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「ミニ自分史」(46)「わが教育法」

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 新聞社がくれた1982年のカレンダー(B3判大)のウラを使って「かけざん九九〈くく〉」という表を作ったのは、 この年1月14日、小学1年の長女が7歳になった直後のことである。私は39歳の後半だった。
 タテ・ヨコにマス目をつくり、いずれも1〜10段・列とし、ヨコに1×1=1、1×2=2 〜1×9=9、10とし、 タテに1×1=1、2×1=2 〜9×1=9、10とし、それぞれに、ひらがなで"読み"も加えた(例:ににんが4、ごさん15、くひち63)。
 ここまでは、市販? のものでも間に合うだろうが、私は次のような解説を試みた。

 (その1)として…◎これは、たしざんを早く正確にするために便利なものです。
 2×1=2/2×2=2+2=4/2×3=2+2+2=6(4+2)/2×4=2+2+2+2=8(4+4)
 3×2=3+3=6/3×3=3+3+3=9(6+3)/3×4=3+3+3+3=12(9+3、6+6)/・・・/・・・

 そして、実際の応用例をあげた。
 ◎たとえば、「ケーキが2個ずつ入った箱が3つあります。では、ケーキはぜんぶでいくつありますか?」というような問題の場合、 2たす2たす2は6、とたしざんをしてもいいですが、この表をおぼえておくと、2×3=6と、もっと早く計算ができます。 /しかも正しくおぼえておれば、「8個ずつみかんの入った袋が7つあります。みかんのかずは?」とか、 「こどもが4人ずつ、5つのテーブルにすわっています。何人いますか?」というのも簡単にできるのです。

 (その2)として…*タテから見ても、ヨコから見ても、それぞれの数の増え方は、規則〈きそく〉正しいことがわかります。 /*5は10の半分です。5にどの数字をかけても、その数字の10倍の半分になります。たとえば、6×5=30で、6の10倍の60の半分です。 /*7は身近なものでいえば、一週間は七日ですから、「4週間はなん日?」というのも、すぐ7×4=28日と答えられます。 /*たとえば、赤い数字の12というのは、この表にいくつありますか?(2×6、3×4、4×3、6×2の四つ)。 12というのは、1ダース、1年、半日(12時間)などをあらわします。ですから、「1年を4つに分けると、1つは何か月ですか」という、 わりざんにも応用できます(答えは3か月)。

 これは、定職もなく、金も地位も、さしたる縁故もなく、ではどうすれば、子どもに普通の教育を授けられるか、と考えたうちの一つである。
 アパートの一室で原稿用紙のマス目を埋めたり、時に都心の出版社のアルバイトをしたりという時代。 妻が書店のアルバイトなどをしていた中、金をかけずにできることは"早教育"であるが、私自身、数学はおろか理科系はからっきしダメである。
 それでも、もうひとつ考えたのは、割り算である。私はミカンを使って説明した。8房入っているミカンを半分に割る。 つまり1つを二分するので、半分のものは2分の1、そのまた半分は4分の1という具合に。目の前で、だんだん小さくなってゆくのをみて、 割り算(分数)の基礎が分かるだろう、と思ったからである。
 これらの効果があったのかどうか、長ずるに及んでも算数や数学・理科系をはじめ、私が勉強を支援しなければならない場面はほとんどなかった。
 その間、長女は母親の影響で、就学前から本をよく読み、また"門前の小僧、習わぬ経を読む"で、いつの間にか、 私のマネをして広告チラシの裏などに、絵だけでなく、文字(文章)を書くようになっていた。 やがて、私に束見本(印刷されていない本)の各ページに罫線を入れさせ、大きな字で書いた創作童話『ナナちゃんとクワンちゃんのまいにち』を自費出版したのは、 彼女が9歳になる前、83年12月のことである。


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