1994・02 橋本健午(出版倫理協議会事務局)
さて、コミック本に関する問題についてですが、出版界では、これまでも各団体がそれぞれの倫理要綱を持ち、
青少年への配慮を行ってきました。しかし、京都府・大阪府・広島県の条例強化や最近は千葉県の包括指定を盛り込んだ条例改正案などの動きがあります。
そこで、出版界としましては、反省すべきところは十分反省し、なおかつ青少年にとってどのようなものが良いのかについて改めて取り組みをしています。
ただ、問題点を整理してみますと、一つは、雑誌などを出版している出版社が数多くあり、その中で少年向け出版物の問題と、
大人向け出版物を子どもが見る問題などがあります。ですから有害図書指定されたかなりの部分は少年・少女向けというよりは大人向け雑誌の問題が大きかったのではないかと思います。
ここで大変残念に思いますのは雑誌形態をとっているコミック誌と書籍の形態をとっているコミック本とを混同して使われている場合が非常に多いのではないかという点です。
問題となったコミック本に限って自粛の状況を説明しますと、総務庁の月別の資料「青少年保護育成条例に基づく少年少女向けコミック誌・単行本(漫画)の有害図書指定状況」のうち、
平成3年から5年のそれぞれ1〜3月の3か月間の指定状況を見てみますと、社数・コミック本のタイトル数・指定件数の平均のいずれもが減少しています。
それから、大人向けに出しているコミック本及び青少年に好ましくないコミック本に関しては、「成年マーク」をつけるよう平成3年1月に「出版倫理協議会」で決めました。
なお、出版杜の中には1)明らかに成人向き、2)青少年に誤解される恐れがある、3)当初指定を受けた受けたシリーズもので、止むを得ず他の巻にもつける、
などの理由でマークをつけています。
さて、今まで出版物を作る側のことばかり述べてきましたが、書店での対応につきましては「日本書店商業組合連合会」等が
傘下の組合員に対して成人コーナーの設置や愛の一声運動などを指導しています。東京や大阪のデータを見ますと、かなり徹底されているようです。
ただし、最近では雑誌類は書店に限らずコンビニエンスストアや駅の売店などでも購人できますので、正確なところは掴み切れないのが現状だと思います。
最後に、出版界としましては自主規制だけではなく、前向きな取り組みとしての「子どもと本の出会いの会」や学校図書の充実のための活動も行っています。
この「子どもと本の出会いの会」では子どもが本を読まないことを憂慮し、学校や公共図書館で、子どもの読書に関わっている人々、
戦後一貫して子どもと本をつなぐ役割をしてきた人々、作家、画家、また子どもの本に関わる人達が声をかけて集まり昨年3月に発足しました。
その趣旨については、本日配布された資料をお読みいただければと思いますが、井上ひさし会長のあいさつ"…大人が本を読むようになると、
(子どもが本を読まないという)問題の半分は解決します。この会の目的の半分は、大人に向けての仕事だと思います。"という言葉で、
ご報告のしめくくりとさせていただきます。
〔平成5年度 青少年と社会環境に関する懇談会・第2分散会「今、雑誌のここが良くないと思う」…(社)青少年育成国民会議1994・2・24〕