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「なぜかコラム」 2010年10月下旬号

7月下旬号      


「敬語・敬意表現について」
 いま、電車の中吊り広告にベルリッツという英会話教室の「部長の山本はまもなく戻りますので、そこに座ってろ」という“まずい表現(の例)”があるが、 最近、私自身も、似たようなまずい表現を耳にした。
 ある高校の記念式典で、開会にあたって壇上に複数の来賓者を迎えるとき、40歳前後の司会者(多分、その高校の教師)が会場を埋め尽くした生徒たちに向って、 「まもなく、来賓者が来るから、静かにしろ」といったのである。
 この司会者は、いつもの学校でのやり方を踏襲しただけで、何らの意図もないのであろうし、まさか敬語の使い方を知らないわけでもないだろうが、 これではおしゃべりな生徒たちとの“差”がないことになる。
 敬語はA(私)とB(あなた)だけなら、それほど難しくないが、C(第三者)が加わると複雑になる。 つまり、ABCともなると、それぞれの年齢や地位など相互の関係が多様になり、言葉づかいに神経を使わなくてはならないからだ。
 敬語はバカ丁寧でも聞きづらいが、“来賓”という言葉を使うならば、それにふさわしい敬意表現を続けるべきであった。
 具体的には、たとえば「まもなく、来賓者がお出でになり(登壇され)ますから、静かにしましょう(静かにして下さい)」であれば無難であろう。
 このケースの難しさは、ABCのほかにD(フロアに座っている招待者<もう一つの第三者グループ>…同校の先生でも生徒でもない人々)の存在である。
 この辺りまで心配りをしなければならないから、司会とはかなり奥の深い仕事であり、その責任は重い。

(以上、10年10月19日までの執筆)


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