ここで"色紙に筆で書く"ということの復習をしましょう。
まず、大色紙(273ミリ×243ミリ)を使用するとき、ウラとオモテを間違えないことです。
オモテは白無地がポピュラーですが、薄い色付や文様の入ったものもあります。
ウラは一般に、銀の砂子をまいて美しく仕上げてあります({その二}のコラム参照)。
オモテウラについては、色紙を所望されたとき、「〈私ごとき者が〉立派な銀の砂子の面に書くのは失礼だから」と、
わざとひっくり返して書いたという説もあります。
また、タテ長に使うかヨコ長かは、書く内容や字数・行数で考えてよいでしょう。 いずれにしても、趣味の領域を越えるものではありません。楽しく書くことが肝要なのです。
◎道具より気持ちで
本来ならば、硯に墨を磨って、筆で書くことが望ましいのですが、この色紙講座は、
贈る相手にふさわしいオリジナルの言葉を書くことを主眼としております。
道具の善し悪し、字の上手下手よりも、あなたの贈る気持ちが大切なのです。
立派な毛筆でなくても、筆ペンでも、世界に一つしかない色紙を書いて贈るところに意義があるのです。
さて、ふさわしい言葉を選ぶ、名前などを織り込んだ文句を作るにはどうすればよいかを具体的に考えましょう。
同僚なり身近にいる、Aさんが結婚する、あるいはBさんが退職するなど、人生の節目を迎えたとします。
あなたも他人のことだからと、無視するわけにはいきません。
そこで、何らかのお祝いも必要だと想定してください。
記念品か祝い金を贈るのが慣例になっている、みんなで相談してやるのが習慣、
一人だけ突出するのは考えものだなどと、いろいろなケースがあるでしょう。
◎言葉を選ぶヒント
そこで第一に、色紙を贈りたい相手かどうかを検討することです。
喜んでくれる人だ、俺にも一枚書いてくれよと言っていた、私も何か記念に書いてやりたい、
励みの言葉もかけてやりたい、という状況ならば、あなたはすでに"言葉"を考えはじめているはずです。
では、なにを根拠に言葉を選べばよいか、いくつかヒントを上げてみましょう。
o相手の名前 o立場 o人柄 o趣味 oくせ oエピソード o年月日(贈るその日はどういう日か)
o贈る動機 o会社 o出身地 oあなたとの関係 など
これらのキーワードを組み合わせながら、あなたの頭はコンピュータのようにフル回転することでしょう。
相手の喜ぶ顔を想像し、贈る楽しみ、創作する歓びにひたりながら。
思いついた言葉を書いた色紙に、贈る相手の名や日付を入れ、あなたの署名をすれば完成ですが、
さらに簡略化した落款(名前、名字)を押せば、朱色も鮮やかに立派な色紙となること請け合いです。
[コラム]落款
完成した書や絵に作者自身が、題、姓名、雅号、年月日などを書き記したり、雅号の印を押したりすること。
また、その署名や印。「落成の款識」の意と、学研国語大辞典にある。
なお、広辞苑には「書画の筆者が自筆で署名し、もしくは雅号の印を押したものをいう」とある。