ポルノ出版物は約300種、ポルノ自販機は全国に約13,000台と推定）	・総理府、非行原因に関する総合的調査を実施／・文部省、「ゆとりある教育移行措置」を告示
S53	・出倫協、ポルノ雑誌の青少年対策で総理府と意見交換・6月の書籍返品率、史上最高の46％に	・「全国青少年健全育成強調月間」（11月）と定める日本ＰＴＡ全国協議会、出倫協に対し悪書追放申入れ・毎日新聞読書調査、本を全く買わず=60％、読書時間=38分、月平均本代=1000円
S54	・出倫協、総理府･国民会議からの要望に対し、「具体的な倫理基準の策定は不可能」「自主審査機関の設定には反対」と回答	・国際児童年・「青少年を非行から守る全国強調月間（7月）」設定（平成10年、名称変更）・総理府、青少年の自殺問題に関する懇談会「子供の自殺防止対策」提言
S55（1980）	・出倫協、"日Ｐ"の自販機撤廃の法規制を求める署名運動は拡大解釈のおそれがあると疑念を表明	・日本ＰＴＡ全国協議会、225万3千人の署名をつけ、有害図書販売規制立法請願を国会に提出・警視庁、ビニール本の手入れ
S56	・警察庁、出倫協などと有害図書の規制問題をめぐり意見を交換この年、有害雑誌指定ピーク
S57	・出倫協、大阪府条例改正問題に関し、現行条例尊重を要望	この年、覚せい剤乱用のピーク／登校拒否2万人超（50日以上）／非行の低年齢化（16～17歳52.5％）／雑誌自販機問題
S58	・雑協倫理委員ら、文部政務次官らと少女雑誌について懇談	・政府、「少年非行防止対策推進連絡会議」設置この年、少年非行第3次ピーク（少女雑誌）
S59	・布川議長、中西総理府総務長官に面会、有害図書規制問題で理解を求める・出倫協、各政党に要望書を送付・同、国会決議に反対の要望書を各野党に提出	・衆院予算委員会で、少女誌雑のセックス記事のどぎつさ指摘・自民党"有害図書販売規制法案"をまとめる（上程されず、決議もなし）・大阪府青少年保護育成条例を改正
S60（1985）	・出版問題懇話会の結成・出倫協、警察庁と初の懇談会、青少年問題で意見交換	・国際青年年・風営法の改正・風適法の施行・文部省の児童･生徒の問題行動に関する検討会議、「いじめの問題について」緊急提言を発表
S61	・出版人の会、国家秘密法案再提出に反対するシンポジウムを開く（431名出席）	・青少年問題審議会、「21世紀に向けての青少年の健全育成の在り方について」意見具申
S62		・カラオケ店第1号、岡山県の農家の庭先に
S63		この年、小中学生の登校拒否4万人超／凶悪で深刻な事件／初発型非行70％超
H01		・東京都ビデオ対策協議会の設置この年、残虐ビデオ問題
H02（1990）	・出倫協、議長の交代・出版問題懇話会、編集倫理綱領を制定	・東京都、「性の商品化に関する研究」を発表・コミック本問題が起こる
H03	・雑協、「成年コミック」マークを決める／・出倫協、コミック特別委員会を設置／同、「コミック単行本に関する自主規制の申合わせ」（都指定分が対象）	・各地方自治体で、条例改正機運高まる（陳情、要望、要請、請願）この年、高校生の非行増加／ダイヤルＱ2
H04		・東京都、コミック本『Ｂｌｕｅ』を指定、審議会に小委員会を設ける、ビデオの指定始まる
H05	・出倫協、「申合わせ」（2）により、全国で多数指定されたコミック単行本を対象に「勧告」「注意」）	・出版物等に関する事業税（地方税）の非課税措置、廃止・総務庁青対本部、「青少年とポルノコミックを中心とする社会環境に関する調査報告書」を発表
H06		・日本国、「児童の権利に関する条約」を批准・総務庁青対本部、「青少年とアダルトビデオ等の映像メディアに関する調査報告書」を発表
H07（1995）		この年、いじめによる事件の増加／テレホンクラブ、ツーショットダイヤル営業等問題
H08	・出倫協、「成年向け雑誌に関する自主規制の申合わせ」を決定（マークの表紙表示）
H09	・雑協、「雑誌編集倫理綱領」を改定	・東京都、条例に"淫行処罰規定"を盛り込む
H10	・出倫協、"18歳未満に販売禁止"のステッカーを日書連傘下書店に配布	・「青少年の非行問題に取り組む全国強調月間」（7月）設定少年非行第4次のピーク
H11	・出倫協、「児童買春・児童ポルノ処罰法」について見解を発表／・同法施行に際し、一部書店組合では"解釈"に関し混乱も	・「国旗国歌法」の制定・「児童買春・児童ポルノ処罰法」の施行・青少年問題審議会、「『戦後』を超えて―青少年の自立と大人社会の責任―」答申・週刊誌の新聞･車内吊り広告の性表現が問題に
H12（2000）	・出倫協はじめ各団体、"青少年有害環境対策法案"に対する反対声明・宝島社、都の指定を不服として提訴	・自民党等、"青少年有害環境対策法案"の検討・都青少協、自殺本の規制･コンビニでの区分陳列励行などについて都知事に答申
H13	・出倫協、出版ゾーニング委員会を設置。雑誌の"判定"作業を開始	・東京地裁で「宝島社」裁判始まる・改正少年法施行、刑罰適用は「14歳以上」に・東京都、条例を改正。自殺本等の規制･図書の区分陳列・雑誌に識別マークの要請
H14	・雑協、雑誌人権ボックスを設ける・出倫協、議長の交代・雑協倫理委、青少年報道をめぐり、問題に取り組む弁護士らと懇談・雑協、個人情報保護法案に関し、与野党と懇談	・文部科学省、小中学生1,200万人に『心のノート』を配布（"道徳教育"）・東京都、自主規制団体と懇談。規制強化をにおわす・石川県、有害図書販売者に「懲役６か月以下または30万円以下の罰金」の条例施行（懲役は全国初）・警視庁、ワイセツな漫画『蜜室』を販売したとして松文館社長ら3人を逮捕。漫画の公の出版物では初めての訴訟（漫画ワイセツ裁判）
H15	・出倫協、東京都都民協働部長と意見交換（版元は成年向けマーク表示誌の梱包を検討）・雑協等、青少年法案に関し自民党と懇談	・中央教育審議会、教育基本法改正に向けて最終答申を出す・個人情報保護法が成立（適用除外に"出版社"の扱いが不明）・超党派による活字文化議員連盟が設立・大阪府、青少年保護育成条例、改正施行（包括規程を盛り込む、区分陳列の義務、自動貸出機の規制）・首都圏サミットで、中田横浜市長ら治安問題に関連して、有害図書の販売に言及
H16	・中学･高校生向けのローティーン雑誌の問題が浮上し、雑協理事会でも厳しく受け止める・雑協、横浜市主催の「有害図書の青少年への販売防止対策委員会」に倫理副委員長を派遣・出版業界、成人向け雑誌の「小口シール止め」を実施	・東京地裁、漫画ワイセツ裁判で、「わいせつ３原則」を理由に松文館社長に有罪判決、被告側は「漫画文化が衰退する」と控訴・福島県、条例を改正し自販機の有害図書の販売に懲役刑を導入・東京都、青少年条例改正（7･1一部の雑誌類に"包装"陳列を義務付け）
H17(2005)	・出倫協など、日本フランチャイズチェーン協会（JFA）の要請を受け、成人誌の販売自主規制として、「小口2か所ブルーシール止め」を11月から実施	・文字･活字文化振興法、公布･施行（10月27日を「文字･活字文化の日」に）・東京都生活文化局、青少年条例改正（3･31）により、出倫協に自粛の要請・神奈川県青少年課、条例改正に伴い、10月から施行の有害図書類の区分陳列方法の強化等に関し、出版界と折衝・厚生労働省、11月を「児童虐待防止推進月間」と定める

＊斜体表記が、主として総務庁青対本部作成「有害環境問題等対応の推移」年表にある表現による等、同年表を参考に作成

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