とんだエッセイ 10月下旬号
「ハイ・ヒール」("レベル"その1)
だんご三兄弟ならぬ、ボクシングの亀田三兄弟はついに"場外"につまみ出されたようだ。
いわく、当の次男は一年間の出場停止、セコンドを勤める父親は無期限の資格処分の停止。長兄も厳重戒告処分となった。
ニュース映像で見る限り、次男は相手を抱えて投げるなど、ルールに則って戦うスポーツとはいいがたいヒール(heel"悪役")であった。
対戦する前から、年輩の相手を口汚く「ゴキブリ」などとののしり、挑発していたという。
作戦のつもりかもしれないが、それまで行った国外で実力の劣る相手との"興行"とちがって、挑戦者として自信がなかったからではないか。
とはいえ、虚勢は相変わらず、記者会見で父親曰く「(挑発するなどのパフォーマンスは)とりあえずこのままのスタイルが、
自分らのスタイルなので…」などと、あまり反省の色もない。
そういえば、参議院議員になった、女子ゴルファーの父親は「さくらパパ」とか、その前にはオリックスから米マリナーズに行ったイチローの父親は「チチロー」などといわれていたが、
思うに、自分の果たせなかった夢を子に託すのは、親の宿命か?!
その記者会見場で、下を向いたまま一言も発せず、すぐに退席した、この18歳の暴言ボクサーの姿を
「憔悴しきった様子で終始うなだれたままだった」などと感情過多の記事を載せる新聞もイヤですねえ(東京10・18)。
もっとも、この一家を丸がかえし、視聴率を稼いでいたTBSも批判されているが、テレビ界は総じて同工異曲、
創意工夫はないから、同局がやらなければ、どこかでやっていたにちがいない。
大相撲といい、プロスポーツはフェア精神とか、スポーツマンシップなど無縁の世界、まったくドロドロですねえ。
話はもどって、手元の英和辞典によると、"ヒール"は米俗語で「卑劣な男」とある。同じやるなら、もっとレベルの高い"ハイ・ヒール"にならなければ……。
「食い逃げ…」("レベル"その2)
府中市では給食費を払わない教師が数十人もおり、督促状を出されたというニュースを聞き、ああ、学校の先生も貧しくて、
児童生徒であるわが子の給食費も払えないのか、あるいは義務教育では払う必要がないと思っているからかなどと、私は早とちりしてしまったところ……。
「府中の市立小中学校/教員35人 給食費未納/総額47万円 最長5ヵ月」(東京10・20)によると、同市では給食費は保護者と教員から徴収しており、
一ヵ月小学校3950円、同中学校4300円だそうだ(お節介ついでに言えば、一日あたり150〜170円ぐらいか)。
調査によると、異動の際、対象教員を台帳に入れ忘れる手続きミスが数例あったほか、大半は「納める時間がなかった」
「忘れていた」と"不払い"の理由をあげているという。
しかし、手続きミスは学校側の"職務怠慢"であり、未払いは意識的な"食い逃げ"ともなりかねず、まして、
その言い訳は「宿題をする時間がなかった」、「宿題(あるいは、教科書)を忘れた」などという小学生並みのレベルではないか。
にもかかわらず、市側は処分をしないというから、これもいい加減なものと思うが、"相身互い"という言葉もある……。
ともあれ、大人として、社会人として"一人前"であることを自覚していないということになる。
率先垂範すべき立場の者がこれでは、児童生徒から尊敬されないであろうし、やっぱり教育改革とやらでいう10年ごとの研修制度も止むを得ない!?
話変わって、「義務教育でも飛び入学/〈教育〉再生会議が検討/エリート教育養成に拍車」(東京10・19)などという、
前安倍首相の提唱した課題の一つらしいものが出てきた。思うに前首相、小学校時代についた家庭教師の薫陶よろしくない?
わが身を鑑みての思い付きだったのだろうか。
一方、それでなくても忙しい教師の側は、三段跳びも走り幅跳びもできず、うさぎ跳びや蛙飛びでごまかすかもしれない?!
これ以上教師をいじめてどうする!!
《その昔、M教師(問題教師)という言葉があった。私が「M教師、健在なり」を書いたのは「似非エッセイ」03年8月上旬号である。》
「最近の、わが善行?!」
1)×日、ある店で、男子高校生にコピーのとり方を教える…「ありがとうございました」と、アドバイスしたときと別れ際に二度も言われ、
素直であるとの好印象を得る。
2)×日、小さなスーパーの前で、他人の自転車を倒した女性を助ける…(身の危険を感じながら、車道に散乱したペットボトルなどを拾うと)
「ご親切に、ありがとうございました」に、「いや、お互い様です」と答える。
3)×日、月に一度、血圧の薬をもらう医院で、見知らぬ同士(男女)のおしゃべりに注意をする…(以下、その顛末を)
土曜の午前中に行ったのは初めてで、待合室には10人前後も先客がいた。出直そうかと思ったが、あいにくこの日で薬が切れてしまう。
しかたなく、持参の文庫本を読み始めたところ、いつも私語などない静かな空間なのに、近くで中年男女の話し声がする。
内容も分かるほど、声が高い。受付の女性もそれとなく、「(初対面だと聞き)すぐ親しくなるのはいいですね」などと、
けん制の声をかけるが、どちらも話好きらしく、かえって図に乗ってしまった。
周りのことなどお構いなく、喋り続ける。耳障りだろうが、だれも注意しない。<日本人はやっぱり、サイレント・マジョリティ(もの言わぬ大衆)だ?!>
私は公徳心に欠ける大人には我慢がならぬほうである。しかし、この医院にはまた来ることだしと考えたり、
「うるさい!」と一言いうのは簡単だが、けんかするのも大人気ない。と思っていると、鎌倉がどうのから始まって、
(未婚の)お嬢さんはどうだとか男が言い出したので、ついに私は彼らの前に行き、小声で「(おしゃべりするには)喫茶店に行かれたら、どうですか」と言った。
二人は一瞬きょとんとする。男はすぐに意味が分かったようだが、女は不快な顔つきで私をにらみつけた……。
彼らは順に診察室に入り、出てきては処方箋を待つ。とそのとき、男が私のところに来て、おとなしく、
「済みませんでした」と頭を下げるではないか。つい、私も「余計なことを言いまして…」と答えていたのであります。
《余談だが、そのとき読んでいたのは「ユダヤ・ジョーク集」(ラビ・M・トケイヤー著、加瀬英明訳・講談社+α文庫)で、
はじめのほうに、「ジョーク」は人生の機微に咲いた花である。なんて言葉がある。目は文章を追いながら、どういう言葉をかけようと苦心していた次第?!》
(以上、07年10月23日までの執筆)
kenha@wj8.so-net.ne.jp