『心-こころ- 橋本健午のページ』「ミニ自分史」

「ミニ自分史」（39）"赤線"について

　いまや、死語となっている"赤線"について、私自身が使ったケースと、参考として、他での場合をあげておこう。

その1　創作「生きるべく道へ」　1960年（昭和35年）夏　　＜１＞

　高校生になると、いろんな本を読むようになった。中学時代は夏目漱石が好きだったが、時にジュリアン・ソレルになりきってみたり、ボーヴォワールに傾倒したりしていた。／世の中の動きにも敏感で、二年前（昭和33年）の三月末の赤線廃止には大人の勝手だと憤り、翌年四月前後のミッチーブームはいささか異常だと思い、この六月の安保改定阻止行動で犠牲となった東大生樺美智子さんの死には限りなく悲しみを覚えたものだ。（以下略）《これを書こうと思いついたのは、八月二十五日の、月のとても綺麗な真夜中ごろだった。〈1961･9･3〉HPに掲出》

その2　講演「コミック本問題と青少年―"現状認識"にズレはないか―」（1991･11･30枚方市立図書館）橋本健午

　　1. はじめに　―昭和33年3月31日―
　この日がなにを意味するかご存知でしょうか？　本日は若い方が多いので、あるいはお分かりにならないかもしれませんが、前年（４月１日）に施行された売春防止法により、いわゆる赤線の火が消えたことになっている日です。
　少し個人的なことになりますが、実は、今朝ここへ来たのは隣の茨木市からです。今も親戚が住んでおり、そこで中学３年、高校３年、浪人１年の７年間を過ごしたのですが、この３月31日といえば、私の中学３年の終り、十五歳の時でした。
　なぜこんな古いことを持ち出したかといいますと、当時そういう"悪所"通いをする年齢ではなかったのですが、赤線がなくなって残念だと思ったわけではありません。
　ただ、（そこで働く女性の問題は別にありますが）もうそういう所と縁のなくなった老人たちが、自分の過去を棚に上げて、三悪追放などと"道徳を説く"姿を見て、十五歳の私は、大人はずいぶん勝手なものだと思ったからです。
　そういう観点から、何ごとにも"規制する"ことのいい面と悪い面が必ずあるということを、「この一日」の感想を通して申し上げたかったのです。（以下略）「出版倫理・青少年問題」欄に掲出

その3　《参考》拙著『有害図書と青少年問題』明石書店2002･11より

　　いつの時代も変わらぬ好奇心旺盛な少女たち
　闇の女はどうか。「（昭和20年4月現在）業者総数316、娼妓は10,417人いた」(『朝日年鑑』昭和22年版)という公娼制度は、 21年1月ＧＨＱにより廃止されていたが、自主営業する売春婦（私娼）が後を絶たないため、12月内務省は地方長官に風俗取締対策の通達を出す。特定地域に限定して営業を許可する特殊飲食店の指定で、その一廓（特飲街）は地図上に赤エンピツで記されていたため、赤線とか赤線地帯とよばれた。
　翌年には、闇の女は全国で18,OOO人と推定され、その58パーセントは無職、残り42パーセントの職業はダンサーを筆頭に、看護婦・タイピスト・洋裁師・女工・進駐軍関係の労務者・農業の順であった。また、「22年5月に検挙された女性5,225名のうち、動機は生活に窮してが46.9％、好奇心からは24.2％。年齢別では病院に送られたもの3,084名のうち、14歳3名、15歳3名、16歳26名、 17歳107名、18歳138名で、総数の6割以上が19歳から23歳」であった（『朝日年鑑』昭和23年版）。
　ところで、この22年、元日から風俗営業取締法（風営法）が施行される9月1日まで、法律第72号により風俗関係の規制が失効していた。そこで、飲食店等は資格審査も地域的資格条件もなく自由に開業できたため、都内では約3,000軒もの店が増え、「表面は飲み屋や温泉マークの旅館を装い、そこに働いている女中などが、客に売春するなど、都内数ヶ所にこうした地域が出現した。この地域は、旧遊郭あとの特殊飲食店街が赤線地域と呼ばれたのに対し、俗に青線区域と呼ばれた（『警視庁史(4)昭和中期編（上)』警視庁史編纂委員会編1971）。

その4　《参考》ＨＰ「青柳新太郎随筆集」【紙魚の独言】より

（今回は、この老人ならぬ老紙魚が、半生を費やして舐めまわした、和漢の書籍の中から、「知らずとも全く困らぬが、知っておれば猶一層困らぬ」という、一風変わった話を紹介してみたい。／早速じゃが、読者の諸兄諸姉は、もちろん遊郭は御存じだな。然様、江戸で吉原、京都で島原、大阪では新町、長崎では丸山、駿府では二丁町が有名な遊郭だったな。古くは、東海道は手越（静岡市手越）の宿の遊女なども有名だったがね。／昔は売春が公許されていたんでな、各地に遊郭があったんだよ。それなのに、あの菅原通済とかいう、お節介な爺さんが、自分の一物が役立たずになったからといって、三悪追放（三悪＝性病･麻薬･売春）とかいって騒ぎまくってな、若い衆には何の相談もなしに『売春禁止法』なる法律を制定させたんだよ。／自分が若い頃には、散々やりちらかしたくせに、まったく身勝手の強い爺さんだった。まあ、この御仁は天神さんとして親しまれておる菅原道真公三十六代の遠孫で、鉄道業界から土建業界をも支配する黒幕として君臨した人物でな、なかなかの大物だったんじゃよ。）

その5　《参考》フリー百科事典『ウィキペディア』より

　ちなみに、白線（ぱいせん・ばいせん）という呼称もあった。それは「1958年4月の売春防止法の全面実施後も、もぐりで行われていた非合法の売春行為を指す。」

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その1 創作「生きるべく道へ」 1960年（昭和35年）夏 ＜１＞

その2 講演「コミック本問題と青少年―"現状認識"にズレはないか―」（1991･11･30枚方市立図書館）橋本健午

その3 《参考》拙著『有害図書と青少年問題』明石書店2002･11より

その4 《参考》ＨＰ「青柳新太郎随筆集」【紙魚の独言】より

その5 《参考》フリー百科事典『ウィキペディア』より

その1　創作「生きるべく道へ」　1960年（昭和35年）夏　　＜１＞

その2　講演「コミック本問題と青少年―"現状認識"にズレはないか―」（1991･11･30枚方市立図書館）橋本健午

その3　《参考》拙著『有害図書と青少年問題』明石書店2002･11より

その4　《参考》ＨＰ「青柳新太郎随筆集」【紙魚の独言】より

その5　《参考》フリー百科事典『ウィキペディア』より