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「ミニ自分史」(72)「文章や文書のまとめ方」

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 《私は日本エディタースクール「昼間部」の講師を10年務めたが、その間これとは別に「夜間部」でも、 文章関係の臨時講師を3期(各2回)ほどやっている。生徒は働いている若者が多いが、女性の中には30代以上の方もいた。
 彼らは仕事上で、どうすればわかりやすい文章が書けるか、あるいは説得力のある文章は、などとそれぞれの"悩み"を抱えていた。 そこで、決して安くない受講料を払って、20週連続の講義を受けるのだが、回を追うごとに受講生が減っていくという状況でもあった。
 理由は受講生側にある場合や、講義の進め方などに問題があるかもしれないが、昼間部での経験から"講師はサービス業"に徹することではないか、 ということだった。つまり、講義は「文章はこれが模範、このよう書きなさい」ではなく、「何を克服したいか、身につけたいか」 という個々の要望に応えることではないかと。
 しかも、私が彼らに接するのはたったの2回である。そこで考えたのが、次のような「文章や文書のまとめ方」という提案である。 あとは「自分でよく考え、精進してください」というメッセージを添えて、各自の努力に待つだけであった……。》

文章や文書のまとめ方

                  2004年9月 橋本健午

 ただ漫然と書いたものが、だれにでも分かりやすく、あるいは面白く、また感動を与えられるものであればよいが、 文章や文書はそんな簡単なものではない。
 文章と文書のちがいを簡単にいえば、前者は主観的で自由に書けるが、後者は客観的で形式を重んじるものである。 以下、とくに断らない限り、両者に共通する要点である。

 文章は、内容が大事なのは当然だが、第一印象によって、読もうという気が起こるかどうかにかかっている。 紙いっぱいに書いてあるが、何が要点なのか、何が言いたいのか、どこを見れば簡単にわかるのか、 などという"不満""疑問"を持たせるようでは、どんなによい内容でも、敬遠されるか減点は免れない。
 では、どうすればよいか。いくつかの工夫やテクニックについて述べよう。
 (ここでは、A4判の紙にパソコン等で印字した文章を対象とする)

1、形式について

 (ア)見た目にすっきりしたレイアウトを心がける…
 人は読み始める前に、まず"カタチ"に目が行くもの。つまり、タイトルや見出しなど、活字を大きくしたり、 装飾を施したり、改行したり、段落を設けたりして、余白の部分を設けること。いわゆるメリハリをつけるのだが、 過剰にならないこと。

 (イ)何について、どういうことを言いたい、訴えたいのか…
 だれでも、いきなり書き出して、分かりやすく、説得力のある文章が書けるものではない。 失敗しないために、事前の準備に時間を割こう。
 主張・提言・反論・賛意・代案・感想・意見など、どの場合でも、書いたもので判断してほしい・説得したい・理解を望む、 わけだから、問題(テーマ)についての、はっきりした考え(対応)を、事前に整理することである。

 ○ 課題(テーマ)がある/字数(枚数)の制約もある/時間の制限もある/自分の考えか、全体(グループ、会社など)の考えかによって、 書き方はちがってくるが、事前の準備は共通する。

 ○ ひとつの方法をあげよう。
 まず、課題(テーマ)にそって、(1)思いつく言葉(キーワード)、書きたいことなど、単なる言葉でも、 メモとして、いくつもアトランダムに書き出す。その場合、一つずつカード(名刺のウラ・名刺大の紙)などに書く。
 つぎに、(2)それらをどの順序で書くかを考えながら、並べ替える。新たに加える、削ることも行う。
 (3)文章の字数(枚数)が多い場合、三つか四つの部分(段落とか"章"に相当する)に分ける。
 書き出すまえに、(4)仮のタイトルを書こう(考えよう)。
 (5)同じく、段落とか"章"の仮のタイトル(小見出し)を付ける。 もっとも、これは1行アケするなどして、あとで見出しを付けてもよい。
 それと同時に、(6)先の「(2)並べ替え」を、再編成したければ躊躇なく実行する(これは、頭の中で、文章がつながりを持って出来つつある証拠)。
 では、いよいよ(7)新しい順序にそって、文章を書いていこう。この段階でも、多少の並べ替えは自由である。

 ☆このように、書く前の準備を十分にやれば、あまり時間をかけず、一度でまずまずの文章が出来上がることだろう。

 (ウ)言葉づかいにも気をつけよう…
 多くの場合、文章は相手があって書くものである。「デアル調」か「デス・マス調」で迷うかもしれないが、一般に、文書は「デアル調」で書く。 先にも触れたように、「客観的で形式を重んじるものである」から、感情の入りやすい「デス・マス調」は不向きである。
 ただし、同一の紙面に数行の、手紙形式のあいさつ文「・・・について、下記のような"お願い""要望""ご提案"をいたしますので、 よろしくお願いいたします」云々を書く場合は「デス・マス調」が望ましいが、「記」以下の本文は、「デアル調」でよい。

 (エ)だれに向けて、書こうとしているのか…
 上記(ウ)に類似するが、もっと大事なことである。同じ内容の文章でも、相手によって書き分けるのは、 たとえば手紙を友だちや親に出す場合と、恩師や目上の人や初めての相手などでは、気楽なおしゃべり調で書いたり、 敬語に気を使ったりと、書き分けているはずである。
 それと同じように、子供向けの童話調とか、同年代の不特定多数とか、専門分野の論文調とか、 相手("読者対象")によって、言葉づかい・用字用語から、文章の長さまで、書き分けるというより、意識する必要がある。

2、内容について

 (ア)文章を書いていて、何故つまずくのか…
 長い文章で、しかも問題点や主張などがいくつもある場合、書いている途中でつまずいたり、文章のリズムやバランスが崩れたり、するのはどうしてか。
 事前の準備を十分したつもりでも、やはり混乱の起こる場合がある。それは多分、カードを細かく並べ替え、 各章ごとに分類したまではよいが、その章ごとの整理ができていなかったからであろう。
 具体的にいえば、主題・説明・具体例(エピソード)、すなわち大項目・中項目・小項目の整理をつけずに書きはじめたため、 何が大事(ポイント)か、どれが補足かと迷ってしまい、自ら混乱してしまったのである。
 つまり、カード並べの段階で、予測できればよいのだが、慣れるまでは、なかなかそこまでは出来ない。 しかし、解決策はある。カード並べをより細かくするのだが、また少しやり方がちがってくる。

(イ)項目を細かく分けるには…
 上記1(イ)の、(1)〜(6)までを実行したあとでもよいが、並行して次のような表を用意しておくとよい。
 1章2章3章4章〜
大項目   
中項目
(2〜3項)
   
小項目
(5〜6項)
   

 それぞれに、必要に応じて、振り分けていき、頭の中で順序や文章を組みたてながら、適宜並べ替えをし、 それぞれの章で、何が大事か、何が補足として必要かなどをシミュレーションするのである。
 これは文章を書きながらでも、変更はありうる。つまり、より説得力のある文章に近づいている証拠である。

 (ウ)分かりやすく、より説得力のある文章とは…
 これまで述べてきたような手順を踏んで、文章を書いてきた。章分けもエピソードもほぼ、うまく当てはめたつもりだが、 読み直してみると、どうもしっくり来ないところがある。なぜだろう? と思うことがある。
 理由はいろいろ考えられるが、(1)文(センテンス)が長すぎないか、(2)同じ表現(ニュアンス)を繰り返していないか、 (3)思い切って削ると、すっきりしないか、(4)文を入れ替えてみると読みやすくならないか、などについて検討することである。
 つまり、字数(あるいは行数)は変わらなくても、見直し(=推敲)を行うことによって、より読みやすい文章となる、ハズである。 「文章は、二日にわたって書け」という所以である。               以上

 《このあとに"講師"という立場から、「ご相談の場合は」など多少のアフターケアに関する事項(「e文章指導」など)を記してあるが、ここでは省略。2008・04・08橋本健午》


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