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「10年前の"現実"と、そのころ考えていたこと」(2006・03)
「『今日の青少年問題について』の提言(1996・04)」
《この提言は、ア「仮説1〜3」とイ「大人の意識改革1〜5」からなる。ある公的機関による公募へのものだったが、未提出。2006・1・10》
現代は昔と違って時間的余裕があるはずなのに、大人も子供も忙しいのはなぜだろう。また、子供たちを取りまく環境は、
多様化し複雑にからまっている。高度情報化社会は、彼らを含めて人々に幸せをもたらしただろうか。
私の経験からいっても、小さい時こそ自然に親しむことが大切だ。受験戦争やら、英才教育とやらが持てはやされる時代に逆行すると思うかもしれないが、
人生は長い、急がば回れである。いまこそ必要なのは、余裕をもって生きる術を身につけることだ。
ア[仮説]
[1 子供にとって"家庭"はあるのか]
わが国でも児童虐待が顕在化し、幼児の孤食は4人に1人とか。また、子離れ(親離れ)ができず、子供はイイ子に育ち、
とつぜん爆発するのはなぜか。
子供に必要なのは、温かい家庭、やさしい親である。親の愛を知らずに大きくなった子供の将来はおぼつかない。
しかし、それは彼らの責任ではない。
一方、子供は親から独立した人格を持っている。いつかは旅立たせなければならない。世の中の厳しさ、
ルールを教えることも大事である。
家庭(親・家族)は、子供にとって憩いの場であり、最初の教育の場である。今こそ、情報に振り回されない"我慢する親""賢い親"の教育を。
[2 落ちつきがない、暴力的だなど子供が情緒不安定といわれる遠因の一つに、学校の"教室"そのものがある]
いま学校の教室はリノリュームの床張りに脚がパイプの机と椅子の組合わせ。子供たちが一斉に起立したり、
座るときに床と椅子が接触する音は、やかましいというより騒音に近い。殺伐たる世の中の、まさに非教育的な環境である。
毎日何回も繰り返す、そのような環境に馴れた結果、子供たちは静けさ、小さな声、優しい音など強弱や微妙な違いに反応が鈍くなり、
喧嘩でもないのに大きな声を出したり、テレビのボリュームは上げる一方である。
教室は彼らが一日の大半を過ごす大事な場所である。子供への影響など因果関係を調査し、改善するところがあれば、
ただちに対応すべきであろう。
[3 少年法などの見直しで、子供たちに自覚を促す]
「少年」の年齢が法律・条例等によって違うのは、成長著しい彼らの実情に合わない。とくに"20歳未満"とする少年法は、
人権配慮も必要だが、彼らを甘やかすばかりではないか。早急に検討する課題であろう。
飲酒・喫煙はともかく、少なくとも選挙権は"18歳以上"とするのが現実的であろう。また、淫行処罰も大事だが、
自分のからだ・健康を考える彼ら自らの自覚を促すことが先決だ。
校則のない学校ほど、生徒はきちんとやっているという報告もある。『子供の権利条約』に則り、彼らの意見を取り入れ、
その意見に責任を持たせてはどうか。
イ「大人の意識改革」
いじめや不登校、淫行や麻薬禍など青少年問題は、大人社会の影響、大人の身勝手な論理を無視しては語れない。
まず、大人の意識改革を望む。
1)親とは何か、家庭とは何か、再考を
本来、子供は親を見て育つ。親がろくに本も読まず、幼児期に大事なスキンシップを欠き、テレビに子守をさせるようでは、
子供は親の愛を知らないで育つ。これでは彼らの将来は暗澹たるものだ。もう一度、我が身を振り返ることが、
親として必要ではないか。そのために"我慢する親"の教育を考えねばならない。
2)心の痛みが分かる教育を
いじめは加害者も被害者という。どうして仲間をいじめるのだろうか。だれでも自分のアイデンティティを求めて行動を起こす。
それがたまたま自分より弱いものや小動物に向かうとき、慈しみではなく、いじめになったのではないか。
理由はさまざまだろうが、少なくとも他人の心の痛みが分かれば、彼は別の行動をして自ら救われたかもしれない。
現実から目を背けないことだ。真剣に対応すれば、子供の心は必ず開く。
3)自覚と、判断力をつけさせる
『子供の権利条約』の理想は、子供のことは子供に任せ、大人はむやみに口を挟まない、ということではないだろうか。
そのためには、親は子供に善悪の判断力や自覚と自信を身につけさせ、責任感を持たせる。そして、子供を信頼することだ。
大人は早く"尊敬される大人"になる必要がある。
4)社会環境の浄化だけでは
煙草を吸い酒を飲む、夜遅くまでダラダラと群れている。宗教にのめりこんだり、ヤクザ、麻薬、売春などの悪に染まる。
そのような環境を一掃すればよいというのは簡単だが、取り締まってもなくならないのも事実。むしろ、子供時代にしか体験できない、
もっと魅力ある世界を提供することだ。
5)大人と子供の世界の分離を
政治や経済界をめぐる汚職、犯罪行為など、放っておけば子供は世の中を見て"悪く"育つ。なぜなら、大人が楽しむなら、
オレたちだって、と。
彼らのことを本気で考えるならば、もっと夢の持てる環境を作ることだ。例えば、自然と親しみ創造力を養い、
共同作業によって連帯感も育つ"山学校(やまがっこ)"の復活を提唱する。キタナイ大人の世界を忘れて、
健康な汗をかくためにも。