出版倫理・青少年問題・目次へ

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〔資料1〕戦後の"悪書・有害図書"について
 戦後"悪書・有害図書"と指弾されたのは、次のような次第である (斜体の表示は、拙著『有害図書と青少年問題―大人のオモチャだった"青少年"―』の該当ページを示す)。

カストリ雑誌(エロ・グロ雑誌) P30〜
S21〜23年ごろに流行った統制外の仙花紙による雑誌。「りべらる」「猟奇」「赤と黒」「千一夜」「でかめろん」など。

ワイセツ文書 P34〜
S23/4月「四畳半襖の下張」、
同10月石坂洋次郎「石中先生行状記」、
S25/1月「裸者と死者」上刊(GHQの圧力で解除)、
同6月「チャタレー夫人の恋人」発禁。

エロ雑誌 P37〜
S24,25年ごろ(カストリ雑誌第2次ブーム)
「夫婦生活」最盛期のS25・1には公称30万部とも。

つづきワイセツ文書 P59〜
S26/7『ガミアニ』『バルカン戦争』『秘話バルカン戦争』。
S27/5『好色三大奇書』、同6月『大陰の娘サロメ』、『マドリッドの男地獄』。
S29/3『夫婦生活』『りべらる』『デカメロン』『千一夜』『奇譚クラブ』。

エロ本 P76〜
S27年に摘発された単行本および雑誌…水揚帳/太陰の娘サロメ/マドリッドの男地獄/人間探究/真情春雨衣/印度ヴィナス/ 艶色玉すだれ/真実伊勢物語/船長夜話/艶話楊貴妃/ジュリエット/あまとりあ/怪奇雑誌11月号/閨中膝栗毛/とのゐ袋/ 傑作読物12月号附録青年の彷徨/人情講談新年号並に別冊附録寝正月のお楽み/怪奇雑誌12月号同附録性愛紅閨秘術十八法/ 読切ロマンス新年号/青年ロマンス/話臨時増刊風流読本/夫婦実話。
S28年は17件、日本観光新聞(東京)/艶女玉寿多礼/浴衣(東京)/におえる園、パリの女学生、恋の冒険など英文の十三冊(東京)/ 甘い夜(名古屋)/秘版清長(東京)/春信(東京)(「エロ出版の実態」『出版ニュース』S29年2月中旬号)。

不良図書 P86〜
S30 悪書追放運動。児童雑誌とオモチャ的付録。
『冒険王』『おもしろブック』『幼年ブック』『なかよし』『漫画王』『少年クラブ』『痛快ブック』。

警視庁からみた不良出版物(雑誌) P90〜
「性的刺激を与えるもの」「暴力肯定」「人間軽視」「射幸心をそそるもの」「民主主義の破壊」 等を現すものを取締りの基準とみなし、少年向け…『痛快ブック』『少年冒険王』/ 成人向け…『夫婦生活』『あまとりあ』『りべらる』/講談もの…『読切講談』『読切傑作』など、 あくどいものやエロ雑誌、暴力もののほか、娯楽もの…『平凡』/総合…『真相』『世界』等の雑誌がリストアップ (『読書タイムズ』30・4・5)。

"大人向け"悪質本の手入れ P95〜
朝日S30・4・27夕刊「悪質本発行所など手入れ/けさ42か所に/37種の差押えを手配」。ゾッキ本。

無責任出版物―赤本 P149〜(なお、それまでの「赤本」については、P41〜)
このころ、子ども向けのものとして氾濫していたのが、赤本と呼ばれる無責任出版物で、「俗悪な絵本と低級な漫画本」だが、 「児童雑誌の内容や付録が問題視される席上でも、これらが論議される」ことはなかったという (西田稔「悪書はこうして出来る―無責任出版物の世界―」『教育じほう』33年7月号)。

低俗週刊誌 P176〜
S34・6・警視庁、低俗週刊誌の取締りを開始(低俗週刊誌不売運動)。
評論家の坂西志保によると、『土曜漫画』『モダン日本』『週刊のスリラー』『週刊男性』 (「週刊誌時代というけれど…/あまりにひどすぎる低級化」朝日34・5・31)。
なお、この年の主な創刊誌は、『朝日ジャーナル』『週刊少年マガジン』『週刊少年サンデー』『週刊現代』『週刊文春』 『週刊平凡』など。

青少年有害雑誌 P235〜
S38・10・28、小売全連・東京合同倫理委員会を開催し、青少年有害誌21誌の仕入れ拒否を発表。
月刊の『芸能特報』『実話情報』『読物実話』『実話雑誌』『女の百科』『実話と秘録』『夫婦生活』『裏窓』 『一〇〇万人のよる』『別冊実話三面記事』『別冊事件実話』『ユーモア画報』『男の専科』『風俗奇譚』『奇譚クラブ』の15誌、 そして『週刊実話と秘録』『週刊事件実話』『実話三面記事』『週刊内外実話』『週刊特報』『週刊特集実話』の6週刊誌。

ハレンチ漫画 P284〜およびP292〜
S45・1、四日市の中学校長会は、小学生にスカートめくりを流行らせた永井豪の『ハレンチ学園』の追放を決定、 県青少年保護審議会に有害指定するよう働きかけた、ほか。
S46・2、麹町会館で開かれた青少年育成国民会議の懇談会は「少年雑誌の問題点とその対策」がテーマとなり、 少年マガジン・少年サンデー・少年ジャンプ・少年チャンピオン・少年キング・少女フレンド・少女コミック・マーガレットの 各編集長が呼ばれた。

自販機本
S52ころの自販機収納ポルノ出版物は約300種と同業界では推定し、七月ごろのポルノ自販機は全国に約13,000台、 うち東京には2800台、大阪は1100台と推定。東京都が自販機本を指定対象とするのは、この年12月から。P302〜
S53 日本PTA全国協議会、出倫協に対し悪書追放の申入れ。

ビニール本 P310〜
S55、「ビニール本摘発/警視庁"わいせつ"と認定」で、芳賀書店など大阪を含め8社12か所の家宅捜索が行われた。 PTA全国協、225万3千人の署名をつけ、有害図書販売規制立法請願を国会に提出。

少女雑誌 P318〜
S58,59「ギャルズライフ」「キッス!」「エルティーン」「ポップティーン」など、6誌の半分が雑協の会員誌。

コミック本 P354〜
H02〜講談社、小学館、集英社、秋田書店、白泉社等、大手の雑協・書協会員社を中心に ("少女"の性行為、「成年コミック」マーク表示、その是非)。

「成年向け雑誌」 (P299〜、P305〜)、P404〜
H08〜出倫協、出版問題懇話会系など、アダルトものに「成人向け雑誌」のマークを表示するよう勧告 (議長、「都と指定しない」旨の約束の由。ただし、H12に初の指定があり)。

マニュアル本 P419〜
H11年夏、6年前からのベストセラー『完全自殺マニュアル』を読んだ若者2人が自殺したとして、 警視庁から"有害"指定を要求された問題で、条例改正。

CD−ROM付雑誌 P429〜
H9・10、東京都では条例を改正し、CD−ROM付雑誌の"有害"指定を可能にした(11年10月から実施)。 P406〜/H12年暮、東京都が行なったCD−ROM付雑誌の指定を不服として、宝島社が都を東京地裁に提訴。

「表示雑誌」 P425〜、P455〜
H13・4、東京都は条例を改正し、「自殺若しくは犯罪を誘発し」そうな図書類を指定対象に加え、 また「青少年にふさわしくない内容の図書」を"区分陳列"するよう求めた。 これに呼応して、出倫協は「出版ゾーニング委員会」を設け、雑誌の選別作業を行なう。


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