ついで、戦時中に作った悟氏の"父を讃える"冊子についても紹介しておこう。
前に紹介したように、悟氏の父小田為岩氏は薩摩琵琶の名手で、「作歌」を残している。
その遺志を汲んで、氏は戦時中、『小田錦蛙琵琶作歌集』を編んだ。「まへがき」に次のように記す。
青木まつ子と結婚する直前である。
小田錦蛙 本名為岩 錦蛙と號す
官吏として奉職の傍ら、先代吉水錦翁氏主宰の当時の錦水會にあつて、數多の新作を物し、いさゝか斯界のため資する処あり。
本能寺、白虎隊、威海衞、鉢の木、九連城等々現に廣く謡はるゝものとす。
作歌中、巷間作者の誤り傳へらるゝものありて遺憾とす。
よつて亡父のため本集を編み高覧に供ふ。
昭和十九年二月 小 田 悟 識
ついで、二段組の「目次」を掲げておく。( )内は掲載ページを表す。すべて和数字で、通し番号もすべて「一、」である。
1 本能寺(1)、2 白虎隊(6)、3 威海衞(11)、4 阿房宮(15)、5 頼朝七騎落(19)、6 国の礎(24)、
7 鉢の木(25)、8 旅順口(34)、9 九連城(38)、10 快報(43)、11 別れの国歌(45)、12 大海戦(51)、
13 美女丸(53)、14 心の花(58)、15 無双の感状(61)
《謄写版刷り。用紙はワラ半紙で、B4よりやや小さく二つ折り。残念ながら、最後は62ページで、残り1,2ページと裏表紙が欠落している》