「ミニ自分史」TOPへ。

「ミニ自分史」(119)“詩のようなもの” (1995年) 2010・06・04 橋本健午

「ミニ自分史」(118)       「ミニ自分史」(120)


 まだ、20世紀の後半、たわむれに次のような“詩のようなもの”(2篇)を書いていた。 なんだか、気まぐれのようでもあるが、ある思いを込めていたもののようでもある。2010・06・04 橋本健午

 こぶがいっぱい

一つこぶラクダと 二つこぶラクダが 久しぶりに出会った
十何年ぶりだろう いや もっとかもしれない 懐かしいやら 気恥ずかしいやら
二つこぶは 昔と変わっていなかった とてもうれしかった

幼いころ…… こぶのなかった 一つこぶは
二つこぶが好きになった もちろん、相手も当時は こぶを持っていなかった
一つこぶはやがて 遠く離れたこともあって たくさん手紙を書いた

返事も来た たまに会えば いつも笑っていた お互いに夢を語り合った
仲間ともたわむれ 楽しい時代だった でも、片思いだった
と分かったのは、からだの一部に 一つこぶがはっきりと 現われてきたころだった

二つこぶは、しかし いつも快活に笑っていた 一つこぶの気も知らずに
二つこぶがサヨナラを 言ったと ある時思った 一つこぶは人知れず悩んだ
きっと、三つこぶラクダが 好きになったのだろうと 思い込んだからだ

一つこぶは絶望した 死んでしまおうと考えたが あの懐かしい日々を思い出し
早まるのはよそう と思い止どまった あの笑顔が頼りだと

きらいなら とっくに別れを告げて いただろうに
やがて、返事も 少なくなった 会っても 素っ気なくなった

いやなうわさでは 四つこぶラクダが 新しい恋人だという
一つこぶは、またも 悩んだ この先どうしたら いいのだろう……

夢から覚めた 二つこぶは泣いていた 一人で泣いていた
三つこぶも四つこぶも だれもいなかった 一つこぶの思い過ごしだった

いや それらは 折檻された二つこぶが いつも 頭に作っていたこぶだった
一緒に住んでいる 怖いお婆さんが かわいい二つこぶを

いじめてばかりいたのだ 二つこぶの運命は 悲しいものだった
すっかり笑顔が消えてしまった 一つこぶへは「あきらめて」 の連絡が最後だった

打ちのめされた 一つこぶは しかし あきらめはしなかった
でも、目に浮かぶのは 三つこぶ、四つこぶ ばかりだった

陸の孤島のようだと 二つこぶの暮らしぶりが 風の便りにあった
いたたまれなくなった 強い精神力の持ち主! きっと また会えると

希望を捨てなかった しかし 何の連絡もなかった また数年経った
五つこぶ の夢をみた 不吉だった

やがて 六つこぶ になった 嫉妬で狂いそうになった
いつの間にか 二つこぶが うれしそうにしているからだ どうしてしまったんだろう

おや! 目の前に あの二つこぶが 立っているではないか 昔のまま快活に笑って……
夢から覚めたのではなく まぎれもない現実だった

本当は七つこぶよ 子孫を絶やさないのが 私の役目だったの だから こぶは多いほうがいいのよ

あのころは あなたのことばかり 考えていて 頭にこぶばかり もうお役目はすんだわ 私は自由の身よ!

お望みなら 八つ目でも九つ目でも  ……… あなたのよろこぶ 顔が見られるなら

                                游(95/7/19)2006・4・27

 新・グルむ童話

グルをグルリと取り囲み
グルグル回って
グルをたてまつった
我らはグルーぷ!
グルは世界を救うはずだから

グルがグルリと取り囲まれた時
グルをグルグル巻きにして
グルを必死にかくまった
我らはグルーぷ!
グルは世界を救うはずだった

グルは誰とグルなのか
グルリを見回しても
みな同じ顔 みなグルーぷ!?
逃げろ! 尊師て得とれ!
グルは誰も救わないはずだから

                  <游 95/10/29>2006・4・27


ご意見、ご感想は・・・ kenha@wj8.so-net.ne.jp