色紙を贈る相手が決まれば、どういう文句・言葉にするかを考えはじめます。
相手の名前を織り込むのが"原則"ですが、表現方法は五七五(俳句・川柳)や五七五七七(短歌)でも、
そのバリエーションでも自由です。
あまり形式にとらわれず、簡潔に表現することです。
その際、日本語の特性を生かして、掛け言葉や同音異義語、同音異字語を駆使するのです。
時にはヨコ文字を利用して構いません。贈るあなたの気持ちが込められればよいのですから。
◎ダジャレの効用
さて、ダジャレの効用ですが、これはあなたが語呂合わせなど"言葉遊び"をどの程度できるかどうかにかかっているといえます。
それには1.同音異義語、同音異字語をうまくアレンジする、2.シリトリ遊びではないが、言葉を次々に思い浮かべる、
3.蓄積された知識や新しいニュースなどをヒントに、頭の中で連想ゲームを行う、などをすることです。
では、「三浦江利子」(仮名)という若い女性に色紙を贈るとしましょう。
これだけではヒントが少ないのですが、「江利子」から"襟裳岬"を連想した私は、
続いて「三浦御崎もある」と思い、これで"みさき"が二つに。
さらにこの場にふさわしい言葉(「美咲」)を探し出し、「三浦も/江利も みさき」として、
三行目以下に"美咲とは/これから美しく花開く/謂なり」などとしたのは、やや苦し紛れでしたが。
でも、口先だけではなく、色紙にすれば、あなたの隠れた趣味で、見直されること請け合いです。
もう一つ、具体例を上げましょう。
東北出身の友人が居酒屋を出すとき、店名を"みちのく"としたいというのです。
電話帳を繰ると、五、六〇軒もの"みちのく"がありました。
そこで当て字でできないかと考えたのが「味知呑喰」でした。
ついでに開店の案内状や宣伝文句・マッチのデザインも頼まれたので、いささか悪乗りして、
次の四種類をつくりました。ちなみに、店主の名はカンノ氏です。
当時(昭和57年4月)の私は何も知らずにやっていたのですが、
この作法はコラムにあるように和歌などでいう「折句」の形式と同じでした。
折句は一つ一つの句に、それぞれ一文字ずつ言葉を分けて隠す遊びだそうです。
代表的な在原業平の「かきつばた」は、「唐衣/着つつなれにし/妻しあれば/はるばるきぬる/旅をしぞ思ふ」と詠われております。
[コラム]
「折句」……和歌で、各句の上に物名を一字ずつ置いたもの。
「かきつばた」の例。俳諧では判者が上の一句を出し、下二句を他につけさせるもの(広辞苑)。
和歌・俳句・川柳などで、各句の初めまたは終りに物の名を一字ずつ読みいれたもの。
「かきつばた」の類(学研国語大辞典)。
もっと複雑なのが「沓冠」……雑俳の一。七文字の題に、上五字と下五字を付けて十七字の一句立とするもの。
「お袋のあちらへ向くもひとつ穴」の類。帯び付、くつかぶり、くつこうぶり(主婦と生活社・日本語の知識百科)。