記念講演:「21世紀への挑戦」河合雅雄氏(兵庫県立 人と自然の博物館名誉館長)
科学の発達で人類は恩恵を受けているものの、何事にも「光と影」があるとして、臓器移植の功罪、
フロンガスやダイオキシンの弊害を語り、また環境ホルモンの影響か、世界的にカエルや虫が激減していること、
あるいは人間も精子が減少していることなどに強い危惧の念を抱くという。"欲望の動物"人間は科学の進歩を止められない、
戦争もやめられない。そこで、平和日本を目指し、世界の優秀な頭脳を集めて、人間倫理研究所のようなものを作りたい、
200〜300億円もあればできるはず、"内なる自然"の問題を研究したいと結んだ。
昼食(弁当配布)のあと、午後2時より7つの分科会が開かれ、私は第2「進路指導とPTA 生きる力を育む進路指導」に参加した(国際展示場2号館〈北〉)。
事例発表と研究協議は次のとおり。
北海道…名寄高校PTA会長の「自己実現を援助する進路指導を目指して」では、厳しい自然環境と、広範囲な通学区域という中で、
PTAはいくつもの委員会を設け、また進路講演会などを開催し、生徒や家庭を支援している由。
東京都…青山高校教諭の「夢の実現へ」は、独自の進路対策を講じ、また経済的な支援を目的とした学校後援会が発足するなど、
学校も保護者も熱心なようであるが、都立でもトップクラスの学校という"自負"はいささか鼻につくものだった。
奈良県…生駒高校育友会顧問による「進路保障とPTA」では、英単語テスト(毎週月曜朝)や、通信衛星授業サテラインゼミは注目を集めた。
愛媛県…西条高校PTA会長の「今、何が求められているか」では、予備校もない状況で、10項目に及ぶ進路指導対策が披露された。
もっとも、これらに対するフロアからの質問や意見では、進路指導よりも、人間としての教育が大切ではないかという、 ある校長の発言などに、かなりの拍手があったのは印象的であった。
◎第2日(22日)(会場:ワールド記念ホール)
全体会:第1〜第4、特別分科会第1〜第3のそれぞれについて簡単な報告があり、「大会宣言」採択と、文部科学官房審議官の「講話」があった(後述)。
続いて、2つの高校の生徒によるミュージカル「いのち美しく―あの日から15年―」は、阪神大震災の日に生まれた女の子とその日に死んだ父親が、
15年目に夢の中で再会するというストーリー。今日的な問題を随所に織り込み、みな元気よく飛び跳ねていたが、
甲高く早口の言葉は時として分かりづらかったのは惜しかった。
閉会式では、全高P連旗の返還と授与、次期開催地(香川県)代表の挨拶のあと、万歳三唱で無事終了。
印象記:
初日午後の会議中、激しい夕立があったが、夏らしく、蒸し暑い天候であった。
参加人員は約11,300名という。男女比は4:6ぐらいか。地元PTAらによる大勢の会場係のお陰で、さしたる混乱もなかったのは、
さすがである。もっとも、準備に3年も費やしたということを、どう評価すべきであろうか。
同じく初日の、開会前と昼食時の、地元高校生によるジャズ演奏と中国流獅子舞、吹奏楽にチアガールの演技など、
それぞれにうまく、感動させたが、学習の延長上の成果を"アトラクション"というセンスを疑う(要するに、遊び感覚であろう)。
2日目の講話の内容は、事前に配布されたパンフレット「『確かな学力』と/『豊かな心』を/子どもたちに/はぐくむために…」
にある要点が中心だった。ところが、参加者は遅刻したり、席の移動をしたり、この後の遊興プランを相談するのか、
私語に忙しい大人たちが多く、"大人たちの責任"を説く審議官の話は空念仏に近かった。
《関連…「久しぶりに『PTA日記』」2003年9月上旬号》