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「まだまだコラム」 2008年11月上旬号

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「アンチ自虐史観」
 いやあ、立派なものですねえ、制服で堂々と。文民統制もどこへやら。
 東京08・11・01「空幕長を更迭/政府見解に反する論文『侵略はぬれぎぬ』」は、次のように書き出す。
 …航空自衛隊トップの田母神俊雄航空幕僚長が「わが国が侵略国家だったなどというのはまさにぬれぎぬ」などと主張する論文を民間の懸賞論文で発表したことが分かった。
 任期があと2年あるものの、更迭したが辞職しないので、防衛省は60歳の定年退職扱いとしたため、退職金は6千万円ということが端無くも分かった。 これに"消費税分"(最優秀賞金300万円)もつくというのだから、してやったりではないかな、本人としては。
 いやいや、金より"信念"の人である(「信念を持って考えてきたことを個人的な意見として論文にした」と発言)。 しばらく前、航空自衛隊のイラク支援活動を違憲とした名古屋高裁の判決について、現地隊員に影響はないかと聞かれ、 「そんなの関係ねえ」と多数の隊員の心情を代弁したという"前科"もある。
 さらに、これだけ有名になれば、地位の高い"確信犯"のこと、選挙に出れば、一部の民族派から熱狂的な支持を得て、 上位当選間違いなし?! そうでなくとも、顧問に迎えたい企業・団体は、あまたあるのではないかしらん!!
 一方、「真の近現代史観」をテーマに懸賞論文を募集したアパグループは全国でホテルチェーンを展開する都市開発会社だそうで、 その組み合わせは奇異に映ったが、一種のメセナ(文化、芸術に対する企業の金銭的支援活動)なのであろうか。 また、安倍晋三元首相とも近しいなどとインターネットにはある(「反戦な家づくり…」)。
 それにしても、田母神つまり田(大地)に、母は言わずもがな、そして神とは、神々しいというより近寄りがたい苗字で、 やはり"神の国"(森喜朗元首相の発言)の申し子というか、前空幕長の出身地でもある福島県に多いが、全国では251世帯、 人数としては8,225位と希少価値のあるもの…これらはインターネット情報からの受け売り。
 ところで、福島県郡山市立小学校の「教育目標」は、「進んで学習する子ども」「思いやりのある子ども」「健康で明るい子ども」であるそうな。 前空幕長がこの学校の出身かどうか知らないが(ウイキペディアは、できたばかりで、まだ情報が少ない)、少なくとも「進んで学習する子ども」であったことは間違いない。

「女性差別?!」
 米大統領選で、これまでとちがっていたのは、民主党候補争いにヒラリー・クリントン(前大統領夫人)が残ったこと、 そして共和党副大統領候補に、ペイリー・アラスカ州知事が擬せられたことだろうか。
 だが、前者がオバマ候補と接戦を繰り広げながら負けたのは、まだ女性に反発する国民(民主党支持者)が多かったかのように言われていた。 では、超保守のペイリーの場合は少し前、ひょっとしてアメリカ最初の大統領になるかもしれないとも言われていたが、 共和党支持者はどう思っているのか。
 ひるがえって、わが国の、少しレベルのちがったケースをみよう。
 東京08・11・02「力量は女性上司でも/対外的には男性理想/INAX社内調査」によると、同社若手社員の管理職に対する意識調査では、 ホンネとタテマエ、いや内部と外部に対する場合の上司を"使い分けたがっている"結果が出たようだ。
 細かくみると、「仕事ができる」では女性上司を支持する75%で男性支持を3ポイント離し、「リーダーシップ」でも65%―60%とやはり女性がリード、 さらに「部下の面倒見」(62―54)、「頼りがい」(60―57)、「高い管理職意識」(59―55)と、すべてに女性上位であったそうだ。
 ところがである。「直属の上司は男女どちらが理想的か」となると、全体の85%が男性上司を願い、男女別でも女性上司がよいと思う女性は二割以上だが、 男性の場合は一割以下だったという。「対外的になめられない」など、部下として付いていく場合の上司は男性のほうがよいということらしい。
 もう一つ、仮定の話として、上司に女性が着任するのに、抵抗感があるのは26%で、ないのはその2倍(53%)だった。
 うーん、男女役割分担というのか、あるいは「男は外、女は内」という旧来の思想を受け継いでいるのか、 それとも弱い自分たちを守ってくれるには強い男のほうがイイという一方で、母性にも訴えたい現代若者気質なのかしらん?!
 ところで、INAX(元・伊那製陶)はTOTO(元・東洋陶器)と兄弟分である。この際、TOTOでも調査してみてはいかがか。
 まったく異なる結果を期待したいが、似たようなデータならば、便器に座ってロダン的に、考えねばならないですぞ、総理大臣どの?!

「自殺の原因とその対策とは」
 新聞を読んでいると、幸せを感じることもないではないが、東京08・10・31「自殺原因の63%『健康』/政府対策白書 精神科医療に重点」には、考えさせられた。
 借金など生活苦や離婚別居などによる不安・不和からというのもないではないが、昨年の自殺者33,093人のうち自殺原因を特定できた23,209人を分類した結果、 「健康問題」が最多だった由。
 これを受けた対策として、「こころの健康づくり」に重点を置き、うつ病などに関する精神科医療の充実や職場でのメンタルヘルス強化を掲げた。 《と役人の文章をなぞった記事を書く記者の姿を想像しながら、それを咀嚼して写す私自身の空しい姿も哀れではある》
 これを"場当たり政策"という。産婦人科や小児科をめぐる医療事故の原因は医師不足と過剰労働による誤診なども指摘されて久しい。 さらに医師自身の過労死や自殺もある。
 ちなみに、この記事の隣に「産科医、月300時間拘束/学会初調査 500時間越える例も」とあった。 これでは、優秀な医師でも、ミスが避けられないのではないかと思うが、この記事には超過勤務による医師への影響について触れていない。 調べていないとすれば、がっかい(り)だ!?
 先の記事の重点は「だから政府は、対策を講じるのですよ」というニュアンスで、こうある。
 「自殺対策白書は昨年に続き二回目。年間自殺者が十年連続で三万人を超えたとことに危機感を示し、昨年策定した自殺総合対策大綱を踏まえ、 二〇一六年に〇五年時点より自殺死亡率を二〇%減らす政府目標の早期達成を掲げた」とある。
 つまり、スーパーなどのタイムサービス、値下げで「20%引きですよ」というに等しい政策である。 値引きは庶民も歓迎するが、"自殺の20%引き"というのは、2万4千人の死は放置するということですよ、麻生さん?!
 この鈍感さはどこから来るのか。先ごろ、このコラムでも書いたように「オリンピックの目標メダル数」「ノーベル賞の数(の目標)」というのとどこが違うのか。 つまり、10年間の数値を見て、おっとり刀で対策を練ることだろうから、その間、妊婦や胎児、産科医師にどれだけの犠牲者が出るか、 数値目標を立てているのではと勘ぐりたくもなる、ねえ舛添さん?!
 一人一人の生と死、尊厳などを何ら考慮していない机上の論理(税金の無駄遣い)、政治家や役人の感覚はいつもそんなものだが、 彼らは家族を含め生き死にに関係ないのかしらん。

 (以上、08年11月4日までの執筆)


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