『心-こころ- 橋本健午のページ』「ミニ自分史」

「ミニ自分史」（26）義父小田悟氏（その2）　「あいさつ状」

《先日、義母の遺品の中から、亡夫の葬儀に関する「あいさつ状」が出てきました。だいぶ前のことで忘れていたが、当時34歳の私が書いたものです。2006･3･29橋本健午》

　ようやく暖かくなってまいりましたが、皆さまにはいかがお過ごしでいらっしゃいますか。
　このたびは、ご多忙のところ、夫小田悟の死去に際しまして、過分なるご芳志ご厚情をたまわりまして、心からお礼申し上げます。
　おかげさまで、去る二十日、五七忌の法要を無事にすますことができました。
　つきましては、誠に勝手ではございますが、ご香典の一部を薩摩琵琶の保存につとめておられる『正絃会』（東京）に寄付させていただきました。
　薩摩琵琶とは、鹿児島に発祥し、やがて錦水会と称したのがはじまりで、百年以上続いているものであります。
　一時期、帝国琵琶と改称しましたが、今では、薩摩琵琶同好会（鹿児島）、四明会（京都）、五月会（大阪）など各地で盛んに引き継がれております。
　明治時代、故人の父（号小田錦蛙）が農商務省の役人をしながら、数多くの作詞（代表作・白虎隊、本能寺、鉢の木など）を手がけ活躍したそうです。
　故人は自分では弾ずることもしませんでしたが、日ごろから愛着を抱いておりましたもので、その遺志に添えることができるかと存じます。
　主人は四年前、還暦を一つの区切りとして、東京電力（株）在職中に、書きためていたものを『Ｑ氏の生活に関する雑章』という小冊子にまとめました。
　そのあとがきで「このニ、三年、特に生来のテレ屋的要素がつよくなったためか、どちらへもご無沙汰ばかり重ねておりまして、甚だ申訳なく思つております。………ご無礼のお詫びのお印のような気持で………」
　これこそ今の私の気持でもございます。
　故人に代わりまして生前の長いご厚誼に対し、心からお礼申し上げますとともに、今後ともよろしくご指導くださいますようお願い申し上げます。
　本当にありがとうございました。
　　　　　　昭和五十二年三月　　　　　　　　　　　　　小田まつ子

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