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「蘇る梶山季之…」

橋本健午(ノンフィクション作家・「電子版 梶山季之資料館」管理人)「季刊 青年劇場」(No.142)2007・10・10

 私が助手となったころ(一九六六年秋)、すでに流行作家の一角を占めていた梶山は週刊誌や小説雑誌の連載をこなし、 取材や講演などで国内外を飛び回っていた。物静かな人であったが、モーレツ作家などといわれた時期である。
 しかし、梶山には書きたいものがあった。生まれ故郷の旧朝鮮(韓国)・母の生まれたハワイと移民・そして父の故郷広島と原爆の三つをテーマにした環太平洋小説(「積乱雲」未完)である。 このたび再演される『族譜』や『李朝残影』など朝鮮ものは、二十代前半に何度も書きなおしている。
 わずか四五年の生涯、その早世を惜しまれた梶山だが、没後三十年以上を経た今、若い世代が注目し、 この『族譜』や『黒の試走車』『赤いダイヤ』、またノンフィクションものも再び出版されだした。 作家は死しても、作品は死なないのである。
 ところで、『族譜』は昨年秋に続く公演である。自作品の映画化・テレビ化はいくつもあるが、舞台化はこれが初めて。 二次使用は"別の作品"といっていた梶山だが、さぞかし観たかったにちがいない……。


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