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名入れ色紙   第3回 形式にとらわれない

{その三}形式にとらわれない

 色紙を贈る相手が決まれば、どういう文句・言葉にするかを考えはじめます。 相手の名前を織り込むのが"原則"ですが、表現方法は五七五(俳句・川柳)や五七五七七(短歌)でも、 そのバリエーションでも自由です。
 あまり形式にとらわれず、簡潔に表現することです。 その際、日本語の特性を生かして、掛け言葉や同音異義語、同音異字語を駆使するのです。 時にはヨコ文字を利用して構いません。贈るあなたの気持ちが込められればよいのですから。

◎ダジャレの効用
 さて、ダジャレの効用ですが、これはあなたが語呂合わせなど"言葉遊び"をどの程度できるかどうかにかかっているといえます。 それには1.同音異義語、同音異字語をうまくアレンジする、2.シリトリ遊びではないが、言葉を次々に思い浮かべる、 3.蓄積された知識や新しいニュースなどをヒントに、頭の中で連想ゲームを行う、などをすることです。

 では、「三浦江利子」(仮名)という若い女性に色紙を贈るとしましょう。 これだけではヒントが少ないのですが、「江利子」から"襟裳岬"を連想した私は、 続いて「三浦御崎もある」と思い、これで"みさき"が二つに。 さらにこの場にふさわしい言葉(「美咲」)を探し出し、「三浦も/江利も みさき」として、 三行目以下に"美咲とは/これから美しく花開く/謂なり」などとしたのは、やや苦し紛れでしたが。
 でも、口先だけではなく、色紙にすれば、あなたの隠れた趣味で、見直されること請け合いです。

 もう一つ、具体例を上げましょう。 東北出身の友人が居酒屋を出すとき、店名を"みちのく"としたいというのです。
 電話帳を繰ると、五、六〇軒もの"みちのく"がありました。 そこで当て字でできないかと考えたのが「味知呑喰」でした。
 ついでに開店の案内状や宣伝文句・マッチのデザインも頼まれたので、いささか悪乗りして、 次の四種類をつくりました。ちなみに、店主の名はカンノ氏です。

 当時(昭和57年4月)の私は何も知らずにやっていたのですが、 この作法はコラムにあるように和歌などでいう「折句」の形式と同じでした。
 折句は一つ一つの句に、それぞれ一文字ずつ言葉を分けて隠す遊びだそうです。 代表的な在原業平の「かきつばた」は、「唐衣/着つつなれにし/妻しあれば/はるばるきぬる/旅をしぞ思ふ」と詠われております。

 [コラム]
 「折句」……和歌で、各句の上に物名を一字ずつ置いたもの。 「かきつばた」の例。俳諧では判者が上の一句を出し、下二句を他につけさせるもの(広辞苑)。 和歌・俳句・川柳などで、各句の初めまたは終りに物の名を一字ずつ読みいれたもの。 「かきつばた」の類(学研国語大辞典)。
 もっと複雑なのが「沓冠」……雑俳の一。七文字の題に、上五字と下五字を付けて十七字の一句立とするもの。 「お袋のあちらへ向くもひとつ穴」の類。帯び付、くつかぶり、くつこうぶり(主婦と生活社・日本語の知識百科)。


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