もう"東大か甲子園か"という安易な考えでは、今の学生は生き残れない……。
小学低学年から、バットを持ちボールを握り、やがて甲子園を目指し、さらに大学でも野球をやり、
プロやノンプロへ進もうとする。
一つのことを長く続けるのはすばらしいことだ。ところが学生たちの本音は"途中でやめられない、
ボクから野球をとったら何も残らない"というのだ。
一見はなやかだが、彼らは不安なのだ。野球ばかりがすべてではないと知りつつも、どうしていいか分からない。
つまり、学生の本分である"学業"が疎かになっているからだが、そうなったのは本人の自覚のなさと、
両親をはじめとする周囲の期待過剰が原因である。
そうならないために――本書のテーマは、スポーツとしての野球を通して、どうしたら幸せになれるか? である。
第I章で、監修者石井連蔵は日米のちがい、指導者(監督)のあり方を述べ、
第II章では、部長や監督をはじめとする大学野球関係者の"これからは野球だけではダメなんだ"という現場の声を集めた。
第III章は、今回の代表20名(原辰徳・野口裕美・平田勝男ら)と、OB6名(松沼雅之・岡田彰布ら)のプロフィール、
いかにして今日まで来たか、あるいは両親はどれだけ苦労し援助したか、のドキュメント。
第IV章は、アメリカの代表3選手の生活と意見を中心に、力(パワー)だけではない日米の"差"を浮彫りにした。
第V章のデータ編では、過去の日米大学野球の数字をもとに、あらゆる分析と全選手の追跡調査をした。
本書は、学生が野球をすることに、異論を唱えるつもりはない。ただ各人が社会人となったあとも、
野球をやっていて幸せだったと、悔いのない人生を歩むこと、あるいは歩ませるにはどうすればいいか、
のヒントの一つとなるはずである。
(情報センター出版局、1980・12・10初刷、11月末発売、980円)