東急セミナーBE(渋谷)で、「文章教室」の講師を引き受けたのは2003年4月からだが、同セミナーの講師になったのは前年4月から。 私には珍しいことに売込みを行ったのは、先に述べたとおりである。
まず、02年4月から新規講座「ノンフィクションを書こう」(1期…3か月3回、第3木曜、夜7:00〜8:30)がスタートした。
私は"フィクション(小説)"と"ノンフィクション"の違いや、各種の新人賞のリスト、参考図書など、何を聞かれても慌てずに答えられるように準備をして臨んだ。
しかし、毎回一ケタ台の受講者のため1年で終ったが、友だち同士で受講した若い女性、有名講師の講義を次々に聴き歩く男性や、
本を出したいという女性など、何か"社会に恨み"でもあるかのような文章を書く女性など、さまざまであった。
ともあれ、短期間だったが、たとえば実用本を"ノンフィクション"ととらえる方もおり、私にとっては新鮮な経験となった。
うたい文句に、こう書き記している(チラシ)。
〔ノンフィクションを書こう/ノンフィクション作家・日本出版学会会員/橋本健午〕
「事実は小説より奇なり」と申します。世の中には、さまざまな事件や事故、現象が起こっておりますが、
報道されていることが真実とは限りません。調べてみると、新たな発見もあります。また、成功する者もあれば、
挫折を味わう人もいます。さまざまな"人物"も興味の尽きないものです。現地を取材したり、資料にあたったり、
方法はさまざまですが、事実を積み重ねてゆくことによって、小説(あるいはドラマ)以上に、
スリリングなのがノンフィクションの世界といえます。本講座では、ノンフィクションとは何か、
取材方法、書き方・発表の仕方など、初めての方にも分かりやすく、順を追ってお話します。(講師記)
<カリキュラム>
1−(1)ノンフィクションとは何か―フィクションとの違い
1−(2)なぜ"書く(書きたい)"のか―興味を持つ、疑問に思う
2−(1)対象(事件や事故・人物)に、どのようにアプローチするのか
2−(2)調べて書く/聞いて書く/歩いて書く
3−(1)どのように書くのか一プロット、タイトル・章立て
3−(2)どこで発表するのか一各杜の賞に応募する、出版社に持ち込む等
(日時・講座内容は多少変更になることがあります)
さて、東急セミナー(渋谷)のつづき。
03年に入ると、長年この「文章教室」の講師をしていた女性が高齢を理由に辞めるので、後を継いで欲しいということになった。
今度は昼間、6か月で10回(月2回)、継続する受講者も多いという。受講者は課題に対して文章を書き、教室で読み、
それに講評をするという前任者のやり方を踏襲することになった。
第1回(4月期)は、継続者を中心に20名近くの受講者が待っていた。
私はそれ以前、98年4月から出版学校日本エディタースクールの講師として、若い男女を対象に文章関係などの講義を行っていた。 そのとき使っていたのが拙著『わかりやすい仕事文を書く』(明日香出版社1998・01)で、ここでは03年4月から、これを"おとな版"に改稿し、 テキスト『書き方ヒント集』として準備し、希望者に頒布することにした(2006年4月、改訂版を作成)。
第1回目の講義を前に、次のようなメモを作っていた。
1、( )で、囲んだものは、ア)なくてもよい、イ)ケズッたほうがよい、のどちらか。 つまり、読みづらい場合、表現がくどい場合、近接したところに同じ言葉(表現)がある場合など。 自分で見分けるには、まず音読すること。すらすらと読めないものが多い
2、誤字・脱字、送り仮名の過不足、ひらがな表現が望ましいものなどは、傍線を引き、朱書する
3、より望ましい表現、変えたほうがよい場合など、傍線を引き、代案を示す
4、句読点
5、書き出し(一字分空ける)
6、改行(一字分空ける)
7、かぎカッコ「 」と、句点の使い方
8、疑問符? 感嘆符!のあとは、一字分空ける
9、レイアウト
作文の提出と課題など
次回の課題…自由に選ぶか、課題を選択するか、一題のみとするか
*「書くということ」
*身辺雑記/過去を振り返る(自分史)/エッセイ/テーマ性のあるもの/小説など
*字数…400か、800字か、1000字以内のいずれか。
*次回の受講日に持参すること。メール添付も可、ただし、A4・・1枚以内。
しかし、現実はどうだったか。
まず、初めての授講の前に、自己紹介風に「書くこと」について、400字の文章を提出してもらうことにした。
「文章を書くのは苦手」「人に見せるのは恥ずかしい」と口々にいうほど、レベルの低い方はほとんどいない。
そして、この400字によって、受講者それぞれの個性・書きたいものにあわせてアドバイスできるのが利点である。
なお、各自が書いたものの発表は、出題→提出→講評 という順のため、出題から1か月後となる。
では、その"苦心の跡"を示す課題をならべてみよう。月2回のため、"/"で前後半を区別した。〈自由〉とは自らのテーマで書くこと。
"*"は番外編(受講者の要望による自主講座)をさす。
ちなみに、当初(はじまる前の03・3・8付)、作文の「課題」として、次のような"シリーズ【いちばん…】"を考えていた。
【いちばん…】悔しかった/うれしかった/悲しかった/力を出した/耐えた/ワクワクした/ラクをした/失望した
/得をした/良いことをした/悪いことをした/失望した/損をした/感激した/ドキドキした/ガッカリした/ビックリした
/苦労した/怒った/怒鳴った/後悔した/汗を流した/スッキリした/反省した/ガックリ来た/耐えた/笑った/驚いた
/落胆した/誇りに思った/屈辱に思った/嘆いた/絶望した/大きな声を出した/サボった/働いた/
早かった/遅かった/大きかった/小さかった/高かった/低かった/安かった
いつも一番だった/ビリだった/二番だった
03年4月期…書くこと+いちばん感激したこと/〈自由〉、5月…いちばん後悔したこと/〈自由〉、6月…言い訳
/名前、7月…〈自由〉/健康診断 *〈自由〉(1200字)、8月…*不明〔原宿〕
/男と女、9月…私 *つづくTo be continued(1200字)/***〔ICHIBAN〕
03年10月期…お箸/貧乏性、11月…〈自由〉/助走、タブー、甘え、12月…気休め、返事、〈自由〉
/優しさ、お先に、〈自由〉〔忘年会〕、04・1月…(人の)好き嫌い、お年玉(蕎麦屋の店員が、うっかりお玉〈しゃもじ〉を落とす…。
これがほんとのお年玉!)、自由〉/優越感、アカ、〈自由〉(この中から2本、各600字)…新年会、2月…勝ち組、ハンコ、
〈自由〉*職務質問〔ライオン〕/***〔原宿〕、3月…*善意/3・25***〔原宿〕
04年4月期…ほどう、でんち、かだい/ "自・・・"、5月…偏食(変色)、拒食(虚飾)、飽食(奉職・宝飾)
/身元調査、身上書、内申書、興信所、6月…いいおすし(いっぱい、おっぱい、すっぱい、しっぱい)
/口実、誤解、反論、弁護、7月…〈自由〉/オリンピック、日本代表、君が代、8月…いちばん輝いていたころ、青春時代、〈自由〉
*一輪,二輪,三輪,四輪,五輪,六輪,七輪(厘),九輪,十輪/***〔表参道〕、9月…ヒゴノカミ、サツマノカミ、ヤマノカミ*譲れ(ら)ないもの
/***〔表参道〕
04年10月期…ひみつ、かくす、ろけん/デジカメ、デバカメ、ツルカメ、オカメ、チャントカメ、11月…うどん、そば、回転ずし
/地震、雷、火事、オヤジ(水害)(地震…小千谷、長岡、十日町。台風…豊岡)、12月…チャ、チュ、チョ(今年の流行語がヒント)
*〈自由〉/***〔表参道〕、05・1月…記念日/十代、二十代〜八十代…、2月…カウントダウン/ヤング、ヤング・アット・ハート
*終りと始まり、3月…調べる/***〔表参道〕
05年4月期…オーソリティ(権威)、大それた、トップダウン(4・6都立大を首都大学東京と改名した石原都知事は入学式の祝辞で「大それた」を「おおそれた」と発言。
文人知事にして…)/お手盛り、役得、恩給、5月…さ・・、く・・、ら・・/宿題、弁当、忘れ物、6月…39,69,99(九十九でも可)
/仕草、まね、くせ、7月…無口、かげ口、へらず口/ベター、ベスト、ワースト*番外、場外、意外、8月…AM,CM,FM,PM
/***〔表参道〕*自由、不自由、フリーダム、9月…芸、得手/***〔表参道〕
05年10月期…かんちがい、ききちがい、すじちがい、たがいちがい、まちがい/ホワイト、レッド、ピンク、11月…コツコツ、ゲンコツ、
サンコツ、トンコツ/きく(聞く、利く、菊)、12月…ひだね、とくだね、おとしだね、いやだね *かいさん〈自由〉
/***、06・1月…り・おう・ちょう(中国人の3大苗字…李・王・張)/1月…扉・門・室・塀(ライブドアのホリエモン、
取調室から塀の中の人となるか)、2月…陶器の鳥に関する逸話(=冬季トリノ五輪)
/2月…ブログ、カタログ、ログデナシ("シャンソン")、3月…呼び水、伏線、仕掛け/***
06年4月期…マコ(「愛と死を見つめて」)、ミコ、ムコ/池田、貧乏、麦(「イカ」と勘違い発言をした著名人)、
5月…くらべる、けなす、ねたむ、うらむ、ほめる/木綿、衣、糸、豆腐、6月…予知、予言、予兆、予想
/イヌ、ハト、赤ちゃん(警戒されない…)、7月…たられば、ればにら、にらめっこ
/いろがみ、おりがみ、ちよがみ、あかがみ、がみがみ、8月…野生、共生、新生、再生
/***、9月…天皇、皇帝、帝王、王様/***
ところで、6か月(3か月、2期)間だったが、「文章教室」への入門編として提案した「文章 きほんのキ」という新講座も立ち上げていた。 「文章教室」と掛け持ちの方もいたが、やはり受講者は少なく、芳しくなかった。
2005年10月期 新企画(案)について(橋本 健午)
東急セミナーBE渋谷「文章 きほんのキ」3か月5回・講座日/開始時間:第2・4月曜日/午後1時(〜2時半)
(チラシの"うたい文句")
どうすれば書けるかと悩む方は文章の基本を忘れているからでしょう。その復習をし、かつ苦手意識を払拭すれば、
あなた自身だけでなく、家族にも受け売り? できるくらい上達するでしょう。まず基本からのスタートを。
《講義の進め方:最初に主語、述語、名詞、形容詞などと用語とその使い方のおさらいをしてから、
「テキスト」の文例について説明する。時に、作文を書き、自らどれぐらい理解し、レベルアップしたかを確認する。
/期間は、3か月で十分と考えるが、もう一度という要望もあれば、再度の受講か、講義内容に少し変化をつけることも考えられる》
総括:この東急セミナーでの講師業は02年4月から06年9月の4年半で終ったことになる。
06年10月期に継続受講者が5名となって、ついに休講となっただけでなく、他の"文章"関係の講座も生徒数が減少しており、
講座内容を変えるという断が下された。そして、私個人に対しては、一部の生徒からの"苦情"をタテに一種の"解雇"とも受け取れる対応があった。
本件の一部をヒントに、「ひたすらコラム」2006年6月上旬号で「エセ正義感、の真相?!」を書いている。