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「ミニ自分史」(42)「採用する方向か、断る方向か」身許調査 その2

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(41)の続き・・・
 そんな私が、ある社に、採用予定者の身許調査を依頼することを仰せつかった。 つまり、その社(の人事担当者)に該当者の履歴書をもっていき、調査会社に依頼して欲しいという、 ワンクッションおいたやり方である。
 その人物について、私個人は面接の段階や文章を読んで、熱意も感じられないし、あまり文章も書けないということから、否定的な印象をもっていた。 しかし、他の数人は、住んでいるところが高級である、海外(オーストラリア)に留学経験があるなどということから、彼一人に絞って、"採用"の方向を打ち出していた。
 そして最終チェックの身許調査となったのである。
 「君のこと、調べた」とあからさまに言われるのも、不快なものだが、たとえ職務上とはいえ、 他人について内緒で調べてくれと依頼することも、気分のよいものではなかった。
 初対面の(ということは、私自身のこともよく知らない)その人は事務的に書類を眺めたのち、私に質問した。 「この人物を採用する方向か、それとも断る方向か、どちらで調べるのですか」と。
 一瞬何のことかわからずにいると、彼はいった。「調べ方が違うのです。採用する場合はその方向で、落とす場合は、否定的なデータを集める」のだと。
 これには驚いたというか、そういうカラクリだったのかと、しばし考えたが、しょせん、私も雇われの身、 私情を挟んではならないと、「採用の方向です」と答え、やがて彼はめでたく? 採用された……。
 仕事や業界のことに戸惑うのは誰しもが通る道だが、口では自信たっぷりの新人は、ある仕事について「(橋本に対し)大丈夫です。反論できます!」と上司に言うのを耳にして、 唖然としたことがあるが、しばらくしてストレスがたまったのか、禁煙していたタバコに手を出し、"持病"の肥満が昂じて、 半年もしないうちに、何だかわけの分からない理由で、辞めてしまった。
 数十万円も使った新聞広告で、多く来た応募者の、彼よりもましな人物を見逃した他のものたちは、 自分たちの不明を恥じることもなければ、もちろん反省することもなかった。だから、何度も同じことを繰り返すのであろう。


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